「ただの冷え性だと思っていた」「年のせいか足がしびれることが増えた」などの足の不調は血流の悪化を知らせるサインかもしれません。放置すると症状は進行し、歩行が困難になるだけでなく、足を失うことにつながる可能性があります。
この記事では、足の血流障害によって起こる症状を冷え・しびれなどの初期段階から進行度別に解説します。原因となる病気や生活習慣、ご自身でできるセルフチェック方法、受診すべき診療科を確認し、正しい治療法へとつなげましょう。
足の血流が悪いと出る主な症状

足の血流が悪いと出る主な症状は以下の3つの段階に分けられます。
- 初期症状|冷え・しびれ
- 進行後の症状|間欠性跛行
- 重篤な症状|安静時痛・壊死
初期症状|冷え・しびれ
足の血流が悪くなると、最初に現れることが多いのが冷えやしびれです。血管が細くなることで、心臓から送られる血液が足のすみずみまで届きにくくなるために起こります。
初期症状の特徴は、冷え・左右の温度差・しびれ・感覚の鈍化です。これらの症状は、動脈硬化や糖尿病などの重篤な病気の初期段階を示唆している可能性があります。
これまでに冷えを感じたことがなかった方が急に感じるようになったり、しびれが頻繁に起こったりする場合は注意が必要です。
進行後の症状|間欠性跛行
初期症状を放置して血流の悪化が進むと、間欠性跛行が現れるようになります。間欠性跛行とは、足の筋肉に負担がかかった際に痛みやしびれ、だるさを感じて歩けなくなる一方、少し休むと症状が和らぐ状態です。
間欠性跛行の主な原因
間欠性跛行の主な原因の一つが、足への血流が悪いために起こる虚血状態です。筋肉が歩行に必要とする酸素量が十分供給されないことで起こります。休息により十分な酸素が届くと、再び歩けるようになるでしょう。
ただし、間欠性跛行の原因は、足への血流の悪さだけではありません。
腰部脊柱管狭窄症により神経が圧迫されて間欠性跛行が生じることもあります。腰部脊柱管狭窄症の場合は、前かがみになると神経の圧迫が緩和されて症状が改善に向かう傾向です。
症状が現れたときは、血管外科などの専門医を受診し、正しい診断を受けることが大切です。
重篤な症状|安静時痛・壊死
足への血流障害がさらに悪化し、末期的な状態になると、命にも関わる重篤な症状が現れます。この段階は重症下肢虚血と呼ばれ、緊急の治療が必要です。
重症下肢虚血の主な症状は、安静時痛、潰瘍・壊死の2つです。診断の遅れや不適切な治療は、最終的に足を切断せざるを得ない状況につながる要因になるため、放置してはいけません。(※1)
安静時の痛みや治らない傷がみられたら、迷わずすぐに医療機関を受診しましょう。
足の血流が悪くなる原因
足の血流が悪くなる状態は、特定の病気や日々の生活習慣など、さまざまな要因が絡み合って発症することがほとんどです。主な原因として、以下の3つを解説します。
①閉塞性動脈硬化症・重症下肢虚血による血管の狭窄・閉塞
②糖尿病・高血圧・脂質異常症による動脈硬化
③喫煙・運動不足・食生活の乱れ
①閉塞性動脈硬化症・重症下肢虚血による血管の狭窄・閉塞
足の血流が悪くなる原因として代表的なものが動脈硬化です。
動脈硬化とは、血管が加齢とともに弾力性を失って硬くなったり、血管の内側にコレステロールなどが溜まったりして、血液の通り道が狭くなる状態です。動脈硬化が足の動脈で起こり、血流障害を引き起こす病気を閉塞性動脈硬化症と呼びます。
閉塞性動脈硬化症が進行すると、血管はさらに狭くなっていきます。最終的には完全に詰まるので、足の筋肉や皮膚の細胞に必要な酸素や栄養が届かなくなるでしょう。この状態が続くと、安静時痛や壊死などが起こる重症下肢虚血に至ります。
動脈硬化は、若い方でも注意が必要です。若年層で運動時に足の痛みやしびれを繰り返す場合、膝窩動脈捕捉症候群の可能性があります。筋肉痛と間違われやすく、診断の遅れが血管へのダメージを深刻化させることもあります。
②糖尿病・高血圧・脂質異常症による動脈硬化
糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、動脈硬化を進行させ、足への血流を悪くさせる要因です。それぞれの病気が血管へ与える影響を以下の表にまとめました。
| 病名 | 血管への影響 |
|---|---|
| 糖尿病 | 血液中の糖が高い状態が続くと、血管の内壁が傷つきやすくなり、コレステロールなどが付着しやすく動脈硬化が進行する |
| 高血圧 | 常に高い圧力が血管にかかることで、血管の壁が厚く硬くなり、収縮に対応できず傷つきやすくなる |
| 脂質異常症 | 血液中の悪玉コレステロールなどが過剰になるとプラークと呼ばれる塊を作り、血管を狭くする原因となる |
いずれも自覚症状がないまま進行し、気づいたときには血管の状態が悪化しているケースが多いです。
③喫煙・運動不足・食生活の乱れ
喫煙、運動不足、食生活の乱れは、血管の健康を損ない、脚への血流が悪くなる代表的な要因です。
喫煙により血流が悪くなるのは、タバコの葉やその煙に含まれるニコチンや一酸化炭素による作用です。ニコチンは、血管を強く収縮させて血流を悪化させます。一酸化炭素は血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を促進させる物質です。
ふくらはぎの筋肉は、収縮と弛緩を繰り返すことで、足に溜まった血液を心臓へ送り返すポンプの役割を担っています。運動不足で筋力が低下すると、ポンプ機能が弱まり、血行不良の原因となります。
塩分や動物性脂肪の多い食事は、高血圧や脂質異常症を引き起こし、動脈硬化を進行させかねません。インスタント食品や外食が多いなど、栄養バランスの偏った食生活は避けることが懸命です。
足の血流が悪いかのセルフチェック方法
足の血流が悪いかは、以下の方法でセルフチェックしましょう。
- 足の色が青白い、または赤黒い
- 左右の足で触れたときの温度に明らかな差がある(片方が冷たい)
- 足の甲や足首の脈に触れにくい、左右差がある
- 少し歩いただけでしびれや痛みが出る
- 足にできた小さな傷や虫刺されがなかなか治らない
これらの症状が1つでもみられる場合は、足の血流が悪くなっている可能性があります。
特に安静時痛や潰瘍・壊死などの症状は、重症化しているサインです。
症状を放置したり受診をためらったりすると、重篤な合併症のリスクが高まるため、すぐに医療機関を受診することが大切です。血管外科や循環器内科を受診すると良いでしょう。
循環器内科についての詳しい記事はこちら⇒循環器内科で何を診る?主な疾患・検査内容・受診すべき症状
足の血流障害の診断と検査
足の血流が悪い場合は、血管外科・循環器内科を受診したり、ABI検査・血管エコー・CT血管造影で検査したりし、確定診断へとつなげましょう。
血管外科・循環器内科を受診する
足の血流に関する症状で病院にかかる場合、専門となるのは血管外科や循環器内科です。
血管外科は、血管そのものの病気を専門とし、手術やカテーテル治療などの外科的なアプローチを得意とします。安静にしていても痛む、足に傷ができたなど、症状が進行している場合に適した診療科です。
循環器内科では、主に薬物療法や生活習慣の改善によって心臓や血管の病気を治療します。高血圧や糖尿病などの持病があり、足の冷えやしびれが気になり始めた段階での相談に適しています。
どちらを受診すべきか迷う場合は、まずはかかりつけの医師に相談するのも良いでしょう。
診察の際は、問診や視診、触診を通じて、症状の進行度や持病の有無、生活習慣などの情報を確認したうえで、詳細な検査を行います。
ABI検査・血管エコー・CT血管造影で検査する
問診や診察で足の血流障害が疑われた場合、確定診断するために以下の検査を行います。
| 検査の種類 | 目的と特徴 |
|---|---|
| ABI検査 |
|
| 血管エコー検査 |
|
| CT血管造影検査 |
|
これらの検査結果を踏まえて、診断を確定し、今後の治療方針の決定へとつなげます。
足の血流障害の治療法
足の血流障害の治療法は主に以下の4つです。
①生活習慣の改善
②薬物療法
③カテーテル治療
④バイパス手術
①生活習慣の改善

足の血流が悪く、症状が出ている場合は、生活習慣の見直しが治療の基本です。薬やカテーテル治療で一時的に血流が良くなっても、根本的な原因がそのままであれば、病気は再び進行してしまいます。
足の血流障害の治療で重要なのは以下の4つです。
- 禁煙
- 食事療法
- 運動療法
- フットケア
生活習慣の改善は、一人で無理をして完璧を目指すのではなく、医師や専門スタッフのサポートを受けながら、ご自身のペースで長く続けていくことが大切です。継続をサポートできるよう、スマートフォンアプリ(デジタルセラピューティクス)などの新しい取り組みも始まっています。
②薬物療法
足の血流障害には、生活習慣の改善と並行して、薬を使った治療(薬物療法)も行われます。薬物療法には、足の血流を直接改善したり、原因である動脈硬化の進行を抑えたりする目的があります。
主に使われる薬は、以下のとおりです。
| 薬の種類 | 主な働き |
|---|---|
| 抗血小板薬 | 血液を固まりにくくし、血の塊(血栓)ができるのを防ぐ |
| 血管拡張薬 | 足の細い血管を広げ、血流をスムーズにし、冷えやしびれ、歩行時の痛みといった症状を和らげる |
| 脂質異常症の薬 | 動脈硬化の原因である悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の値を下げる |
| 高血圧・糖尿病の薬 | 足の血流障害の原因となる高血圧や糖尿病を管理する |
これらの薬は、医師の指示通りに毎日飲み続けることが大切です。
症状が良くなっても自身の判断でお薬をやめると、病気が再び悪化してしまう可能性があります。治療をきちんと継続することが、足の健康を守るために大切です。
③カテーテル治療
生活習慣の改善や薬物療法だけでは足の血流障害の症状が改善しない場合は、カテーテル治療が検討されます。血管の狭くなっている部分・詰まっている部分がはっきりしている場合にも、行われることがあります。
カテーテル治療の流れは以下の手順です。
- 足の付け根や腕、足首の血管からカテーテルを挿入する
- レントゲンで様子を見ながら、カテーテルを血管が狭窄している場所まで進める
- カテーテルの先端についた風船(バルーン)を膨らませて、血管を押し広げる
- ステントという金属でできた網目状の筒を血管内に留置する
ステントを留置することで血管が広げられ、再狭窄の可能性を低減することが期待されます。一方で、カテーテル挿入部の出血や、時間経過により再び血管が狭くなる(再狭窄)リスクがあります。
④バイパス手術
カテーテル治療で足の血流障害の改善が難しい場合には、バイパス手術が行われます。バイパス手術は、詰まってしまった血管の代わりに、血液が流れる新しい通り道(バイパス)を作って血流を確保する方法です。バイパスの材料には、主に人工血管と患者さん自身の静脈の2つが使われます。詰まっている範囲が長くても血流をしっかりと再開させられ、長期的な効果が期待できる場合があります。
一方でバイパス手術は、手術による傷の痛みや感染症、出血などの合併症リスクがあり、体への負担が大きい点がデメリットです。
どの治療法が最も適しているかは、血管の状態や全身の状態、生活スタイルなどを総合的に評価し、医師が判断します。治療方針は、医師とよく相談しながら、納得したうえで進めていくことが大切です。
まとめ
「ただの冷え性」「年のせい」と見過ごしがちな足のしびれや痛みは、血流が悪化している体からのサインかもしれません。放置すると病気は静かに進行し、歩くのがつらくなったり、足を失ったりする可能性があります。
安静にしていても痛む、小さな傷がなかなか治らないなどの症状は、すぐに専門家へ相談すべきサインです。気になる症状があれば、自己判断せずに血管外科や循環器内科などを受診しましょう。
参考文献
Gonzalez-Urquijo M, Martin AM, Castillo-Amulef F, Vargas JF, Valdes F and Marine L. “Popliteal Artery Entrapment Syndrome: A Review of Current Concepts.” The American surgeon 92, no. 3 (2026): 991-998.
