熱が下がっても3週間以上続く咳や市販薬が効かない風邪の症状は、マイコプラズマ肺炎かもしれません。
この記事では、マイコプラズマ肺炎の症状のチェックリストや受診の目安、大人と子どもの治療法の違いなどを解説します。ご自身やご家族の状態と照らし合わせ、適切な対処法を見つけてください。
マイコプラズマ肺炎の症状とは
マイコプラズマ肺炎は、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌によって引き起こされる呼吸器の感染症です。
一般的な細菌による肺炎は高熱でぐったりすることが多いのに対し、マイコプラズマ肺炎は比較的症状が軽く、初期は元気に見えることもあります。
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は2〜3週間と長いため、いつどこで感染したのか分かりにくいのも特徴です。(※1)
ここでは、マイコプラズマ肺炎の症状のチェックリストや大人と子どもの症状の現れ方の違いなどを解説します。
初期症状とチェックリスト
マイコプラズマ肺炎の初期症状は37〜38℃程度の発熱や全身のだるさ、頭痛、のどの痛みなどが現れます。咳は遅れて始まることが多いのが特徴です。(※1)
初期の段階では風邪とよく似ているため、自己判断するのは難しいでしょう。ご自身の症状に、以下の内容が複数当てはまる場合は、マイコプラズマ肺炎の可能性があります。
- 発熱したあとに、咳が出るようになった
- 痰の絡まない乾いた咳から、徐々に痰が絡む湿った咳に変わってきた
- 夜間や早朝に特に激しく咳き込んでしまう
- 日中は熱が下がるのに、夕方や夜にまた上がる
- 体が重く、だるい感じが続いている
- 市販の風邪薬や咳止めを飲んでも、症状が良くならない
- 咳をすると胸が痛むことがある
- 耳の痛みや下痢、嘔吐などの症状も出ている
ただの風邪だろうと様子を見ると症状が悪化することもあるため、早めに医療機関へ相談しましょう。
だの風邪だろうと様子を見ると症状が悪化することもあるため、早めに医療機関へ相談しましょう。
咳の種類と経過
マイコプラズマ肺炎の代表的な症状は、しつこく長引く咳です。発症して間もない頃は、痰がほとんど絡まない「コンコン」「ケンケン」といった乾いた咳(乾性咳嗽)が中心です。少しのきっかけで咳き込み始めると、なかなか止まらなくなることもあります。
病状が進み気管支の炎症が強くなると、徐々に「ゴホゴホ」という痰が絡んだ湿った咳(湿性外装)へと変化していくのが一般的です。
咳は、熱などの他の症状が改善したあとも続き、完治するまでに3〜4週間かかることも珍しくありません。(※1)
夜中や明け方、体が温まったとき(入浴後など)、運動をしたあと、冷たい空気を吸ったときなどに悪化しやすい傾向があります。
大人と子どもの症状の現れ方の違い

マイコプラズマ肺炎は、感染した人の年齢によって症状の現れ方や重症度が異なることがあります。
マイコプラズマ肺炎は小学生くらいの子ども(学童期)に多く見られ、例年の患者報告者数の約80%は14歳以下です。(※1)症状はしつこい咳がメインで、熱はあっても元気なことが多いことも多いです。鼻水や鼻づまりといった風邪のような症状は少ない傾向にあります。咳とともに耳の痛みを訴え、中耳炎を合併することもあるため様子を観察しましょう。
大人が感染すると、発熱や咳、呼吸困難といった典型的な症状が現れやすく、子どもよりも症状が重くなることがあります。日中は微熱なのに夜間に高熱が出るなど、熱が上がったり下がったりを繰り返す「弛張熱(しちょうねつ)」が見られることもあります。
高齢者や、心臓・肺にもともと病気がある方は重症化しやすく、胸に水がたまったり心不全を起こしたりするリスクもあるため、長引く場合は早めの受診をご検討ください。
風邪やほかの感染症との見分け方
マイコプラズマ肺炎は、風邪やインフルエンザ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)など、ほかの呼吸器感染症と症状が似ています。
マイコプラズマ肺炎とほかの感染症の見分けるために重要なポイントを、以下の表にまとめました。
| 感染症の種類 | 主な症状の特徴 | 咳の経過 |
|---|---|---|
| マイコプラズマ肺炎 | 発熱、だるさ、頭痛 | 熱が下がったあとも、咳が3〜4週間続くことがある |
| 普通の風邪 | のどの痛み、鼻水、鼻づまり、くしゃみが中心 | 熱が下がるにつれて、咳も次第に落ち着いてくることが多い |
| インフルエンザ | 38℃以上の急な高熱、強い関節痛・筋肉痛 | 全身の症状が強く、咳も強く出ることがある |
| COVID-19 | 発熱、咳、倦怠感のほか、味覚・嗅覚障害など多彩 | 症状の個人差が大きい |
重要な見分け方のポイントは、「熱が下がったあとも咳が改善しない、むしろひどくなる」という点です。市販薬で改善しない長引く咳がある場合は、早めに医師に相談しましょう。
気を付けたい合併症
マイコプラズマ肺炎は、肺や気管支の症状だけで回復に向かいますが、ときに全身にさまざまな合併症を引き起こすことがあります。
マイコプラズマ肺炎でよくみられる合併症は、気管支炎や気管支喘息の悪化など呼吸器系や吐き気、下痢など消化器系にも現れる場合があります。子どもの場合は中耳炎、副鼻腔炎など合併症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
まれではありますが、全身に影響が及ぶと、以下のような重い合併症につながる可能性があります。
- 重症肺炎:
- 酸素が低くなり呼吸が苦しくなる状態
- 神経系:
- 無菌性髄膜炎、脳炎、ギラン・バレー症候群(手足の麻痺)
- 心臓:
- 心筋炎、心膜炎(胸の痛みや動悸)
- 血液:
- 溶血性貧血(赤血球が壊れて貧血になる)
- 皮膚粘膜:
- スティーブンス・ジョンソン症候群(全身の皮膚や粘膜に重い炎症が起こる)
これらの合併症を防ぐためにも、ただの長引く咳と自己判断せず、適切に対処することが大切です。
症状が続く場合はきちんと医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
マイコプラズマ肺炎の受診の目安
ここでは、受診をおすすめする症状や受診する科、マイコプラズマ肺炎の検査を解説します。
受診すべき症状
市販の風邪薬や咳止めを数日飲んでも改善が見られない場合は、マイコプラズマ肺炎を疑うサインかもしれません。
以下のような症状が、1つでも当てはまる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
以下のような症状が、1つでも当てはまる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
- 咳が1週間以上続いている
- 乾いた咳から痰が絡む湿った咳に変わってきた
- 咳込みが激しく、夜中や明け方に目が覚めてしまう
- 咳をするたびに胸や背中に痛みを感じる
- 呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が混じる
- 38℃以上の熱が3日以上続いている
- 日中は熱が下がるのに、夕方から夜にかけて再び高熱になることを繰り返している
- 体を動かすのがつらいほどの強いだるさが続いている
- 食欲がなく、水分を摂るのも難しい
- 階段の上り下りなど、少し動いただけでも息切れや息苦しさを感じる
- しつこい頭痛や関節の痛みが続く
お子さんの場合、「元気がなくぐったりしている」「顔色が悪い」「食事や水分をほとんど摂れない」といった様子は、脱水や重症化のサインです。迷わず小児科を受診してください。
受診する科
マイコプラズマ肺炎が疑われる場合、年齢や症状に合わせて適切な診療科を選ぶことが大切です。
基本的には、お子さんならかかりつけの小児科、大人は内科を受診すれば問題ありません。
咳が止まらず夜も眠れない、呼吸が苦しいといった症状が強い場合や、もともと気管支喘息などの呼吸器系の持病がある方は、呼吸器内科を受診しましょう。
判断に迷う場合は、まずはお近くの内科やかかりつけのクリニックに相談してください。
診察の結果、より専門的な検査や治療が必要と判断されれば、適切な医療機関を紹介してもらえます。
マイコプラズマ肺炎の検査
医療機関では、問診で症状や経過を詳しく確認したうえで、診断を確定するためにいくつかの検査を行います。
どの検査を行うかは、症状の重さや流行状況などを考慮して医師が判断します。
| 検査の種類 | 検査の方法と目的 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| 迅速抗原検査 | のどの奥を綿棒でこすり、原因菌の成分を検出する | ・約15分で結果が判明する手軽な検査 ・精度は他の検査より低い傾向にある |
| 遺伝子検査(PCR法・LAMP法) | のどの奥を綿棒でこする、または痰を採取して菌の遺伝子を増幅させて検出する | 精度が高く、少ない菌でも検出可能 |
| 血液検査 | 腕などから採血し、体内の炎症反応や抗体を調べる | ・白血球数やCRP(炎症反応の指標)の値で炎症の強さを調べる ・マイコプラズマに対する抗体の量を調べ、感染時期を判断する材料にする |
| 胸部X線(レントゲン)検査 | 胸部の写真を撮影し、肺の状態を確認する | ・肺炎が起きている場合、肺に白い影として写る ・肺炎の広がりや重症度を客観的に評価する |
検査は、診断を確定するだけでなく、治療方針を決める上でも重要です。遺伝子検査(PCR法など)は、原因菌を正確に特定できるため、抗菌薬を選ぶための重要な手がかりとなります。
マイコプラズマ肺炎の治療は大人と子どもでどう違う?
マイコプラズマ肺炎の治療は、原因菌に効果のある抗菌薬(抗生物質)の内服が基本です。治療方針や注意すべき点は、患者さんの年齢によって大きく異なります。ここでは、マイコプラズマ肺炎の大人と子どもの治療法の違いや登校、出勤の目安について解説します。
大人では重症化や合併症に注意が必要
大人のマイコプラズマ肺炎は、体力があるから軽症で済むとは限りません。活発な免疫機能が体内に侵入した細菌に対して過剰に反応し、肺の炎症が強く引き起こされ、肺炎が重症化しやすい傾向があります。
心臓や肺に基礎疾患がある方や高齢の方、喫煙者は注意が必要です。大人の場合、肺炎そのものの悪化だけでなく、全身にさまざまな合併症を引き起こす危険性も高まります。
| 合併症の種類 | 注意すべき症状 |
|---|---|
| 呼吸器系の合併症 | 息苦しさ、胸の痛み、多量の痰、喘息の悪化 |
| 心臓の合併症 | 動悸、息切れ、胸の圧迫感、足のむくみ |
| 脳・神経系の合併症 | 激しい頭痛、意識がもうろうとする、手足のしびれ |
| その他の合併症 | 全身の発疹、関節の痛み、肝機能の低下 |
合併症を防ぐためには、処方された抗菌薬を医師の指示通りに最後まで飲み切ることが何よりも重要です。治療中に息苦しさが増したり、いつもと違う症状が現れたりした場合は、処方を受けた医療機関へ相談しましょう。
子どもでは薬剤選択と耐性菌が問題になる
子どものマイコプラズマ肺炎治療では、主に「マクロライド系」という種類の抗菌薬が用いられます。
しかし、近年マクロライド系の薬が効きにくい「マクロライド耐性菌」(MRMP)が増加しています。(※2)薬を飲んでいるのに熱が下がらない、咳が一向に改善しないといった場合は、耐性菌への感染が疑われます。
マクロライド系の薬の効果が不十分と判断された場合、医師はテトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬への変更を検討したり少量のステロイドを使用することがあります。(※2)
子どもは安全に使える薬に制限があるため、医師が年齢や体重、症状の重さ、そして耐性菌の可能性などを総合的に考慮して、最適な薬を選択します。
症状が改善しないからといって、自己判断で服薬を中止するのではなく、処方した医師に相談し、適切な指示を受けるようにしてください。
いつから学校・仕事に復帰できるか
マイコプラズマ肺炎には、インフルエンザのように法律で定められた明確な基準はありません。
一般的には、以下の項目を総合的に満たした状態が復帰の目安となります。
- 解熱剤を使わずに、平熱の状態で24時間以上安定して過ごせている
- 夜も眠れないほどの激しい咳や、会話が困難になるような咳が治まっている
- 食事を普段通りに摂ることができ、日常生活を送れるくらい元気に活動できる
マイコプラズマ肺炎は、熱が下がり症状が軽快したあとも、咳や痰から1か月以上にわたって菌が排出される可能性があります。
周囲への感染拡大を防ぐためにも、復帰後もしばらくはマスクを正しく着用し、咳やくしゃみをする際は口と鼻を覆う「咳エチケット」を徹底しましょう。
最終的な復帰のタイミングについては、ご自身の体調を最優先に考え、判断に迷う場合は医師に相談するようにしてください。
まとめ
マイコプラズマ肺炎は、熱は下がったのに咳だけが続くという特徴があります。普通の風邪だろうと自己判断で様子を見ていると、症状が長引くだけでなく、重い合併症につながる可能性もあります。
大人は重症化しやすく、お子さんの場合は薬が効きにくい耐性菌の問題もあるため、適切な診断が欠かせません。つらい症状から早く回復するためにも、不安な点があれば、まずはかかりつけの小児科や内科に相談してください。
参考文献
- 厚生労働省:「マイコプラズマ肺炎」
Ruben CA de Groot, Bianca MM Streng, Louis J Bont, Patrick M Meyer Sauteur, Annemarie MC van Rossum. Resurgence of Mycoplasma pneumoniae infections in children: emerging challenges and opportunities. Current Opinion in Infectious Diseases,2025,38,5,p.468-476.