「風邪の熱は下がったのに、咳だけが3〜4週間もしつこく続いている…。」そんな症状にお悩みではありませんか?その長引く咳は「マイコプラズマ肺炎」かもしれません。
この記事では、マイコプラズマ肺炎の主要な4つの検査方法について、それぞれの特徴やメリット、注意点を解説します。ご自身の状況と照らし合わせ、検査への不安を解消しましょう。
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という病原体によって引き起こされる呼吸器の感染症です。
この病原体は細胞の壁(細胞壁)を持たない性質のため、一般的な抗菌薬(ペニシリン系など)が効きにくい特性があります。
マイコプラズマ肺炎の特徴
マイコプラズマ肺炎の大きな特徴は、しつこく続く乾いた咳です。
痰の絡まない「コンコン」という咳が、一度出始めると止まりにくくなります。特に夜間や早朝にひどくなる傾向があります。
発熱やだるさといった症状が治まった後も、咳だけが3〜4週間も続くことが珍しくありません。
主な感染経路
咳やくしゃみのしぶきを吸い込むことによる飛沫感染です。
感染してから症状が出るまでの潜伏期間が2〜3週間と長いため、気づかないうちに学校や家庭内など、人が集まる場所で感染が広まってしまうことがあります。(※1)
マイコプラズマ肺炎の主な検査方法
ここでは、診断のために行われる主な4つの検査方法について、それぞれ詳しく解説します。
迅速抗原検査
迅速抗原検査は、インフルエンザの検査のように、その場で感染の有無を短時間で調べられる手軽な検査です。のどの奥を綿棒でこすって検体を採取し、専用のキットを使ってマイコプラズマが持つ特有のタンパク質(抗原)を探します。
迅速抗原検査は約15分で結果がわかるため、素早い診断と治療開始のきっかけになります。感染していても体内の菌の量が少ない発症初期などでは、結果が正しく出ないこと(偽陰性)もあります。迅速抗原検査だけで診断を確定するのではなく、症状の経過や他の検査結果と合わせて判断することが大切です。
迅速抗原検査では、のどの奥を綿棒でこすって検体を採取します。少し「オエッ」とする不快感があるかもしれませんが、数秒で終わりますのでリラックスして受けてください。
健康保険が適用され自己負担が3割の場合、費用の目安はおよそ900〜1,100円程度です。
核酸増幅検査(PCR/LAMP法など)
核酸増幅検査は、マイコプラズマの遺伝子(DNA)を培養することでごくわずかな菌でも見つけ出すことができる精度の高い検査です。検査方法は迅速抗原検査と同じように、のどの奥を綿棒でこすって検体を採取します。
核酸増幅検査は、迅速抗原検査で陰性だったものの、症状からマイコプラズマ肺炎が強く疑われる場合などに行います。
検査の精度は高いですが、遺伝子を増やすという工程が必要なため、結果が出るまでに少し時間がかかります。院内に専用の機器があれば数時間で結果が判明しますが、外部の検査機関に依頼する場合は数日要することもあります。
迅速抗原検査同様、検査に伴い不快感が出ることがあります。
医療機関や検査方式によって費用は多少異なりますが、保険適用で3割負担の場合の自己負担額はおよそ2,000〜3,000円程度が目安です。
血液検査
血液検査では、採血によって体の中で何が起きているのかを多角的に調べることができます。白血球の数やCRPという、炎症の度合いを示す数値から全身の炎症反応を確認します。
細菌による肺炎では、白血球やCRPが高くなりますが、マイコプラズマ肺炎の場合は、白血球数は正常もしくは増加、CRPも中等度程度の陽性がみられるのが特徴です。(※2)
私たちの体はマイコプラズマに感染すると体を守るために抗体を作ります。体内の抗体の量を調べることで、感染の有無を確認できるのです。
感染してすぐに抗体が増えるわけではないため、感染初期の1回の採血だけでは正確な診断が難しい場合があります。
確実な診断のためには、感染初期と、2〜4週間後の回復期の2回採血を行い、抗体の量が4倍以上に増えているかを確認する方法(ペア血清診断)が推奨されます。
保険適用で3割負担の場合、費用の目安はおよそ1,000〜2,000円程度です。
胸部レントゲン(X線)検査
胸部レントゲン(X線)検査は、肺の中で炎症が起きているかどうか、炎症がどのくらい広がっているかを目で見て確認するための重要な検査です。
マイコプラズマ肺炎では、しつこい咳などの症状が強くても、レントゲン写真に写る影は薄い「すりガラス状」に見えることがあります。
肺の中心部や中間のあたりに両側性(左右両方)の気管支血管周囲浸潤が見られる場合は、マイコプラズマ感染の可能性があります。
放射線による体への影響を心配される方もいらっしゃいますが、胸部レントゲン1回あたりの放射線量はごくわずかで、健康への影響はほとんどありません。
健康保険が適用され3割負担の場合の費用は、およそ1,000〜2,000円程度が目安とされています。
マイコプラズマ肺炎の受診目安や治療について
ここでは、受診の目安となる症状や、医療機関で行われる治療法について解説します。適切なタイミングでの受診と治療が、症状の悪化や合併症を防ぐためには大切です。
受診すべき症状
マイコプラズマ肺炎は、初期症状が風邪とよく似ているため、ご自身で見分けるのは難しいかもしれません。以下のような特徴的なサインが見られる場合は、早めに医療機関を受診することを強くお勧めします。
- 痰の絡まない「コンコン」という乾いた咳が1週間以上続いている
- 夜間や早朝に咳がひどくなり、眠れないことがある
- 37.5℃前後の熱が上がったり下がったりしながら3〜4日以上続いている
- 息を吸い込んだ時や咳をした時に、胸のあたりに痛みを感じる
- 少し動いただけでも息が切れる、または息苦しさを感じる
- 頭痛や体のだるさ、倦怠感がなかなか抜けない
- 学校や職場など、身近な環境でマイコプラズマ肺炎と診断された人がいる
お子さんの場合、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)が聞こえたり、ぐったりして食欲がなかったりする場合は受診しましょう。
受診すべき科
どの診療科を受診するかは、症状が出ている方の年齢に合わせて選ぶのが一般的です。
- 子どもの場合
お子さんの場合は、まずかかりつけの小児科を受診しましょう。子どもの呼吸器疾患の診療経験が豊富で、年齢や体重に合わせた適切な診断と治療を行ってくれます。
- 大人の場合
大人の場合は、まずは近くの内科クリニックでご相談ください。咳の症状が特にひどい場合や治療をしてもなかなか改善しない場合は、呼吸器の病気を専門とする呼吸器内科の受診が望ましいです。喘息などの持病がある方も、呼吸器内科で専門的な治療を受けることをお勧めします。
- 受診すべきか迷った時
どの科を受診すべきか判断に迷った場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、お近くの内科や小児科に電話で問い合わせてみるのも良いでしょう。受診の際は必ずマスクを着用し、事前に医療機関へ『長引く咳があり、マイコプラズマ肺炎が心配』と電話で伝えてから受診すると、院内感染対策の観点でもスムーズです。
マイコプラズマ肺炎の治療法
マイコプラズマ肺炎の治療は、主に薬物療法と回復を後押しするための対症療法および安静が中心となります。
薬物療法
薬物療法としては「マクロライド系」と呼ばれる種類の抗菌薬が主に使われます。近年、マクロライド系の薬が効きにくい耐性菌(MRMP)が増加していることが問題になっています。(※3)
薬を2〜3日服用しても熱が下がらないなど、症状が改善しない場合は、医師の判断でステロイドを投与する場合、またテトラサイクリン系やニューキノロン系といった別の種類の抗菌薬に変更することがあります。(※3)
テトラサイクリン系の薬は、8歳未満のお子さんでは歯が黄色く着色する副作用の可能性があるため、原則として使用を避けます。(※4)
一方で医師がメリットが上回ると判断した特別なケースでのみ慎重に処方されることがあります。気になる場合は医師や薬剤師にご相談ください。
対処療法
マイコプラズマ肺炎の治療法には、つらい症状を和らげ、体が病原体と戦う力をサポートする対処療法も重要です。激しい咳を鎮める薬(鎮咳薬)、つらい熱を下げる薬(解熱鎮痛薬)、痰を出しやすくする薬(去痰薬)などが処方されます。
体力を消耗するため、無理せず自宅でゆっくり体を休めてください。発熱や頻繁な咳によって、体内の水分は思った以上に失われるため、こまめに水分を摂るように心がけましょう。
まとめ
風邪薬を飲んでもなかなか治らないしつこい咳は、マイコプラズマ肺炎のサインかもしれません。マイコプラズマ肺炎は迅速抗原検査やレントゲン、血液検査など症状や状況に合わせて適切な方法を組み合わせて総合的に診断します。
症状に心当たりがある方は、自己判断で放置するのではなく、早めにお近くの小児科や内科・呼吸器内科へご相談ください。早期の適切な対応が、つらい症状からの早い回復につながります。
参考文献
- 厚生労働省:「マイコプラズマ肺炎」
- 国立健康危機管理研究機構:「マイコプラズマ肺炎(詳細版)」
- Ruben CA de Groot, Bianca MM Streng, Louis J Bont, Patrick M Meyer Sauteur, Annemarie MC van Rossum.Resurgence of Mycoplasma pneumoniae infections in children: emerging challenges and opportunities.Curr Opin Infect Dis,2025,38,5,p.468-476.
日本マイコプラズマ学会:「肺炎マイコプラズマ肺炎 に対する治療指針」