妊娠中に体調を崩すと、「赤ちゃんに影響はないかな…」と心配になりますよね。
特にインフルエンザは、高熱が出ることもあり、不安を感じやすい病気です。
この記事では、妊娠中にインフルエンザにかかった場合の赤ちゃんへの影響・受診のタイミング・家庭での注意点をわかりやすく解説します。
目次
妊娠中のインフルエンザ、何がいちばん危険?
ここでは、妊娠中にインフルエンザにかかったときの、胎児への影響や妊婦の重症化リスクについて解説します。
妊娠初期・中期・後期で違う?赤ちゃんへの影響
インフルエンザウイルス自体が胎盤を通過し、赤ちゃんに直接的な障がいを引き起こす可能性は、低いと考えられています。(※1)注意すべきなのは、ウイルスそのものよりも、感染に伴うお母さんの高熱、脱水、呼吸状態の悪化(重症化)などによる間接的な影響で、早産などのリスクが高まる可能性が報告されています
妊娠週数別の胎児への影響は、以下のようなことが考えられます。
| 妊娠週数 | 胎児の状態 | リスク(※2) |
|---|---|---|
| 初期(0~8週) | 心臓や脳、肺など内臓の基礎を生成する | 自然死産、流産 |
| 中期(8~25週) | 胎動が始まり、腎臓や骨格、筋肉が発達する | ・認知発達に影響を与える ・低出生体重児 |
| 後期(25週~) | 感覚機能が発達、体の機能が成熟する | 早産、低体重児出産 |
妊娠中のどの時期であっても、「高熱を長引かせないこと」と「お母さん自身の症状を悪化させないこと」が、赤ちゃんを健やかに育むために最も重要です。
妊婦さんは重症化しやすい?注意したいサイン

妊娠中は免疫機能が変化しているため、インフルエンザが重症化しやすい状態にあり、胎児への影響も懸念されます。
妊婦が肺炎により呼吸困難や呼吸不全になると、母体が低酸素状態になります。胎盤から送られる胎児への酸素供給量も減ってしまい、赤ちゃんの健康状態に影響を及ぼす可能性があり危険です。
高熱や食欲不振から脱水症状を引き起こすと血流の流れも悪くなり、子宮の収縮を誘発する可能性もあります。インフルエンザの罹患により、早産や流産のリスクがあることも示唆されています。(※2)妊娠週数が進むにつれて、お腹が大きくなり心肺機能への負担が増すため、重症化のリスクはさらに高まる傾向があるため注意が必要です。
「ただの風邪」と自己判断せず、インフルエンザが疑われる症状があれば、すぐに医療機関へ相談することが、お母さんと赤ちゃんの健康を守るために、非常に重要な判断となります。
「様子見」はNG?受診のタイミングと治療の考え方
インフルエンザの治療は、発症から48時間以内に始めることが重症化を防ぐためには重要です。妊婦さんは重症化しやすいことが知られているため、「少し様子を見よう」と我慢せず、必ず事前に電話連絡をした上で、迅速に医療機関へ相談しましょう。
ここでは、妊婦が受診すべき診療科や治療薬、症状を和らげる対処法を解説します。
妊婦が受診すべき科
妊婦の方がインフルエンザを疑う症状がある場合は、かかりつけの産婦人科の指示に従い、案内された医療機関を受診しましょう。
産婦人科には他の妊婦さんや新生児がいるため、院内感染を防ぐ目的で感染対策が整った内科を案内されることが一般的です。
受診時には妊娠中であること、妊娠週数、持病(喘息やアレルギーなど)を伝えると診察がスムーズに進みます。
内科医と産婦人科医が連携し、妊婦さんと赤ちゃんにとって安全な治療が選ばれます。
妊婦さんでも使えるインフルエンザ薬はある?
妊娠中に薬を飲むことに抵抗を感じる方は少なくありませんが、インフルエンザの場合、高熱や重い症状を放置することのほうが危険です。
妊婦が使えるインフルエンザの治療薬は、以下の3つです。
| 薬の名前 | 種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| タミフル(オセルタミビル) | 飲み薬 | ・1日2回、5日間服用 ・妊婦さんへの使用が多い |
| リレンザ(ザナミビル) | 吸入薬 | ・1日2回、5日間、専用の器具で吸入 ・気道に直接作用する薬剤 ・つわりなどで内服がつらいときに有効 |
| イナビル(ラニナミビル) | 吸入薬 | ・1回の吸入で治療が完了する ・つわりなどで内服がつらいときに有効 |
新しい抗インフルエンザ薬であるゾフルーザは、一般に広く使われている治療薬ですが、妊娠中は使用経験が少ないため慎重に判断されます。
どの薬が最適かは、症状や妊娠週数、基礎疾患などを総合的に考慮して医師が判断します。
妊娠中は体の水分量や代謝機能が変化しており、薬の吸収や排出のされ方(薬物動態)が普段とは異なる可能性があるため注意が必要です。
薬だけじゃない!自宅でできる症状の和らげ方
抗インフルエンザ薬での治療と並行して、つらい症状を和らげるための工夫を取り入れ、回復を早めましょう。
脱水は体力を奪うだけでなく、血液の巡りを悪くし子宮の収縮を引き起こす可能性もあるため、こまめに水分補給して下さい。電解質も補える経口補水液や麦茶、スポーツドリンク、野菜スープなどがおすすめです。体をゆっくり休め、免疫機能がウイルスと戦えるように備えましょう。
38度以上の高熱が続くと母体の体力を大きく消耗し、お腹の赤ちゃんへの負担も心配です。氷枕や冷却シートで首の付け根、脇の下、足の付け根などを冷やし、体温を下げるように工夫しましょう。
激しい咳が続くと腹圧がかかり、お腹の張りを感じることがあります。空気が乾燥すると、のどの粘膜が刺激されて咳が出やすくなるため、加湿器などを使って室内の湿度を50~60%に保って下さい。のどの乾燥を防ぐためにマスクを着用したり、枕を高くして寝たりするのもおすすめです。
家族がインフルエンザに…妊婦さんを守る家庭内対策
ここでは、家族が感染した場合、お母さんとお腹の赤ちゃんを守るための具体的な対策と予防法について解説します。
今日からできる!家庭内感染を防ぐ7つのポイント
ご家族がインフルエンザと診断されたら、家庭内を「感染エリア」と「非感染エリア」に分ける意識を持つことが、感染拡大を防ぐ第一歩です。
妊婦さんはできるだけ感染者との接触を減らし、ウイルスにさらされる機会をできる限り避けましょう。
以下の内容を参考に、家庭でできる対策を徹底してください。
- 感染した家族と妊婦の寝室や過ごす部屋を分ける(隔離)
- 家の中でもマスクを着用する
- 1~2時間に一度、5分程度は窓を開けて空気の入れ替えをする
- 石けんを使い、こまめに手洗いを行う
- タオル、食器、歯ブラシなどの共有を避ける
- 加湿器などを使い、部屋の湿度を50~60%に保つ
- ドアノブ、照明スイッチ、リモコンなど皆が触るものはこまめに消毒する
状況によっては、感染リスクや基礎疾患などを踏まえ、医師が必要と判断した場合に限り、抗インフルエンザ薬を予防的に使用することがあります。
実施の可否は個々の状況によって異なるため、自己判断では行わず、医師の判断に委ねることが重要です。
妊娠中でもワクチンは必要?赤ちゃんを守る理由
インフルエンザが本格的に流行する前にワクチンを接種することが大切です。妊娠中のワクチン接種は、お母さん自身だけでなく、お腹の赤ちゃんを守ることにもつながります。
ワクチンを接種することで、妊娠中の免疫機能が低下している妊婦さんが、重症化するのを防げます。お母さんが予防接種を受けることで、体内で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行されます。妊娠中に予防接種を受けている場合、赤ちゃんは抗体を持った状態で生まれてくるので、出生して間もない体でも、インフルエンザから身を守ることができます。
生後6か月未満の赤ちゃんは、インフルエンザワクチンが摂取できないため、生まれてくる前に抗体を体内に持っていることが大切です。
日本で使われているインフルエンザワクチンは、ウイルスの感染力をなくした「不活化ワクチン」です。国内外の調査により、妊婦さんとお腹の赤ちゃんへの安全性が確認されています。
ワクチンについて不安や疑問があれば、一人で抱え込まず、遠慮なくかかりつけの医師や助産師に相談しましょう。
妊婦のインフルエンザでやってはいけないこと
妊娠中にインフルエンザが疑われるとき、お腹の赤ちゃんを守るために、避けていただきたい行動と理由を解説します。
- 自己判断で様子を見る・受診を遅らせる
- 連絡せずに医療機関へ直接向かう
- 市販薬を自己判断で飲む
- 無理をして仕事や家事をする
インフルエンザ治療薬は、発症後48時間以内の服用が重症化を防ぐために重要です。受診が遅れると薬の効果が十分に得られず、肺炎などの合併症リスクが高まります。調子が悪いと感じたらかかりつけの産婦人科に相談しましょう。
市販の風邪薬や解熱剤には、妊娠中に避けるべき成分が含まれていることがあります。イブプロフェンなどの一部の解熱鎮痛成分は、赤ちゃんの心臓や血管に影響を与える可能性があるため、妊娠後期は使用できません。薬が必要な場合は、必ず医師が処方した、安全性が確認されたものを使用してください。
まとめ
妊娠中は免疫機能が変化するため、インフルエンザは重症化しやすく、高熱が赤ちゃんに影響を与える可能性もあります。大切なのは「ただの風邪」と自己判断せず、早めに医療機関につながることです。
「インフルエンザかも?」と感じたら、かかりつけの産婦人科でのこれまでの案内や指示を参考にしながら、適切な医療機関を受診しましょう。発症後48時間以内に治療を開始することで、重症化を防げる可能性が高まります。不安なときは一人で抱え込まず、正しい知識を味方にして、安心してマタニティライフを過ごしてください。
【インフルエンザに関する関連記事はこちら】
・インフルエンザとは?|予防接種や日常生活での感染対策まとめ
・【医師監修】インフルエンザはこう防ぐ!専門医が語るワクチン接種と日常生活の工夫
参考文献
- 厚生労働省:「令和6年度インフルエンザQ&A」
Xuan Wang, Haiwei Ou, Ying Wu, Zengli Xing.Risk of preterm birth in maternal influenza or SARS-CoV-2 infection: a systematic review and meta-analysis.Translational Pediatrics,2023,12,4,p.631-644.
