最終医学的確認日:2026年7月
白内障手術とは、濁った水晶体の中身を取り除き、人工の眼内レンズに置き換える手術です。この記事では、手術が必要になるタイミング、術前検査から手術当日・術後までの流れ、術後の生活上の注意点、費用の目安までを、白内障手術に携わる眼科専門医が解説します。
この記事でわかること
- 白内障手術を検討すべきタイミングと受診の目安
- 術前検査から手術当日、術後の通院までの流れ
- 眼内レンズ(単焦点・多焦点)の違いと選び方
- 手術のリスク・合併症と術後の生活上の注意点
- 白内障手術にかかる費用のおおよその目安
※白内障という病気そのものの原因や症状について詳しく知りたい方は、【白内障(疾患解説)】の記事をご覧ください。
白内障手術が必要になるタイミング
白内障手術を検討するタイミングは、視力の数値よりも「日常生活で不便を感じているかどうか」を重視します。
白内障は進行がゆるやかな病気であり、診断されたらすぐに手術が必要になるわけではありません。
白内障手術のきっかけとなる症状
外来で手術をご希望になる患者さんのきっかけとして多いのは、次のようにさまざまな症状があります。
- 運転免許の更新で視力が足りないと言われた
- 夜間、対向車のライトがまぶしくて運転がこわい
- 新聞や値札の文字がかすんで読みにくくなった
- 眼鏡を作り直しても見え方が改善しない

手術のタイミングは人により異なる
いつ手術をするかは、人それぞれです。視力の低下だけで決める治療ではありません。年齢、運転の有無、仕事の内容、趣味・スポーツその他のライフスタイルなどにより、白内障の影響は異なります。
例えば、視力検査で1.0が出ていても、まぶしさやかすみで生活に支障があれば手術を検討する場合があります。特に、運転される方は、たとえ視力が良くても、夜間に対向車のライトがまぶしかったり、雨の日やトンネルなど暗め(照度が足りない)環境では、視力が低下したりすることが多いため、運転が危険になっている可能性があります。
逆に視力が0.7程度でも、運転をしない高齢者で、本人が生活で不便を感じていなければ経過観察でよい場合もあります。
実際の診療でも、具体的に仕事や生活の状況や、何にお困りかをまず伺ったうえで、手術の時期を患者さんと一緒に決めることが大切です。
お困りでなくても手術をお勧めする場合もある
白内障が進行して水晶体が極端に硬くなると、手術に要する超音波のエネルギーが増え、角膜など周囲の組織への負担が大きくなる場合があります。このため、ある程度水晶体が硬くなっている方へは、手術をお勧めする場合があります。
また、閉塞隅角症の方は、白内障が軽度でも白内障手術をお勧めすることがあります。閉塞隅角症とは、目の中の水分である房水の排出口(隅角と言います)が狭くなり、急性緑内障発作や慢性閉塞隅角緑内障になるリスクがある状態をいいます。原因は、加齢とともに水晶体が厚くなることであるため、白内障手術で薄い眼内レンズに置き換えると、隅角は大きく開大し、こうしたリスクを解除できます。
※閉塞隅角症について詳しく知りたい方は、【Myopia Square「閉塞隅角緑内障:目の良い女性は気を付けて!」】の記事をご覧ください。
さらには、緑内障や網膜の病気の治療と管理に白内障が支障になる場合は、白内障手術をお勧めする場合があります。
白内障手術と言われたときの不安とどう向き合うか
医師に手術が必要ですと告げられると、「目にメスを入れるなんて怖い」という漠然とした不安から、生活に支障が出ていても手術を先延ばしにされる方は少なくありません。この不安は、人として当然のことだと思います。
しかし、漠然と恐れるよりは、医師の説明や手術の映像資料を参考にして理解を深めていくことが大切だと思います。そうすることで、手術時間や痛みについて知り、さらに、治療によって見え方の改善が期待できることがわかってくると思います。そして、心から納得できたら、あとは主治医を信頼して前へ進みましょう。
白内障手術の流れ
白内障手術は、点眼麻酔のもとで濁った水晶体の中身を超音波で砕いて取り除き(超音波乳化吸引術)、残った袋(水晶体嚢といいます)の中に、眼内レンズを挿入する(眼内レンズ挿入術)という2つの工程からなる手術です。
手術そのものの所要時間は片眼10〜20分程度が一般的です。
ここでは、術前検査から術後の通院までの流れを順に解説します。
術前検査
手術が決まると、まず眼内レンズの度数を決めるための検査などを行います。主な検査は次のとおりです。
- 眼軸長測定を行い、目の長さを測定して眼内レンズの度数計算に使用します。
- 角膜曲率半径測定を行い、角膜のカーブを測定してレンズの度数計算や乱視矯正に役立てます。
- 角膜内皮細胞の検査を行い、角膜の細胞数が手術の刺激に耐えられる状態かを確認します。
- 眼底検査を行い、網膜や視神経に他の病気が隠れていないかを確認します。
- 血液検査などを実施し、手術を安全に行うための全身状態を確認します。
カウンセリング
術前検査の結果をもとに、手術の適応、その人固有の手術のリスク(ある場合のみ)、眼内レンズの度数決定と乱視矯正の有無など、一人一人の目の状態を把握して、その説明を行うとともに、手術プランをつくります。
ここで、患者さんにとってもっとも重要な選択があります。眼内レンズの決定です。以下のような選択があります。
- 単焦点眼内レンズか?多焦点眼内レンズか?
- 単焦点なら、ピントが合う距離を、どこにするか?手元・中間(1メートル前後)・遠くのなかから選択します。
- 多焦点なら、どのタイプの多焦点眼内レンズにするか?
後述するように、眼内レンズの選択は、術後の見え方の質と便利さを左右する重要なステップであり、術後の満足度を左右する大きな要素となります。
1. ライフスタイルの確認:仕事や読書、趣味など、普段の生活で「手元(スマホ・本)」と「遠く(車の運転・スポーツ)」のどちらをより重視したいかを整理します。
2. 眼鏡の使用許容度:術後も「多少の眼鏡使用は許容できるか」、あるいは「できるだけ眼鏡なしの生活を優先したいか」を検討します。多焦点レンズを検討する場合は、この希望の強さが重要になります。
3. 夜間運転の有無:夜間に車を運転する機会が多い方は、多焦点レンズ特有の「ハロー・グレア(光のにじみ・まぶしさ)」の影響を考慮する必要があります。夜間の見え方を優先するなら、単焦点レンズやハロー・グレアの少ないレンズが適している場合があります。
4. 費用の検討:保険適用の「単焦点レンズ」か、自己負担が発生する「選定療養」や「自由診療」の多焦点レンズか、予算を考慮します。費用と見え方のバランスは人それぞれですので、医師と相談しながら決めることが大切です。
車の運転の有無と頻度、仕事の内容、スポーツや趣味の内容などを考慮して、合っている眼内レンズを選びます。高齢の方は、行動の安全性に配慮が必要ですので、住環境も把握します。
ご自身の生活のなかで何を優先したいかという患者さんご自身の気持ちも大切です。カウンセリングのなかで、ご自分の生活と希望を医師に伝え、何が自分に合っているかを決めていきます。
手術当日の流れ
手術当日は、瞳孔を開く点眼(散瞳薬)と点眼麻酔をしてから手術室に入ります。麻酔は点眼麻酔が基本で、注射の麻酔を追加する場合もあります。手術は次の手順で進みます。
- ①黒目のふち近くを2〜3mm程度切開する
- ②水晶体の前面の膜(前嚢)を円形に切り取る
- ③超音波で水晶体の中身を砕いて吸引する(超音波乳化吸引術)
- ④残した水晶体の袋(嚢)の中に、折りたたんだ眼内レンズを挿入する
日帰りの場合、来院から帰宅まで含めるとおおむね半日程度をみておくとよいでしょう。
気になる痛みは?
水晶体自体には神経がないため、砕く操作その人自体で強い痛みを感じることは通常ありません。点眼麻酔を行うことで、手術中の痛みは大幅に軽減されます。
ただし、術中は器具でまぶたを開けておくのですが、これでまぶたに痛みを感じることが稀にあります。術者に伝えましょう。
また、安全に手術を行うために、目の中に圧をかける必要がありますが、この圧により水晶体が後ろへ押されて痛みを感じる方がいます。特に、近視が強い方は注意が必要です。痛みが強いときは、軽減する処置をします。
日帰りと入院、どちら?
現在は日帰り手術が主流です。最近の厚生労働省NDBオープンデータ では、日帰り手術は、入院手術の2倍強です。
次のような場合は入院を提案することがあります。
- お一人暮らしで術後の点眼や通院に不安がある
- 全身の病気(重い糖尿病や心疾患など)の管理が必要
- ご自宅が遠方で、術翌日の受診が難しい
日帰りか入院かは目の状態だけでなく生活環境も含めて判断しますので、不安な点は事前に医師にご相談ください。
術後の通院スケジュール
術後は、多くの場合、翌日・数日後・1〜2週間後・1か月後といったペースで経過を確認します。見え方は術翌日からはっきりする方もいれば、角膜のむくみなどで安定までに1〜2週間かかる方もいます(個人差があります)。眼鏡を新しく作る場合は、見え方が安定する術後1か月前後を目安にすることが一般的です。
眼内レンズの種類と選び方
眼内レンズは大きく「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」に分けられます。それぞれの特徴は次のとおりです。
| 項目 | 単焦点眼内レンズ | 多焦点眼内レンズ |
|---|---|---|
| ピントが合う距離 | 1か所(遠く・中間・手元のいずれかを選択) | 2か所以上(遠く+手元 など) |
| 眼鏡 | 合わせた距離以外では眼鏡が必要 | 眼鏡を使う場面を減らせることが期待できる |
| 見え方の質 | コントラストが良好 | 暗い場所でコントラストが低下する傾向がある暗所で、光がにじむ・まぶしく感じる場合がある(ハロー・グレア) |
| 費用 | 健康保険適用 | 選定療養または自由診療(レンズ費用等が自己負担) |

単焦点レンズは「どの距離に合わせるか」が鍵
単焦点眼内レンズは、ピントが合っている距離が、一番はっきり見えるレンズです。人は夕方など暗めの場所では、視力が落ちますが、比較的落ち方がゆるやかです。その代わり、ピントが合っていない距離は、ぼやけますので、メガネやコンタクトを活用することになります。
ピントの距離は、生活の中で最も長く見ている距離に合わせるのが基本です。運転が多い方は遠く、読書や裁縫が中心の方は手元、というように選びます。
また、若いころから、近視か遠視か?どの程度の近視か?眼鏡をかけ慣れているか?など脳に記憶されたものを見る習慣も参考にします。
多焦点レンズは適応の見極めが大切
多焦点レンズは、遠くだけではなく、中間距離や近くまでピントを広げる構造を持っています。このため、眼鏡への依存を大幅に減らせることが期待できます。メガネをかけ続けたくない方、若いころからメガネをかけてこなかった方に向いています。
一方、夜間のハロー・グレアや暗めのところでのコントラストの低下といった特有の副症状があり、職業や趣味によっては向いていない場合もあります。
また、多焦点眼内レンズは、レンズの種類が豊富で、レンズによりピントが合う距離や見え方、そして副症状に違いがあります。どのタイプの多焦点眼内レンズを選ぶかも重要な選択になります。
※費用の仕組み(選定療養・自由診療)は【白内障 手術 費用】の記事で詳しく解説しています。
手術のリスク・合併症と安全性
白内障手術は、最近では国内で年間150万件以上(厚生労働省第NDBオープンデータ より)広く行われている手術ですが、どんな手術にもリスクはあります。効果だけでなく、起こりうる合併症も理解して対処可能な状態で手術に臨むことが大切です。
代表的な術中合併症
- 後嚢破損:水晶体を支えている袋(水晶体嚢)の後ろの部分を後嚢といいます。術中に、後嚢が破れるのがいちばん多い術中合併症です。手術時間が延びますが、きちんと処理すれば、眼内レンズを固定して視力を回復できます。
- 核落下:後嚢破損の際に、水晶体の核が目の奥(硝子体腔)に落ちることをいいます。核が大きい場合は、目の奥の手術である硝子体手術で取り除く必要があります。
- チン小帯断裂:水晶体の周囲を取り巻く何十本もの細い線維をチン小帯といいます。これが切れていたり、弱いと、手術中に断裂部位が広がり、水晶体嚢に眼内レンズを固定することが難しくなります。別の方法で眼内レンズを固定します。
代表的な術後合併症
- 術後眼内炎:主に細菌感染により眼内に強い炎症が起こる合併症です。予防対策が徹底されているため、頻度はまれですが、起きると視力に重大な影響を及ぼしうる合併症です。術前後の点眼と術後の生活制限は、術後眼内炎を防ぐことが主な目的です。
- 後発白内障:術後数か月〜数年して、後嚢が濁り、再びかすむ状態です。比較的起こりやすい術後合併症ですが、外来でのレーザー治療(YAGレーザー)で改善が期待できます。
- その他:目によっては、眼内レンズの位置ずれ、網膜剥離、角膜のむくみなどが起こることがあります。
「急いで受診すべきサイン」を知っておく
術後は、眼内炎の早期発見・早期治療が重要です。
術後に、急な視力低下、目の強い痛み、充血の悪化が現れた場合は、眼内炎などの可能性があるため、次の予約を待たずにすぐ手術を受けた施設へ連絡してください。夜間や休日でクリニックが閉まっているときは、救急に連絡をして受診してください。
特に術後1週間以内は感染リスクに注意が必要な時期であり、私自身も患者さんには「迷ったら電話してください」とお伝えしています。適切な時期に対処すれば回復が期待できる合併症も多く、早期受診が何より重要です。なお、手術の経過・合併症の起こりやすさにはいずれも個人差があります。
緑内障や網膜の病気を併発している場合
緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などを併発している方の白内障手術では、術前・術後の管理に特有の注意点があります。
例えば、緑内障の方では術後の一時的な眼圧上昇に注意し、緑内障点眼の継続や眼圧の推移をより慎重に管理します。
また、これらの病気があると、白内障手術後の視力の回復は、網膜や視神経の状態に左右されます。「手術でどこまで見え方の改善が見込めるか」を術前に共有しておくことが、術後の満足度のためにも大切だと考えています。
術後の注意点・生活上のケア
術後の生活で大切なのは、①感染を防ぐ視点と②傷口や水晶体嚢に強い物理的力を与えない視点の2点です。
①感染を防ぐ視点
術後に手術による傷口から細菌感染を起こすことを防ぐために、点眼とともに下記にお示しするような生活上の注意点があります。傷口に細菌を暴露しないための生活上の制限になります。
②傷口や水晶体嚢に強い物理的力を与えない視点
手術後に時間がたつとともに、傷口は治癒し物理的力に強くなっていきます。手術直後は、水晶体嚢がゆるいため、目が振動すると眼内レンズが動きやすい状態ですが、時間がたつとともに水晶体嚢は締まり眼内レンズは固定されます。つまり、こうした物理的力や目の振動に弱い時期があるために、激しい運動を控えるなどの制限があります。
日常生活の再開時期の一般的な目安を表にまとめました(施設や目の状態により異なるため、必ず主治医の指示に従ってください)。
| 項目 | 再開時期の目安 |
|---|---|
| 首から下の入浴・シャワー | 翌日から可のことが多い |
| 洗顔・洗髪 | 術後約1週間は目に水が入らないよう避ける(美容院での仰向け洗髪は早めに可の場合あり) |
| 化粧 | 顔の化粧は数日後から、アイメイクは約1週間後から |
| デスクワーク | 数日後から徐々に |
| 車の運転 | 見え方が安定し、必要な視力を満たしてから(主治医に確認) |
| 軽い運動・散歩 | 数日後から |
| 水泳・激しい運動 | 約2〜4週間は避ける |
点眼と保護具について
術後は感染予防と炎症を抑えるための3種類の点眼を行うことが多いです。期間は、点眼の種類により異なり、通常2週間〜3か月程度続けます。自己判断で中断しないことが大切です。
また、就寝中に無意識に目をこすってしまうことを防ぐため、術後しばらくは保護用の眼帯やカバーの使用をおすすめしています。
白内障手術の費用の目安
白内障手術(単焦点眼内レンズ・日帰り・片眼)の窓口負担の目安は、1割負担の方で約15,000円、3割負担の方で約45,000円です(施設や検査内容により前後します)。いずれの負担割合でも高額療養費制度の対象となり、同一月の自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合は、超過分の払い戻しを受けられます。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いが上限額までに抑えられます。
厚生労働省承認の多焦点眼内レンズを希望される場合は、選定療養費(レンズの差額分)などの自己負担が別途発生します。未承認の多焦点眼内レンズやレーザー併用白内障手術は、自由診療になり、全額自己負担になります。
なお、実際の費用は受診を検討している医療機関や、選択するレンズの種類、検査内容によって異なります。詳細については、受診先の医療機関へ事前にご確認ください。
※詳しい費用は【白内障 手術 費用】の記事をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
白内障手術は、濁った水晶体を眼内レンズに置き換えることで見え方の改善が期待できる確立された手術です。手術のタイミングは視力の数値だけでなく「生活で困っているか」を軸に考え、眼内レンズは仕事および生活スタイルに合わせて主治医とじっくり相談することが大切です。合併症はまれですが起こりうるため、術後の異変時はすぐに受診してください。見えにくさを感じている方は、まずはお近くの眼科で白内障の有無と程度を調べてもらいましょう。
