最終医学的確認日:2026年7月
ご自身のわきがが、お子さんに受け継がれないかと悩んでいませんか。わきがは遺伝性の高い体質で、親が体質を持つ場合、子どもに受け継がれる可能性があるといわれています。
この記事では、わきがが遺伝する仕組みや確率、生活習慣などの遺伝以外の原因を詳しく解説します。ご自身でできる体質のセルフチェックリストや、症状を和らげるための具体的な対策もあわせて紹介するので、参考にしてください。
この記事でわかること
- わきがは顕性遺伝で、片親なら約50%・両親なら約75〜80%の確率で子どもに受け継がれる可能性があること
- 食生活・性ホルモン・ストレス・衛生習慣など、遺伝以外ににおいを強める要因があること
- 耳垢の湿り・黄ばみなど、自宅でできる体質のセルフチェック方法
- ボトックス注射・ミラドライ・剪除法など、医療機関での対策
わきが体質は遺伝する?
わきがは遺伝性が高く、親から子へ受け継がれることがある体質です。(※1)
わきがのにおいの元となる汗は、「アポクリン汗腺」という汗腺から分泌されます。アポクリン汗腺からの分泌物が皮膚の常在菌に分解されることで、においが発生するという仕組みです。
アポクリン汗腺の数や大きさ、活動のしやすさといった性質が遺伝によって決まるため、わきが体質も遺伝すると考えられています。ご両親のどちらか、あるいは両方がわきが体質の場合、お子さんにも受け継がれやすい傾向があります。
ただし、わきがはあくまで体質であり、人から人にうつるものではありません。
わきがの原因・セルフチェック方法・治療法の全体像は、「わきがとは?主な原因・セルフチェック方法と医療機関での治療法」で詳しく解説しています。
ここでは、以下の内容について解説します。
- 遺伝の仕組み
- 親から子どもへの遺伝確率
- 隔世遺伝の可能性
遺伝の仕組み
わきが体質は、顕性遺伝(優性遺伝) という形で親から子へと伝わります。(※1)
私たちの体質は、両親から受け継いだ遺伝子によって決まります。そのなかで、わきが体質と深く関わっているのが「ABCC11」という特定の遺伝子です。ABCC11のタイプによって、アポクリン汗腺の活動性や、耳垢が湿っているかが決まるといわれています。
わきがになりやすい遺伝子は「顕性(優性) 」です。これは、両親のどちらか一方でも、該当する遺伝子を持っていれば、子どもに体質として現れやすいことを意味します。
ただし、遺伝子を受け継いでも、必ずしも強いにおいの症状が現れるわけではありません。症状の強さには個人差があります。
親から子どもへの遺伝確率
お子さんにわきが体質が遺伝する確率は、ご両親の体質によって変わります。あくまで目安ですが、一般的にいわれている遺伝の確率は以下のとおりです。
- 片方の親がわきが体質の場合:約50%
- 両親ともにわきが体質の場合:約75~80%
これらの数値は、統計データが取られているわけではなく、メンデルの法則にしたがった確率です。ご両親がわきが体質の場合、お子さんにも高い確率で受け継がれる可能性があります。
ただし、体質を受け継いでも、においの強さや、症状がいつから気になるかには、大きな個人差があることを知っておくことが大切です。
隔世遺伝の可能性
ご両親にわきがの症状がなくても、お子さんに体質が現れる「隔世遺伝」のケースもあります。
隔世遺伝は、ご両親が症状は出ていなくても、わきがになりやすい遺伝子を隠し持っている「保因者」である場合に起こりうる現象です。ご両親のどちらか、あるいは両方がこの遺伝子を持っており、それがお子さんに伝わることで、初めて症状として現れます。
隔世遺伝が起こる確率は数%程度と高くはありませんが、ゼロではありません。ご自身の体質を考える際は、ご両親だけでなく、祖父母やほかの親族にわきが体質の人がいないかを確認してみるのも、一つの参考になります。
わきがにつながる遺伝以外の原因
わきが体質は遺伝が関わりますが、生まれ持った体質に日々の生活習慣が加わることで、においの強さが変わる場合があります。つまり、遺伝的にわきが体質であっても、後天的な要因をコントロールすることで、においをある程度抑えられる可能性があります。
わきがにつながりやすい遺伝以外の主な原因は、以下の4つです。
①偏った食生活
②性ホルモンの活発化
③慢性的なストレス
④衛生習慣
①偏った食生活
肉類や揚げ物、バターやチーズといった動物性の脂肪やタンパク質が多い食事は、わきがのにおいを強くする一因です。これらの成分は、においの元となるアポクリン汗腺や皮脂腺の働きを活発にし、分泌物の材料になってしまうと考えられています。
以下のようなバランスの取れた食生活を意識することで、においの悪化を防げる可能性があります。
| 推奨される食生活 | 詳細な内容 |
|---|---|
| 動物性脂肪を控える | 魚や大豆製品を取り入れた和食中心のメニューを増やす |
| 抗酸化作用のある食品を摂る | 皮脂の酸化を防ぐビタミンCやビタミンEを含む、緑黄色野菜や果物を積極的に食べる |
| 腸内環境を整える | 発酵食品(ヨーグルト、納豆など)や食物繊維(きのこ、海藻など)を食事に取り入れる |
食生活の改善は、においの悪化防止が期待できる大切なセルフケアです。
②性ホルモンの活発化
性ホルモンの分泌が活発になるとアポクリン汗腺が刺激され、わきがの症状が現れたり、元々のにおいが強まったりする可能性があります。
アポクリン汗腺は、ワキの下や陰部などの限られた部分に存在する汗腺で、性ホルモンの影響を強く受けて活動することが特徴です。思春期に性ホルモンの分泌が急増し、アポクリン汗腺が発達して発汗が多くなり、それまで気にならなかったにおいが現れやすくなります。(※2)
女性の場合は、月経周期、妊娠・出産、更年期に伴うホルモンバランスの変化によっても、においの強さが変わることがあります。
③慢性的なストレス
精神的なストレスは、においを強くする原因になることがあります。
緊張や不安を感じると、「精神性発汗」と呼ばれる汗をかくとともに、アポクリン汗腺からの分泌物も増大します。大学病院の情報によると、アポクリン汗腺からの分泌物は、においの元になるので、ストレスに伴う汗は、わきがの症状を悪化させやすい傾向です。(※3)
また、ストレスはホルモンバランスの乱れにもつながり、間接的に皮脂の分泌を増やしてにおいを悪化させる可能性も指摘されています。
心と体をリラックスさせるために、質の良い睡眠を取り、適度な運動を心がけたり、リラックスする習慣を意識したりすることが大切です。
④衛生習慣
汗をかいたまま放置すると、皮膚の表面にいる常在菌が汗の成分を分解し、わきが特有のにおいを発生させます。汗そのものに強いにおいはありませんが、菌が繁殖することでにおいが強くなるという仕組みです。
特にアポクリン汗腺から出る汗は、脂質やタンパク質など菌のエサになる成分を多く含むため、こまめなケアが欠かせません。
におい対策の基本として、次のような衛生習慣を心がけましょう。
- シャワーや入浴で体を清潔に保つ
- 汗をかいたら、濡れたタオルや汗拭きシートでこまめに拭き取る
- 通気性が良く、汗を吸収しやすい綿素材などの下着を選ぶ
- 制汗剤やデオドラント製品は、汗をかく前の清潔な肌に使う
わきが体質のセルフチェックリスト
ご自身がわきが体質かどうかは、いくつかの身体的なサインから推測できる可能性があります。以下の項目に当てはまる場合は、注意してください。
①耳垢が湿っている・柔らかい
②衣類に黄色い汗じみができる
③両親や親族にわきが体質の人がいる
ただし、これらはあくまで体質的な傾向を示す目安です。自己判断で思い悩まず、気になることがあれば専門の医療機関へ相談しましょう。
①耳垢が湿っている・柔らかい
耳垢が湿って柔らかい「湿性耳垢」であることは、わきが体質と関連するサインの一つです。
においの原因となるアポクリン汗腺は、耳の穴の中にも存在します。アポクリン汗腺が活発な方は、耳垢にも水分や脂質が多く含まれるため、湿り気のある飴状の耳垢になる傾向です。
どのくらいアポクリン汗腺が活発かは、ABCC11遺伝子によって決まると考えられています。日本人の7〜8割は乾いた耳垢(乾性耳垢)のため、ご自身の耳垢が湿っていれば、アポクリン汗腺が発達している体質の可能性が高いです。(※4)
②衣類に黄色い汗じみができる
白いシャツや下着のわき部分に、洗濯しても落ちにくい黄色い汗じみができやすい場合、わきが体質かもしれません。
通常の汗(エクリン汗)は99%が水分なので、濃いシミになることはほとんどありません。
一方、アポクリン汗腺から出る汗には、脂質やタンパク質に加えて「リポフスチン」という色素成分が含まれています。この色素が衣類の繊維に付着することで、特有の黄色いシミとなって現れます。
汗そのものに色があるわけではありませんが、衣類に付着した成分が時間とともに酸化して色がつきます。そのため、汗をかいたら放置しないことが大切です。
③両親や親族にわきが体質の人がいる
ご家族やご親族にわきが体質の方がいる場合、ご自身もその体質を受け継いでいる可能性があります。
わきが体質につながりやすいアポクリン汗腺の数や大きさ、活動のしやすさなどの身体的な特徴が親から子へ受け継がれるためです。
また、ご両親に自覚がなくても、祖父母の代から体質を受け継ぐ隔世遺伝の可能性もゼロではありません。ご自身の体質を知るうえで、ご両親や兄弟姉妹、祖父母にわきが体質の人がいないかを確認することは、重要な判断材料の一つになります。
遺伝性わきがへの対策
遺伝が原因のわきがは、セルフケアだけでにおいをコントロールするのは難しい場合があります。しかし、医療機関でご自身の症状やライフスタイルに合った治療を受ければ、においを和らげられる可能性があります。
代表的な治療法は、以下のとおりです。
- ボツリヌストキシン注射 (ボトックス注射)
- マイクロ波治療( ミラドライ)
- 剪除法
それぞれの特徴を正しく理解し、医師と相談しながらご自身に最適な方法を選ぶことが大切です。
ボツリヌストキシン注射 (ボトックス注射)
ボツリヌストキシン注射(一般的に「ボトックス注射」とも呼ばれます) は、汗の分泌を促す神経の働きを薬剤で抑え、汗の量をコントロールする治療です。汗そのものを減らすことで、皮膚の常在菌による分解も抑えられ、わきが特有のにおいの軽減も期待できます。
わきの皮膚に細い針で薬剤を注入するだけなので、施術時間は10〜15分程度と短く、体への負担が少ない利点があります。
また、ボツリヌストキシン注射 はメスを使わないため、施術後の日常生活への制限(ダウンタイム)も少なくなりがちです。そのため、手術に抵抗がある方や、夏の間だけなど特定の期間だけにおいを抑えたい方にとって、検討しやすい治療といえます。
ただし、効果の持続期間には個人差があり、継続的に期待される効果を得るには、一般的には4〜6か月ごとに1回の再注射が必要です。1回あたりの費用目安は約1〜10万円で、部位や薬剤ブランドによって大きく変動します。基本的には自由診療となるので、全額自己負担になる点は注意してください。
注射後、注射部位の赤み・腫れ・内出血や筋力低下に伴う倦怠感などが現れることがあります。
マイクロ波治療( ミラドライ)
電磁波の一種であるマイクロ波(ミラドライ)を用いて、においと汗の原因に働きかける治療法です。皮膚の上からマイクロ波を照射し、熱エネルギーによって、においの元となるアポクリン汗腺と汗を分泌するエクリン汗腺の両方にアプローチします。
メスを使わずに治療できるため皮膚表面に傷跡が残りにくく、わきがと多汗症の両方にお悩みの方にも対応できるのが特徴です。一度熱で影響を受けた汗腺は機能が再生しにくいと考えられており、長期的な効果を期待できます。
ただし、施術後には腫れや痛み、内出血などが数日から数週間続くことがあります。
また、本治療は保険適用外の自由診療です。
剪除法
剪除法は、わきの皮膚を数センチほど切開し、アポクリン汗腺を医師が直接見て確認しながら取り除く外科手術です。においを生み出す組織を物理的に除去するため、わきが治療のなかでも根本的な改善が期待できます。症状が重い方や、ほかの治療法では十分な効果を感じられなかった方の選択肢の一つです。(※5)
一方、手術であるため傷跡が残る点や、術後1〜2週間ほど腕の動きが制限される点も理解しておくことが必要です。
剪除法は、医師の診断によって一定の基準を満たした場合、保険が適用されることがあります。興味のある方は、ご自身の症状が対象になるか専門の医療機関で相談してみましょう。
まとめ
わきがは遺伝する可能性が高い体質ですが、食生活やストレスなどの後天的な要因もにおいの強さに影響します。生まれ持った体質は変えられませんが、日々のセルフケアによってにおいを軽減できる可能性があります。
セルフケアでの改善が難しい場合でも、医療機関ではボトックス注射やミラドライなど、さまざまな治療法が用意されています。
においに関する悩みはデリケートで一人で抱え込みがちですが、専門の医師に相談することが解決への第一歩です。ご自身の症状やライフスタイルに合った最適な対策を見つけるために、まずは気軽に医療機関へ相談してみましょう。
