自分のにおいが気になり、周りの視線に悩んでいませんか。わきがは医学的に「腋臭症」と呼ばれる体質の一種で、珍しいものではありません。病気ではないとわかっていても、対人関係への影響を考えると深刻な悩みになります。
この記事では、わきがの主な原因や自分でできるセルフチェック方法、日々の対策を解説します。医療機関で受けられる剪除法やミラドライなどの治療法も、それぞれの特徴を比較しながら紹介します。
体の仕組みと正しい知識を得ることで、漠然とした不安が和らぎ、自分に合った対策を
一歩につながります。
目次
わきがとは特有のにおいが発生する体質
わきがは、わきの下から特有のにおいを発する体質で、医学的には「腋臭症」と呼ばれています。病気ではないため、健康に直接的な害を及ぼすものではありません。
わきがのにおいの元は、汗そのものではありません。わきの下に多く存在する「アポクリン汗腺」という汗腺から出る汗が関係しています。
アポクリン汗腺から出る汗は、脂質やタンパク質などを含み、少し白っぽく粘り気があるのが特徴です。この汗が皮膚表面の常在菌によって分解されることで、わきが特有のにおいを持つ物質が発生します。
人の体から発するにおいは、対人関係における認識や感情の伝達に関わる化学信号として機能することがわかっています。(※1)においが他者とのコミュニケーションに影響するのではないかと、深く悩む方もいます。
わきがは、あくまで個人の「体質」の一つです。体の仕組みを正しく理解することが、漠然とした不安を解消する第一歩となります。
わきがが発生する主な原因
わきがの発生原因は一つではありません。においの元となる汗を出す「アポクリン汗腺」の活動性は遺伝の影響が大きいですが、日々の食事や心の状態もにおいの強さを左右します。
わきがを発生させる主な原因は以下の3つです。
①遺伝による体質
②生活習慣の乱れ
③ストレスによる発汗増加
①遺伝による体質
わきがの根本的な原因は、アポクリン汗腺の数や活動のしやすさなどの「体質」であり、遺伝の影響を受けます。両親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせによって、アポクリン汗腺の数は生まれつき決まります。
子どもにわきが体質が遺伝するとされる確率は、以下のとおりです。
| 親の体質 | 子へ遺伝するとされる確率 |
|---|---|
| 両親のどちらかがわきが体質 | 約50% |
| 両親ともにわきが体質 | 約80% |
性ホルモンの分泌が盛んになる思春期になると、アポクリン汗腺が刺激されて本格的に活動を始めます。この時期に症状を自覚する方が多くなります。(※2)
②生活習慣の乱れ
日々の生活習慣、特に食生活は、わきがのにおいの強さに関わっています。以下のような習慣がアポクリン汗腺や皮脂腺の活動を促し、においを強める可能性があります。
| 習慣 | においへの影響 |
|---|---|
| 動物性脂肪の多い食事 | 肉類やバター、揚げ物などに含まれる動物性脂肪が、アポクリン汗腺や皮脂腺の働きを活発にする。 |
| 飲酒・喫煙 | アルコールやニコチンが発汗を促す交感神経を刺激する。アルコールの分解時にできるアセトアルデヒドも、体臭を強める一因となる。 |
食生活の見直しは、においの軽減だけでなく、健康維持の観点からも大切です。
③ストレスによる発汗増加
強い緊張や不安を感じたときの「冷や汗」のように、精神的なストレスは「精神性発汗」と呼ばれる汗を引き起こします。この汗は体温調節のための汗とは異なり、アポクリン汗腺からの分泌を促すため、わきがのにおいを一時的に強めます。
「自分のにおいで周りを不快にさせていないか」という不安がストレスとなり、さらなる発汗を招く悪循環に陥ることもあります。わきがが社会生活や心理面に影響を与えうる、ごく一般的な状態です。(※3)
上手にストレスを発散し、心穏やかに過ごす時間を持つことが、においのコントロールにもつながります。
わきが体質かどうか自分で確認するセルフチェック方法は?
わきが体質のセルフチェックは、耳垢の湿り、遺伝、衣服の黄ばみの3点で判断します。医療機関に相談すべきか悩む方の判断材料の一つとしてご活用ください。
主なセルフチェック項目は以下の3つです。
①耳垢が湿っている
②両親のどちらかがわきが体質である
③衣服のわき部分に黄ばみができる
①耳垢が湿っている
耳垢が湿ってベタベタしている状態は、わきが体質と深く関係していると考えられています。わきがの原因となる「アポクリン汗腺」は、わきの下だけでなく耳の穴(外耳道)の中にも分布しているためです。
耳の中のアポクリン汗腺は代謝物を排出する役割を担っています。アポクリン汗腺が生まれつき多い方や活発な方は、耳垢が湿り気を帯びやすくなります。耳垢の状態による体質の目安は、以下のとおりです。
| 耳垢の状態 | 体質の傾向 |
|---|---|
| キャラメルのように粘り気があり、ベタベタしている | わきが体質の可能性がある |
| 白っぽく、粉のようにカサカサしている | わきが体質ではない可能性が高い |
耳垢の状態は遺伝によって決まるため、古くから体質を見分けるサインとされてきました。
②両親のどちらかがわきが体質である
わきが体質は遺伝する傾向が強く、ご両親の体質は自身の体質を知る手がかりとなります。においの元となる汗を出すアポクリン汗腺の数や活動のしやすさは、優性遺伝という形式で子に受け継がれやすいことがわかっています。
体質を受け継いだすべての方が、強いにおいを発するわけではありません。家族にわきが体質の方がいる場合、自身もその体質を持っている可能性があります。
③衣服のわき部分に黄ばみができる
白いシャツや下着のわきの部分に、洗濯しても落ちない黄ばみができるのも、わきが体質の特徴的なサインです。アポクリン汗腺から出る汗に、特有の成分が含まれていることが原因です。
アポクリン汗には、タンパク質や脂質のほかに「リポフスチン」という色素成分が含まれています。リポフスチンが衣服に付着することで、黄ばみの原因となります。
体温調節のためにかく一般的な汗(エクリン汗)は、成分の99%が水分です。エクリン汗だけで衣服が強く黄ばむことは、ほとんどありません。「シャツのわきの黄ばみが目立つ」と感じる場合は、アポクリン汗腺からの分泌が活発なサインかもしれません。
医療機関で受けられるわきが治療法
セルフケアだけではにおいのコントロールが難しい場合、医療機関での専門的な治療が選択肢となります。治療法は、においの元を直接取り除く外科的な手法から、皮膚を切らない非外科的な手法まであります。
症状の強さやライフスタイル、費用や期間などを総合的に考慮し、医師とともに自分に合った方法を見つけましょう。
わきがの主な治療法は以下の3つです。
①剪除法
②ミラドライ
③ボトックス注射
①剪除法
剪除法は、わきの皮膚を切開し、においの原因であるアポクリン汗腺を直接除去する手術です。においの元となる組織を物理的に除去するため、高い効果が期待できます。
剪除法のメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット |
・においの根本原因を直接取り除くため、高い効果が見込める ・症状の程度など一定の基準を満たせば健康保険が適用される |
| デメリット |
・術後1〜2週間は腕の動きが制限されるなど、安静期間が必要になる
・切開した部分に傷跡が残る可能性がある |
効果を重視する方に向いていますが、傷跡や安静期間も考慮して検討することが大切です。
②ミラドライ(マイクロ波治療)
ミラドライは、マイクロ波(電磁波)のエネルギーを利用して、汗腺の機能に働きかける治療法です。皮膚の上からマイクロ波を照射し、その熱でにおいの原因となる「アポクリン汗腺」と、汗の量を左右する「エクリン汗腺」の両方に働きかけます。健康保険が適用されない自費診療となります。標準的な費用は150,000円〜400,000円(税込)です。治療回数は1〜2回程度が目安となります。施術後に一時的な腫れ、痛み、内出血などが生じることがあります。 詳細やご予約は、実際のクリニックへお問い合わせください。(※「ミラドライ(miraDry®)」は、miraDry, Inc.の登録商標です。 )
ミラドライのメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット |
・皮膚を切らないため、手術跡が残る可能性は低い ・施術後の安静期間(ダウンタイム)が短め ・においと多汗症の双方に改善が期待できる |
| デメリット |
・健康保険が適用されない自費診療となる
・施術後に一時的な腫れ、痛み、内出血などが生じることがある |
傷跡を残したくない方や、汗の量も気になる方に向いている治療法です。
③ボトックス注射(ボツリヌストキシン注射 )
ボトックス注射は、汗の分泌をコントロールする神経の働きを一時的に抑え、発汗量とにおいを軽減させる治療法です。汗を出す指令を伝える神経伝達物質の働きを、ボツリヌス菌由来の成分を精製した薬剤でブロックします。(※ボトックスはアラガン社の登録商標です )
発汗量が減ることでにおいが軽減されるだけでなく、わきが特有のにおいそのものが改善したという研究報告もあります。(※4)
自由診療で行う場合、標準的な費用は3,000円〜100,000円(税込)です。治療は1回数分程度で、効果を維持するためには4〜6ヶ月ごとの定期的な再注入が目安となります。副作用として、注射部位の痛み、赤み、内出血、まれにアレルギー反応等が生じる可能性があります。 詳細につきましては、実際に治療を受けるクリニックへお問い合わせください。
※ボトックス注射を受ける際の注意点
腋臭(多汗症)のボトックス治療で使われる製剤には、国内で承認されている医薬品と、海外製の未承認薬(韓国製など)があります。未承認薬は費用が安い傾向にありますが、万が一重篤な副作用が起きた際に、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となる場合があります。 クリニックによって使用している製剤が異なりますので、受診する際は「どの製剤を使用するのか」を事前に確認し、医師からリスクについての十分な説明を受けましょう。
ボトックス注射のメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット |
・施術時間が5〜10分程度と短く、注射のみで完了する ・身体への負担が少なく、ダウンタイムが短い傾向にある |
| デメリット |
・効果の持続期間が4〜6か月程度と限られる
・効果を維持するためには、定期的な再注入が必要となる |
手軽に試したい方に向いていますが、効果を保つには継続的な施術が必要です。
自分でできるわきが対策
わきがのにおいは、日々の生活習慣を見直すことで軽減できる可能性があります。専門的な治療と並行して、まずは自分でできる対策から始めることが、においのコントロールに向けた第一歩です。
今日から取り組める主な対策は以下の5つです。
①わきを清潔に保つ
②制汗剤を活用する
③通気性の良い衣服を選ぶ
④食生活を見直す
⑤ストレスを溜め込まない
①わきを清潔に保つ
わきを清潔に保つことは、においの原因となる皮膚の細菌の活動を抑える基本です。わきがのにおいは、アポクリン汗が皮膚の常在菌に分解されて発生するため、汗や皮脂をこまめに除去することが大切です。
場面ごとのケア方法は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット |
・施術時間が5〜10分程度と短く、注射のみで完了する ・身体への負担が少なく、ダウンタイムが短い傾向にある |
| デメリット |
・効果の持続期間が4〜6か月程度と限られる
・効果を維持するためには、定期的な再注入が必要となる |
強くこするとかえって細菌が繁殖しやすくなるため、優しく清潔を保つことを心がけましょう。
②制汗剤を活用する
市販の制汗剤やデオドラント製品を正しく使うことで、においのコントロールがしやすくなります。製品は主に2つのタイプがあり、目的や悩みに合わせて選ぶことが大切です。
制汗剤とデオドラント剤の違いを以下の表にまとめました。
| 製品タイプ | 主な働き | おすすめの方 |
|---|---|---|
| 制汗剤(アンチパースパイラント) | 汗腺の出口に作用し、汗の分泌量そのものを抑える | 汗の量が多い方、汗ジミが気になる方 |
| デオドラント剤 | 殺菌成分でにおいの原因菌の繁殖を防ぎ、消臭成分で発生したにおいを中和する | 汗の量は普通だが、においが気になる方 |
これらの製品は、入浴後や朝の外出前など、汗をかく前の清潔で乾いた肌に使うのが推奨されます。
③通気性の良い衣服を選ぶ
衣服の選び方を工夫し、わきの下が蒸れないように保つことも、においを抑えるうえで有効です。湿度と温度が高い環境は細菌が繁殖しやすいため、衣類で通気性を確保することが重要になります。
衣服の選び方のポイントと具体例は以下のとおりです。
| 選び方のポイント | 具体例 |
|---|---|
| 素材 | 綿や麻などの天然素材、吸湿性・速乾性に優れた高機能な化学繊維 |
| デザイン | 体に密着する服を避け、風通しの良いゆったりとしたシルエットを選ぶ |
汗を吸収するインナーやわき汗パッドを活用し、こまめに着替えることで、より清潔な状態を保てます。
④食生活を見直す
日々の食事は、においの原因となる汗や皮脂の分泌に影響する可能性があります。特定の食品が直接わきがを引き起こすわけではありませんが、体臭の強さを左右する一因となります。
肉類やバター、揚げ物などの動物性脂肪を多く含む食事は、アポクリン汗腺や皮脂腺の働きを活発にする材料となります。過剰な摂取には注意が必要です。
一方で、野菜や果物、魚、大豆製品などを中心としたバランスの良い和食ベースの食事は、脂質の過剰摂取を抑える助けになります。特に、ビタミンCやEなどの抗酸化ビタミンを多く含む食品は、不快なにおいのもととなる皮脂の酸化を防ぎ、体臭全般の改善に役立つ可能性があります。
⑤ストレスを溜め込まない
精神的なストレスを上手に管理することも、においのコントロールには欠かせません。緊張や不安を感じると交感神経の働きが活発になり、「精神性発汗」と呼ばれる汗が出やすくなります。この汗はアポクリン汗腺からの分泌を促すため、においを一時的に強めます。
ストレスを溜め込まないための具体的な方法は、以下のとおりです。
| 方法 | ポイント |
|---|---|
| リラックスできる時間を持つ | 趣味や入浴、音楽鑑賞など、心から落ち着ける時間を意識的に作る |
| 適度な運動を取り入れる | ウォーキングやヨガなどの軽い運動で、自律神経のバランスを整える |
| 質の良い睡眠を確保する | 十分な睡眠時間を確保し、心身を休ませる |
「においが気になる」という不安がストレスとなる悪循環を防ぐためにも、自分に合った方法でリラックスさせましょう。
まとめ
わきがは病気ではなく、アポクリン汗腺が原因の「体質」ですが、正しい知識とケアによってにおいを軽減できます。
遺伝が主な原因とされていますが、脂質の多い食事やストレスなどの生活習慣も、においの強さに影響します。まずは、わきを清潔に保ったり、通気性の良い服を選んだりするセルフケアから試してみましょう。
セルフケアで効果が出ない場合や、根本から解決したい場合は、医療機関の受診も選択肢です。一人で抱え込まず、専門のクリニックに相談し、自分の症状やライフスタイルに合った対策を見つけましょう。
わきがに関するよくある質問(FAQ)
- Q.わきがは他人にうつりますか?
- A.わきがは遺伝的なアポクリン汗腺の性質による「体質」であり、病気ではないため他人にうつることはありません。お風呂やプール、衣類の共有などを通じてにおいが感染する心配はありませんのでご安心ください。
- Q.わきがの治療に健康保険は適用されますか?
- A.わきがの治療法のうち、においの原因となるアポクリン汗腺を直接取り除く「剪除法(せんじょほう)」は、症状の程度など一定の基準を満たせば健康保険が適用されます。一方で、ミラドライやボトックス注射などは原則として自費診療となります。
- Q.わきがのにおいは食事で改善できますか?
- A.食事を見直すことでにおいを軽減できる可能性があります。肉類やバターなどの動物性脂肪はにおいの原因となるアポクリン汗腺や皮脂腺を刺激するため、摂りすぎに注意し、野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけましょう。
