最終医学的確認日:2026年8月
気づくと口が開いている、朝起きるとのどが痛い——その口呼吸は、意志の弱さや癖の問題ではなく、原因を特定すれば改善が期待できる状態です。原因は一つとは限らず、いくつかが重なっていることもあります。
この記事では、大人の口呼吸について、4つの原因の見分け方から、自宅でできるトレーニング、セルフケアで改善しないときに歯科・耳鼻咽喉科で受けられる治療、そして何科に相談すればよいかまでを解説します。
この記事でわかること
口呼吸の原因は鼻づまり・口周りの筋力低下・歯並び・生活習慣の4つで、原因によって治し方が変わります。自宅ではあいうべ体操と舌のトレーニングを行い、2〜3か月で改善しなければ受診が目安です。
- 口呼吸の原因は、鼻づまり・口周りの筋力低下・歯並び・生活習慣の4つ。どれに当てはまるかで治し方が変わります
- 唇の乾燥、朝ののどの痛み、顎のシワなど6項目で、無意識の口呼吸かどうかを確かめられます
- 自宅でできるのはあいうべ体操と舌のトレーニング。1日30回、数か月の継続が目安です
- 鼻づまりなら耳鼻咽喉科、歯並びなら矯正歯科。2〜3か月改善しなければ受診の目安です
口呼吸になってしまう原因は何ですか?
大人の口呼吸の原因は、大きく4つに分けられます。原因によって効果が期待できる治し方が変わるため、まず自分がどれに当てはまるかを見極めることが、遠回りを避けるうえで重要です。
その前提として、口呼吸とは本来は鼻で行うはずの呼吸を口で行っている状態です。鼻には吸い込んだ空気を加温・加湿し、ほこりやウイルスを粘膜と線毛で取り除くフィルターの機能がありますが、口にはその機能がありません。
| 鼻呼吸 | 口呼吸 | |
|---|---|---|
| 空気の加温・加湿 | 鼻腔を通る間に温められ、湿り気を帯びる | 乾いた空気がそのままのどへ届く |
| ほこり・ウイルス | 鼻の粘膜と線毛が捕らえる | フィルターを通らず直接のどへ入る |
| 口の中の状態 | 唾液が行き渡り、湿った状態が保たれる | 乾燥しやすく、唾液が行き渡りにくい |
| 唇の状態 | 自然に閉じている | 開いた状態が続き、乾燥しやすい |
監修医コメント:口呼吸の初期サインについて
口呼吸の方は、ご自身が気づく前に口の中に変化が出ていることが多いです。診療で私が最初に見るのは、上の前歯の歯ぐきです。乾燥しやすい場所なので、ほかの部分と比べて赤みや腫れが強く出ていたり、歯の表面に汚れが残りやすくなっていたりします。唇の乾燥や、口元に力が入っている様子も手がかりになります。「歯みがきの仕方は変えていないのに、ここだけ調子が悪い」とお話しされる方に呼吸の習慣をうかがうと、口呼吸が見つかるケースは少なくありません。
原因1:鼻づまり(鼻の病気)
アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などで鼻が詰まっていると、鼻から十分に空気を吸えず、口で呼吸せざるをえない状態になります。花粉の時期だけ悪化する、片側だけ詰まる、においが分かりにくいといったサインがあれば、この原因が疑われます。この場合、口周りのトレーニングだけを続けても改善は期待しにくく、まず鼻の治療が必要です。
原因2:口周りの筋力低下と舌の位置
唇を閉じる口輪筋や、舌を持ち上げる筋肉の力が低下すると、意識していないときに口が開きます。舌が本来あるべき位置から落ちた低位舌の状態になると、下顎が下がり、唇が開いたままになりやすくなります。加齢や、やわらかい食事中心の生活で噛む回数が減ることも、筋力低下につながります。
原因3:歯並び・骨格
前歯が前に出ている、上下の前歯が噛み合わない開咬といった歯並びがあると、唇を閉じにくく、安静時に口が開いた状態になります。唇を閉じたときに顎の先にシワができるのは、無理に力を入れて閉じているサインです。歯並びや骨格が原因の場合は、矯正歯科での治療が選択肢になります。
原因4:生活習慣・姿勢
やわらかい食事が中心で噛む回数が少ない、猫背で頭が前に出た姿勢が続く、長時間うつむいてスマートフォンを見る、といった習慣も口が開きやすい状態をつくります。頭が前に出ると下顎が引き下げられ、唇が自然に開いてしまうためです。
自分が口呼吸か確かめる6項目のセルフチェック
次の6項目のうち3つ以上当てはまる場合、無意識のうちに口呼吸になっている可能性があります。あくまで気づきのための目安であり、自己診断をするためのものではありません。
| No. | チェック項目 | 当てはまるときに考えられる原因 |
|---|---|---|
| 1 | 気づくと口が開いている、または人から指摘されたことがある | 原因2(筋力低下) |
| 2 | 朝起きたときにのどが痛い、口の中が乾いている | 原因1・原因2 |
| 3 | 唇を閉じようとすると、顎の先に梅干しのようなシワができる | 原因3(歯並び・骨格) |
| 4 | 唇が乾燥してカサつきやすい | 原因2 |
| 5 | 鼻が詰まりやすい、片側だけ詰まる、においが分かりにくい | 原因1(鼻の病気) |
| 6 | やわらかいものばかり食べている、猫背だと言われる | 原因4(生活習慣・姿勢) |
舌の位置も確認してみましょう。口を閉じた状態で、舌先は上の前歯の少し後ろにある、わずかにふくらんだ部分(スポット)に触れていますか。舌先が下の歯の裏側にあったり、どこにも触れていなかったりする場合は、舌の筋肉の力が低下し、口が開きやすい状態になっている可能性があります。
原因別に、効果が期待できる対処と相談先
| 原因 | 主なサイン | 効果が期待できる対処 | 主な相談先 |
|---|---|---|---|
| 1 鼻づまり | 花粉の時期に悪化する/片側だけ詰まる/においが分かりにくい | 鼻の治療を優先する。セルフケアは鼻が通ってから | 耳鼻咽喉科 |
| 2 筋力低下・舌の位置 | 舌先が上の前歯の裏に触れていない/唇がすぐ開く | あいうべ体操、舌のトレーニング、口腔筋機能療法(MFT) | 歯科 |
| 3 歯並び・骨格 | 唇を閉じると顎にシワができる/前歯が出ている | 矯正治療で唇を閉じやすい状態を目指す | 矯正歯科 |
| 4 生活習慣・姿勢 | やわらかい食事中心/猫背 | よく噛む習慣と姿勢の見直し | セルフケア中心 |
自分でできる口呼吸の治し方
自宅でできるセルフケアは、鼻で問題なく呼吸できることが前提です。鼻づまりがある状態で口周りのトレーニングだけを続けても、改善は期待しにくくなります。原因1(鼻づまり)に心当たりがある方は、先に耳鼻咽喉科の受診を検討してください。
あいうべ体操
口と舌の筋肉を動かす体操です。次の4つの動きを、声は出さずに大きく行います。
- 「あー」と口を大きく開く
- 「いー」と口を横に大きく広げる
- 「うー」と口を強く前に突き出す
- 「べー」と舌を下に向かって思い切り突き出す
1日30回を目安に、朝・昼・晩に10回ずつなど分けて行うと続けやすくなります。顎に痛みがある場合は回数を減らすか、中止してください。
トレーニングは、続けられる回数から始めることが大切です。1日30回と聞くと多く感じますが、歯みがきの前後や入浴中など、すでに毎日行っている行動とセットにすると習慣化しやすくなります。逆に、意気込んで初日から100回行い、顎が痛くなって続かなくなるケースがよく見られます。回数よりも、毎日続く形を優先してください。
舌を正しい位置に戻すトレーニング
落ちてしまった舌を、本来の位置に戻す練習です。舌先を上の前歯の少し後ろのふくらみ(スポット)に当て、舌全体を上顎に吸い付けるように押し上げます。その状態で10秒キープし、力を抜く。これを1日3セット、10回ずつを目安に行います。慣れてくると、口を閉じているときに自然と舌が正しい位置に収まるようになります。
よく噛む・姿勢を整える
一口30回を目安によく噛むことで、口周りの筋肉が自然と鍛えられます。やわらかいものばかりでなく、噛みごたえのある食材を意識して取り入れてください。姿勢は、耳と肩が一直線になるように意識すると、下顎が引き下げられにくくなり、唇を閉じた状態を保ちやすくなります。
口テープ(口閉じテープ)を検討している方へ
口をテープでとめて鼻呼吸をうながす方法は、鼻で支障なく呼吸できる人が習慣づけを補助する道具として使うものです。鼻づまりがある間は使わないでください。また、いびきを指摘されている、日中の強い眠気があるなど睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、自己判断で使わず先に医療機関にご相談ください。
就寝中の使用については安全性を検証した研究があり、関連記事「寝る時の口呼吸」で詳しく解説しています。
セルフケアで改善しないときに歯科・耳鼻咽喉科で受けられる治療
2〜3か月セルフケアを続けても口が開いてしまう場合や、そもそも鼻が詰まって続けられない場合は、医療機関への相談を検討してください。
監修医コメント:受診を見極めるポイント
トレーニングを続けても口が閉じられない方には、まず鼻で呼吸できているかを確認します。口を閉じたまま1分ほど鼻だけで呼吸していただくと、途中で口を開けてしまう方がいます。この場合は鼻に原因がある可能性が高いため、歯科でのトレーニングを続ける前に耳鼻咽喉科でご相談いただくようお伝えしています。片側だけ詰まる、季節によって変動する、いびきを指摘されているというお話がある場合も同様です。順番が逆になると、続けているのに変わらない状態が長引いてしまいます。
耳鼻咽喉科:鼻づまりの治療
鼻づまりが原因の場合は、まず鼻の治療が優先されます。アレルギー性鼻炎に対する薬物療法や舌下免疫療法、鼻中隔弯曲症や慢性副鼻腔炎に対する手術など、原因となっている病気に応じた治療が行われます(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻の病気」)。鼻が通るようになってから口周りのトレーニングに取り組むことで、改善が期待しやすくなります。
ここで挙げた治療の適応や進め方は、診断によって大きく異なります。実際にどの治療が向いているかについては、耳鼻咽喉科でご相談ください。
歯科・矯正歯科:口腔筋機能療法(MFT)と矯正治療
口腔筋機能療法(MFT)は、舌や唇、頬の筋肉の使い方を訓練し、口を閉じた状態と正しい舌の位置を保てるようにしていく療法です。歯科医院で指導を受けながら、自宅でのトレーニングを継続します。歯並びが原因で唇を閉じにくい場合は、マウスピース型の装置やワイヤーによる矯正治療が選択肢になります。MFTの実施の有無や取り扱う矯正装置は歯科医院によって異なるため、受診前に確認しておくとスムーズです。
何科に相談すればよいですか?
| こんなとき | 主な相談先 | 診てもらう内容 |
|---|---|---|
| 鼻が詰まる、においが分かりにくい、片側だけ詰まる | 耳鼻咽喉科 | 鼻の病気の有無と治療 |
| 唇が閉じにくい、前歯が出ている、歯並びが気になる | 矯正歯科 | 歯並び・骨格の評価と矯正治療 |
| むし歯、歯周病、口臭が気になる | 歯科(一般歯科) | 口腔内の状態とMFTの相談 |
| いびきを指摘された、日中の眠気が強い | 耳鼻咽喉科・睡眠外来のある医療機関 | 睡眠中の呼吸の状態 |
口呼吸が招く口の中のトラブル
口を開けたまま呼吸を続けると、口の中が乾燥して唾液が行き渡らなくなります。唾液には口の中を洗い流す自浄作用があるため、乾燥した状態が長く続くと細菌が増えやすくなり、むし歯・歯周病・口臭のリスクが高まると考えられています。
歯周病はプラークに含まれる細菌が歯ぐきに炎症を起こす病気で、プラーク1mgあたりには1億個以上の細菌が含まれるとされています。口呼吸によって唾液が行き渡らない状態が続くと、この細菌が増えやすい環境になります。
口呼吸で口の中が乾きやすくなるのは、唾液の分泌量そのものが減るというより、口が開いていることで唾液が蒸発し、歯や歯ぐきの表面に行き渡らなくなるためです。とくに上の前歯の表面は乾きやすく、口呼吸が続いている方では前歯の歯ぐきだけが赤く腫れている、といった部位差のある状態が見られることがあります。歯みがきの仕方は変えていないのに特定の場所だけ状態が悪い場合、呼吸の癖が関係している可能性があります。
次のような症状が出ているときは、口呼吸が背景にある可能性も含めて歯科でご相談ください。
歯ぐきに口内炎ができる、繰り返す場合は、関連記事「歯茎に口内炎ができる原因」もあわせてご覧ください。
歯ぐきに水ぶくれのようなふくらみがある場合は、関連記事「歯茎の水ぶくれ」で原因を解説しています。
歯ぐきがジンジンする、痛むという場合は、関連記事「歯茎が痛いときの原因と対処法」が参考になります。
また、乾いた空気が直接のどに届くため、のどの粘膜が乾燥し、風邪をひきやすいと感じる人もいます。口呼吸は単なる癖ではなく、お口と全身の健康に関わる状態として捉えることが大切です。
よくある質問(FAQ)
口呼吸はどのくらいで治りますか?
改善までの期間は原因によって大きく異なり、一律に「何か月で治る」と言えるものではありません。鼻づまりが原因の場合は治療によって鼻が通れば比較的早い段階で口を閉じやすくなりますが、口周りの筋力や癖が原因の場合は、トレーニングが習慣として定着するまで数か月単位の継続が必要とされています。効果の現れ方には個人差があります。
口呼吸を治す方法はありますか?
あります。原因が鼻づまりであれば耳鼻咽喉科での治療、口周りの筋力低下であればあいうべ体操や舌のトレーニング、歯並びであれば矯正治療というように、原因に応じた方法を選ぶことが改善への近道です。
口呼吸になりやすい人は?
鼻炎などで鼻が詰まりやすい人、やわらかい食事が中心で噛む回数が少ない人、前歯が出ているなど唇を閉じにくい歯並びの人、猫背でうつむく姿勢が長い人は口呼吸になりやすい傾向があります。
口呼吸は自然に治りますか?
鼻づまりが一時的なものであれば、鼻が通ることで自然に鼻呼吸に戻る場合もあります。一方、癖として定着している場合や歯並びが関係している場合は、意識的なトレーニングや治療が必要になることが多いとされています。
マウスピースで口呼吸は治りますか?
歯並びが原因で唇を閉じにくい場合、矯正用のマウスピース型装置によって唇を閉じやすい状態を目指すことは可能です。ただし装置の適応は歯並びの状態によって異なるため、矯正歯科での診察が必要です。
口呼吸を治すと顔つきは変わりますか?
唇を閉じた状態を保てるようになることで、口元の印象が変わったと感じる方はいます。ただし変化の程度には個人差があり、骨格そのものが変わるわけではありません。
まとめ
口呼吸の治し方は、原因を見極めるところから始まります。鼻づまりが原因なら耳鼻咽喉科での治療が先、口周りの筋力低下ならあいうべ体操や舌のトレーニング、歯並びが原因なら矯正歯科での相談というように、原因によって進む道が変わります。
セルフケアは鼻で問題なく呼吸できることが前提です。2〜3か月続けても改善しない場合や、鼻が詰まって続けられない場合は、早めに歯科医師や医師にご相談ください。
次のステップ:まずは自分の原因を見極めることから
「口呼吸を治したい」と考えているなら、トレーニングを始める前に、自分がどの原因に当てはまるかを確かめることから始めてみましょう。
- 鼻で息を吸ってみて、左右どちらかが詰まっていないか確認する
- 口を閉じた状態で、舌先が上の前歯の少し後ろに触れているか確認する
- 唇を閉じたときに顎の先にシワができないか、鏡で見てみる
1つ目が当てはまるなら耳鼻咽喉科、2つ目なら歯科、3つ目なら矯正歯科が相談先になります。原因が分かれば、続ける対処も変わります。セルフケアを2〜3か月続けても変化がない場合は、一人で続けるより、一度専門家に相談したほうが早く進みます。