最近、些細なことでカッとなったり、以前よりイライラしやすくなったと感じていませんか? もしかしたら、それは男性更年期障害のサインかもしれません。
「年齢のせいかな」「疲れているだけかも」と見過ごしがちですが、こうした変化にはしっかりとした理由があることも少なくありません。
この記事では、男性更年期障害の症状や原因、具体的な対策方法について詳しく解説します。心当たりのある方は、ぜひ読み進めて、ご自身の状態を理解し、適切な対策を始めるきっかけにしてみてください。
目次
イライラ・キレやすさの原因
更年期障害は、加齢に伴い性ホルモンの分泌量が減少することで起こる、心身のさまざまな不調です。特に40代以降の男性に多く見られますが、体質や生活習慣によっては、30代で発症するケースもあります。
男性ホルモンのひとつであるテストステロンは、筋肉や骨格を維持するなどの身体的な働きだけでなく、精神の安定にも深く関わっています。このテストステロンが減少すると、脳内の神経伝達物質に影響を与え、感情のコントロールが難しくなることがあります。その結果として、些細なことにイライラしたり、怒りっぽくなったりすることが増えてしまいます。
例えば、仕事中にちょっとしたミスを過剰に気にしてしまったり、家族の何気ない言動に対して感情的に反応してしまったりといった具合です。ブレーキが利きにくくなった車のように、気持ちの切り替えがうまくできず、衝動的な言動が増える傾向があります。
このような状態が続くと、本人だけでなく周囲の人々にも影響を与え、職場での人間関係や家庭でのコミュニケーションにも支障をきたすことがあります。更年期障害によるイライラや感情の不安定さは、性格の問題ではなく、ホルモンの変化によって起こる体のサインであることを理解することが大切です。
特定の人にイライラするのも更年期の症状?
更年期になると、誰に対してもイライラするのではなく、特定の相手に強い苛立ちを感じることがあります。例えば、パートナー、子ども、職場の上司や同僚など、日頃から接する機会の多い相手に対して、特にイライラしやすくなる傾向があります。
この背景には、ホルモンバランスの乱れに加えて、その相手に対する長年の不満やストレスの蓄積が関係していると考えられます。通常であればスルーできるような些細な言動にも、敏感に反応してしまい、感情が爆発しやすくなるのです。
更年期には、パートナーのちょっとした言葉が引っかかったり、子どものいたずらに必要以上に怒ってしまったり、職場で特定の人の話し方や態度に腹を立ててしまったりすることがあります。こうした反応は、単に我慢が足りないとか、気が短くなったといった問題ではなく、ホルモン変化による一時的な感情の不安定さから来ている可能性があります。
つまり、特定の人にだけイライラするのは、その相手との関係性や状況に加えて、身体の内側で起きているホルモンの変化が影響しているということです。感情の波が激しくなる時期だからこそ、「なぜこんなにイライラするのか」と自分を責めるのではなく、体と心の変化を正しく理解し、必要に応じて医師など専門家に相談することが大切です。
他の更年期症状があるかを確認すべき
更年期障害では、イライラやキレやすさ以外にも、様々な症状が現れることがあります。
例えば、身体的には、疲れやすさやだるさ、やる気が出ないといった疲労感や倦怠感、寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといった睡眠障害、発汗、ほてりなどがあります。精神的には、気分が落ち込む、憂鬱な気分になるといった抑うつ気分、集中力の低下、記憶力の低下などが挙げられるでしょう。また、性欲の低下といった症状も現れることがあります。
これらの症状は、単独で現れることもあれば、複数の症状が同時に現れることもあります。もし、イライラやキレやすさと同時にこれらの症状も感じている場合は、更年期障害の可能性が高いため、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
自己判断せずに、症状全体を診てもらうことが大切です。更年期障害の症状は他の病気の症状と似ている場合があり、自己判断で誤った対処をしてしまうと、症状が悪化したり、適切な治療の開始が遅れてしまったりする可能性があります。
イライラ・キレやすさへの対策・ケア方法
更年期は生活習慣の見直しや、必要に応じて医師の診断や治療を受けることで、症状の改善が期待できます。焦らず、そして諦めずに、ご自身に合った方法を探していきましょう。
ここでは、イライラ・キレやすさへの対策・ケア方法として、以下をご紹介します。
- 食生活の見直し
- 適度に運動する
- 漢方を飲む
- 医師に相談する
食生活の見直し

食生活の乱れは、更年期障害の症状を悪化させる可能性があります。バランスの取れた食事を心がけることは、心身の健康を維持し、更年期のイライラを軽減するためにとても大切です。
血糖値を安定させる食事
食後、血糖値が急上昇すると、それを下げようとインスリンというホルモンが分泌されます。血糖値の急激な上昇を繰り返すと、体の負担になるだけでなく、気分の浮き沈みにも影響を与えやすくなります。
血糖値の急激な上昇を抑えるには、白米よりも玄米や雑穀米、白いパンよりも全粒粉パンを選ぶなど、精製された炭水化物の摂取を控え、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂り入れるようにしましょう。食物繊維は、糖の吸収を穏やかにする働きがあるため、血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できます。
栄養素をしっかり摂る
更年期障害の症状緩和に役立つ栄養素として、ビタミンB群、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛などが挙げられます。
ビタミンB群は、神経の働きを正常に保つために欠かせない栄養素で、豚肉やレバー、うなぎなどに豊富に含まれています。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるだけでなく、近年ではテストステロンの分泌を高める働きも注目されています。うつや疲労感の軽減にも効果があるとされ、男性更年期対策に有効です。日光を浴びることで体内でも合成されますが、サーモンやイワシ、きのこ類にも含まれています。
マグネシウムには、神経の興奮を抑え、精神を落ち着かせる作用があります。アーモンドやひじき、ほうれん草などがその代表的な食品です。
亜鉛は男性ホルモン(テストステロン)の生成をサポートする重要なミネラルです。不足すると性欲や活力の低下、疲れやすさといった男性更年期の症状が強まる可能性があります。牡蠣、赤身の肉、卵、ナッツ類などに多く含まれています。
これらの栄養素を日々の食事に取り入れていくことで、更年期障害に伴うさまざまな症状の緩和につながります。
食事改善の例
毎日同じ時間に、1日3食をきちんと摂ることで、体内時計が整い、自律神経やホルモンバランスの安定につながります。特に朝食を抜かずに摂ることは、1日のリズムを整えるうえでも大切です。
また、野菜や海藻、きのこ類、豆類などを積極的に取り入れた、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。例えば、主食には玄米や雑穀米、主菜には大豆製品や魚、野菜を使った副菜を組み合わせることで、ビタミン・ミネラル・食物繊維などをまんべんなく摂取できます。
一方で、インスタント食品や加工食品、過剰な糖分や脂質を含む食品は、ホルモンの働きを乱す要因になり得るため、できるだけ控えるようにしましょう。外食が続く場合も、野菜を追加したり、揚げ物を避けたりするなど、小さな工夫で改善が可能です。
適度に運動する
適度な運動は、心身の健康に良い影響を与え、更年期障害の症状緩和にも効果的です。
軽い運動でも、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑え、気分を落ち着かせる効果が期待できます。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、心肺機能を高め、ストレス発散にもつながります。
また、筋力トレーニングなどの無酸素運動は、テストステロンの分泌を促進する効果があり、更年期におけるテストステロンの減少を補うことが可能です。
運動量の目安としては、週に3回程度、30分程度のウォーキングが良いでしょう。息が少し上がる程度の強度で、無理なく続けられる運動を見つけましょう。
運動不足の方は、まずは週1回15分から始めて、徐々に時間や回数を増やしていくと良いでしょう。運動は、心身の健康維持に役立ち、更年期障害の症状緩和にもつながります。
生活リズムの見直し
更年期障害の症状を和らげるためには、規則正しい生活リズムを維持することが重要です。
睡眠の質を高める
睡眠不足は、ホルモンバランスを崩し、更年期障害の症状を悪化させます。
そこで毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計が調整され、睡眠の質を高めることができます。睡眠時間は7時間程度を目安に、ご自身にとって最適な睡眠時間を確保しましょう。
また、寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見るのは控えてください。画面から発せられるブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質を低下させます。
寝る前は、リラックスできる音楽を聴いたり、読書をしたり、ぬるめのお風呂に入ったりするなど、リラックスして眠りにつけるように工夫しましょう。
朝日を浴びる
朝日を浴びることで、体内時計がリセットされ、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌リズムが調整されます。
質の高い睡眠を得るためにも、毎朝15分程度、太陽の光を浴びる習慣を身につけましょう。
リラックスできる習慣も取り入れてみる
リラックスできる習慣も取り入れてみることは、生活リズムを整え、心身のバランスを保つうえで重要です。特に更年期のようにホルモンバランスが不安定になりやすい時期には、緊張をほぐし、自律神経を整える時間を意識的に持つことが大切です。
例えば、就寝前にぬるめのお湯で入浴することで、副交感神経が優位になり、自然と心が落ち着いて眠りにつきやすくなります。また、アロマやお香など、香りの力を活用するのもおすすめです。ラベンダーやカモミールなどには、リラックス効果があるとされています。
他にも、音楽を聴いたり、日記をつけたり、ゆっくりとしたストレッチや深呼吸を行ったりと、自分に合った方法を見つけて日常に取り入れることで、ストレスが軽減され、気持ちの浮き沈みも和らげやすくなります。
こうした習慣はすぐに効果が出るものではありません。しかし、継続することで心の安定につながるので、自分を労わる時間として無理なく取り入れていくことが大切です。
漢方を飲む
漢方薬は、更年期障害の様々な症状に効果があるとされ、西洋医学の治療と併用されることもあります。
更年期のイライラには、加味逍遙散(かみしょうようさん)などが用いられることがあります。加味逍遙散は、イライラや不安、不眠などの症状を改善する効果がある漢方で、女性の更年期障害に使われますが男性も使用可能です。
ただし、漢方薬は個人差が大きく、すべての人に同じ効果があるとは限りません。体質に合わない場合は、副作用が現れる可能性もあります。自己判断で服用するのではなく、必ず医師や漢方専門家に相談し、適切な漢方薬を選びましょう。
医師に相談する

更年期のイライラが日常生活に支障をきたすほど強い場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。
更年期障害の症状は、放っておくと徐々に悪化し、日常生活に支障をきたすこともあります。だからこそ、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが、適切な対処や症状の改善につながります。
受診の際には、いつから症状が現れているか、どのくらいの頻度で症状が現れるか、他にどのような症状があるかなど、具体的に伝えましょう。医師は、患者さんの状態を詳しく把握することで、適切な治療法を提案することができます。
例えば、「2ヶ月前からイライラするようになり、週に3回程度、激しい怒りを感じることがある。同時に、倦怠感や不眠の症状もある」といったように、具体的な状況を伝えることが重要です。
まとめ
ささいなことで怒りっぽくなってはいるなら、もしかしたらそれは男性更年期障害のサインかもしれません。男性更年期障害は、男性ホルモンの減少によって起こる心身の様々な不調です。イライラや怒りっぽくなる以外にも、疲労感、倦怠感、不眠、発汗、性欲の低下など、様々な症状が現れます。
これらの症状に心当たりがある場合、まずは生活習慣の見直しをしてみましょう。バランスの取れた食事、適度な運動、質の高い睡眠を心がけることが大切です。また、漢方薬も症状緩和に役立つことがあります。
それでも症状が改善しない場合は、一人で悩まず、医療機関を受診しましょう。更年期障害は適切な治療と生活習慣の改善で症状をコントロールできます。早期発見・早期治療が大切ですので、お気軽にご相談ください。