あなたは今、まるで燃え尽き症候群のように、かつての活力や情熱を失っていませんか?
40代、50代の男性なら、それは「男性更年期障害」のサインかもしれません。仕事への意欲低下や慢性的な疲労感、更には性機能の衰えといった症状に心当たりがあるなら、決して他人事ではありません。厚生労働省の資料によると、このような男性更年期障害の症状に悩まされる男性は増加しています。
適切な治療を受けずに放置すると、仕事や家庭生活に深刻な影響を及ぼす可能性も。この記事では、男性更年期障害の症状や原因、そして具体的な対処法までを詳しく解説します。ご自身の状態を正しく理解し、明るい未来を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
目次
うつ症状と男性更年期障害の違い
40代、50代になって、以前は簡単にこなせていた仕事が辛く感じたり、休日は寝てばかりで何もする気が起きなくなったりしていませんか。かつては活発でエネルギッシュだった自分がまるで別人のように感じられ、自信を失ってしまう方も少なくありません。
こうした症状は一見うつ病と診断されることもありますが、実際には男性更年期が影響している場合もあります。ここでは、うつ症状と男性更年期の違い、チェック項目などを見ていきましょう。
症状の見極め方
うつ病と男性更年期障害は、精神的な症状(抑うつ気分、イライラ、不安感など)が共通して現れるため、見分けるのは容易ではありません。
どちらも「なんとなく気分がすぐれない」「集中力が続かない」「疲れやすい」といった漠然とした症状から始まることが多く、血液検査などの客観的な指標がない段階では、専門医でも鑑別は困難な場合があります。
症状 | うつ病 | 男性更年期障害 |
精神症状 | 抑うつ気分、興味・喜びの喪失、不安感、焦燥感、イライラ、集中力低下、決断力の低下、自分を責める、悲観的な思考、希死念慮など | 抑うつ気分、イライラ、不安感、集中力低下、性欲の低下、記憶力低下、無気力、自信喪失など |
身体症状 | 食欲不振、過食、不眠、過眠、疲労感、倦怠感、体重減少、体重増加、頭痛、腹痛、便秘、下痢など | 疲労感、倦怠感、ほてり、発汗、めまい、頭痛、勃起障害(ED)、筋力低下、骨密度低下など |
その他 | 原因不明の身体症状(痛みなど)、趣味への興味喪失、思考の緩慢 | テストステロン値の低下 |
男性更年期障害は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下が主な原因です。テストステロンは男性の心身の健康に深く関わっており、その低下は性機能だけでなく、精神状態や身体機能にも様々な影響を及ぼします。
一方、うつ病は、心理的・環境的要因(過労、人間関係のトラブル、大きな喪失体験など)が引き金となる場合が多いです。また、脳内物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の減少も関わっていると考えられています。
更年期障害とうつ病の違いを見分けるチェック項目
「どちらの可能性が高いのか」を判断するためのチェックポイントを以下にまとめました。これはAMSスコア(男性更年期障害質問票)と呼ばれるもので、それぞれ5段階評価で点数を付け、合計点数で症状の程度を把握します。
- 肉体的にも精神的にも調子が悪い
- 関節や筋肉に痛みがある(腰痛・関節痛など)
- 発汗・のぼせ
- 眠れない、眠りが浅い
- よく眠くなるし、しばしば疲れを感じる
- いらいらする、不機嫌になる
- 神経質になった
- 不安になりやすい
- やる気がない、無気力、疲労感が取れない
- 筋力の低下
- 憂うつな気分、無力感
- 自分のピークは過ぎたと感じる
- 燃え尽きたと感じる、どん底の状態だと感じる
- 髭の伸びが遅くなった
- 性的能力の衰え
- 朝立ちの回数が減少した
- 性欲の低下
これらの項目に多く当てはまる場合は、男性更年期障害の可能性があります。しかし、自己判断は危険です。
ご自身の状態をより正確に把握するためには、医療機関を受診し、血液検査(男性ホルモン測定)や問診を受けることが重要です。男性更年期障害と診断された場合、男性ホルモン補充療法などの治療法があります。
男性更年期障害は休職できるのか?
結論からいうと、男性更年期障害で休職できる可能性はあります。
男性更年期障害は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって、身体的・精神的な様々な症状が現れる状態です。これらの症状が重く、日常生活や仕事に支障が出る場合、「病気休職」という選択肢があります。
休職を取得するためには、医療機関を受診し、診断書を提出することが必要です。診断書には、「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」などの病名が記載され、これが会社への休職申請に必要な書類です。
男性更年期障害の場合、その症状がうつ病と似ていることが多く、実際には「うつ病」と診断されて休職するケースも少なくありません。しかし、その背景には男性ホルモンの低下が隠れている可能性もあるため、医療機関を受診する際には、更年期障害の可能性についても相談してみることが重要です。
休職の目安期間
休職期間は、症状の程度や会社の規定によって異なります。一般的には数週間から数ヶ月程度ですが、症状が重い場合は1年以上休職するケースもあるでしょう。
休職中は、健康保険から傷病手当金を受給できる場合があります。傷病手当金は、業務外の事由で病気やケガをした場合に支給される手当金で、支給額は標準報酬日額の3分の2に相当します。最長1年6ヶ月支給されます。
会社によっては、傷病休暇や特別休暇などの独自の休暇制度を設けている場合もあります。会社の就業規則を確認したり、人事担当者に相談したりしましょう。
休職するにあたって
休職を取得する際には、会社の上司や人事担当者、産業医、そして主治医とよく相談することが大切です。ご自身の症状や希望する休職期間、復職時期などについて、しっかりと話し合いましょう。また、休職中は、定期的に主治医の診察を受け、経過を報告することも重要です。
男性更年期障害は、適切な治療(ホルモン補充療法など)と生活習慣の改善によって、症状をコントロールすることができます。焦らずに治療を続け、職場復帰を目指しましょう。
男性更年期で仕事を休むときは、会社によっては産業医の意見が必要になることもあります。産業医は、職場の従業員の健康管理を担当する医師であり、休職の必要性や復職の可否などを判断する役割を担います。主治医と連携を取りながら、従業員が安心して職場復帰できるようサポートしてくれます。
休職を考える前にやるべきこと
休職という大きな決断をする前に、まずはご自身の現状を把握し、できることから始めてみましょう。
生活習慣の調整
男性更年期障害の症状は、生活習慣や周囲の環境の影響を大きく受けます。
ご自身の生活を振り返ってみましょう。睡眠不足、偏った食事、運動不足、過度の飲酒や喫煙といった生活習慣は、男性ホルモンであるテストステロンの分泌に悪影響を与えます。
テストステロンは、男性の性徴や生殖機能だけでなく、筋肉や骨の形成、気分の安定、認知機能など、様々な機能に不可欠なホルモンです。40代以降は、1年間に数%の割合でテストステロンが減少していくとされています。
この減少速度は個人差が大きく、生活習慣の乱れによって加速することもあります。加齢による自然な減少に加えて、不健康な生活習慣が重なれば、テストステロン値が基準値を大きく下回り、更年期障害の症状が顕著に現れる可能性が高まるでしょう。
逆に言えば、生活習慣を改善することで、テストステロンの分泌を促し、症状を軽減できる可能性があるということです。
具体的な改善策は以下の通りです。
- 睡眠:睡眠不足はテストステロンの分泌を低下させる原因に。1日7〜8時間の睡眠を目安に、毎日同じ時間に寝起きする習慣をつけましょう。寝る直前のスマホやカフェインは避けるのがベターです。
- 食事:タンパク質や亜鉛、ビタミンDなどの栄養素はテストステロンの維持に欠かせません。肉・魚・大豆・ナッツを意識して、過度な糖質制限や脂質制限は避けましょう。
- 運動:軽いジョギングや筋トレは、テストステロンの分泌を助けるだけでなく、ストレス軽減にも有効です。週2〜3回、30分程度を目安に、無理なく続けられる運動を。
- 飲酒・喫煙:過度の飲酒や喫煙はホルモンバランスを乱す原因に。血流も悪くなり、健康への影響も大きいため、節酒・禁煙を意識しましょう。
職場環境を見直してみるのも大事
職場環境の調整も重要です。
- 業務量を調整する:仕事量が多すぎると心身に負担がかかるため、上司に相談して業務の見直しを図る。
- 相談できる相手を見つける:信頼できる同僚や上司に話すだけでも気持ちが楽になる。
- 社内制度を活用する:時短勤務や在宅勤務などの制度を使って、負担を軽減する方法を検討する。
心地よい家庭の雰囲気づくりも欠かせない
男性更年期障害は、本人の自覚がない場合も多く、周囲の理解と協力が不可欠です。「なんとなく体調が悪い」「イライラしやすい」といった変化に気づいたら、まずは家族に相談し、理解と協力を得られるようにしましょう。家事の分担や育児への参加など、具体的な協力を得ることで、精神的・身体的な負担を軽減できるはずです。
これらの生活習慣・環境の調整は、男性更年期障害の症状改善だけでなく、将来的に様々な病気を予防することにも繋がります。焦らず、できることから少しずつ始めてみましょう。
休職の進め方と相談先
男性更年期障害の症状が重く、日常生活や仕事に支障が出ていると感じる場合、休職も選択肢の一つとして考えなければなりません。しかし、休職という決断は、経済的な不安だけでなく、キャリアへの影響や社会とのつながりを失うことへの恐れなど、様々な負担を伴います。
だからこそ、誰に、何を、どのタイミングで相談すべきかを明確に理解しておくことが重要です。ここでは、休職を検討し始める際の具体的な相談先と進め方についてご説明します。
会社や医師への相談ポイント
休職を考えるときは、主治医・上司・人事部・産業医、それぞれに適切な相談を行うことが欠かせません。まずは医療機関を受診し、必要に応じて診断書を取得します。診断書には「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」などの病名が記され、休職申請の根拠になります。
次に、会社へ診断結果と希望する対応を伝えましょう。就業規則や傷病手当金の有無も確認しておくと安心です。
場合によっては産業医との面談が必要になることもあり、復職時期や業務負担の調整についてアドバイスを受けることができます。主治医のフォローを受けながら治療に専念し、心身の回復を最優先にしてください。家族や周囲の理解も得ながら、焦らず自分のペースで復職に向けて歩んでいくことが大切です。休職は、前向きな一歩でもあります。
まとめ
40代、50代の男性で、何となく気分が晴れない、やる気が出ない、性欲の低下、疲れやすいなどの症状がある方は、男性更年期障害の可能性があります。男性更年期障害は、男性ホルモン(テストステロン)の減少により、心身ともに様々な症状が現れる疾患です。
まずは、生活習慣の見直しや、職場環境・家庭環境の調整から始めてみましょう。それでも症状が改善しない場合は、医療機関を受診し、専門医に相談することが大切です。男性更年期障害は、ホルモン補充療法などで症状を改善できる可能性があります。
休職が必要な場合は、主治医や会社と相談し、適切な手続きを行ってください。休職中は焦らず治療に専念して心身の健康を取り戻し、焦らず、自分に合ったペースで仕事に戻る準備を進めていきましょう。