男性更年期障害の代表的な症状の一つに「しびれ」があることをご存知でしょうか。加齢とともに減少する男性ホルモンが原因で、手足のしびれだけでなく、様々な不調を引き起こす可能性があります。
本記事では、男性更年期によるしびれの原因や、その背景にある自律神経の乱れについて解説します。さらに、糖尿病や脳卒中など、他の重大な病気との見分け方にも触れているので、しびれに不安を感じている方は最後まで参考にしてください。
目次
男性更年期障害のしびれの原因
男性更年期障害は、加齢に伴うテストステロンの減少によって起こり、手足のしびれが症状の一つとして現れることがあります。
テストステロンの低下が引き起こす主なメカニズムは「自律神経の乱れ」「神経伝達の低下」の2パターンです。
テストステロンは自律神経の安定に関わっており、その減少によって交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、末梢血管の血流が悪化し、手足のしびれを引き起こすことがあります。
また、 テストステロンは神経伝達物質の働きにも関与しています。分泌が低下すると、脳からの信号がうまく伝わらず、しびれや感覚異常が生じやすくなります。
しびれは左右対称かつ広範囲に出ることが多く、時間帯や体調によって変動することもあります。ただし、しびれの原因は更年期障害以外にも、糖尿病・動脈硬化・頸椎疾患など多岐にわたります。自己判断せず、医療機関での診察と検査を受けることが大切です。
片側だけしびれる場合は注意が必要
手足のしびれは、男性更年期障害の症状の一つとして現れることがありますが、もししびれが体の片側だけに現れる場合は、注意が必要です。
片側だけがしびれる場合は、更年期障害以外の病気が隠れている可能性があります。例えば、脳卒中、頸椎症、末梢神経障害、手根管症候群などです。
これらの病気は、放置すると症状が悪化したり、後遺症が残る可能性があるため、早期の診断と適切な治療が重要です。ここでは、片側だけがしびれる場合に考えられる病気についてより詳しく見ていきましょう。
脳卒中(脳梗塞、脳出血)
脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能が損なわれる病気です。症状は突然現れ、激しい頭痛、ろれつが回らない、片側の顔や手足の麻痺やしびれなどが見られます。
一刻を争う病気であるため、これらの症状が現れた場合は、すぐに救急車を呼んでください。
頸椎症
首の骨や椎間板が変形したり、神経を圧迫することで、首や肩の痛み、手足のしびれ、運動麻痺などが現れます。加齢や長年の姿勢の悪さ、デスクワークなどが原因となることが多いです。
初期は軽い肩こり程度の症状から始まり、徐々にしびれや痛みが強くなっていくケースが見受けられます。
末梢神経障害
糖尿病やビタミン不足などが原因で、手足の末梢神経に障害が起こると、しびれや痛み、感覚の異常などが現れることがあります。左右どちらか片側だけに症状が出るケースも少なくありません。
糖尿病は初期には自覚症状がほとんどなく、知らないうちに進行してしまうことも。その結果、神経障害などの合併症を引き起こすリスクが高まります。そのため、定期的に健康診断を受け、早期に異常を見つけることが重要です。
手根管症候群
手根管症候群とは、手首を通る「正中神経」という神経が圧迫されることで起こります。親指から薬指の一部にかけてのしびれや痛み、腫れ、さらには細かい作業のしづらさなどが特徴です。更年期以降の女性に多いとされていますが、実は男性にも決して珍しくない疾患です。
特に、デスクワークや工具を使う仕事、スポーツなどで手首を酷使する男性は要注意。神経の通り道である「手根管」に炎症やむくみが起きることで、神経が圧迫されやすくなるのです。加齢に伴う組織の変化や、糖尿病・甲状腺機能低下症といった基礎疾患も関係することがあります。
「疲れかな」と放置せず、しびれや痛みが続くようなら、整形外科での診察をおすすめします。
ギラン・バレー症候群
正式には「急性炎症性脱髄性多発根神経炎」と呼ばれ、免疫系の異常が原因で末梢神経が障害される病気です。手足のしびれや脱力感から始まり、徐々に麻痺が広がっていくのが特徴です。稀れに、重症化すると人工呼吸器が必要になる場合もあります。
これらの病気は、いずれも放置すると症状が悪化したり、後遺症が残る可能性があります。
特に、急にしびれや麻痺が現れた場合は、脳卒中など命に関わる病気の可能性があります。ためらわず、すぐに救急車を呼んでください。
更年期障害による手足のしびれの治療法
手足のしびれで一日中ジンジンするような不快感、夜も眠れないほどの痛み、それによって日常生活にも支障が出ている方もいらっしゃるかもしれません。
まずお伝えしたいのは、しびれの治療は「原因」を特定することが最も重要だということです。原因が分からなければ、適切な治療を行うことはできません。
男性更年期障害によるしびれの場合、大きく分けて「ホルモン補充療法(HRT)」と「生活習慣の改善」の二つの治療アプローチが考えられます。
ホルモン補充療法(HRT)
一つ目は、ホルモン補充療法(HRT)です。これは、加齢とともに減少する男性ホルモン(テストステロン)を補充する治療法です。
テストステロンが不足すると、自律神経のバランスが乱れ、血管の収縮や拡張がうまくいかなくなります。その結果、手足の末梢血管への血流が悪くなり、しびれが生じやすくなります。HRTによってテストステロンを補充することで、これらの症状を改善できる可能性があります。
生活習慣の改善
二つ目は、生活習慣の改善です。ストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣は、テストステロンの減少を加速させる可能性があります。十分な睡眠時間を確保し、バランスの取れた食事を摂り、適度な運動を心がけることで、自律神経のバランスを整え、しびれの症状を和らげることができます。
更年期障害以外の原因によるしびれの治療
更年期障害以外の原因によるしびれの治療法は、さらに多岐に渡ります。
神経が圧迫されていることによるしびれの場合、例えば手根管症候群のように手首の神経が圧迫されている場合は、手首を固定する装具や、神経の炎症を抑える薬物療法、場合によっては手術が行われます。
糖尿病が原因で起こる糖尿病性神経障害によるしびれの場合、最も重要なのは血糖値のコントロールです。高血糖の状態が続くと、神経が損傷し、しびれなどの症状が現れます。適切な食事療法、運動療法、薬物療法によって血糖値を適切な範囲に保つことで、しびれの悪化を防ぐことができます。
ビタミンB群の不足が原因でしびれが生じている場合は、ビタミンB1、B6、B12などのビタミン剤の服用、またはそれらを多く含む食品を摂取することで改善が期待できます。ビタミンB群は神経の働きを維持する上で重要な役割を果たしているため、不足するとしびれなどの神経症状が現れやすくなります。
血行不良が原因でしびれが生じている場合は、血流を改善する薬物療法や、生活習慣の改善が有効です。例えば、動脈硬化が原因で血行不良が生じている場合は、動脈硬化の進行を抑える薬や、血管を広げて血流を良くする薬が処方されることがあります。また、適度な運動、バランスの取れた食事、禁煙なども血行改善に効果的です。
ここで改めて強調したいのは、自己判断で治療法を選択することは大変危険だということです。同じ「しびれ」という症状でも、その原因は様々です。適切な治療を行うためには、医療機関を受診し、医師による診察と検査を受けることが不可欠です。
「もしかしたら更年期障害かも?」「年のせいかな?」と自己判断で放置せず、まずは専門医に相談することをおすすめします。
しびれを和らげるためのセルフケア
手足のしびれ。時折感じる程度なら「気のせいかな」とやり過ごせるかもしれません。しかし、それが頻繁に起こるようになったり、日常生活に支障が出るほどになったら、決して軽く見てはいけません。まるで電気が走るような痛み、ジンジンと響く不快感、感覚が鈍くなるような違和感…こうしたしびれは、体からのSOSサインかもしれません。
ここでは、つらいしびれを少しでも和らげるためのセルフケアの方法をご紹介いたします。
1. 血行促進でしびれを軽減
手足のしびれの原因の一つに、血行不良が挙げられます。血液は、酸素や栄養を体中に運ぶ役割を担っています。血行が悪くなると、末梢神経まで酸素や栄養が行き届かなくなり、しびれが生じやすくなります。
そこで効果的なのが、ストレッチやマッサージです。手首や足首を回したり、ふくらはぎを優しくもんだりすることで、血流を促進し、しびれを軽減する効果が期待できます。
特に、長時間同じ姿勢でいることが多い方は、こまめに体を動かす習慣を身につけましょう。デスクワーク中の方であれば、1時間に1回程度、席を立って軽いストレッチをするだけでも効果があります。
2. 冷えはしびれの大敵
冷えは、血管を収縮させ、血行をさらに悪化させるため、しびれを悪化させる大きな要因となります。特に、冬場は手足が冷えやすいので、手袋や靴下、腹巻などでしっかりと保温することが大切です。夏場でも、冷房の効いた室内では、一枚羽織るなどして冷え対策を心掛けてください。
また、ぬるめのお湯(38~40度程度)に15~20分程度つかる入浴も効果的です。入浴は、血行を促進するだけでなく、筋肉の緊張をほぐし、リラックス効果も期待できます。ただし、熱いお湯に長時間つかるのは、かえって体に負担がかかるため避けましょう。
3. 正しい姿勢を意識する
猫背や前かがみの姿勢は、血管や神経を圧迫し、しびれを引き起こす原因となることがあります。日頃から背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識しましょう。
特にデスクワークやスマートフォンの操作中は、姿勢が悪くなりがちなので注意が必要です。
4. ストレスをため込まない
過労やストレスは、自律神経のバランスを崩し、血行不良を招き、しびれを悪化させる可能性があります。
ストレスをため込まないためには、十分な睡眠時間を確保し、趣味やリラックスできる活動で心身ともにリフレッシュすることが大切です。
5. 栄養バランスの良い食事
ビタミンB12などのビタミンB群は、神経の働きを維持する上で重要な役割を果たしています。これらのビタミンが不足すると、しびれなどの神経症状が現れやすくなります。
バランスの良い食事を摂ることで、必要な栄養素をしっかりと補給しましょう。
セルフケアで改善しない場合は医療機関へ
ご紹介したセルフケアは、しびれの症状を一時的に和らげるためのものです。セルフケアを試しても症状が改善しない場合、あるいはしびれが悪化したり、他の症状を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしてください。
しびれは、放置すると日常生活に大きな影響を与える可能性があります。「もしかしたら…」と感じたら、なるべく早く専門医に相談することをおすすめします。早期発見、早期治療が、健康な生活を取り戻すための第一歩です。
まとめ
男性更年期障害によるしびれ、気になりますよね。今回は、その原因や症状、そして何よりも大切な対処法についてお伝えしました。
テストステロンの減少は、自律神経の乱れや血流悪化を招き、しびれの一因となります。ストレスや生活習慣の乱れも影響するので、まずはご自身の生活を見直してみましょう。
セルフケアとして、ストレッチやマッサージで血行を促進したり、冷え対策も大切です。
「もしかして…」と思ったら、すぐに医療機関へ。更年期障害以外にも、様々な原因が考えられるので、専門家の診断が安心への第一歩です。つらいしびれから解放されて、快適な毎日を送りましょう。