医科歯科連携では、診療ごとに報酬が定められており、その分の費用は利用者の負担となります。「実際にいくらかかるのだろうか」「どのような項目があるのだろうか」と疑問に感じている方も多いでしょう。
そこで本記事では、医科歯科連携ではどのような項目があるのか、そして患者負担はいくらくらいになるのかを詳しくご紹介します。
※自己負担額の計算方法について
まず大切な前提として、診療報酬の費用は全額を自己負担するわけではありません。ご自身の健康保険証に記載されている負担割合(1割、2割、3割など)に応じた金額を窓口で支払います。
この記事の表にある「患者負担」の金額は、この負担割合に応じて変動するため、「〇〇〜〇〇円」という表記になっています。
目次
そもそも医科歯科連携とは
医科歯科連携とは、医師と歯科医師が協力して、1人の患者さんの治療を多角的にサポートする仕組みです。
お口の健康は、手術後の合併症や持病の悪化に直接影響することが分かっており、安全で質の高い治療を行うために不可欠な取り組みとされています。
医科歯科連携の詳細やメリット、具体的な取り組み例はこちらの記事で詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。
医科歯科連携で算定される診療報酬

医科歯科連携の診療報酬は、主に以下の4つの場面で発生します。
- 診療情報提供:医師と歯科医師が、患者さんの情報を手紙などでやり取りする場合
- 周術期口腔機能管理:手術の前後などに、合併症を防ぐため専門的なお口のケアをする場合
- 回復期口腔機能管理:入院中にお口の状態を整えるために行われる歯科的な介入がある場合
- 在宅歯科:通院が難しい方のために、ご自宅や施設で歯科診療を行う場合
- その他:持病などに関連した特別な歯科治療を行う場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
医科歯科連携で算定される診療報酬|診療情報提供に関するもの
かかりつけ医から歯科を紹介されたり、逆に歯科から医科へ治療状況を報告したりする際に発生する費用です。専門家同士が患者さんの情報を文書で正確に共有し、安全な治療方針を立てるための大切な費用です。
診療情報提供に関するものに関しては、以下の表の通りです。
項目名 | 点数 | 金額 | 患者負担 | 詳細 |
診療情報提供料(Ⅰ)(※1) | 250点 | 2,500円 | 250〜750円 | 医師・歯科医師の紹介で他の病院を受診する場合(さらに細かい加算あり) |
診療情報提供料(Ⅱ)(※2) | 500点 | 5,000円 | 500〜1,500円 | 患者の要望で他の病院を紹介受診する場合 |
診療情報等連携共有料(※3) | 120点 | 1,200円 | 120〜360円 | 保険診療を行う医療機関(歯科を含む)からの依頼に応じて、他の医療機関が診療情報を提供した場合 |
電子的診療情報評価料(※4) | 30点 | 300円 | 30〜90円 | 検査結果や画像、薬の情報などを、電子的な方法で受け取り、それをもとに診療が行われた場合 |
連携強化診療情報提供料(※5) | 150点 | 1,500円 | 150〜450円 | かかりつけの医療機関や、難病の専門病院などから紹介されて来た患者について、紹介元の病院から「その後の診療内容を教えてほしい」と依頼があった場合 |
診療情報提供料(Ⅰ)に関しては、さらに細かく以下の点数が加算されるケースがあります。(※1)
項目名 | 点数 | 金額 | 患者負担 | 詳細 |
歯科医療機関連携加算(Ⅰ) | 100点 | 1,000円 | 100〜300円 | 医師が口の機能に関する治療が必要と判断し、患者の同意のもと歯科のある病院に紹介した場合 |
歯科医療機関連携加算(Ⅱ) | 200点 | 2,000円 | 200〜600円 | 周術期等における口腔機能管理の必要があり、患者の同意のもと歯科のある病院に予約を行った上で紹介した場合 |
退院時診療状況添付加算 | 200点 | 2,000円 | 200〜600円 | 患者が退院または転院した月かその翌月に、ほかの病院や施設に必要な情報をそえて紹介した場合 |
検査・画像情報提供加算(退院する患者の場合) | 200点 | 2,000円 | 200〜600円 | 患者が退院または転院した月やその翌月に、他の病院や施設に検査結果や画像などの情報を添えて紹介された場合 |
検査・画像情報提供加算(入院以外の患者の場合) | 30点 | 300円 | 30〜90円 | 入院していない患者が、他の病院や施設に検査結果や画像などの情報を添えて紹介された場合 |
医科歯科連携で算定される診療報酬|周術期の口腔機能管理に関するもの
周術期等口腔機能管理とは、手術を受ける患者の口腔(お口)の状態を整え、全身の合併症リスクを減らすために行われる歯科的な介入です。
ここでは、医師と歯科が連携して診療を行う際に関係する周術期口腔管理に関する診療報酬を詳しく見ていきましょう。
項目名 | 点数 | 金額 | 患者負担 | 詳細 |
周術期等口腔機能管理計画策定料(※6) | 300点 | 3,000円 | 300〜900円 | がん治療や手術の前後に、歯科で口腔機能の評価や管理計画を立てた場合 |
周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)(※7) | 手術前:280点手術後:190点 | 手術前:2,800円手術後:1,900円 | 手術前:280〜840円手術後:190〜570円 | 病院の依頼にもとづいて、歯科診療所が入院中や外来の患者にお口の管理を行い、その内容を文書で報告した場合 |
周術期等口腔機能管理料(Ⅱ)(※8) | 手術前:500点手術後:300点 | 手術前:5,000円手術後:3,000円 | 手術前:500〜1,500円手術後:300〜900円 | 手術を実施する病院の歯科が、入院中の患者に対してお口のケアを行い、その内容を文書で報告した場合 |
周術期等口腔機能管理料(Ⅲ)(※9) | 200点 | 2,000円 | 200〜600円 | 入院外の患者で、がん治療や放射線治療や緩和ケアを受けている期間中に、歯科でお口の管理を行い、その内容を文書で報告した場合 |
周術期等口腔機能管理料(Ⅳ)(※10) | 200点 | 2,000円 | 200〜600円 | 入院中の患者で、がん治療や放射線治療や緩和ケアを受けている期間中に、歯科でお口の管理を行い、その内容を文書で報告した場合 |
長期管理加算(※11) | 50点 | 500円 | 50〜150円 | 周術期等口腔機能管理計画策定料を算定した日の属する月から6月を超えて管理を行なった場合 |
医科歯科連携で算定される診療報酬|回復期の口腔機能管理に関するもの
回復期等口腔機能管理とは、入院中で回復期等にある患者の口腔(お口)の状態を整えるために行われる歯科的な介入です。
ここでは、医師と歯科が連携して診療を行う際に関係する回復期口腔管理に関する診療報酬を詳しく見ていきましょう。
項目名 | 点数 | 金額 | 患者負担 | 詳細 |
回復期等口腔機能管理計画策定料(※12) | 300点 | 3,000円 | 300〜900円 | 回復期に、歯科で口腔機能の評価や管理計画を立てた場合 |
回復期等口腔機能管理料(※13) | 200点 | 2,000円 | 200〜600円 | 歯科診療を行っている医療機関が入院中の患者にお口の管理を行い、その内容を文書で報告した場合 |
医科歯科連携で算定される診療報酬|在宅歯科に関するもの

在宅歯科とは、歯科医師や歯科衛生士が患者の自宅や介護施設などに訪問し、歯科治療や口腔ケアを行う医療サービスのことです。通院が困難な高齢者や障がいを持つ方を対象に、下記のような対応を行います。
- 虫歯や歯周病の治療
- 入れ歯の作製・調整
- 口腔ケア
- 飲み込む機能の評価・訓練
医科歯科連携では、在宅歯科に関して以下のような診療報酬が定められています。(※14)
項目名 | 点数 | 金額 | 患者負担 | 詳細 |
在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料1(NST1) | 100点 | 1,000円 | 100〜300円 | 入院中の患者に対して、病院内の栄養サポートチームの話し合いや回診に歯科が参加し、その結果をもとにお口の機能評価に基づく管理を行った場合 |
在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料2(NST2) | 100点 | 1,000円 | 100〜300円 | 介護施設などに入所している患者に対して、施設内で行われた食事観察や会議などに歯科が参加し、その結果をもとにお口の機能評価に基づく管理を行った場合 |
在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料3(NST3) | 100点 | 1,000円 | 100〜300円 | 障害のある児童が入所している施設で、食事の様子をうかがったり会議などに歯科が参加し、その結果をもとにお口の機能評価に基づく管理を行った場合 |
医科歯科連携で算定される診療報酬|その他
その他、医科歯科連携のその他のケースには、以下のようなものがあります。
項目名 | 点数 | 金額 | 患者負担 | 詳細 |
歯科医師連携加算(※15) | 50点 | 500円 | 50〜150円 | 栄養サポートチームに歯科医師が参加する場合 |
総合医療管理加算(※16) | 50点 | 500円 | 50〜150円 | 医科から歯科治療にあたり総合的医療管理が必要な患者で、診療情報提供料に定める様式に基づいた文書により診療情報の提供を受け、必要な管理や指導を行った場合 |
機械的歯面清掃処置(※17) | 72点 | 720円 | 72〜216円 | 糖尿病患者において、医科からの診療情報に基づき処置の必要がある場合 |
金属アレルギーに対するCAD/CAM冠の算定(大臼歯)(※18) | 1,200点 | 12,000円 | 1,200〜3,600円 | 金属アレルギーにより歯科用金属の使用が困難な患者に対して、医科からの診療場提供がある場合 |
まとめ
本記事では、医科歯科連携に関わる診療報酬について詳しく解説しました。項目が多く複雑に感じたかもしれませんが、患者さんが覚えておきたい大切なポイントは以下の3つです。
- 医科歯科連携の専門的な処置には、国が定めた公的な料金(診療報酬)があること。
- これらのほとんどは健康保険が適用され、自己負担は医療費全体の1~3割であること。
- これらの費用は、合併症などを防ぎ、安全で質の高い治療を受けるために不可欠な投資であること。
医科歯科連携は、医科と歯科の情報を一元化し、より患者の健康をサポートするためには欠かせません。今回紹介した項目は細かくてなかなか理解しづらいかもしれませんが、わからないことがあれば医師または歯科医師に相談してみましょう。
医科歯科連携に積極的に取り組んでいる医療機関は、以下のサイトから検索できるので、実際にリサーチしてみるのもおすすめです。
参考文献
※1.今日の臨床サポート.「B009 診療情報提供料(Ⅰ)」
※2.今日の臨床サポート.「B010 診療情報提供料(Ⅱ)」
※3.今日の臨床サポート.「B010-2 診療情報連携共有料」
※4.今日の臨床サポート.「B009-2 電子的診療情報評価料」
※5.今日の臨床サポート.「B011 連携強化診療情報提供料」
※6.しろぼんねっと.「B000-5 周術期等口腔機能管理計画策定料」
※7.しろぼんねっと.「B000-6 周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)」
※8.しろぼんねっと.「B000-7 周術期等口腔機能管理料(Ⅱ)」
※9.しろぼんねっと.「B000-8 周術期等口腔機能管理料(Ⅲ)」
※10.しろぼんねっと.「B000-9 周術期等口腔機能管理料(Ⅳ)」
※11.厚生労働省.「令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】」P107参照
※12.PT-OT-ST.NET.「B000-10 回復期等口腔機能管理計画策定料」
※13.しろぼんねっと.「B000-11 回復期等口腔機能管理料」
※14.しろぼんねっと.「C001-7 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料」
※15.今日の臨床サポート.「A233-2 栄養サポートチーム加算(週1回)」(注3)
※16.しろぼんねっと.「B000-4 歯科疾患管理料」(注10)
※17.しろぼんねっと.「A002 再診料」
※18.しろぼんねっと.「M015-2 CAD/CAM冠(1歯につき)」(通知(2)ハ)