目次
はじめに
レーシックはコンタクトレンズと比較して多くのメリットがあります。コンタクトレンズに必要なレンズの着脱やケアが不要となります。花粉症の時期、コンタクトレンズによって花粉の排出が上手くできず目の症状が悪化するといったことがありません。レーシックの手術費用は一度に払う金額としては高額ですが、長期的に見るとコンタクトレンズよりも経済的です。
一方で、レーシックには「手術」という心理的・身体的ハードルがあり、一度受けたら元の目には戻せないというデメリットがあります。SNSでレーシックを不安を煽るような投稿を見て、「やってみたいけど、やはりコンタクトレンズの方が安全かもしれない」と思っている方もいるかもしれません。
レーシックとコンタクトレンズ、自分のライフスタイルに本当に合うのはどちらでしょうか? それぞれの比較、メリットとデメリットなど、10年後を見据え、後悔しない選択をするために知っておきたいことを、日本におけるレーシックの先駆者である「みなとみらいアイクリニック」の荒井宏幸先生がわかりやすく解説します。
※関連記事はこちら→「レーシック手術で「見えた」時の感動を忘れられない。裸眼で見える素晴らしさを多くの人へ伝えたいーみなとみらいアイクリニック院長・荒井宏幸医師」
レーシックとコンタクトレンズの比較

レーシックとコンタクトレンズを比較した場合の代表的な違いについて表で紹介します。
項目 | レーシック(一般的なクリニックの場合) | コンタクトレンズ(1日1回使い捨てタイプを使った場合。1カ月のケア用品を1000円で計算) |
手術費用、または1カ月の費用 | 手術費用20〜40万円程度(両眼) | 1カ月で3000〜5000円(両眼)+ケア用品代1000円 |
1年後の費用 | なし(一般的な定期検診の費用を除く) | 3万6000円〜6万円(両眼)+ケア用品代1万2000円 |
10年後の費用 | なし(一般的な定期検診の費用を除く) | 36万円〜60万円(両眼)+ケア用品代12万円 |
定期通院の有無 | 一般的に術後翌日、1カ月後、3カ月後、その後は異常がなければ年に1〜2回の一般的な定期検診 | 一般的に3〜6カ月に1回の定期検診 |
ケア用品 | 不要 | 必要 |
裸眼生活 | ◎ | × |
日常生活の制限 | 手術後1週間程度は安静に過ごし、外出時には保護用メガネ・サングラスを使用 | 水の中のスポーツは注意が必要 |
メリット | ・裸眼で生活ができる ・近視、遠視、乱視を矯正できる ・毎日のケアが不要 ・目の異物感がない ・花粉症の時期に、コンタクトレンズへの花粉の付着による症状の悪化がない ・激しい運動や水の中のスポーツも問題なくできる ・長期的に見てコストが低い ・災害など、とっさの行動が必要なときも問題なくできる | ・1回の支出が比較的少ない ・手術ではないのでコンタクトレンズを外せば「元の目」に戻る ・度数が変わればレンズ交換が可能 |
デメリット | ・手術なので一度受けたら「元の目」には戻せない ・1回の支出が比較的多い ・目の状態によっては手術を受けられない人がいる ・手術後にドライアイが起こりやすい(徐々に改善する) ・夜間に光をまぶしく感じるハロー・グレア現象、近視の戻りといった術後のリスクがある ・選んだクリニックによっては、後悔することがある | ・眼球に負担がかかる ・決められたケアが必須 ・花粉症シーズン時、目のトラブルに見舞われやすい ・水の中のスポーツなど、できないスポーツがある ・眼球に異物が載っていることによる目の不調(ドライアイなど)が起こるリスクがある ・寝る時には外す必要がある |
目への影響 | 低 | 中(不適切な使用による感染症や角膜の酸素不足など) |
レーシックとコンタクトレンズの費用の比較
「レーシックは何十万円とお金がかかるから」という理由でコンタクトレンズを使い続けている方は、長期的視点でどちらが経済的メリットがあるかを考えるのも一つの方法です。
一度に出ていくお金はレーシックの方が高額です。しかしコンタクトレンズは消耗品であるため、使用年数に応じてコストが膨らんでいきます。しかもコンタクトレンズのタイプによっては、洗浄液、保存液といったケア用品代、レンズケース代といった「コンタクトレンズ以外の費用」がかかります。さらにコンタクトレンズは「高度管理医療機器」に分類されることから、眼科医の診察と指示を受けなくてはならず、定期的な眼科受診費用もプラスされます。わずか数年間でコンタクトレンズの費用がレーシックを上回ることは十分に起こりえるのです。
レーシックとコンタクトレンズの大きな違い・メリットとデメリット
レーシックとコンタクトレンズの最も大きな違いは、レーシックが角膜を削る「手術」で近視・遠視・乱視を矯正する治療法であるのに対し、コンタクトレンズが角膜の上にレンズを載せて近視・遠視・乱視を補正する方法である点です。
レーシックの場合、手術後は、いわゆる普通の目と同様の生活を送れます。それがレーシックの一番のメリットと言えるでしょう。対してデメリットは、手術後は「元の目」には戻れない点です。
コンタクトレンズはレンズという医療機器を使った矯正法のため、レンズがなければ「元の目」に戻ります。これはメリットであり、デメリットとも言えます。またデメリットとして、コンタクトレンズは角膜の上に異物(レンズ)を載せることから、レンズのタイプによっては短い仮眠であっても外さなければならず、装着には正しいケアが必要で、レンズが外れる恐れのある行動(水中でのスポーツなど)は要注意となります。目のトラブルもレーシックと比べて生じやすくなります。
レーシックとコンタクトレンズの長期的な目への影響
レーシックの目の影響としては、割合は少ないものの、視力が再び低下する近視の戻りがあります。ただし、元の視力に戻ることはありません。また、視界にぼやけやゆがみが生じるハロー・グレア現象、ドライアイもありますが、いずれも時間の経過とともに減少していきます。
コンタクトレンズは、短期的・長期的に見て、目への影響が指摘されています。不適切な使用で感染症のリスクが高まり、重症化すると失明に至る可能性があります。コンタクトレンズは涙を吸収しやすいという欠点があり、ドライアイを悪化させます。また、長年にわたるコンタクトレンズの生活で角膜が酸素不足に陥ると、感染症が起こりやすくなったり、角膜の一番内側にある角膜内皮細胞が減少しやすくなったりし、視力低下や角膜のにごりを招きます。コンタクトレンズの長期的な影響として、まぶたが垂れ下がる眼瞼下垂も起こりやすくなると言われています。
レーシック後にカラーコンタクトレンズ(カラコン)は使用できる?
レーシック後にカラーコンタクトレンズは使用できます。手術後、1〜3カ月ほど経ち、状態が安定した時点で眼科医に相談し、OKをもらってから使用してください。
カラコンは、適切な使い方をすることが大前提です。間違った使用法でカラコンを着用すると、レーシックで近視・遠視・乱視を矯正して良い視力を得られたのに、眼精疲労が悪化して視力が低下したり、視界がぼやけたりするようになることがあります。カラコンはコンタクトレンズと同様に角膜に異物(レンズ)を載せるため、角膜の酸素不足が起こりやすく、重症化すると角膜が濁り、視力の回復が難しくなります。
カラコンはレンズの素材と素材の間に着色されたカラーシートを挟み込むサンドイッチ製法でつくられていますが、中にはカラーシートがレンズ表面に直接プリントされているだけの粗悪品があります。こういったカラコンでは、カラーシートの一部が使用しているうちに剥がれてしまい、まぶたの裏側や角膜表面を傷だらけにしてしまいます。せっかくレーシックで快適な見え方を手に入れたのに、カラコンの間違った使用法のために目のトラブルに見舞われてしまったら、元も子もありません。
レーシック後にカラコンを使用する場合の注意点

レーシックの手術後から十分な期間をあけてカラコンを使用する
カラコンが可能になる期間として、レーシックの手術後1〜3カ月後がひとつの目安です。使い始めの時期は自己判断せず、必ず眼科医の確認を取ってからカラコンを使用するようにしてください。レーシックでは、角膜にフラップというフタのようなものを作ります。このフラップの状態が安定するまでカラコンは使えません。1〜3カ月で安定する方もいれば、それ以上に期間がかかる方もいます。
眼科で処方箋を出してもらう
カラコンは、処方箋なしにどこでも気軽に購入できます。それが、高度管理医療機器で眼科医の処方箋が必要となるコンタクトレンズと違う点です。しかしカラコンも、必ず眼科で処方箋を出してもらい、装着して安全・安心なものを購入してください。量販店やインターネットなどで購入した格安のカラコンの中には、目のトラブルを招きやすい粗悪品も混ざっている可能性があります。レーシックの手術後の定期検診が終了する段階で、眼科医に相談してください。
眼科で定期検診を受ける
通常のコンタクトレンズと同様、3カ月〜半年に1回は定期検診を受けてください。それ以外でも違和感を覚えれば、すぐに眼科を受診してください。
レーシック前に使用していたカラコンをそのまま使用しない
レーシックの手術で角膜を削っているため、レーシック前のカラコンが合わないケースがあります。目のカーブとカラコンのカーブが合っていないと、瞳孔とレンズの着色部分が重なり、視界がぼやけたり、暗いところで視野が狭くなることがあります。
Q&A レーシック・コンタクトレンズのよくある疑問
レーシック・コンタクトレンズのよくある疑問は以下になります。
Q.良い視力をずっと維持できるのはどちら?
A.レーシックで1.0〜1.5の視力を得られても、数年後や10年後などに近視の戻りが見られることがあります。ただし、割合としてはまれです。コンタクトレンズは、視力の低下に伴いレンズの度数を変えていくことができます。近視の進行はそれぞれの目によって異なり、進行しやすい目は、レーシック後でもコンタクトレンズの使用でも同じように進みます。
Q.どちらが目のトラブルを起こしやすい?
A.レーシックは非常に安全性の高い手術です。レーシックで何かトラブルが起こるとしたら手術時と手術後数カ月の間であり、アフターケアをしっかり行う眼科で治療を受けることでそれらを限りなくゼロに近づけられます。
一方、コンタクトレンズは基本的に長期間にわたり使用するもの。ドライアイ、ドライアイに関連するアレルギー性結膜炎、眼球に刺激が加わり続けることで起こる巨大乳頭性結膜炎、ドライアイや角膜への刺激による角膜上皮障害などのリスクがあります。とりわけ注意が必要なのが感染症です。コンタクトレンズを外さないまま眠ったり、使用期間を守らなかったり、汚れた手指でコンタクトレンズに触れたりといった不適切な使用を繰り返していると、角膜に炎症が生じる感染性角膜炎を起こしやすくなります。
感染性角膜炎を発症すると、激しい頭痛、異物感、まぶしさといった症状が現れ、角膜が白くにごり、視力が低下します。重症化すると角膜に孔があき、眼球内部まで感染が広がり、最悪の場合、失明に至ります。特に水道水によって感染するアカントアメーバ感染は、現在でも有効な薬剤がないため、重篤な角膜障害になります。ですので、水道水でコンタクトレンズを洗ってはいけないのです。
Q.ドライアイになりやすいのは?
A.レーシックは手術後、角膜の知覚神経が一時的に遮断され、ドライアイを引き起こしやすくなります。ただし、約3ヶ月程度で知覚神経が再生しドライアイも改善していきます。コンタクトレンズは涙を吸収しやすいため、ドライアイのリスクが高くなります。しかも、年齢が上がるにつれそのリスクは高くなります。
Q.老眼になりやすいのは?
A.老眼は加齢により視力変化のため、レーシックでもコンタクトレンズでも、45歳代以降はだれにでも起こります。なお「レーシックをすると老眼になりやすいと聞いたのですが」という質問を時々受けますが、そのようなことはありません。
Q.適応とならないケースはある?
A.レーシックは、角膜の形状異常、角膜の厚さ不足、18歳未満、妊娠・授乳中の方は適応外になります。コンタクトレンズは、角膜の知覚が過敏で目の異物感が取れない方、ドライアイ・アレルギー症状が強い方、コンタクトレンズ眼障害がある方、小学生以下、コンタクトレンズの適切なケア・装用方法を守れない方は使用できません。
Q.緊急時や災害時に強いのは?
A.緊急時や災害時には、裸眼で行動できるレーシックの方が強いと言えるでしょう。
Q.レーシックとコンタクトレンズはどちらがいい?
A.朝、起きてすぐに動けて、日常生活を裸眼で過ごし、旅行や災害時にコンタクトレンズの心配をしなくても良いというメリットはプライスレスの喜びがあると考えています。もし、レーシックかコンタクトレンズかで迷っているなら、「裸眼でみえるようになったらどういう生活が待っているか」を想像してみてはいかがでしょうか? ある方は裸眼でもコンタクトレンズでもQOLはそう変わらないと感じるかもしれません。また、ある方は「疲れて帰った時、コンタクトレンズのことを気にせずに寝られる」「これまで躊躇していたスポーツも思う存分できる」などと感じるかもしれません。ご自身のライフスタイルや嗜好性に合わせ、ストレスが少なく、QOLが高くなると感じる方を選んでください。
まとめ

レーシックとコンタクトレンズには、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらが優れているという単純な話ではなく、ご自身のライフスタイル、目の健康状態、将来のビジョンに合わせて選ぶことが大切です。
レーシックに興味を抱き、相談に来られる患者さんの中には「もっと早く決断していればよかった」とおっしゃる方もいれば、「じっくり考えて納得して選べてよかった」とおっしゃる方もいます。どちらにも共通しているのは、メリット、デメリットをしっかり理解した上で、「自分で納得して選んだ」ということです。それが、後悔しない結果につながっていると感じています。
医療の技術は格段に進歩しています。それはレーシックにおいても例外ではなく、最新の装置では、よりオーダーメードの「見え方」を提供できるようになりました。これからの10年をどうやって過ごしていきたいか。さらにその10年後はどうしたいか。長期的な視点で考えてみると、どんな選択が生活をより豊かにするかが少しずつ見えてくるのではないでしょうか。皆さんが満足いく選択をできるよう、その判断材料を丁寧にお伝えし、安心して決断できるサポートをしていきたいと思っています。