発熱や喉の痛みが生じると、「もしかしてコロナかも?」と疑うこともあります。コロナウイルス感染症は、2023年5月に5類感染症へ移行しましたが、ウイルスの脅威が消えたわけではありません。
流行初期に特徴的だった味覚・嗅覚異常は減り、今は「焼けるような喉の痛み」や「市販薬が効きにくい頭痛」など、変異株による新たな症状が増えています。
この記事では、コロナウイルスに見られる特徴的な症状や陽性になった際の正しい対応、誰もがなりうる「後遺症」のリスクを詳しく解説します。記事後半では回復後の注意点もご紹介するので、ぜひ最後まで参考にしてください。
コロナウイルスとインフルエンザの症状の違い
コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期症状として多く見られるのは、発熱・咳・喉の痛み・強い倦怠感などです。インフルエンザとよく似ているため、感染初期の段階では自己判断が難しく、知らぬ間に周囲へ感染を広げてしまうリスクがあります。
症状の経過の違いは以下のとおりです。
| 種類 | 症状の経過 |
| コロナウイルス | ・緩やかに症状が進行する傾向 ・乾いた咳や喉の痛み、倦怠感が強くなっていくケースが多い ・発症初期から嗅覚や味覚の異常を訴える人も少なくない ・症状が長引く場合や、発症から5〜7日ほど経過して肺炎が進行することもある |
| インフルエンザ | ・突然の高熱や関節痛、悪寒などで急激に発症 ・発症から3〜4日ほどで解熱することが多いが、肺炎や脳症を併発することもある |
呼吸のしづらさや息切れ、強い倦怠感が出てきた場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
コロナウイルスに見られる主な症状
コロナウイルス感染症では、風邪やインフルエンザと似た症状に加え、特有の症状や変異株ごとの傾向、重症化のサインがあります。ここでは以下の3つの観点から解説します。
- コロナウイルス特有の症状
- 変異株で多い症状
- 注意すべき症状
コロナウイルス特有の症状
コロナウイルス感染症には、他の呼吸器感染症ではあまり見られない以下のような特徴的な症状が報告されています。(※1)
| 症状 | 具体的な内容 |
| 味覚・嗅覚の異常 | 食べ物の味がしない、いつもと違う味に感じる、コーヒーや香水のにおいがわからないなど、味やにおいを感じにくくなる |
| 強い倦怠感(後遺症) | ・「体が鉛のように重い」「起き上がれない」と感じるほどの、強いだるさ ・日常生活に支障をきたすほどの倦怠感が突然現れることがある |
変異株で多い症状
コロナウイルスは流行の波ごとに変異を繰り返し、主流となるウイルスの種類(変異株)が入れ替わってきました。変異株によって、現れやすい症状の傾向も変化しており、以下のような症状が多く見られるようになっています。
- 強い喉の痛み:唾を飲み込むのもつらいほどの焼けるような痛みを感じることがある
- 鼻水・鼻づまり:比較的サラサラした鼻水が続く傾向がある
- 頭痛:ズキズキとした拍動性の強い頭痛が続き、市販の鎮痛薬が効きにくいことがある
- 咳:痰の絡まない乾いた咳だけでなく、痰が絡む湿った咳も見られる
ウイルスは変化を続けており、流行の時期によって症状の出方が少しずつ変わります。その時々で特徴が違うため、最新の情報をチェックしておくことが大切です。
注意すべき症状

多くの場合、コロナウイルス感染症は軽症でほとんど回復しますが、中には中等症や重症化となり入院を必要とするケースもあります。
以下のような症状が見られた場合は、重症化のサインかもしれません。
| 分類 | 具体的な症状 |
| 呼吸の状態 | ・息が荒い、息苦しさを感じる ・少し動いただけでも息が切れる ・胸に痛みや圧迫感がある ・唇の色が紫色になっている(チアノーゼ) |
| 意識の状態 | ・呼びかけに反応が鈍い ・ぼんやりしている、意識がもうろうとしている ・けいれんがある |
| その他の状態 | ・水分がとれず、ぐったりしている ・高熱が続いている |
特に注意したいのは、呼吸の状態です。コロナウイルスによる肺炎では、肺の機能が低下して血中の酸素濃度が下がっていても、ご自身では息苦しさを感じにくいことがあります。
顔色が悪かったり、肩で息をしていたりする場合は注意が必要です。ためらわずに医療機関へ連絡するか、救急車を要請しましょう。
コロナウイルス陽性後の対応方法3つ
新型コロナウイルスは「5類感染症」へ移行しましたが、ウイルス自体の感染力が弱まったわけではありません。陽性後には、体をしっかりと休ませて回復に専念すること、周囲の人へ感染を広げないための配慮は引き続き重要です。
ここでは陽性になった後の具体的な3つの対応方法を解説します。
①自宅療養
②家族にうつさないための家庭内感染対策
③学校・職場への復帰
①自宅療養
自宅療養で大切なことは、無理をせず体を休めることです。ウイルスと戦うために免疫が活発に働いており、体は普段よりも多くのエネルギーを消耗しています。十分な睡眠と安静を保ち、回復のための時間を確保しましょう。
療養中の過ごし方のポイントは以下のとおりです。
| ポイント | 具体的な内容 |
| 十分な水分補給 | ・水やお茶に加え、経口補水液やスポーツドリンクで電解質を補う ・発熱や発汗で失われやすい水分をこまめに摂取する |
| 栄養のある食事 | ・おかゆ、うどん、スープ、果物、ゼリー飲料など消化の良い食事を中心にとる ・無理せず少量でも栄養を確保する |
つらい症状がある場合は市販薬を活用するのも一つの方法です。
市販薬を使用する際は、以下のような注意が必要です。
| 症状 | 市販薬の例 | 注意点 |
| 発熱・頭痛・喉の痛み | 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど) | ・複数の薬を併用しない ・他の薬を服用中の方や持病がある方は、事前に医師や薬剤師に相談する |
| 咳・たん | 鎮咳薬、去痰薬 | 咳を無理に止めると、たんが排出されにくくなることがある |
| 鼻水・鼻づまり | 総合感冒薬、抗ヒスタミン薬 | ・眠気が出ることがあり ・お子さんや妊娠中の方は特に注意が必要 |
症状が長引く、息苦しさや高熱が続く場合は、重症化のサインの可能性があります。無理せず速やかに医療機関に相談してください。
また、基礎疾患がある方では、抗ウイルス薬の服薬(保険診療で15000円以上)もご検討ください。
②家族にうつさないための家庭内感染対策
ご自身が療養に専念するためにも、同居しているご家族に感染を広げないための対策は重要です。高齢の方や基礎疾患をお持ちの方、妊婦さん、小さなお子さんがいるご家庭では、細心の注意が求められます。
家庭内でできる具体的な感染対策は以下のとおりです。
- 部屋を分ける
- こまめに換気する
- マスクを正しく着用する
- 手洗い・手指消毒を徹底する
- 共有部分を消毒する
- タオルや食器の共用を避ける
- ごみの捨て方に注意するこれらの対策を徹底することで、家庭内での感染リスクを大きく減らすことができます。
③学校・職場への復帰
体調が回復してきたら、次に気になるのが学校や職場への復帰時期です。法律で定められた明確な出勤・出席停止期間はありませんが、厚生労働省は「発症日を0日目として5日間」は外出を控えるよう推奨しています。
この期間は、ウイルスを体外に排出する量が多く、感染拡大の可能性があるためです。復帰の目安は、発症から5日が経過しており、かつ解熱後や咳・喉の痛みなどの症状が改善してから24時間以上が経っている場合です。
発症後10日が経つまでは不織布マスクを着用し、高齢者や基礎疾患のある方との接触を控えましょう。復帰時は、勤務先や学校のルールに従い、診断書や療養証明書の提出が必要かを事前に確認しておくと安心です。
コロナウイルス回復後の注意点
療養期間を終えても、体は完全には回復しておらず、無理をすると体調の悪化や後遺症を招くこともあります。回復期は、体力を少しずつ取り戻しながら再感染を防ぐことが大切です。
ここでは、回復後に意識したい5つのポイントを紹介します。
①十分な食事摂取
②適度な運動
③再感染の予防
④注意したい後遺症
⑤後遺症が長引く時に相談すべき診療科
①十分な食事摂取
感染症からの回復には、「栄養」と「運動」が重要です。失われた体力や筋肉を取り戻すため、まずは日々の食事を見直していきましょう。
回復を後押しする食事のポイントは以下のとおりです。
| ポイント | 具体的な内容 |
| タンパク質を十分にとる | ・タンパク質は、免疫細胞や筋肉、臓器など、体を作る基本となる栄養素 ・肉、魚、卵、大豆製品(豆腐や納豆など)を毎食のメニューに取り入れる |
| ビタミン・ミネラルで体の調子を整える | ・免疫機能の維持に関わるビタミンC、D、亜鉛などをとる ・野菜、果物、きのこ、海藻類などをバランス良く食卓に並べる |
| こまめな水分補給を続ける | ・発熱で失われた水分を補い、体内の老廃物を排出するためにも水分は不可欠 ・水やお茶などを1日に1.5リットルを目安にこまめに飲む |
食欲が完全に戻らない場合は、おかゆやうどん、栄養補助ゼリー、具沢山のスープなど、消化しやすく栄養価の高いものを試してみてください。一度に多く食べられない時は、食事の回数を複数回に分けるのもおすすめです。
②適度な運動
体力が少し回復してきたら、軽い運動から体を慣らしていきましょう。急に元の運動習慣に戻ろうとすると、体に負担をかけてしまいます。以下に示すように、徐々に運動を再開させていくことが大事です。
| ステップ | 具体的な内容 |
| 1.室内での軽い活動 | ・座っている時間を減らし、家の中を少し歩き回ることから始める ・簡単なストレッチで、療養中に凝り固まった筋肉をゆっくりほぐす |
| 2.短い時間の散歩 | ・体調が良い日には、5分程度の散歩に出る ・「息が弾むが、会話は楽にできる」くらいのペースが目安 |
| 3.少しずつ時間と強度を調整 | ・歩く時間を10分、15分と少しずつ延ばす ・運動中に強い疲労感、めまい、胸の痛み、息切れなどを感じたら、すぐに中止して休む |
このステップを参考に、無理のないペースで体調の変化を確かめながら進めていきましょう。
③再感染の予防
コロナウイルスは変異を繰り返すため、回復後でも他のウイルスタイプによる再感染する可能性があります。特に夏は流行しやすく、油断は禁物です。
混雑した場所や換気の悪い室内では不織布マスクを着け、外出後や食事の前にはこまめな手洗い・手指消毒を心がけましょう。室内では1〜2時間に一度、5〜10分程度の換気を行うことも大切です。
ワクチン接種は再感染を完全に防ぐものではありませんが、重症化のリスクを減らす効果が期待できます。十分な睡眠と栄養をとり、免疫力を保つことが、再感染を防ぐための基本です。
④注意したい後遺症
コロナウイルス感染症では、急性期の症状が治まった後も、心身にさまざまな不調が長く続く「後遺症(長期COVID)」が報告されています。(※4)年齢や感染時の症状の軽さに関わらず、以下のような症状は誰にでも起こる可能性があります。
| 分類 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 全身症状 |
|
| 呼吸器症状 |
|
| 精神・神経症状 |
|
| その他の症状 |
|
もし症状が続いたり、生活に支障を感じるようなら、早めに医療機関に相談してみましょう。
⑤後遺症が長引く時に相談すべき診療科
後遺症の症状は多岐にわたるため、かかりつけ医や、コロナの診断を受けた医療機関に相談し、現在の症状を詳しく伝えましょう。全体像を把握したうえで、必要な検査を行ったり、症状に応じた専門の診療科を紹介してくれたりします。
かかりつけ医がいない場合や、つらい症状がはっきりしている場合は、以下の表を目安に受診を検討してください。
| 主な症状 | 相談先の診療科の例 |
|---|---|
| 咳、息切れ、痰が続く | 呼吸器内科 |
| 動悸、胸の痛み | 循環器内科 |
| 倦怠感、微熱、原因がはっきりしない不調 | 一般内科、総合診療科 |
| 頭痛、めまい、手足のしびれ | 脳神経内科 |
| 記憶力・集中力の低下(ブレインフォグ) | 脳神経内科、精神科・心療内科 |
| 気分の落ち込み、不安、不眠 | 精神科・心療内科 |
| におい・味がわからない(味覚・嗅覚障害) | 耳鼻咽喉科 |
| 発疹、かゆみ、脱毛 | 皮膚科 |
複数の症状を総合的に診察する「コロナ後遺症外来」を設置する医療機関も増えています。お住まいの自治体のホームページなどで情報を確認してみるのも一つの方法です。
まとめ
コロナウイルス感染症は5類感染症へ移行しましたが、ウイルスの感染力が弱まったわけではありません。陽性になった場合は、無理せず体を休め、周囲への感染を防ぐ対策を心がけることが大切です。
回復後も倦怠感や咳などの後遺症が続くこともあります。つらい症状を一人で抱え込まず、かかりつけ医や専門の医療機関へ気軽に相談してください。
参考文献
- Elrobaa IH, New KJ.COVID-19: Pulmonary and Extra Pulmonary Manifestations.Front Public Health,2021,9.
- Bishnoi A, Sharma A, Mehta H, Vinay K.Emerging and re-emerging viral exanthems among children: what a physician should know.Transactions of the Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene,2025,119,1,p.13-26.
- Ramandi A, Akbarzadeh MA, Khaheshi I, Khalilian MR.Aortic dissection and Covid-19; a comprehensive systematic review.Current Problems in Cardiology,2023,48,6,p.101129.
- Li B, Bai J, Xiong Y, et al.Understanding the mechanisms and treatments of long COVID to address future public health risks.Life Sciences,2024,353,p.122938.
