「風邪かな?」と思うような鼻水や咳の症状は、もしかしたらRSウィルスに感染しているからかもしれません。RSウィルスの多くは軽い症状で済みますが、乳児や高齢者がかかると肺炎を引き起こすこともあります。
この記事では、RSウィルスの症状から受診の目安、家庭でできるケア、大切な家族を守るための予防法までを詳しく解説します。
RSウィルス感染症とは?
RSウィルス感染症は呼吸器に感染する病気であり、特別なものではありません。2歳になるまでに、ほとんどの子どもが一度は感染するといわれる身近な疾患です。(※1)
ここでは、RSウィルスに関する以下の3つを詳しく解説します。
- 原因と感染経路
- 症状
- 流行する時期
原因と感染経路
RSウィルス感染症は、「RSウィルス(RespiratorySyncytialVirus)」に感染することが原因で引き起こされます。RSウィルスは非常に感染力が強く、一度感染しても免疫が長く続かないため、生涯にわたって何度も感染を繰り返すのが特徴です。
RSウィルスは、主に飛沫感染と接触感染の2つでほかの人へと広がります。飛沫感染は、感染した人の咳やくしゃみなどで飛び散るしぶきを吸い込むことで、うつる経路です。接触感染は、ウィルスが付いた手で自分の目や鼻、口の粘膜を触ることで感染します。
保育園や幼稚園などの集団生活の場では、子ども同士の距離が近く、おもちゃなどを共有するため、あっという間に感染が広がります。症状が軽い年長児や大人が、RSウィルスに感染しているとは知らず、赤ちゃんにうつしてしまうケースが多いです。
症状
RSウィルスに感染すると、通常2〜5日の潜伏期間を経て症状が現れます。(※1)最初は発熱、水様性鼻水、咳など、普通の風邪と見分けがつかない症状から始まることがほとんどです。
多くの子どもは数日のうちに自然に回復しますが、初めて感染した乳児は症状が進行することがあります。乳幼児はウィルスへの抵抗力が少なく、症状が強く出やすい傾向です。気管支が大人より狭く、少しの炎症や痰で気道がふさがれて重症化する可能性もあります。具体的には発熱を伴い、哺乳低下、喘鳴から多呼吸などになります。
健康な大人が感染した場合は、軽い鼻風邪で済むことがほとんどのため安心してください。しかし、高齢の方や、心臓・肺の病気・喘息などの基礎疾患をお持ちの方は、肺炎を起こし重症化することがあるので注意しましょう。
流行する時期
RSウィルス感染症は、夏から流行が始まり秋にピークを迎える感染症として知られていました。しかし、COVID-19のパンデミック以降、世界的にマスク着用や手指消毒が徹底された影響で、ウィルスの流行時期にずれが生じています。
現在では特定の季節によらず年間を通して流行が見られるため、一年中、RSウィルスの感染予防の対策が必要です。お住まいの地域での詳しい流行状況は、自治体、衛生研究所、保健所の発表する情報を参考にしてください。
受診の目安
RSウィルス感染症の多くは自然に回復に向かいますが、小さな子どもや高齢の方、持病をお持ちの方は注意が必要です。
ここでは、医療機関の受診の目安に関する以下の内容を解説します。
- 高齢者や基礎疾患がある方の感染
- すぐに受診すべき症状
- 似ている病気との見分け方
高齢者や基礎疾患がある方の感染
高齢者や持病をお持ちの方がRSウィルスに感染すると、重い肺炎を引き起こすなど、命に関わる状態になるリスクがあります。
以下のような基礎疾患がある方は、注意深く自身の体調を観察してください。
- 慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息など、普段から呼吸機能が低下している
- 慢性心不全など、心臓に負担がかかっている状態である
- がんの治療中、臓器移植後、ステロイド・免疫抑制剤を服用中である
- 糖尿病
海外の研究では、血液悪性腫瘍患者がRSウィルスに感染した場合、死亡リスクが高まることが報告されています。(※2)60歳以上の血液がんの方がRSウィルスに感染すると、入院のリスクが3.78倍も高くなることもわかっています。(※3)
自身や家族に重症化のリスクがある場合は、ただの風邪と軽視してはいけません。いつもと違う症状が出た段階で、早めにかかりつけ医に相談することが大切です。
すぐに受診すべき症状
RSウィルス感染症になったあと、すぐに医療機関を受診すべき症状を以下の表にまとめました。
| 感染者 | 受診すべき症状 |
|---|---|
| 子ども |
・肩を上下させて、苦しそうに息をしている ・呼吸をするたびに、胸やお腹がペコペコとへこむ ・息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音が聞こえる ・顔色や唇の色が青白い、または紫色になっている ・ミルクや母乳の飲みが悪い、または水分をほとんど摂れない ・呼吸が15秒以上止まることがある(無呼吸発作) |
| 大人 |
・安静にしていても息が苦しい、息切れがする ・呼吸の回数が多く、浅くなっている ・横になると息苦しさが増して、座らないと楽にならない ・胸に痛みを感じる |
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上記の症状が出ている場合は、重症化する可能性があります。夜間や休日であってもためらわずに、救急外来などを受診してください。
似ている病気との見分け方
RSウィルス感染症の初期症状は、インフルエンザや新型コロナウィルス、その他の風邪とよく似ています。症状だけで完全に見分けることは困難ですが、それぞれの病気には以下のような特徴の違いがあります。
| 病気の種類 | 主な症状の特徴 | 流行時期 |
|---|---|---|
| RSウィルス感染症 |
・しつこい咳や痰が続き、徐々に悪化する ・息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴)が出やすい |
通年 |
| インフルエンザ |
・38度以上の急な高熱で発症する ・強い悪寒や関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く出る ・全身の倦怠感が強い |
主に冬 |
| 新型コロナウィルス |
・発熱、咳、のどの強い痛み、倦怠感がある ・味覚や嗅覚の異常が出ることがある |
通年(流行の波がある) |
| 一般的な風邪 |
・鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みなど、鼻やのどの症状が中心 ・発熱は軽度なことが多く、全身症状は比較的軽いが、重症例もある。 |
主に秋〜春 |
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症状が長引いたり、呼吸が苦しかったりするなど、心配な点があれば医療機関で相談し、必要に応じて検査を受けましょう。
RSウィルスの診断と検査
RSウィルス感染症が疑われる場合でも、必ずしも全員に検査を行うわけではありません。RSウィルスには治療薬がなく、症状を和らげる対症療法が治療の中心となるためです。
ただし、生後3か月未満の赤ちゃんや早産で生まれた子ども、持病のある方などは、重症化リスクが高いため検査をする場合があります。
RSウィルスの検査は、鼻の奥の粘液を細い綿棒で採取して行われます。インフルエンザの検査と同じく、15分ほどで結果がわかる「迅速抗原検査」が一般的な方法ですが検査機適応は1歳未満の乳児となります。
RSウィルスの治療法
RSウィルスの治療は、つらい症状を和らげる対症療法が中心です。主な治療法を以下の表にまとめました。
| 治療法 | 方法 |
|---|---|
| 薬物療法 | 痰を出しやすくする薬や気管支を広げる薬を服用する |
| 吸入療法 | 咳がひどいときに気管支を広げる薬を霧状にして吸い込む |
| 酸素投与 | 呼吸が苦しく、血中の酸素不足の場合に入院して行う |
| 点滴 | 水分が取れず、脱水を起こしている場合に行う |
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治療の際は病院から処方される薬を服用し、自宅で体をしっかりと温めて休んでください。こまめに水分補給し、脱水症状にならないよう注意しましょう。室内は加湿器などを使い、湿度を50〜60%に保つと、咳が楽になり痰も出しやすくなります。
乳幼児の場合は、鼻づまりを起こして呼吸困難になる可能性もあります。鼻吸い器などを使って、こまめに鼻水を取り除くことが重要です。
RSウィルスの予防法
RSウィルス感染症には特効薬がないため、ウィルスに感染しないための予防が大切です。
ここでは、RSウィルスに感染しないための以下の3つの予防法を紹介します。
- 感染者との接触をできる限り避ける
- 手洗い・消毒を徹底する
- 予防接種を受ける
感染者との接触をできる限り避ける
RSウィルスを予防するためには、感染者との接触をできる限り避けることが大切です。
RSウィルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。赤ちゃんは、風邪症状のある家族からうつることが多い傾向にあります。感染者との物理的な接触を減らすことが、基本的な予防策となります。
家庭内では、以下の点に注意してください。
- 風邪症状があるときはマスクを着用する
- 生活用品の共有を避ける
- 流行期の外出を控える
保育園や幼稚園に通っているお子さんが、ウィルスを家庭に持ち込むことはよくあります。風邪症状があるときは感染者との接触をできる限り避け、感染しないよう注意しましょう。
手洗い・消毒を徹底する
手洗い・消毒の徹底も、RSウィルスの予防には重要です。
RSウィルスは、ドアノブやおもちゃ、手すりなどの表面で数時間生きることが報告されています。(※4)ウィルスが付いた場所に触れた手で自分の顔を触ると感染するため、こまめな手洗いと消毒が大切です。
手を洗うときは石鹸をよく泡立て、手のひら・手の甲・指の間・爪の先・手首まで、30秒以上かけて丁寧に洗い流しましょう。外出先など、すぐに手が洗えないときは、アルコール消毒液を補助的に使ってください。
子どもがよく触るおもちゃやテーブル、ドアノブ、電気のスイッチなどは、こまめにアルコールや塩素系の消毒剤で拭くと安心です。
RSウィルスが手に付かないように、以下のタイミングでは意識して手洗いや消毒をしましょう。
- 外出先から帰宅したとき
- 料理や食事の前後
- トイレのあと
- 鼻をかんだり、くしゃみを手で押さえたりしたあと
- 赤ちゃんのおむつ替えや授乳の前
基本的な対策を家族全員で行うことが、感染症予防につながります。
予防接種を受ける
予防接種を受けることも、RSウィルスの予防法です。
近年では重症化を防ぐための予防薬(モノクローナル抗体薬)が登場し、RSウィルス感染による乳児の入院リスクが減少したと報告があります。(※5)抗体そのものを注射する予防薬であり、ウィルスが侵入してもすぐに攻撃し、重症化を防ぎます。適応は早産児・低出生体重児・心疾患や呼吸器疾患、染色体異常など基礎疾患がある子供のみです。
予防接種は、重症化のリスクが高い高齢者や妊婦におすすめです。
2026年4月より、妊娠中のお母さんもRSウイルスワクチンが定期接種として認可される見込みです。このワクチンを接種すると、抗体は胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにも受け渡されます。生まれてきた赤ちゃんは、生後数か月間の重症化しやすい時期を、お母さんからもらった免疫で守られるため安心です。
なお、接種後には接種部位の痛みや腫れ、軽い発熱、倦怠感などの副反応がみられることがありますが、多くは一時的なものとされています。費用は保険適用外(自費)で、25,000〜38,000円程度です。
RSウィルスでよくある質問
RSウィルス感染症で多くの方が気になる、「①登園・登校・出勤の基準はありますか?」「②一度感染しても再感染しますか?」という質問にお答えします。
①登園・登校・出勤の基準はありますか?
RSウィルス感染症は、学校保健安全法で出席停止期間が明確に定められていません。登園や出勤を再開するタイミングは、本人の体調を第一に考えたうえで、所属する保育園、学校、職場の規定に従うのが基本です。
一般的に、以下のすべての項目を満たしていることが、RSウィルス感染症後の復帰の目安です。
- 活気があり、普段通り元気に過ごせているか
- 咳や鼻水が落ち着き、ほかの人にうつす心配が減っているか
- 息を吐くときの「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」という音がなくなっているか
- 食欲が戻り、普段の8割程度の食事や水分が摂れているか
RSウィルスに感染すると症状発現の3~4日前に始まり、少なくとも14日間連続はウィルスが体から排出される可能性があります。(※6)周囲への感染を防ぐため、復帰後もしばらくはマスクの着用や手洗いを徹底することが大切です。
②一度感染しても再感染しますか?
RSウィルスは一度感染しても、何度も再感染を繰り返すウィルスです。RSウイルスにもA型、B型があり様々なタイプがあるからです。RSウィルスに対する免疫は長続きしにくいため、しばらくすると再感染する可能性があります。
2歳になるまでに、ほぼすべての子どもが少なくとも一度はRSウィルスに感染します。そのあとも、毎年6~83%の子どもが再感染を経験しているという報告もあります。(※7)一度感染したからといって油断せず、予防法を徹底的に実践することが大切です。
まとめ
RSウィルス感染症は珍しい病気ではなく、多くの子どもが経験し、大人も感染する身近なものです。ほとんどは軽い風邪症状で回復しますが、生後間もない赤ちゃんや高齢者、持病のある方は肺炎などを起こし重症化しやすいです。
RSウィルス感染症は、特効薬がないからこそ、家族みんなでの手洗いやマスクなどの日頃の予防が何よりも大切です。子どもや自身の体調で気になることがあれば、自己判断せずに、早めに医療機関を頼ってください。
参考文献
- 厚生労働省:「RSウィルス感染症」.
- Charles Feldman, Ronald Anderson.RSV: an overview of infection in adults.Pneumonia,2025,17,1,p.15.
- 国立がん研究センター:「RSウィルス感染症について」.
- Jasndeep Kaler, Azhar Hussain, Kishan Patel, Tamara Hernandez, Sidhartha Ray.Respiratory Syncytial Virus: A Comprehensive Review of Transmission, Pathophysiology, and Manifestation.Cureus,2023,15,3,e36342.
- Zein Assad, Anne-Sophie Romain, Camille Aupiais, Mickaël Shum, Cécile Schrimpf, Mathie Lorrot, Harriet Corvol, Blandine Prevost, Charlène Ferrandiz, Anna Giolito, Zaba Valtuille, Matthieu Bendavid, Jérémie F Cohen, Julie Toubiana, Loïc de Pontual, Camille F Delande, Michael Levy, Perrine See, Robert Cohen, Corinne Levy, François Angoulvant, Léa Lenglart, Maud Gits-Muselli, Valérie Biran, Kadiatou Diallo, Oluwafunmilola Alemede, Mohamed M El Hebil, Xavier Durrmeyer, Géraldine Labouret, Natacha Casanovas, Benjamin Hallak, Olympe Maréchal, Camille Jung, Camille Bréhin, Naïm Ouldali.Nirsevimab and Hospitalization for RSV Bronchiolitis.New England Journal of Medicine,2024,391,2,p.144-154.
- Hirono Otomaru, Johanna Beulah T Sornillo, Taro Kamigaki, Samantha Louise P Bado, Michiko Okamoto, Mariko Saito-Obata, Marianette T Inobaya, Edelwisa Segubre-Mercado, Portia P Alday, Mayuko Saito, Veronica L Tallo, Beatriz P Quiambao, Hitoshi Oshitani, Alex R Cook.Risk of Transmission and Viral Shedding From the Time of Infection for Respiratory Syncytial Virus in Households.American Journal of Epidemiology,2021,190,12,p.2536-2543.
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:「RSウィルス感染症(詳細版)」.
