「いつもの筋肉痛だから大丈夫」と、やり過ごしていませんか? 激しい痛みやこわばりは、筋肉が溶け出す病気、横紋筋融解症かもしれません。
この記事では、横紋筋融解症の見逃してはいけない初期症状や原因、治療法などを詳しく解説します。放置するのではなく、引き起こす原因や体調の変化に目を向けることで、病気の早期発見にもつながります。
横紋筋融解症の主な症状と初期兆候
横紋筋融解症の初期症状は、単なる筋肉痛や疲れとして見過ごされてしまうことが少なくありません。
ここでは、横紋筋融解症の主な症状や受診すべき症状、腎臓への影響について解説します。
よく見られる症状
横紋筋融解症では、筋肉、全身、尿に以下のような特徴的な症状が現れます。
| 部位 | 症状 |
|---|---|
| 筋肉 | ・手足や肩、腰など広範囲に及ぶ筋肉痛 ・手足に力が入らず、立ち上がりにくい、脱力感 ・筋肉が硬くこわばったり、手足がしびれたりする ・筋肉が腫れあがり、熱を帯びる |
| 全身 | ・全身の強い倦怠感や疲労感 ・38℃以上の発熱 |
| 尿 | 赤褐色や茶褐色の尿が出る |
症状は単独で現れることもあれば、複数が同時に出現することもあります。赤みがかった茶色(暗色)の尿は、横紋筋融解症の特徴的な症状です。(※1)
尿の色の変化や日常生活に支障が出るような症状がある場合は、早期に医療機関を受診しましょう。
すぐ病院へ行くべき症状
横紋筋融解症は、急速に悪化することがあります。以下のような症状がある場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに医療機関を受診してください。
- これまでに経験したことのないような激しい筋肉痛
- 身体が動かせなくなるほどの強い倦怠感
- 尿の色が赤褐色やコーラ色に変わった
- 尿がほとんど出ない、半日以上出ていない
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い
- 吐き気や嘔吐が続いている
- 息苦しさや胸の痛みがある
症状が進行すると命に危険が及ぶ可能性もあります。
腎臓への影響と急性腎不全のリスク
横紋筋融解症は、腎臓に強い負担をかけ、急性腎不全を引き起こす危険がある病気です。筋肉の細胞が壊れると、ミオグロビンという赤い色素タンパク質が大量に血液中へ流れ出します。(※2)
この物質は腎臓で尿として取り込まれますが、量が多すぎると尿の通り道である尿細管に詰まり、腎臓が正常に働かなくなります。その結果、急性腎不全が起こり、体には次のような問題が生じます。
- 老廃物を出せず吐き気や意識障害が起こる
- ミネラルのバランスが崩れ不整脈や心停止の危険が高まる
- 水分を出せず全身のむくみや肺水腫が起こる
治療が遅れると腎機能が回復せず、人工透析が必要になることもあります。疑わしい症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診することが重要です。
横紋筋融解症の原因
横紋筋融解症は、筋肉の細胞が壊れてしまう病気ですが、その原因は1つではありません。ここでは、横紋筋融解症を引き起こす主な原因を解説します。
脱水や高温環境による筋細胞障害
脱水や高温環境は、筋肉の細胞を壊し、横紋筋融解症を引き起こす原因になります。熱中症になると、大量の汗と一緒に体に必要な水分や電解質が失われ、筋肉が正常に働かなくなります。
脱水状態になると、体内を循環する血液量が減少し、筋肉に酸素や栄養を運べなくなるため、細胞がダメージを受けて壊れます。炎天下で行うスポーツや屋外での作業、高温多湿の部屋で過ごすなど、熱中症になる危険がある行為は注意が必要です。
筋肉に異常を感じなくても、気づかないうちに脱水が進んでいることがあるため、こまめに水分補給をしてください。
激しい運動・筋肉の圧迫
激しい運動や筋肉の強い圧迫は、横紋筋融解症を引き起こす原因になります。普段あまり体を動かしていない人が、急に長距離を走ったり、重い負荷の筋力トレーニングを行ったりする場合は注意が必要です。筋肉に大きな負担がかかり、細胞が壊れてしまうことがあります。
運動だけでなく、筋肉が長時間押しつぶされる状況にも注意が必要です。筋肉が圧迫されて血流が悪くなり、そのあとに急に血液が流れ込むと、筋肉の組織が傷つきやすくなります。
自分の体力に合わない無理な運動を避け、長時間同じ姿勢が続かないよう意識することが、筋肉を守るために大切です。
薬剤性(スタチン・抗精神病薬など)
一部の薬は、副作用として横紋筋融解症を起こすことがあります。これは「薬剤性」と呼ばれ、病気の治療のために正しく使っていても、まれに筋肉の細胞が傷ついてしまうことがあるため注意が必要です。
原因になることがある薬には、次のようなものがあります。
- コレステロールを下げるスタチン系やフィブラート系の薬
- 抗菌薬や抗精神病薬
- 痛風の治療薬
これらの薬を飲み始めてから、原因不明の筋肉痛や脱力感、尿の色の変化がある場合は、横紋筋融解症の可能性があります。気になる症状が出たときは、すぐに処方した医師や薬剤師に相談し、適切な対応を受けることが大切です。
ただし、自己判断での断薬は持病の悪化を招きます。必ず医師に「筋肉の痛みがある」と伝えて指示を仰いでください。
感染症・代謝異常・電解質異常など
横紋筋融解症は、外傷や薬剤などのはっきりした原因だけでなく、感染症や体の中の電解質バランスが崩れることでも起こります。
ウイルスや細菌に感染すると、高熱や炎症反応によって筋肉がダメージを受けることがあります。下痢や嘔吐などで、体内のカリウムやリンが不足し、電解質のバランスが崩れる場合にも起こることがあります。
糖尿病の方が重度の高血糖状態(糖尿病性ケトアシドーシス)に陥った場合にも発症する可能性があるため、注意してください。
横紋筋融解症の検査と治療法
ここでは、病院で行われる検査や治療法について解説します。
診療科の選び方(救急科・内科など)
横紋筋融解症が疑われる場合、受診すべき診療科は「救急科」または「内科」で、症状の緊急性によって選びます。この病気は腎臓に急なダメージを与えることがあり、対応が遅れると重症化する可能性があるためです。
尿の量が極端に少ない、尿の色が濃く変わっている、意識がはっきりしないなど強い異常がある場合は、救急外来をすぐに受診する必要があります。症状が比較的軽く、全身の状態が安定している場合は、まず内科を受診し、検査・治療を受けるのが一般的です。
横紋筋融解症と診断されたあとは、腎臓への影響を専門的に管理するため、腎臓内科が治療の中心となります。迷ったときは、早めに医療機関へ相談することが大切です。
受診の際の注意点
受診の際は、事前に情報を整理しておくことで、横紋筋融解症の診断がより正確になります。医師に状況を正しく伝えるため、受診前に次の点を確認しておきましょう。
- 症状が出始めた時期
- 症状の経過
- 激しい運動や脱水など思い当たるきっかけ
- 尿の色が変わった時期
- 現在飲んでいる処方薬や市販薬
特に尿の色の変化は、診断の重要な手がかりになります。薬が原因となることもあるため、サプリメントや漢方薬も含めて把握しておきましょう。
事前に整理しておくことで診察がスムーズになり、安心して治療を受けることにつながります。
検査内容:血液検査(CK・腎機能など)
横紋筋融解症では、血液検査によって筋肉の壊れ具合と腎臓への影響を正確に調べることができます。
血液検査では、まず筋肉のダメージを示す数値を確認します。クレアチンキナーゼ(CK)やAST、LDHが高くなっている場合、筋肉の細胞が壊れている状態と考えられます。数値が高いほど、筋肉への負担が大きいことを示します。CK(CPK)の基準値は男性で約60〜270U/L、女性で約40〜150U/L(※基準値は検査機関により異なる)ですが、横紋筋融解症ではこれが数千〜数万単位に急上昇します。(目安として、軽症:1,000~5,000 U/L、中等症:5,000~15,000 U/L、重症:15,000 U/L以上)
同時に、腎臓の働きを見るためにBUNやクレアチニン、eGFRなどの機能も調べます。これらが基準より高い場合は、腎機能が低下している可能性があります。壊れた筋肉から流れ出たカリウムが増えると、不整脈・脱力などを起こす危険があるため、カリウムの値にも注意が必要です。
血液検査は、早期発見と安全な治療につながります。「CKが1,000 U/Lを超えた場合」「尿量が1日400mL以下」には注意が必要となります。
原因の除去と安静の確保
横紋筋融解症の治療では、まず原因を特定し、それを取り除くことから始めます。原因への対処と、体を休ませることが回復へ向かうためには重要です。
横紋筋融解症の原因が薬の場合は、服用を中止します。薬をやめるのは医師の判断のもと行われますので、自己判断で中止することはやめましょう。原因が運動や熱中症の場合は、水分と電解質を補給します。汗と一緒に電解質が失われているときは、スポーツドリンクがおすすめです。
横紋筋融解症の原因を除去するのと同時に、体を安静にして筋肉を休ませてください。
点滴療法による腎保護や血液透析
横紋筋融解症では、大量の輸液(点滴)によって腎臓に付着したミオグロビンを洗い流して、重症例には血液透析を行うことが治療の中心になります。壊れた筋肉から出る有害な物質が腎臓に集まるため、できるだけ早く腎臓への負担を減らすことが重要です。
点滴療法の目的は次のとおりです。
- 血液中の有害物質を薄める
- 尿の量を増やして体の外へ出す
- 腎臓の働きを保つ
これにより、急性腎不全を防げる可能性が高まります。しかし、点滴を行っても腎臓の働きが低下してしまった場合は、血液透析が必要になることがあります。
血液透析は、腎臓の代わりに機械で血液をきれいにし、老廃物や余分な水分を取り除く治療です。多くの場合、腎機能が回復するまでの一時的な治療として行われます。
横紋筋融解症の予防と再発防止
横紋筋融解症は発症する原因を知り、日常生活のなかで気をつければ、発症や再発のリスクを減らすことが可能です。ここでは、日常生活で気をつけるポイントを解説します。
日常生活で気をつけるポイント
横紋筋融解症の予防や再発防止では、次のポイントを意識することが大切です。
- こまめな水分補給(1日1.5リットル以上)を習慣にする
- 自分の体力に合った運動を心がける
- アルコールの飲み過ぎに注意する
脱水は、体内を巡る血液の量を減らし、筋肉への酸素や栄養の供給を滞らせる原因となるため注意が必要です。運動を始める前には準備運動を、終わったあとには整理運動を行い、筋肉の負担を和らげましょう。
過度のアルコール摂取は、脱水を引き起こしたり、直接的に筋肉へダメージを与えたりする可能性があります。
スタチンなど薬剤服用中に気をつけたいポイント
スタチンなどの薬を服用している方は、横紋筋融解症を予防して早く異変に気づくために、日頃から体調の変化に意識を向けることが大切です。この病気は、症状が軽いうちに対応することで、重症化を防げる可能性があります。
薬を飲み始めたあとに体調が「いつもと違う」と感じた場合は、無理をせず早めに医師や薬剤師へ相談しましょう。特に、以前より疲れやすい状態が続く場合は注意が必要です。
高温環境や感染時に注意したい予防のポイント
横紋筋融解症を予防するうえで特に注意したいのが、「高温環境」と「感染症」です。
夏場の暑い日や湿度の高い環境での運動や作業は、気づかないうちに大量の汗をかき、脱水や熱中症を起こしやすくなります。脱水が進むと筋肉に十分な血液が行き渡らず、筋肉が傷つく原因になります。
感染症にかかると、高熱や体内の強い炎症反応、食事や水分がとれない状態などが重なり、筋肉に負担をかけることがあります。体調がすぐれないときは無理をせず、十分な休養と水分補給を心がけることが大切です。
高熱に加えて強い筋肉痛やだるさ、尿の色の変化などが見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
横紋筋融解症は、単なる筋肉痛と放置してはいけません。筋肉の細胞が壊れ、腎臓にダメージを与え、命に関わる急性腎不全を引き起こす恐れがあります。
原因は激しい運動や熱中症だけでなく、服用中の薬がきっかけになるなど、誰にでも起こりうる身近な病気です。「経験したことのない筋肉痛」「手足の脱力感」「コーラのような色の尿」などの症状は、横紋筋融解症を疑う重要な所見です。
異変に気づいたら、自己判断で様子を見ずに、速やかに内科や救急外来を受診してください。
参考文献
- Ankur Gupta, Peter Thorson, Krishnam R Penmatsa, Pritam Gupta. Rhabdomyolysis: Revisited. Ulster Medical Journal,2021,90,2,p.61-69.
- MSDマニュアルプロフェッショナル版:「横紋筋融解症」
