「階段を上ると息が切れる」「時々、胸がドキドキする」といった症状を、歳のせいや疲れだと見過ごしていませんか?体からのサインは、命に関わる心臓や血管からのSOSかもしれません。
この記事では、どのような症状があれば循環器内科を受診すべきか、狭心症や心不全といった重大な病気について、専門的な検査内容も交えながら詳しく解説します。ご自身の体を守るための知識を得て、早期発見・早期治療へと繋げましょう。
循環器内科とは?
循環器内科は、心臓や血管の病気を専門に診療する内科です。心筋梗塞や狭心症、不整脈、心不全など、命に関わることの多い疾患を扱うため、高度な専門知識が求められます。
突然の胸痛などの救急対応から、再発を防ぐ長期的な生活習慣管理まで、急性期から慢性期まで幅広く診療を行います。
高血圧や脂質異常症といった生活習慣病のコントロールも重要な役割の一つであり、症状が出る前から心血管疾患を防ぐ「予防医療」も担っています。
心臓と血管は全身の臓器機能に深く関わるため、循環器内科は体全体の健康を支える中心的な診療科です。
循環器内科を受診する主な疾患
循環器内科では、心臓や血管に関わるさまざまな病気を専門的に診療します。
ここでは、循環器内科を受診する疾患について詳しく解説します。
狭心症、心筋梗塞
狭心症と心筋梗塞は、どちらも心臓自身に栄養を送る冠動脈の病気です。動脈硬化などで血管が狭くなったり、詰まったりすることで発症します。2つの疾患の特徴は下の表のとおりです。
| 項目 | 狭心症 | 心筋梗塞 |
|---|---|---|
| 血管の状態 | 狭くなっている(血流が悪い) | 完全に詰まっている(血流が途絶) |
| 症状 |
・数分程度で治まる ・胸の圧迫感や締め付け |
・30分以上続く ・激しい胸の痛み、冷汗、呼吸困難、吐き気 |
| 症状が出るとき | 運動や興奮で誘発されることが多い | 安静時も含め、突然起こる |
| 緊急性 | 心筋梗塞への移行を防ぐため、早期受診が必要 | 早急に救急車を要請 |
心不全
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身が必要とする血液を十分に送れない状態を指す言葉で病名ではありません。心臓のポンプ機能が落ちると、全身で血液の渋滞が起こり、さまざまな症状を引き起こします。
肺の血液が滞ると、息切れや呼吸困難の症状が現れ、坂道や階段で息切れしたり、夜中に咳が出て眠れなかったりと日常生活に支障が出ます。体の中の余分な水分が排出できず、足のむくみや急な体重増加がみられることもあり、心不全の重要なサインです。心不全は一度発症すると完治は難しく、症状をコントロールしながら長く付き合っていく必要があります。
高血圧症、心筋症
高血圧症も心筋症も、心臓に大きな負担をかけ、心不全などの重い病気につながる可能性があります。自覚症状がないまま進行することが多いため、定期的な管理が欠かせません。
高血圧症は血圧が高い状態が続く病気で、症状がほとんどないまま進行するため「サイレントキラー(静かに進行する病気)」とも呼ばれます。(※1)血管の内側を傷つけるため動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病といった命に関わる病気を引き起こします。
心筋症は心臓の筋肉そのものに異常が起こる病気の総称です。心臓の筋肉が伸びてポンプ機能が低下する拡張型心筋症や心臓の筋肉が厚くなり、血液をうまく排出できなくなる肥大型心筋症があります。
進行すると心不全や危険な不整脈の原因となるため、定期的な検査と管理が重要です。
高血圧症についての詳しい記事はこちら⇒高血圧(症)とは?食事や生活習慣のポイントを解説
肺塞栓症(はいそくせんしょう:エコノミークラス症候群)
一般的に「エコノミークラス症候群」として知られる病気で、正式には急性肺血栓塞栓症と言います。足などの静脈にできた血の塊(深部静脈血栓)が血流に乗り、肺の動脈に詰まってしまう病気です。飛行機に限らず、デスクワークなど長時間足を動かさず、同じ姿勢でいると足の血流が滞り血栓ができやすくなります。
以下のような症状が突然現れた場合は、すぐに救急車を要請してください。
- 突然の息切れ、呼吸困難
- 胸の鋭い痛み
- 血の混じった痰
- 失神、意識消失
詰まった血栓が大きい場合、肺の血流が広範囲で遮断され、血圧が急激に低下してショック状態に陥り、命を落とすことも少なくありません。
大動脈解離
大動脈は、心臓から全身に血液を送り出す太い血管で、壁に亀裂が入り内側が裂けてしまうことを大動脈解離といいます。
これまでに経験したことのないような突然の激しい痛みや引き裂かれるような激痛が起こります。胸や背中、肩甲骨の間などに強い痛みが現れ、時間の経過とともに痛む場所が異動することもあります。大動脈の壁が裂けることで、血管が破裂して大量出血を起こすこともあり危険です。
裂け目が脳や心臓、手足へ向かう重要な枝分かれの血管を塞ぐと、脳梗塞や心筋梗塞、手足の麻痺などを同時に引き起こす可能性があります。
不整脈
不整脈は、心臓の拍動リズムが一定でなくなる状態の総称で、心臓の電気系統のトラブルによって起こります。脈が速くなったり、遅くなったり、飛んだりと、さまざまなタイプが存在します。
| 不整脈の種類 | 症状 |
|---|---|
| 頻脈 |
・脈が異常に速くなる(1分間に100回以上) ・動悸や息切れ、胸の不快感が現れる |
| 徐脈 |
・脈が異常に遅くなる(1分間に50回未満) ・めまいやふらつき、失神、息切れ |
| 期外収縮 |
・脈が飛んだり、ドキッとする感覚 ・無症状の場合もある |
心臓弁膜症
心臓の中には、血液が一方通行で流れるように調整する4つの弁があります。心臓弁膜症は弁の働きが悪くなる病気で、狭窄症と閉鎖不全症の2つに分類されます。狭窄症は弁が硬くなり開きにくくなる状態で、閉鎖不全症は弁がきちんと閉じなくなり、血液が逆流する状態です。
初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、病気が進行して心臓に負担がかかり続けると、心不全の症状が現れます。
主な原因は加齢による弁の変化で、誰にでも起こりうる病気と言えます。健康診断などで心雑音を指摘され、見つかるケースも少なくありません。
循環器内科を受診すべき症状
ここでは、循環器内科を受診すべき症状を解説します。
胸の痛み、圧迫感、締め付け
胸の痛みは、循環器疾患の中でも特に注意が必要な症状です。もちろん、すべての胸痛が心臓の問題とは限りませんが、命に関わる狭心症や心筋梗塞の可能性を考える必要があります。
心臓が原因で起こる胸の痛みには、以下のような特徴があります。
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 痛みの感じ方 |
・「締め付けられる」「圧迫される」 ・体の内側の鈍い痛み |
| 痛む場所 |
・胸の中央から左側にかけて痛むことが多い ・左肩や腕、顎、歯、背中など痛みが広がるケースもある(放散痛) |
| 痛みが起こる状況 | 階段を上る、重いものを持つなど体に負担がかかったとき |
| 持続時間 |
・狭心症の場合は数分から15分程度 ・30分以上続く激しい痛みは心筋梗塞の疑い |
胸の痛みを感じたときに、命に関わるような症状が出る場合もあります。
自己判断で様子を見ず、早めに医療機関を受診することが大切です。少しでも不安に感じたら、ためらわずに医療機関を受診するか、救急車を呼んでください。
息切れ、動悸
息切れや動悸は日常で経験しやすい症状ですが、実は心臓の病気が隠れていることがあります。
息切れは心臓のポンプ機能が低下する、心不全の代表的な症状です。
ポンプの力が弱まると、血液を全身にうまく送り出せず、肺に血液が滞り(うっ血)、息切れを感じやすくなります。坂道や階段で息が切れるようになったり、会話をするだけで息がはずみ、疲れやすくなったりと日常生活に影響が出ることもあります。
夜、横になると息苦しくて眠れず、体を起こすと少し楽になる場合も、心不全が疑われる症状です。
動悸は心臓の拍動リズムが乱れる不整脈によって起こることが多いです。心臓の電気系統にトラブルが生じ、脈が速くなったり、飛んだり、乱れたりと感じ方は人それぞれです。
動悸とともに、めまいやふらつき、目の前が暗くなる、あるいは失神(気を失う)といった症状がある場合は、命に関わる危険な不整脈の可能性があります。症状がすぐに治まったとしても、繰り返す場合は受診し、原因を調べることが大切です。
足のむくみ
足のむくみも、心臓の機能が低下しているサインの1つです。心臓のポンプ機能が弱まると、全身の血液の流れが滞りやすくなり、心臓から遠い足がむくむ(浮腫)ことがあります。(※2)心臓が原因で起こるむくみの場合は、以下のような特徴がみられます。
- 両足のすねや足の甲が左右対称にむくむ
- むくんでいる場所を数秒間指で押すと、へこんだまま痕が残る
- 夕方にかけてむくみが強くなる
- 数日で2~3kgと、急激な体重増加がみられる
むくみに加えて、息切れや横になると苦しいといった症状がある場合は、心不全が進行している可能性があります。片足だけが急に赤く腫れて痛む場合は、足の静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」の疑いもあり、緊急の対応が必要です。
高血圧、心電図異常、脂質異常症
健康診断で高血圧や脂質異常症、心電図の異常と診断された場合、血管が傷つき、動脈硬化を引き起こす可能性があります。
高血圧は血管に高い圧力がかかり、放置しておくと血管の壁を傷つけ、硬くもろくなります。脂質異常症は血液中の余分なコレステロールなどが血管の内側に付着し、血液の通り道を狭くすることで、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性があり危険です。心電図に異常がみられる場合は、不整脈や心臓の筋肉への血流不足(虚血)などが起こっている可能性があります。
症状がなくても、健康診断で異常を指摘されたら、循環器内科を受診することが重要です。
循環器内科で行う検査
ここでは、循環器内科で行う代表的な検査について、目的や流れを具体的に解説します。
心電図検査
心電図検査は、心臓が動くときに送られる電気信号を波形として記録する、循環器診療の基本となる検査です。不整脈や狭心症、心筋梗塞といった病気の発見に役立ちます。
検査はベッドに仰向けに寝て、胸と両手足に電極を付けて5分程度安静に過ごすだけで、痛みや体への負担はありません。
心電図検査により、不整脈の有無や種類、心臓の筋肉の状態などがわかります。心筋梗塞や狭心症の発作が起こっていれば、特徴的な波形を示すため、検査での発見につながります。
不調があっても、症状が出ていないときの心電図は正常なこともあるため、状況に応じて精密な検査を行います。
| 検査の種類 | 対象 | 検査方法 |
|---|---|---|
| 運動負荷心電図 | 運動時に症状がでる方 | 運動を行い、心臓に負荷をかけながら心電図を記録する |
| ホルター心電図 | 症状がたまにしか出ない方 | 小型の装置を24時間身につけ、日常生活中の心電図を記録する |
精密な心電図検査はいつ、どのようなタイミングで心電図の異常が発生するか明確にするために行います。
超音波検査
超音波検査(心エコー検査)は、超音波を心臓に当て、その反響を画像にすることで、心臓の形や動きをリアルタイムで観察できる検査です。心臓弁膜症や心不全、心筋症などの診断には欠かせません。
検査は上半身の服を脱いでベッドに横になり、超音波を発信するプローブという器具を当て、心臓をさまざまな角度から観察します。検査時間は20〜30分程度で、病状の変化を追うために定期的に行う場合もあります。
超音波検査は、心臓のポンプ機能や弁の状態、大きさ、壁の厚さを観察し、血流の流れや一部に負担がかかっていないかなどを確認します。心臓の中に血の塊(血栓)ができていないかなども観察でき、脳梗塞の予防に繋がります。
心臓カテーテル検査
心臓カテーテル検査は、腕や足の付け根の血管からカテーテルと呼ばれる直径2mmほどの細い管を心臓まで挿入する精密検査です。主に狭心症や心筋梗塞が強く疑われる場合に、診断を確定するために行います。
心臓カテーテル検査の目的は、心臓に栄養を送る冠動脈の状態を直接確認することです。
局所麻酔のあと、カテーテルを通して造影剤を注入し、X線で血管の様子を動画撮影します。造影剤を投与することで、冠動脈が細くなっている箇所や状態を詳しく評価することができます。
心臓カテーテル検査の大きなメリットは、狭窄が見つかった場合にその場で治療を行えることです。狭くなった血管を内側から広げる治療(カテーテルインターベンション)を同時に行えるケースもあり、患者さんへの負担軽減につながります。(※3)
検査時間は30分〜1時間ほどですが、カテーテルを入れた場所からの出血を防ぐため、数時間の安静が必要です。
心臓CT検査
心臓CT検査は、X線とコンピューターを使って心臓の精密な断面画像を撮影する検査です。
冠動脈の状態を立体的に評価することに優れていて、動脈硬化による血管の狭窄や石灰化の程度を詳しく確認することができます。
検査台に仰向けに寝て、造影剤を点滴しながら撮影を行います。検査全体にかかる時間は15〜30分程度です。
まとめ
胸の痛みや息切れ、動悸、足のむくみといった症状は、心臓や血管からの大切なSOSサインかもしれません。自己判断で放置してしまうと、命に関わる事態につながる恐れがあります。
循環器の病気は、早期発見と適切な治療が何よりも重要です。健康診断で異常を指摘された場合や少しでも気になる症状や不安なことがあれば、循環器内科の専門医に相談してください。
参考文献
- 日本循環器協会:「高血圧症」
- 日本心臓財団:「心不全の初期サイン-早期発見のために-」
- 国立循環器病研究センター:「冠動脈疾患に対する冠動脈バイパス術とカテーテル治療の選択」
