帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、成人の約9割が原因ウイルスをもち、3人に1人が発症するといわれています。(※1)「痛みを伴う発疹」というイメージが一般的ですが、特に注意したいのは、皮膚の症状が治まったあとに残る「帯状疱疹後神経痛」です。また、発症部位によっては、失明や顔面麻痺などの重い合併症を引き起こすリスクもあるため、早期の対応が重要です。
この記事では、帯状疱疹の知識や見分け方、後遺症を防ぐための治療法を医師が詳しく解説します。体からのサインを見逃さないために、ぜひ最後までご一読ください。
- 帯状疱疹の原因と、免疫力低下で再発する仕組み
- 見逃されやすい初期症状(ピリピリとした痛み)の見分け方
- 後遺症を防ぐための「72時間以内」の治療開始の重要性
- 帯状疱疹後神経痛・眼部帯状疱疹など注意すべき4つの合併症
- ワクチン接種・生活習慣で発症リスクを下げる予防法
目次
帯状疱疹とは水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化による感染症
帯状疱疹は、子どものころにかかった水ぼうそうのウイルスが原因です。
水ぼうそうが治ったあとも、原因となった「水痘・帯状疱疹ウイルス」は体から消えません。背骨の近くにある神経節という場所に潜み続けています。潜んでいたウイルスが再び暴れだす原因は、免疫力の低下です。加齢や過度なストレス、疲労の蓄積などが引き金となります。
増殖した水痘・帯状疱疹ウイルスが神経を通って皮膚へ移動し、発疹が現れます。このとき、皮膚には強い痛みを伴うのが帯状疱疹の特徴です。
帯状疱疹は、免疫力の低下によって誰でも起こりうる病気です。
帯状疱疹の主な症状
帯状疱疹の症状は、体の左右どちらか片側だけに現れるのが大きな特徴です。神経に沿って、帯状に症状が現れることも帯状疱疹ならではの特徴といえます。帯状疱疹の主な症状は以下の3つです。
①初期症状(皮膚の違和感・痛み)
②赤い発疹・水ぶくれ
③全身症状(だるさ・倦怠感)
①初期症状(皮膚の違和感・痛み)
帯状疱疹の最初のサインは痛みです。皮膚に発疹が出るよりも先に痛みが現れる傾向があります。発疹が出る数日から1週間ほど前から、違和感が生じるのが一般的です。体の片側の神経に沿って、電気が走るような感覚を覚えます。
帯状疱疹の初期に感じやすい痛みや違和感の例は、以下の5つです。
- ピリピリ、チクチク刺すような痛み
- ズキズキとうずくような痛み
- 皮膚の表面が焼けるようなヒリヒリ感
- 服が擦れるだけで痛む
- かゆみやしびれ
初期の段階では皮膚に変化がなく、多くの方が勘違いをしてしまいます。筋肉痛や肩こりがひどくなったと考える方も少なくありません。しかし、片側だけの痛みは帯状疱疹の重要なサインとなります。
②赤い発疹・水ぶくれ
帯状疱疹によるチクチクとした痛みが始まってから数日が経過すると、痛みのあった場所に赤い発疹が現れます。発疹は神経の走行に沿って帯状に広がる特徴があります。
帯状疱疹の皮膚の症状は、以下の表のとおり段階を経て変化するのが一般的です。
| 段階 | 症状 |
|---|---|
| 赤い発疹(紅斑) | 最初は、小さな赤いポツポツとした発疹が現れます。 |
| 水ぶくれ(水疱) | 1〜2日あとに、中央が少しへこんだ水ぶくれができます。 |
| 膿(膿疱) | 水ぶくれの中に膿がたまり、黄色っぽく濁るのが特徴です。 |
| かさぶた(痂皮) | 約1週間で破れてただれたあと、かさぶたに変化します。 |
首や手足など、神経が通る場所であればどこにでも発疹が現れる可能性があります。
③全身症状(だるさ・倦怠感)
帯状疱疹は、皮膚や神経だけの病気ではありません。ウイルスが体内で再び活動を始めると、全身にも不調が現れます。
帯状疱疹の全身症状の例は、以下の4つです。
- 微熱
- 頭痛
- 全身のだるさ、倦怠感
- リンパ節の腫れ
これらは、体の中で免疫システムがウイルスと懸命に戦っている証拠です。
すべての方に全身症状が現れるわけではありませんが、皮膚の症状と同時に不調を感じる場合は、安静が何より大切です。
帯状疱疹の治療法
帯状疱疹の治療は「抗ウイルス薬の内服」「痛みを抑える鎮痛薬」「皮膚症状のケアのための外用薬」の3つを組み合わせるのが基本です。後遺症を防ぐためにも、発疹が出てからできるだけ早く治療を始めることが重要とされています。
帯状疱疹の治療の開始が遅れると、ウイルスが神経を深く傷つけ「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という、つらい後遺症につながるリスクが高まります。
帯状疱疹の症状の悪化を防ぐための治療法は、以下の3つです。
①抗ウイルス薬による早期治療
②痛みを抑える鎮痛薬
③皮膚症状に対する外用薬
①抗ウイルス薬による早期治療
帯状疱疹治療の基本は、発症後、できるだけ早く内服を開始することが、ウイルスの増殖を抑える上で非常に重要です。一般的に、発疹出現から72時間以内の服用開始が推奨されています 。ウイルスは発疹が出てから72時間で増殖のピークを迎えます。その前に薬で勢いを抑えることが、帯状疱疹治療では重要です。
早期に帯状疱疹の治療を開始することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 皮膚症状の悪化や広がりを防ぐ
- 回復までの期間を短縮する
- 神経へのダメージをできるだけ抑え、後遺症のリスクを減らす
ただし、重症の場合や免疫力が低い方は、入院が必要となるケースもあります。
②痛みを抑える鎮痛薬
帯状疱疹の痛みは、単なる皮膚の症状ではありません。ウイルスが神経を直接攻撃することで生じる神経痛です。焼けるような感覚や、電気が走るような激しい痛みをともないます。
帯状疱疹の痛みの記憶が脳に刻み込まれる点にも注意が必要です。これが後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN)を招く原因となります。そのため、抗ウイルス薬と並行して痛みを制御することが大切です。
帯状疱疹の症状や強さに応じて、以下のような薬が選択されます。
| 薬の種類 | 特徴と効果 |
|---|---|
| 一般的な鎮痛薬 | アセトアミノフェンなどが皮膚の炎症による痛みを和らげます。 |
| 神経障害性疼痛治療薬 | プレガバリンなどが神経由来の痛みに直接アプローチします。 |
| 抗うつ薬 | 神経の過剰な興奮を鎮める目的で使われることがあります。 |
痛みのコントロールが難しい場合は、専門外来への相談も検討しましょう。
③皮膚症状に対する外用薬
飲み薬と並行して、水ぶくれやただれなどの皮膚の症状をケアするために、外用薬(塗り薬)が処方されることがあります。皮膚の炎症を鎮めたり、水ぶくれが破れた場所からの細菌感染を防ぐ効果があります。
ただし外用薬は、あくまで補助的な役割を担うものです。外用薬自体に、ウイルスの増殖を抑える力はありません。治療の基本は、抗ウイルス薬の内服です。
市販の軟膏などを自己判断で使うのは危険です。症状を悪化させる恐れがあるため、医師の指示を守りましょう。
帯状疱疹の後遺症と注意すべき合併症
帯状疱疹の本当の怖さは、皮膚の症状が治まったあとにあります。ウイルスによって神経が深く傷つくと、生活の質を損なう後遺症が残るリスクがあります。
特に注意すべき主な帯状疱疹の後遺症や合併症は、以下の4つです。
①帯状疱疹後神経痛
②眼部帯状疱疹による視力障害
③ラムゼイ・ハント症候群
④運動麻痺など神経障害
①帯状疱疹後神経痛(PHN)
帯状疱疹の合併症として特に多く、かつ深刻なのが「帯状疱疹後神経痛(PHN)」です。皮膚の症状が治まってから3か月以上たっても痛みが続く状態を指します。
帯状疱疹後神経痛発症のサインとなる主な痛みの種類は、以下の4つです。
- 焼けるような、ヒリヒリする痛み
- ズキズキと脈打つような痛み
- 電気が走るような、刺すような痛み
- 衣服が軽く触れるだけで激痛が走る(アロディニア)
このような耐えがたい痛みが昼夜を問わず続くため、日常生活を著しく妨げます。
②眼部帯状疱疹による視力障害
帯状疱疹は命に関わることはまれですが、発症する場所によっては、失明という深刻な事態を招くことがあります。それが、顔のおでこから目の周り、鼻にかけて発症する「眼部帯状疱疹」です。
顔の感覚を支配する三叉神経でウイルスが暴れます。その結果、目そのものにまで炎症が及ぶ仕組みです。
目に見られる主な合併症と症状は、以下の2点です。
- 目の充血やゴロゴロとした違和感が出る結膜炎や角膜炎
- 目のかすみや視力の低下をまねくぶどう膜炎
これらの合併症を放置すると、緑内障や白内障を引き起こしかねません。最悪の場合は視力を失う恐れがあるため、迅速な治療が回復の鍵です。(※2)
③ラムゼイ・ハント症候群
ウイルスが顔面神経や聴神経にまで侵入すると「ラムゼイ・ハント症候群」が起こります。耳の周辺に特徴的な症状が現れるのがラムゼイ・ハント症候群の特徴です。顔を動かす神経や、音を聞き平衡感覚を保つ神経がダメージを受けます。
ラムゼイ・ハント症候群の主な症状を以下の表にまとめました。
| 症状の分類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 顔面麻痺 | 顔の片側が垂れ下がり、目が閉じにくくなります。 |
| 耳の症状 | 耳の激しい痛みや耳鳴り、難聴が生じます。 |
| めまい | 自分の周囲がぐるぐる回るような感覚に襲われます。 |
| 皮膚症状 | 耳の中やその周りに水ぶくれが形成されます。 |
これらの症状は、一度に現れる場合もあれば時間差で現れる場合もあります。日常生活に大きな支障をきたすため、早期の対処が不可欠です。耳や顔の動きに異変を感じた際は、すぐに耳鼻咽喉科へ相談してください。
④運動麻痺など神経障害
帯状疱疹ウイルスの主な標的は痛みなどを感じる「感覚神経」です。しかしごくまれに炎症が広がり、筋肉を動かす「運動神経」にまでダメージが及ぶことがあります。
具体的な運動麻痺の症状例は、以下の3つです。
- 腕に発症後、腕が上がらなくなる
- 足に発症後、足を引きずるようになる
- お腹や腰に発症後、尿が出にくくなる(尿閉)、便秘になる
これらは頻度の高い合併症ではありません。しかし、日常生活に大きな支障をきたす深刻な症状です。
皮膚の症状とあわせて異変を感じた際は、すぐに主治医へ伝えましょう。
帯状疱疹の予防法
帯状疱疹のつらい症状を避ける方法はあります。帯状疱疹の予防の柱は、大きく分けて以下の3つです。
①ワクチン接種で発症リスクを下げる
②生活習慣の改善で免疫力を維持する
③ストレス管理で再発を防ぐ
①ワクチン接種で発症リスクを下げる
帯状疱疹の予防法として、現在広く普及している選択肢がワクチン接種です。
現在、日本で接種できるワクチンは以下の2種類です。
| ワクチンの種類 | 特徴と予防効果 |
|---|---|
| 不活化ワクチン | ウイルスの一部を使用します。50歳以上で高い効果予防効果が期待できるとされています。 |
| 生ワクチン | 弱毒化したウイルスそのものを使う、従来型のワクチンです。 |
不活化ワクチンと生ワクチンにはそれぞれ異なる特性を持ち、不活化ワクチンは発症予防効果が高いとされています。接種後5年間にわたって免疫応答が持続したとのデータも報告されています。 (※3)
2025年4月からは、65歳の方を対象に定期接種が始まりました。(※4)
なお、定期接種の対象外となる場合は任意接種(自費診療)となります。
ワクチンの種類によって接種回数や費用、主な副反応(リスク)が異なるため、接種を検討される際は、 ご自身が対象となるか、どちらのワクチンが合っているかなど、詳しくはかかりつけの医師へご相談ください。
②生活習慣の改善で免疫力を維持する
ワクチンがウイルスを直接攻撃する備えであれば、生活習慣は基盤です。日々の生活を整えることが、ウイルスの再活性化を防ぐ基本となります。免疫力を正常に保つためには、体調管理の徹底が欠かせません。
以下の4つの習慣を意識しましょう。
| 習慣 | 免疫力を維持するポイント |
|---|---|
| バランスの取れた食事 | タンパク質やビタミンを毎日の食事で十分に摂取します。 |
| 質の高い睡眠 | 睡眠不足を避け、細胞の修復と免疫の調整時間を確保します。 |
| 無理のない運動 | 適度な運動で血行を促進し、免疫細胞の働きを助けます。 |
| 体を冷やさない工夫 | 入浴などで体温を適切に保ち、免疫機能の低下を防ぎます。 |
日々の積み重ねが、帯状疱疹への抵抗力を高めることにつながります。
③ストレス管理で再発を防ぐ
過労や精神的なストレスは、自律神経やホルモンのバランスを乱し、免疫システムの働きを直接的に低下させます。忙しい現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、上手に付き合っていくことは可能です。
疲れやストレスを溜め込まない仕組みを生活に取り入れましょう。自分に合ったリフレッシュ方法の例は、以下のとおりです。
- 何かに没頭できる趣味の時間を持つ
- 心からリラックスできる音楽や映画に触れる
- 軽いストレッチや深呼吸で体の緊張をほぐす
- 信頼できる誰かと話すだけでも心は軽くなる
「少し疲れたな」と感じるのは、体と心が発しているSOSのサインです。体と心のサインを見逃さず、意識的に休息をとりましょう。
帯状疱疹についてのよくある質問
- Q.帯状疱疹は人にうつりますか?
- A.帯状疱疹そのものが他人にうつることはありません。ただし、水ぼうそうにかかったことがない方や、ワクチン未接種の乳幼児などに、水ぼうそうとして感染させる可能性があります。水ぶくれが完全にかさぶたになるまでは、妊婦や乳幼児、免疫力が低下している方との接触は控えましょう。
- Q.帯状疱疹は何科を受診すればよいですか?
- 皮膚に発疹が出ている場合は、皮膚科の受診が基本です。顔面(特に目の周り)に症状が出ている場合は眼科、耳の周りや顔面の麻痺がある場合は耳鼻咽喉科の受診を検討してください。判断に迷う際は、まずかかりつけ医に相談するのも一つの選択肢です。
- Q.帯状疱疹ワクチンの費用はどのくらいですか?
- A.自治体の助成や定期接種の対象かどうかで費用は大きく変わります。不活化ワクチンは2回接種で合計4万〜5万円程度、生ワクチンは1回接種で8千円前後が目安です。2025年4月から65歳の方を対象とした定期接種が始まっているため、対象年齢や助成金については、お住まいの自治体やかかりつけ医にご確認ください。
- Q.帯状疱疹が治るまでどれくらいかかりますか?
- 一般的には、発疹出現から皮膚症状が落ち着くまで2〜4週間程度かかるとされています。ただし、治療開始の時期や症状の程度、免疫状態によって個人差があります。皮膚症状が治まっても痛みが3か月以上続く場合は、帯状疱疹後神経痛の可能性があるため、医療機関へ再度相談しましょう。
まとめ
帯状疱疹は、加齢やストレスによる免疫力の低下を機に、誰にでも起こり得ます。つらい後遺症を防ぐためには、早期発見・早期治療の徹底が何より大切です。
体の片側に原因不明のピリピリとした痛みが現れた際は、初期症状を疑いましょう。もし皮膚に赤い発疹が見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。発症から72時間以内に治療を始めることが、後遺症を防ぐ大きな分岐点となります。
「もしかして」と感じた際は、決して自己判断で様子を見ないようにしてください。早期の段階で、速やかに皮膚科などの専門医へ相談することが最善の策です。
参考文献
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチンファクトシート」
- Chen Peng, Zhimin Xing, Congli Geng, Yan Liu, Yidi Liu.Orbital Apex Syndrome Caused by Herpes Zoster Ophthalmicus Following Nasal Endoscopic Surgery: A Case Report.Ear Nose Throat J,2025.
- Adriana Weinberg, D Scott Schmid, Jessica Leung, Michael J Johnson, Congrong Miao, Myron J Levin.Predictors of 5-Year Persistence of Antibody Responses to Zoster Vaccines.Journal of Infectious Diseases,2023,228,10,p.1367-1374.
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」
