夜になると咳が出て眠れなくなったり、布団に入ってから咳が止まらなくなったりすることはありませんか? 咳が続くと体力も奪われ、翌日まで体のつらさが響くこともあります。
夜に咳が出るのは、風邪が原因とは限りません。自律神経の働きや寝るときの姿勢など、体の仕組みが関係していることもあります。
この記事では、夜間の咳を引き起こす原因と、家庭でできる対策をわかりやすく解説します。枕の高さの調整や寝室環境の見直しなど、今日から試せる対処法ですので、ぜひ参考にしてください。
夜に咳が出やすくなる理由
夜間に咳が悪化しやすくなるのは、体を横にする姿勢の変化と自律神経などの体内リズムの変化が挙げられます。夜に咳が出やすくなる理由と主な原因を解説します。
横になることで咳が悪化しやすくなる
横になると咳がひどくなるのは、姿勢の変化によって鼻水や胃酸が喉に流れ込みやすくなり、気道を刺激するためです。
日中は自然に飲み込んだり外に出たりする鼻水も、寝る姿勢になると喉に落ちて、咳を引き起こしやすくなります。仰向けになると気道が狭くなり、痰が絡みやすくなることも咳の原因の一つです。
横になって寝ると、胃と食道が水平に近い状態になり、胃酸が逆流しやすくなります。その結果、喉や気道が刺激され、咳が出やすくなることがあります。睡眠中には唾液や分泌物を無意識に気道へ吸い込んでしまうことがあり、咳の誘発や肺炎のリスクを高めることもあります。
自律神経や気道の影響
夜に咳がひどくなるのは、自律神経やホルモンの働きによって気道が敏感になるためです。夜間の冷えや乾燥が加わると、わずかな刺激でも咳が出やすくなります。
炎症を抑えるホルモンであるコルチゾールは朝に多く、夜は減るため、気道の炎症が悪化しやすくなります。(※1)夜間の咳で休めないと、免疫バランスが崩れて炎症が長引きやすくなります。放置すると咳の悪循環につながるため、早めのケアが大切です。
咳を悪化させないためにも、できるだけ良質な睡眠を確保しましょう。
夜に咳が出る主な原因・病気
夜間の咳が長引く場合、風邪ではなく他の病気が隠れている可能性があります。ここでは、夜に咳が出る主な原因を解説します。
咳喘息・気管支喘息
夜間〜明け方にかけて、咳がひどくなる場合に疑われるのが「咳喘息」や「気管支喘息」です。これらは気道に慢性的な炎症が起き、過敏になっている状態です。それぞれの違いを以下の表にまとめました。
| 疾患 | 咳喘息 | 気管支喘息 |
|---|---|---|
| 症状の特徴 |
・乾いた咳が続く ・痰はほぼ出ない ・喘鳴、呼吸困難はない ・咳が発作的に止まらなくなることがある |
・咳に加えて喘鳴がある ・息苦しさがある ・痰が出ることもある ・喘息発作が起こることもある |
| きっかけ | 風邪の後や気温差、会話、ストレス | 季節や環境の変化で悪化しやすい |
| 体質 | アレルギー体質とは限らない | アレルギー体質の人に多い |
夜間の咳で目が覚めることが多い場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。
胃食道逆流症・後鼻漏
横になると咳が出やすくなるのは、胃酸の逆流や鼻水の流れ込みが喉を刺激するためです。
胃食道逆流症では、酸性の胃液が喉まで上がり、咳や胸やけを引き起こします。次の症状がある方は、胃食道逆流症の可能性があります。
- 胸やけを感じる
- 喉の奥に酸っぱい、苦いものが上がってくる
- 食後すぐ横になると咳が出る
- 朝方に喉の痛みや声がれがある
食後すぐに横になる習慣がある方は、症状が悪化しやすいため注意が必要です。
後鼻漏は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで増えた鼻水が喉に流れ込み、気道を刺激して咳を誘発します。横になると鼻水が喉に溜まりやすくなるため、夜間に症状が悪化することも珍しくありません。
咳止め薬だけでは改善しにくいため、根本的な原因への対処が必要です。
アレルギー(ハウスダスト・ダニ・カビ)
寝室の環境がアレルギー反応を引き起こし、夜間の咳を悪化させている場合があります。寝室に潜む主なアレルゲンは以下のとおりです。
| アレルゲン | 特徴 | 注意する場所 |
|---|---|---|
| ハウスダスト | ホコリや人のフケ、ペットの毛、ダニの死骸やフンが混ざったもの |
・部屋の隅や家具の下 ・カーテンなどの布製品 |
| ダニ |
・高温多湿を好む ・人のフケやアカをエサにする |
・布団や枕、マットレス ・カーペットなどの布製品 |
| カビ | 湿度の高い場所で繁殖 |
・窓の結露 ・エアコン内部 ・加湿器の手入れ不足 |
夜間に咳が出る場合、寝室の環境を見直してみることも大切です。
風邪・インフルエンザ・新型コロナとの違い
感染症による咳と、咳喘息やアレルギーなどによる咳には、症状の出方や期間に次のような違いがあります。
| 病気の種類 | 主な症状 | 特徴 |
|---|---|---|
| 風邪(ウイルスによる上気道炎) | 喉の痛みや鼻水、くしゃみ、軽い発熱、だるさ |
・軽い咳が出ることがある ・1週間前後で自然に回復 |
| インフルエンザ | 高熱(38℃以上)や関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛 |
・乾いた咳が出ることが多い ・1〜2週間で回復 |
| 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) | 発熱や喉の痛み、倦怠感、咳、呼吸困難、嗅覚と味覚の異常 |
・持続的な乾いた咳が多い ・数日〜2週間程度で改善することが多い |
市販薬を飲んでも咳が続く場合は、早めの受診が大切です。
咳で眠れないときにすぐできる対処法
夜間に咳が出て眠れないときに、家庭でできる対処法を解説します。
寝る姿勢と枕の高さを工夫する
咳を和らげるには、寝る姿勢を工夫するのがおすすめです。
クッションなどで背中に緩やかな傾斜をつけると、呼吸がしやすくなり、逆流も防げます。目安は軽く傾斜がつく程度ですが、自分が楽に感じる体位を見つけることが大切です。
仰向けよりも横向きで寝ると喉への刺激が和らぎ、咳が出にくくなる場合もあります。抱き枕を使うと自然な姿勢を保ちやすく、より快適に眠れるでしょう。
少しの体位調節で、喉のイガイガ感や圧迫感が軽減され、スムーズに入眠しやすくなります。
こまめな水分補給を行う
喉の乾燥を防ぎ、痰を出しやすくするために水分補給は欠かせません。睡眠中は口呼吸になりやすく、喉が乾燥すると、わずかな刺激でも咳が出やすくなります。
冷たい飲み物は気管を刺激して咳を誘発することがあるため、温かい飲み物のほうが喉にやさしく、粘膜の保護にも役立ちます。白湯や麦茶などのノンカフェインのものが飲みやすいです。
乾燥した喉を潤すだけでも、咳が落ち着くことがあります。夜中に咳で目が覚めたときにすぐ喉を潤せるよう、枕元に水を置いておくと安心です。
はちみつで喉の粘膜を保護する
はちみつは、咳を和らげる食品として知られています。はちみつはとろみがあり喉の粘膜を潤すため、乾燥による刺激を和らげるとされ、古くから親しまれてきました。喉の粘膜を膜で包むように保護し、炎症による刺激を和らげる働きが期待できます。
ティースプーン1杯のはちみつを舐める、または白湯やハーブティーに溶かして飲む方法があります。喉の不快感が和らぎ、眠りやすくなることがあります。(※2)
1歳未満の赤ちゃんは、はちみつに含まれる菌が原因で「乳児ボツリヌス症」を引き起こす危険があるため、はちみつを与えないでください。(※3)喉の粘膜を保護し、安眠をサポートしてくれる手軽なセルフケアとして、はちみつを生活に取り入れてみてください。
刺激になる食べ物・飲み物を控える
夜眠る前には、喉や胃を刺激する次のような刺激物を控えましょう。
| 避けるもの | 咳が悪化する理由 |
|---|---|
| 香辛料や刺激の多い食事 | 唐辛子や胡椒などが、喉や気管の粘膜を刺激して咳反射を起こしやすい |
| 酸味の強い食品 | 酢や柑橘類、トマトなどが胃酸分泌を促し、咳を悪化させる可能性がある |
| アルコール類 |
・血管拡張作用で気道の炎症が悪化しやすい ・利尿作用で体の水分が失われ、喉が乾燥しやすくなる |
| カフェイン飲料 | 胃酸分泌を促すことがあり、寝る前は咳を誘発しやすい |
| 喫煙・受動喫煙 | タバコの煙が気道粘膜を刺激し、炎症を慢性化させる |
夕食以降は喉にやさしい、刺激の少ない飲み物を選びましょう。
寝室の湿度・環境を整える
寝室の空気環境を整えることは、気道への刺激を減らすために大切です。寝室の湿度が低いと、睡眠中に喉が乾燥し、咳が悪化することがあります。湿度は低すぎても高すぎても良くないため、適度な湿度を意識してみてください。
加湿器は、手軽に湿度を調整できますが、タンクやフィルターの掃除は欠かさず行い、カビの発生を防ぎましょう。加湿器がない場合は、濡れたタオルや洗濯物を室内に干すだけでも湿度が保てます。
咳の原因がアレルギーの場合は、寝室の環境改善が役立ちます。ハウスダストやダニなどのアレルゲンを減らすために、シーツや布団の洗濯をこまめに行い、防ダニカバーの活用も一つの方法です。
空気を入れ替えるための換気や空気清浄機の使用もアレルゲン対策に役立ちます。
夜の咳で受診を検討すべき目安
受診を判断する際には、咳の期間や症状のチェックが重要です。適切な受診のタイミングを判断するための目安を解説します。
受診を急ぐべき危険な症状
夜の咳に強い息苦しさや意識の変化を伴う場合は、すぐに救急受診が必要です。
ひどい咳が続き、呼吸が苦しそうな様子があれば、重い病気が隠れている可能性があります。夜間や休日でもためらわず医療機関を受診しましょう。
特に注意したい症状は次のとおりです。
- 呼吸するときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音が生じる
- 安静でも息苦しい
- 会話や食事ができないほどの咳
- 唇や顔色が青白い
- 胸の痛みや締め付け感
- 意識がもうろうとしている
強い咳が続くと体に十分な酸素が行き渡らないことがあります。肺炎や気胸、心疾患などが原因の場合もあるため注意が必要です。赤色や茶色の痰が出るときも早めに受診しましょう。
市販薬で様子を見ても良いケース
咳が出始めて数日以内で、全身の状態が良い場合は、市販薬で様子を見ることも可能です。発熱がなく、息苦しさや胸の痛みもなく、食欲や日中の活動に大きな支障がないのであれば、風邪などの軽い感染症が原因のこともあります。
このような場合は、咳止めや痰を出しやすくする薬で症状が和らぎ、自然に回復することもあります。ただし、市販薬はあくまで一時的に症状を抑えるためのものです。
数日使っても改善しない、あるいは悪化してくる場合は、自己判断を続けず早めに医療機関を受診しましょう。
受診時に医師に伝えるポイント
受診の際は、以下のような咳の状態を具体的に伝えることが、正確な診断への近道です。
- 咳がいつから出ているか
- 出やすい時間帯
- 咳の特徴
- 悪化する場面
- 咳以外の症状の有無
- 現在服用している薬
- 過去にかかった病気
- アレルギーの有無
- 喫煙習慣があるかどうか
あらかじめ症状の変化を記録しておくと、診察がスムーズに進み、医師が治療方針を立てやすくなります。
咳が夜に出るときの受診先と受診方法
咳症状に適した診療科を選ぶことが早期回復の近道です。ここでは、考えられる受診先と夜間・オンライン診療について解説します。
症状別に選ぶ診療科(呼吸器内科・耳鼻咽喉科など)
咳以外の症状も踏まえたうえで、以下の診療科の受診を検討してください。
| 診療科 | 当てはまる症状 | 理由 |
|---|---|---|
| 呼吸器内科 |
・咳が数週間続く ・息苦しさ、胸の痛み ・喘鳴 ・痰が絡む |
・咳や気道の専門家 ・咳喘息や気管支喘息、肺炎などを評価する |
| 耳鼻咽喉科 |
・鼻水、鼻づまり ・後鼻漏(鼻水が喉に流れる) ・喉の痛みや声がれ |
鼻や喉の炎症が原因の場合に適している |
| 消化器内科 |
・胸やけ ・酸っぱい、苦いものが上がる ・食後や横になると咳が出る |
胃食道逆流症が疑われる場合に適している |
| アレルギー科 |
・季節や場所で咳が悪化する ・皮膚のかゆみ、じんましんがでる |
アレルゲン検査で原因物質を特定する(ダニやハウスダスト、カビなど) |
判断に迷うのであれば、まずは身近な内科を受診し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのがおすすめです。
夜間・休日診療やオンライン診療の活用
夜間に症状が悪化して眠れない場合は、夜間・休日診療やオンライン診療の活用を検討しましょう。
息苦しさを伴うなど急な悪化があるときは、救急外来を受診する選択肢があります。ただし、救急外来では緊急性の高い対応が優先されるため、応急処置が中心となります。詳しい診断や継続的な治療については、後日改めて日中の専門外来を受診することが大切です。
不安はあるものの、すぐに受診できない場合には、オンライン診療が役立ちます。自宅から医師に相談できるため、移動や待ち時間の負担を減らし、感染リスクを避けられる点がメリットです。症状によってはオンラインでの判断が難しく、適切な診断のために直接の対面受診が必要となる場合があります。
受診の必要性に迷うときや、夜間の咳への対処法を知りたいときは、自治体の救急電話相談(#7119)を活用するのも一つの方法です。状況に応じた選択を心がけましょう。
まとめ
咳が夜に出る・悪化するのは、体を横にする姿勢や自律神経の働きが変わることが関係しています。咳が起こる背景には、咳喘息や胃酸の逆流、アレルギーなどの原因が隠れているかもしれません。
上半身を少し高くして寝る、部屋の湿度を保つなど、できる範囲のセルフケアを試してみると楽になることもあります。市販薬を飲んでも咳が続く場合や、息苦しさなどの症状があるときは、早めに医療機関を受診してください。
夜間の咳に悩んでいる方は、まず原因を見極めることが改善への近道です。
参考文献
- Elcio O. Vianna; Mechanisms and Therapeutic Implications of Asthma Circadian Rhythm:Current Respiratory Medicine Reviews, Volume 1, Issue 2, Jun 2005, p. 171 – 183
- Hibatullah Abuelgasim, Charlotte Albury, Joseph Lee.Effectiveness of honey for symptomatic relief in upper respiratory tract infections: a systematic review and meta-analysis.BMJ Evidence-Based Medicine,2021,26,2,p.57-64.
厚生労働省:「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」
