会議中や運転中などの集中したい場面であくびが出て困ることがありませんか。あくびを「寝不足のせい」と決めつけると、体調不良のサインを見逃す可能性があります。
あくびが止まらない場合は、睡眠不足やストレスに加えて、貧血や睡眠時無呼吸症候群などの不調が関わっているかもしれません。手足のしびれやろれつが回らないなどの症状を伴うときは、脳卒中など緊急性の高い病気が隠れていることもあります。
この記事では、あくびが止まらない原因や日常生活でできる対処法、考えられる病気、受診の目安を解説します。気になる症状の見分け方を知り、必要なタイミングで医療機関へ相談できるように備えましょう。
あくびが止まらない原因は?
あくびが止まらない原因は、睡眠不足だけとは限りません。脳や体が「休息が必要」「負担がかかっている」と知らせている可能性があります。
あくびが止まらない主な原因は以下の3つです。
①睡眠不足や睡眠の質の低下
②ストレスや自律神経の乱れ
③薬の副作用
①睡眠不足や質の低下による脳の酸素不足
頻繁なあくびの主な原因は、睡眠不足や睡眠の質の低下による脳の酸素不足です。
睡眠時間が不足すると、脳は十分に回復できません。夜間に何度も目が覚める状態が続くときは、睡眠の質が悪く、脳の休息が不十分になります。結果として、日中の強い眠気や集中力の低下、判断力の鈍りにつながります。
あくびは、低下した脳の働きを一時的に引き上げる反応です大きく息を吸い込むことで酸素を取り込み脳への血流を促す、あるいは脳の温度を下げて機能を維持するなど、複数のメカニズムが考えられています。あくびが続くときは、脳が休息不足を補おうとしているサインかもしれません。
朝の疲労感が強い、日中に眠気が続く場合は、睡眠時間や睡眠の質を一度見直してみるとよいでしょう。
②ストレスや自律神経の乱れ
強いストレスは、あくびが増える原因の一つです。
仕事の緊張や人間関係の負担が続くと、交感神経の働きが優位になります。心拍数や血圧が上昇し、筋肉の緊張が続く状態になり、心身が十分に休まりません。緊張した状態が長引くと自律神経の調整機能が乱れ、脳の疲労が蓄積していきます。
あくびには、過度な緊張をやわらげ、呼吸を整えて筋肉のこわばりを緩和する働きがあります。重要なプレゼンや試験の直前にあくびが出る現象は、緊張状態を調整しようとする生理的な反応です。
ストレスで睡眠の質が低下すると、脳の回復が不十分となり、日中のあくびが増える要因になります。ストレスと睡眠不足が重なることで、あくびが続きやすい状態となるでしょう。
③薬の副作用
止まらないあくびや強い眠気は、薬の副作用として現れることもあります。
薬によっては、脳の働きを抑制するものがあり、眠気が生じてあくびが増えることがあります。服用を開始してから症状が目立つ方は、薬剤の影響を疑うことが必要です。
眠気が副作用として現れやすい薬剤は、以下のとおりです。
| 薬の種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 抗ヒスタミン薬 | 花粉症、アレルギー性鼻炎、皮膚のかゆみなどの改善 |
| 抗不安薬・睡眠薬 | 不安や緊張の緩和、不眠の改善 |
| 一部の抗うつ薬 | うつ病や不安障害の治療 |
| 一部の鎮痛剤 | 痛みの緩和 |
服用期間中にあくびや強い眠気が現れても、自己判断で中止してはいけません。
原疾患の悪化や離脱症状を引き起こす可能性があります。症状が気になる方は、処方医や薬剤師に相談してください。
薬剤の変更や用量調整によって、改善が期待できる場合があります。
今からできるあくびを止める対処法
あくびが続くときは、生活習慣の見直しによって改善が期待できます。具体的な対処法は、以下のとおりです。
ストレッチやマッサージをする
首や肩の緊張をほぐすことで、あくびの軽減が期待できます。
デスクワークなどで同じ姿勢が続くと、首や肩の筋肉がこわばり、脳への血流が低下します。その結果、脳への酸素や栄養の供給が滞り、集中力の低下や眠気が生じることで、あくびが増える傾向です。
脳への血流を改善し、あくびを減らすには、短時間でも体を動かすことが大切です。休憩時間などに以下のようなストレッチを行いましょう。
| ストレッチ | 具体的な内容 |
|---|---|
| 首のストレッチ |
・椅子に座ったまま、ゆっくりと首を前に倒し、次に後ろにそらす ・左右にも同様に倒す ・最後にゆっくりと首を回す |
| 肩のストレッチ |
・両肩を耳に近づけるように引き上げ、数秒保ったあとに力を抜く ・数回繰り返す |
| 背中のストレッチ |
・両手を前で組み、背中を丸めながら腕を前方へ伸ばす ・肩甲骨の間を広げる意識で伸ばす |
これらの動作は、深呼吸と合わせて行うことがおすすめです。ゆっくり息を吸い込み、吐きながら筋肉を伸ばすことで血流が促進され、頭の重さや眠気の軽減につながります。
質の良い睡眠を取る
あくびを減らすためには、睡眠時間だけでなく睡眠の質を高めることが重要です。
あくびが止まらない要因には、睡眠不足や睡眠の質の低下が関与していることがあります。長時間眠っても疲労感が残る場合は、深い睡眠が十分に確保できていないかもしれません。
脳と体を回復させるには、長時間の安定した睡眠が必要です。最近の研究では、生活習慣の改善を行うことで睡眠の質が向上し、睡眠薬の減薬と日中の眠気が軽減することが示されています。(※1)
睡眠の質を高めるためには、生活リズムと就寝前の行動を整えることが基本です。起床時刻と就寝時刻を毎日一定に保つことで体内時計が安定し、自然な眠気が生じやすくなります。
就寝前1〜2時間はスマートフォンやパソコンの使用を控え、38〜40℃程度の入浴や軽いストレッチで心身を落ち着かせましょう。寝室は暗く静かな環境に保ち、夏季25〜28℃、冬季18〜22℃を目安に室温を調整してください。
就寝前の食事・カフェイン・アルコールの摂取も、睡眠の質を低下させるため控えましょう。
睡眠の質を改善することで、日中のあくびや強い眠気の軽減が期待できるので、継続的な生活習慣の見直しが重要です。
食事・運動・リラックスで自律神経を整える
止まらないあくびへの対処法の一つが、食事・運動・リラックスで自律神経を整えることです。日常の生活習慣を整えることで、自律神経を安定させられる可能性があります。
食事は、1日3食をできるだけ一定の時刻に摂ることがおすすめです。ビタミンB群やカルシウムを意識的に摂取すれば、体の調整機能をサポートできます。ビタミンB群は豚肉や玄米などに多く含まれており、カルシウムは乳製品や小魚で摂取可能です。
ウォーキングなどの有酸素運動の習慣化も大切です。強度の高い運動は必要ありませんが、やや息が弾む程度の運動を継続すると血流が促進され、気分の安定につながります。運動だけでなく、自宅でゆっくりとした腹式呼吸を数分間行うだけでも、心身の緊張を和らげる効果が期待できます。
いずれの方法も即効性はないものの、継続することで体の調整機能が整い、あくびが出にくい状態につながります。
片頭痛への対処を行う(医師の診断がある場合)
片頭痛持ちの方の場合、頭痛が起こる前の「予兆」としてあくびが増えることがあります。この段階で医師の指示通りに適切な鎮痛薬等を使用することで、その後の頭痛発作の悪化を防げる場合があります。
ただし、これはあくびを止めるための薬ではなく、片頭痛と診断されている方に限られる対処法です。
あくびが止まらないときに考えられる病気
十分に休息を取ってもあくびが続く場合は、病気が関与している可能性があります。睡眠時間を確保してもあくびが改善しないときや、頭痛・めまい・しびれなどの症状を伴うときは注意が必要です。
あくびが止まらないときに考慮すべき主な疾患は次の4つです。
①貧血
②脳卒中
③片頭痛
④睡眠時無呼吸症候群
①貧血
貧血になると脳への酸素供給が低下し、あくびが増えることがあります。
貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少した状態です。ヘモグロビンは酸素を全身へ運ぶ役割を担うため、不足すると各臓器に十分な酸素が届きません。特に酸素消費量の多い脳は影響を受けやすく、だるさや集中力低下が生じます。
酸素供給が不足した状態では、体は呼吸を深くし、酸素を取り込もうとします。あくびはその反応の一つであり、貧血になると頻回みられるでしょう。
貧血の原因として多いのは鉄欠乏性貧血です。ほかにも、ビタミンB12や葉酸の不足などが原因となる場合があります。
あくび以外に、以下の症状がないか確認してください。
- 階段昇降で動悸や息切れが起こる
- 立ち上がった際に立ちくらみがある
- 顔色が悪いと指摘される
- 疲労感が続く
- 頭痛や頭の重さが持続する
- 朝の目覚めが悪い
複数の症状が当てはまるときは貧血が疑われるため、内科で血液検査を受けましょう。
②脳卒中
頻度は高くありませんが、持続する異常なあくびが脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)と関連することがあります。
あくびは、脳幹を含む脳の深部で調整される運動です。血管障害が脳の深部まで及ぶと、あくびが過剰に出現することがあります。
あくびと同時に次の症状が突然現れた場合は、脳卒中など緊急性の高い疾患が疑われるサインです。
| 危険なサイン | 具体的な内容 |
|---|---|
| 顔の麻痺 |
・顔の片側が下がる、ゆがむ ・笑うと口角が左右で異なる |
| 腕の麻痺 |
・片腕に力が入らない ・両腕を前に伸ばすと片方が下がる |
| 言葉の障害 |
・ろれつが回らない ・言葉が出にくい ・相手の言葉(話の内容)が理解できない |
あくびが止まらない状態に加え、神経症状が出現したときは、医療機関を受診してください。症状が出た時刻を確認し、直ちに119番へ連絡しましょう。
③片頭痛
片頭痛の前兆として、あくびが増えることがあります。
片頭痛が原因の場合、発症前に脳内環境の変化があくびとして現れ、拍動性の強い頭痛へと移行します。頻繁なあくびのあとに、ズキズキと脈打つ痛みが生じるパターンを繰り返している方は、片頭痛かもしれません。
あくび以外にも、強い眠気や気分の変動、首・肩のこりなどが、片頭痛の前兆として現れることがあります。光や音・においへの過敏、吐き気、嘔吐、視界にチカチカした光が見える症状(閃輝暗点)などを伴うこともあるでしょう。
これらの症状がみられるときは、神経内科や頭痛外来で検査を受けてください。適切な診断と治療により、発作の頻度や強さの軽減が期待できます。
④睡眠時無呼吸症候群
日中の強い眠気とあくびが続くときは、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる、または浅くなる疾患です。睡眠時間を確保していても深い睡眠が得られず、日中に強い眠気や集中力低下が生じます。
睡眠時無呼吸症候群は、大きないびきを伴うことが多く、放置すると高血圧、心疾患、糖尿病などの発症リスクを高めます。家族から大きないびきや無呼吸を指摘されたり、会議中に強い眠気を感じたりする方は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
起床時に頭痛がある、口の乾燥が強い、夜間に寝苦しさで目が覚めるなどの症状にも注意が必要です。いずれかの症状がみられる場合は、呼吸器内科や睡眠外来を受診して、検査・治療をされることを推奨します。
止まらないあくびの受診の目安
十分な休息を取ってもあくびが止まらないときは、医療機関の受診を検討してください。
あくびの多くは睡眠不足や疲労によるものです。しかし、生活習慣を整えても頻繁に続いたり、日常生活に支障が出たりする場合は、背景に疾患が関与している可能性があります。
ここでは、医療機関を受診する具体的な目安と、症状に応じた診療科の選び方を解説します。
受診の目安
あくびの頻度が明らかに増えていたり、日常生活に支障が出たりしているときは注意が必要です。過度のあくびは、神経や全身の病気の兆候である可能性が臨床研究で指摘されています。(※2)
以下のようなサインがみられる方は、自己判断せずに医療機関の受診を検討しましょう。
- 6〜8時間の睡眠を数週間確保しても改善しない
- 仕事や学業に集中できず、ミスが増えている
- 運転中に強い眠気を感じ、安全に不安がある
- 激しい頭痛や強いめまい、ふらつきが突然現れる
- 手足の片側がしびれる、力が入らない
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 物が二重に見える
- 胸の痛みや締め付けられるような圧迫感、強い息苦しさが突然現れる
これらの症状が一つでもある方は、様子をみずに救急要請を行なってください。早期の受診が重症化の予防につながります。
症状別の診療科
あくびが止まらない方で受診先に迷う場合は、まず内科やかかりつけ医を受診しましょう。受診後、症状に応じて専門科へ紹介してもらうことが可能です。
最初から専門科を受診するときは、以下の症状別の診療科を参考に判断してください。
| 症状 | 受診を検討する診療科 |
|---|---|
| 受診先に迷う、全身の倦怠感や顔色不良がある | 内科 |
| 激しい頭痛、手足のしびれ、ろれつが回らない | 脳神経内科、脳神経外科(緊急性が高い) |
| 日中の耐えがたい眠気、大きないびき、睡眠中の呼吸停止 | 睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科 |
| あくびのあとに脈打つような頭痛発作が起こる | 頭痛外来、神経内科 |
| 強いストレス、不安、気分の落ち込みが続く | 心療内科、精神科 |
睡眠の質に問題を感じる方は、睡眠外来に相談しましょう。検査によって原因が明確になれば、日中の眠気が軽減し、あくびの頻度が減る可能性があります。
あくびが止まらない場合は、症状を整理したうえで、適切な診療科へ相談することが大切です。
まとめ
あくびは脳の働きを保つための生理的な反応です。
しかし、頻繁に続くときは睡眠不足やストレスだけでなく、体調不良や疾患が関与している可能性があります。普段に比べて回数が明らかに増えている場合は、注意してください。
症状の改善のために、まずは生活習慣を見直しましょう。睡眠時間だけでなく睡眠の質を整え、起床時刻と就寝時刻を安定させることが大切です。軽いストレッチや適度な運動を取り入れ、心身の緊張を緩和することもおすすめです。
生活習慣を見直しても症状が改善せず、頭痛・しびれ・強い眠気などを伴うときは、医療機関に相談しましょう。
参考文献
- Gardner DM, Turner JP, Magalhaes S, Rajda M, Murphy AL.Patient Self-Guided Interventions to Reduce Sedative Use and Improve Sleep: The YAWNS NB Randomized Clinical Trial.JAMA Psychiatry,2024,81,12,p.1187-1197.
Wani PD, Agarwal M.The science of yawning: Exploring its physiology, evolutionary role, and behavioral impact.Journal of Family Medicine and Primary Care,2025,14,8,p.3115-3120.
