白内障手術の費用は、保険診療(単焦点レンズ)の場合、自己負担割合に応じて異なり、3割負担の方で片眼あたり約45,000円が目安です。この記事では、保険診療・選定療養(多焦点レンズ)・自由診療の3つの区分ごとの費用の考え方と目安、高額療養費制度や医療費控除など負担を抑える制度を、眼科専門医が解説します。
この記事でわかること
- 白内障手術の費用の全体像(保険診療・選定療養・自由診療の3区分)
- 保険診療(単焦点レンズ)の自己負担割合別の費用の目安
- 多焦点眼内レンズを選ぶ場合の費用の考え方
- 高額療養費制度・医療費控除など負担を抑える制度
- 手術費以外にかかる費用と、事前に確認しておきたいポイント
※手術そのものの流れや術後の注意点については、【白内障 手術】で詳しく解説しています。
白内障手術の費用の全体像
手術技術(水晶体再建術)に対する費用の考え方
白内障手術(眼内レンズ挿入あり)の手術技術料は12,100点(121,000円)で、3割負担の場合は36,300円です。
白内障手術は、濁った水晶体の中身を超音波で砕いて除去する術式(超音波乳化吸引術)と、残した水晶体の袋(水晶体嚢)の中に、人工の眼内レンズを固定する術式(眼内レンズ挿入術)の2つの技術に対する診療報酬からなります。
- 眼内レンズを挿入する場合 12,100点(121,000円)
- 眼内レンズを挿入しない場合 7,430点(74,300円)
となります。
通常は、眼内レンズを挿入しますので、121,000円になり、これに自己負担率をかけたものが、手術技術そのものの費用になります。例えば、3割負担の方は、121,000円×0.3=36,300円になります。
手術にかかる総費用の概要
実際に、白内障手術にかかる費用は、手術技術費用に加えて、検査料や薬剤費用などの諸費が加算されます。その総費用に対して、自己負担率をかけたものが、実際の費用になります。
- 水晶体再建術:手術技術料は12,100点(3割負担で36,300円)で、これには通常の単焦点レンズ代が含まれます。
- 術前検査料:血液検査、心電図、眼軸長測定、角膜内皮細胞検査など、手術を安全に行うための検査費用がかかります。
- 診察料:初診診察と再診診察の費用がかかりますが、手術前後の管理指導料は原則としてかかりません。
- 手術中に使用する薬剤 :手術中に使用するヒアルロン酸、灌流液、散瞳薬や麻酔用の目薬などの薬剤費が加算されます。
- 麻酔料:テノン氏嚢内注射または球後麻酔を行った場合のみ費用がかかり、点眼麻酔の場合は費用がかかりません。
- 術前・術後に自宅で使う点眼薬 :手術の前後で感染症や炎症を防ぐために使用する、抗菌薬や抗炎症点眼薬の費用がかかります。
眼内レンズの選択で変わる手術費用
白内障手術の費用は、どの眼内レンズを選ぶかによって、大きく3つの区分に分かれます。まずはご自身がどの眼内レンズを希望されるかで、どの区分に当てはまるかを把握ください。
| 区分 | 使用するレンズ | 費用の扱い |
|---|---|---|
| 保険診療 | 単焦点眼内レンズ | 手術・検査・レンズすべてに健康保険が適用 |
| 選定療養 | 厚生労働省承認の多焦点眼内レンズ | 手術・検査は保険適用レンズの差額分など自己負担 |
| 自由診療 | 国内未承認の多焦点眼内レンズ等 | 手術・検査・レンズすべて全額自己負担 |

単焦点レンズを選ぶ方は全額が保険診療となり、費用負担は比較的抑えられます。多焦点レンズを希望する場合は、レンズの種類によって選定療養か自由診療かが決まります。
ご自身に合ったレンズ(費用区分)を選ぶための簡易的な判断ステップは以下の通りです。
- ①ライフスタイルの確認:仕事や趣味で「手元(読書・スマホ)」と「遠く(運転・スポーツ)」のどちらを重視するかを整理します。
- ②眼鏡の使用許容度:術後も眼鏡をかけることに抵抗がないか、あるいはできるだけ眼鏡なしで生活したいかを検討します。
- ③夜間運転の有無:夜間に車を運転する機会が多い場合、多焦点レンズ特有の「ハロー・グレア(光のにじみ・まぶしさ)」の影響を考慮する必要があります。
- ④費用の検討:保険適用の単焦点レンズか、自己負担が発生する選定療養・自由診療の多焦点レンズか、予算を考慮します。
※単焦点レンズと多焦点レンズの詳しい機能の違いについては【白内障 手術】 の記事をご覧ください。
保険診療(単焦点レンズ)の費用
先述したように、保険診療(単焦点眼内レンズ・日帰り手術)で、3割負担の方の手術技術料の自己負担は36,300円で、これに手術当日の診察料・薬剤費等を加えた当日の窓口支払いは約4万5千円前後が目安です。窓口支払額の片眼あたりの目安を自己負担率ごとに表にまとめました。
| 自己負担割合 | 手術技術料の自己負担 | 手術当日の窓口支払いの目安(片眼) |
|---|---|---|
| 1割負担 | 12,100円 | 15,000円前後 |
| 2割負担 | 24,200円 | 約30,000円前後 |
| 3割負担 | 36,300円 | 約45,000円前後 |
※上記は手術当日の費用の目安です。術前検査や術後の診察・点眼薬の費用は別途かかります(後述)。
※入院で手術を受ける場合は、入院に関わる費用(短期滞在手術等基本料、差額ベッド代、食事代など)が加わるため金額が変わります。
※いずれの負担割合の方も、後述の高額療養費制度の対象となります。
※自己負担割合は年齢と所得によって決まり、70歳未満の方は原則3割、70〜74歳の方は原則2割、75歳以上の方は原則1割です(いずれも現役並み所得の方は3割)。ご自身の負担割合は保険証や資格確認書でご確認ください。
多焦点レンズを選ぶ場合の費用(選定療養・自由診療)
多焦点眼内レンズを希望する場合、選んだレンズが国内で承認されているかどうかにより、費用の仕組みが「選定療養」と「自由診療」の2つに分かれます。国内未承認の多焦点眼内レンズを用いる治療は、全額自己負担の自由診療として行われています。
まず両者の違いを整理します。
| 対象となるレンズと治療 | 【選定療養】国内承認済みの多焦点眼内レンズ | 【自由診療】国内未承認の多焦点レンズ、レーザー併用術式など |
|---|---|---|
| 手術代・検査代 | 保険適用 | 全額自己負担 |
| 自己負担の範囲 | 保険診療分+レンズ差額分等 | 手術・検査・レンズすべて |
| 高額療養費制度 | 保険診療分は対象 | 対象外 |
| 医療費控除 | 対象 | 対象 |
| 費用の目安(片眼) | 保険診療分+約20万〜40万円 | 約50万〜70万円 |
| 費用の目安(両眼) | 保険診療分+約40万〜80万円 | 約100万〜140万円 |
※費用は一般的な目安です。レンズの種類(2焦点・3焦点・連続焦点型、乱視矯正の有無など)や医療機関によって大きく異なるため、正確な金額は手術を受ける施設にご確認ください。
選定療養(国内承認レンズ)の詳細
選定療養は、厚生労働省が承認した多焦点眼内レンズを用いる場合に利用できる仕組みで、2020年4月から始まりました。手術代・検査代には健康保険が適用され、単焦点レンズとの差額や、多焦点レンズの選択に必要な検査・説明にかかる費用を「選定療養費」として自己負担します。
言い換えると、単焦点眼内レンズより余分にかかるレンズ費用や検査費用は、保険の外に出して自己負担しましょうという制度です。
したがって、支払いは「保険診療分の手術費用(表1)+レンズ差額分等」の合計になります。保険診療分は高額療養費制度の対象ですが、レンズ差額分は対象外です。
自由診療(国内未承認レンズ等)の詳細
国内未承認の多焦点眼内レンズを使う手術や、レーザーを併用する術式(フェムトセカンドレーザー白内障手術)を選択する場合は、自由診療となり、手術・検査・レンズを含めた費用の全額が自己負担です。
健康保険は適用されず、高額療養費制度の対象にもなりません(医療費控除は対象となります)。自由診療で用いられるレンズは国内で薬事承認を受けていないため、有効性・安全性の評価が国内承認レンズとは異なる位置づけであることを理解しておく必要があります。未承認の医薬品・医療機器を用いる際の注意点について、手術前に医療機関から十分な説明を受けてください。
自分に合うレンズを選ぶことも大切
多焦点眼内レンズには、遠くと手元など複数の距離にピントを合わせることで術後に眼鏡を使う場面を減らせることが期待できる一方、夜間に光がにじむ「ハロー・グレア」や照度が低い環境におけるコントラストの低下といった特有の見え方が生じる場合があり、満足度には個人差があります。これは選定療養・自由診療のいずれのレンズにも共通する注意点です。費用だけでなく、こうした見え方の特徴やご自身の職業や趣味・スポーツも踏まえて選ぶことが大切です。
受診の際には、費用面の確認とあわせて「本当に自分に合うレンズなのか」を医師と十分に相談することが大切です。
費用負担を抑える制度(まとめ)

白内障手術の費用負担を軽減できる制度をまとめます。代表的なものは高額療養費制度と医療費控除の2つです。
高額療養費制度
白内障手術の保険診療分において、負担を軽減できる公的制度が高額療養費制度です。高額療養費制度は、同一月(1日〜月末)の医療費の自己負担額が、年齢・所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分の払い戻しを受けられる制度です。1割・2割負担の方だけでなく、3割負担の方も対象です。上限額は年齢(70歳以上か未満か)と所得区分によって細かく定められているため、ご加入の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村など)でご自身の上限額をご確認ください。
利用のポイントは次の2つです。
- 事前に「限度額適用認定証」を用意する:窓口での支払い自体が上限額までに抑えられ、あとから払い戻しを申請する手間と一時的な立て替えが不要になります。マイナ保険証を利用すると、認定証がなくても窓口で限度額が適用される場合があります。
- 両眼の手術は同じ月に受けると負担を抑えられる場合がある:上限額は「月ごと」に計算されるためです。月をまたいで片眼ずつ手術すると、それぞれの月で上限まで支払うことになります。外来でも「両眼だと単純に2倍かかりますか?」というご質問をよく受けますが、同月内に両眼の手術を行う場合、高額療養費制度によって2倍よりも負担が抑えられるケースがあります。手術日程を相談する際に、費用面の希望も遠慮なくお伝えください。
なお、選定療養のレンズ差額分や自由診療の費用は、高額療養費制度の対象外です(保険診療分のみが対象です)。
医療費控除
医療費控除は、1年間(1月〜12月)に支払った医療費が一定額(原則10万円、または総所得金額等の5%のいずれか低いほう)を超えた場合に、確定申告によって所得税・住民税の負担が軽減される制度です。白内障手術では、保険診療の自己負担分に加えて、選定療養のレンズ差額分や、治療目的の自由診療の費用も対象になります。生計を同じくするご家族の医療費や、通院のための公共交通機関の交通費も合算できます。領収書は捨てずに保管しておきましょう。詳しくは国税庁のウェブサイトをご確認ください。
自治体の助成・民間の医療保険
自治体によっては、独自の医療費助成制度を設けている場合があります。対象条件や内容は地域によって異なるため、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
また、民間の医療保険にご加入の方は、白内障手術が手術給付金の対象になっていることがあります。手術前に保険会社へ確認しておくことをおすすめします。
費用に関する注意点(手術費以外にかかる費用)
見落とされがちですが、白内障手術では「手術当日の費用」以外にも費用がかかります。予算を考える際は、次の項目も含めて全体像を把握しておくと安心です。
- 術前検査の費用:眼内レンズの度数を決める検査(眼軸長測定など)や、全身状態を確認するための検査費用がかかります。
- 術前の診察・点眼薬:手術前から感染予防のために使い始める、抗生物質の点眼薬や診察の費用がかかります。
- 術後の点眼薬:手術後は、目の炎症の抑制や感染を防ぐために通常3種類の点眼薬を数ヶ月間続けます。
- 術後の通院・診察:手術の翌日から術後6か月ごろまで、経過観察のために複数回の通院と診察の費用が必要です。
- 保護用の眼帯・保護眼鏡:術後にゴミや衝撃から目を保護するための、専用の保護眼鏡の購入費用が必要になることがあります。
- 手術後の眼鏡:見え方が安定したあと、必要に応じて新しい眼鏡を作り直すための費用がかかります。
保護メガネや通常の眼鏡以外は、保険適用です。患者さんには、手術当日の費用だけでなく「術後1〜2か月の通院と点眼まで含めた費用感」を事前にお伝えするようにしています。医療機関によって検査項目や処方内容は異なるため、費用の詳細は手術を受ける施設に確認してください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
白内障手術の費用は、単焦点レンズ(保険診療)・多焦点レンズ(選定療養)・国内未承認レンズ等(自由診療)のどれを選ぶかで大きく変わります。保険診療分はいずれの負担割合でも高額療養費制度の対象となります。医療費控除は、どのレンズを選んでも活用できます。費用は施設や目の状態によっても異なるため、正確な金額は手術を受ける眼科で確認してください。手術そのものの流れや眼内レンズの選び方は、【白内障 手術】の記事で詳しく解説しています。
参考文献
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