子宮内膜症と診断されたものの、ご自身の「ステージ」がわからず不安に感じていませんか。ステージは手術で確定するのが一般的で、症状の重さと必ずしも一致しないため、戸惑う方も少なくありません。
この記事では、子宮内膜症のステージ分類の基準や診断方法を詳しく解説します。さらに、ステージと症状がなぜ一致しないのか、病変の場所による症状の違いや進行度に応じた治療の選択肢も紹介します。
この記事でわかること
子宮内膜症のステージの分類基準・症状・治療方針まとめ
子宮内膜症のステージは、腹腔鏡手術で病変の広がりと癒着の程度を点数化するr-ASRM分類によってⅠ期からⅣ期に判定される指標で、症状の強さや妊娠のしにくさとは必ずしも一致しません。
ステージの決まり方 世界共通の基準であるr-ASRM分類(改訂ASRM分類)で病変と癒着を点数化し、合計点に応じてⅠ期(1〜5点)からⅣ期(41点以上)の4段階に分かれます。
手術を受けないとステージが確定しない理由 超音波やMRIでは散在する小さな病変や薄い癒着を正確に把握できないため、腹腔鏡でお腹の中を直接観察して初めてステージが確定します。
ステージと症状・不妊が一致しない理由 ステージは病変の物理的な広がりの評価にすぎず、ステージⅠでも強い痛みが出る一方、Ⅳでも自覚症状がほとんどない場合があります。
病変の場所ごとに異なる症状 腹膜(悪化する月経痛・慢性骨盤痛)、卵巣チョコレート嚢胞(強い月経痛・不妊)、深部子宮内膜症(腸・膀胱・尿管の症状)で現れ方が変わります。
妊娠希望の有無で変わる治療方針 低用量ピル・黄体ホルモン製剤・GnRHアゴニスト/アンタゴニストなどの薬物療法と手術療法を、症状と妊娠希望に応じて選びます。
子宮内膜症のステージとは

子宮内膜症の「ステージ」とは、病気の広がり具合を客観的に示すための分類です。
お腹の中で病変がどのくらい広がっているか、臓器同士の癒着がどの程度あるかを評価し、主にⅠ期(軽症)からⅣ期(重症)までの4段階で示されます。
ただし、このステージはあくまで「病変の物理的な広がり」を評価したもので、症状の強さや妊娠のしにくさ(不妊)と必ずしも一致するわけではありません。
例えば、ステージⅠでも強い痛みに悩む方もいれば、最も進行したステージⅣでも自覚症状がほとんどない方もいます。ステージは治療方針を決める上での一つの目安ですが、それだけが全てではないことをまずご理解ください。
ステージは手術時に評価される分類
子宮内膜症のステージは、原則として腹腔鏡手術などでお腹の中を直接観察した際に評価されます。
超音波(エコー)やMRIといった画像検査だけでは、お腹の中に散らばっている小さな病変や、臓器同士が薄い膜のようにくっついている癒着の状態を正確に把握することは困難です。
そのため、医師が手術用のカメラでお腹の中をすみずみまで確認し、病変の大きさ・場所・癒着の範囲を点数化することで、初めて客観的なステージが確定します。
ある研究では、子宮内膜症の手術を受けた12〜21歳の若い方を対象とした調査では、その多く(84.4%)がステージⅠであったと報告されています(※1)。
また、ステージと不妊症のなりやすさが直接関連するという明確な科学的根拠は、現時点では確立されていません。(※2)ステージはあくまで治療を考える上での参考情報の一つと捉えることが大切です。
手術を受けていない場合、正確なステージは判定できません
ステージは腹腔鏡手術で病変を直接観察して確定するため、手術を受けていない方には、はっきりとしたステージが付かないことがほとんどです。「診断されたのにステージがわからない」と不安に思う必要はありません。画像検査で病気の存在を推測して治療方針を立てることは可能ですが、正確なステージ(r-ASRM分類)の判定は手術時に行われます。(※2)
子宮内膜症の原因や診断の流れに関連する記事はこちら⇒子宮内膜症とは?
子宮内膜症のステージは何を基準に決まる?
子宮内膜症のステージは、腹腔鏡手術でお腹の中を直接確認した際に、世界共通の基準である「改訂ASRM分類(r-ASRM分類)」を用いて判定されます。日本産科婦人科学会のガイドライン(※3)でも、この分類に基づいた評価が標準とされています。
この分類は、病気の物理的な広がりや臓器同士のくっつき具合(癒着)を客観的な点数で評価するためのものです。
そのため、手術を受けていない方の場合、超音波やMRI検査で病気の広がりをある程度推測できても、確定的なステージが付けられることはほとんどありません。「診断されたのにステージがわからない」と不安に思う必要はないのです。
ステージはあくまで病気の広がりを把握するための一つの「ものさし」であり、それ自体が症状の重さや治療のすべてを決めるわけではないことを、まずご理解ください。
Beecham分類
Beecham分類は、1966年に提唱された子宮内膜症の進行期分類です。内診所見にもとづいて病変の広がりを評価する方法で、腹腔鏡検査が普及する以前は広く用いられていました。現在は、より客観的に評価できるr-ASRM分類が主流となっています。
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| 第Ⅰ期 | 骨盤内臓器や腹膜の表面に1~2mm程度の小さな病変が散在している。病変は小さく、開腹時に初めて確認されることもある。 |
| 第Ⅱ期 | 仙骨子宮靱帯、広間膜、子宮頸部後壁、卵巣などに限局した硬結を触れるが、癒着は認めない。 |
| 第Ⅲ期 | 卵巣が正常の2倍以上に腫大し、仙骨子宮靱帯、子宮後壁、直腸、付属器に癒着を認める。子宮の可動性も制限される。 |
| 第Ⅳ期 | ダグラス窩が閉塞し、骨盤内臓器が高度の癒着によって一塊となる。いわゆる「凍結骨盤(Frozen pelvis)」の状態である。 |
r-ASRMで評価する項目
r-ASRM分類は、手術の際に医師が目で見て確認した「病変」と「癒着」の状態を点数化し、その合計点でステージを決定します。
具体的には、お腹の中の以下のポイントを細かく評価します。
| 評価するポイント | 具体的なチェック内容 |
|---|---|
| 病変の広がり | ・お腹の膜(腹膜)や卵巣の表面にできた病変の大きさ、深さ ・卵巣にできた血液のたまった袋(卵巣チョコレート嚢胞)の大きさ |
| 癒着の状態 | ・卵巣や卵管の周りで、臓器同士がどの程度くっついているか ・癒着が薄い膜状か、あるいはガチガチに固まってしまっているか ・癒着によって卵管が塞がれていないか |
これらの点数をすべて足し合わせ、最終的なステージを算出します。
ステージⅠ~Ⅳの分類

r-ASRM分類の合計点数に応じて、子宮内膜症の病変の広がりはステージⅠからⅣの4段階に分類されます。
各ステージのおおよその目安は、以下の表のとおりです。
| ステージ | 合計点数 | 病変・癒着の状態の目安 |
|---|---|---|
| Ⅰ期(軽微) | 1~5点 | ・腹膜などに点状の小さな病変が散らばっている |
| Ⅱ期(軽度) | 6~15点 | ・病変がやや広がり、卵巣や卵管の周囲に部分的な癒着が見られることがある |
| Ⅲ期(中等度) | 16~40点 | ・卵巣チョコレート嚢胞(3cm以上)がある ・卵管周囲などに、はっきりとした癒着が見られる |
| Ⅳ期(重症) | 41点以上 | ・大きなチョコレート嚢胞がある ・癒着が広範囲に及び、臓器同士が固まってしまう「凍結骨盤」という状態になっている |
点数が高くなるほど、病変や癒着が広範囲に及んでいることを示します。
ステージだけでは病気の重症度は判断できない

最も知っておいていただきたいのは、このステージ分類が病気の「本当のつらさ」や「重症度」を必ずしも反映しないという事実です。
ステージはあくまで「お腹の中の病変の広がり」という解剖学的な評価に過ぎません。
そのため、「ステージⅠでも、激しい月経痛に苦しむ方」「ステージⅣでも、自覚症状がほとんどない方」といったケースは、決して珍しくないのです。
ステージと症状のつらさが一致しない主な理由として、以下の2点が挙げられます。
- 痛みの感じ方には個人差がある
- r-ASRM分類では評価しきれない病変がある
特に後者が重要で、腸や膀胱、腟の奥などに食い込むように発生する「深部子宮内膜症(DE:Deep Endometriosis )」は、現在の分類では点数に反映されにくいという課題があります。
深部子宮内膜症は、たとえ病変自体が小さくても、周辺の神経を巻き込むことで排便痛や性交痛などの激しい痛みを引き起こすことがあります。しかし、r-ASRM分類ではこうした病変が評価されにくいため、ステージが低いにもかかわらず、患者さん本人は強い症状に悩まされている、という状況が起こり得るのです。
治療方針を考える上で大切なのは、ステージという数字だけで判断することではありません。ご自身の症状、妊娠のご希望、そして病変がどこにあるのかを総合的に判断し、最適な治療法を主治医と一緒に見つけていくことです。
子宮内膜症の症状は病変の場所によって異なる
子宮内膜症の症状は、病気の広がり具合を示す「ステージ」ではなく、病変が「どこにできているか」によって左右されます。
腹膜や卵巣に病変ができる場合や、深部子宮内膜症において出やすい症状について見ていきましょう。
腹膜の病変で現れやすい症状
お腹の内側をおおう薄い膜(腹膜)に病変ができると、主に月経に関連した強い痛みが現れます。
これは、腹膜に生じた子宮内膜組織が、月経のたびに剥がれて出血と炎症を繰り返すためです。この炎症が痛みを引き起こす物質を生み出し、以下のようなつらい症状の原因となります。
- 年々ひどくなる月経痛
- 市販の鎮痛薬が効かなくなってきた
- 月経期間以外にも下腹部や腰が痛む(慢性骨盤痛)
- 性交時や排便時に痛みを感じる
腹膜の病変は、黒や赤の小さな点(インクを散らしたような色調)が腹膜上に散在していることが多く、超音波検査では見つけにくいという特徴があります。また、病変が小さいためステージⅠと診断されることもありますが、ステージⅠだからといって痛みが軽いとは限りません。
卵巣チョコレート嚢胞で現れやすい症状
卵巣の中に子宮内膜組織が入り込むと、月経のたびに出血した血液の逃げ場がなくなり、卵巣内にたまっていきます。これが古い血液で満たされた袋状の病変、「卵巣チョコレート嚢胞」です。
チョコレート嚢胞ができると、強い月経痛に加え、妊娠しにくさ(不妊)が大きな問題となることがあります。その他、以下のような症状が現れます
- だんだんひどくなる月経痛
- 下腹部の張りや重苦しい感じ
- 性交時の痛み
嚢胞の存在によって正常な卵巣組織が圧迫されて卵子の質が低下したり、卵巣が周囲の卵管や腸とくっついて(癒着)、排卵や受精のプロセスが妨げられたりすることが、不妊の主な原因と考えられています。
また、嚢胞が数cm以上に大きくなると、まれに袋が破れて激しい腹痛を起こしたり(破裂)、卵巣の根元がねじれて血流が途絶えたり(茎捻転)するリスクも高まるため、定期的に診察を受け、病変や症状の変化を確認していくことが重要です。
深部子宮内膜症(腸・膀胱・尿管など)で現れやすい症状
子宮内膜症のなかでも、病変が子宮の壁や、隣接する腸・膀胱・腟の奥などに深く食い込んでいくタイプを「深部子宮内膜症(DE: Deep Endometriosis)」と呼びます。
この深部子宮内膜症は、たとえ病変の広がりが小さくても周辺の神経を巻き込むことで激しい痛みを引き起こしますが、現在のステージ分類(r-ASRM分類)では、この「深さ」が十分に評価されません。
そのため、ステージが低いにもかかわらず、患者さん本人は非常に強い症状に悩まされている、という状況が起こりやすいのです。
症状は、病変が食い込んだ臓器によって特有のものが現れます。
| 病変ができやすい場所 | 現れやすい症状の例 |
|---|---|
| ダグラス窩・仙骨子宮靱帯 (子宮と直腸の間のくぼみや、子宮を支える組織) | ・奥がえぐられるようなつらい性交痛 ・月経時の腰痛や下腹部痛 |
| 直腸・S状結腸 (便が通る大腸の一部) | ・月経時の排便痛(特に便が通過する際の痛み) ・下痢や便秘、血便(月経周期に連動する) |
| 膀胱・尿管 (尿をためる袋や、腎臓と膀胱をつなぐ管) | ・月経時の排尿痛や残尿感 ・頻尿、血尿 |
深部子宮内膜症は、激しい痛みの原因となるだけでなく、不妊症との関連も深いと考えられています。
実際に、不妊に悩む深部子宮内膜症の患者さんが手術を受けることで、その後の妊娠率が改善する可能性が複数の研究で示唆されています。(※2)どの治療法が最適かは病状によって異なるため、医師との相談が不可欠です。
子宮内膜症のステージや症状に応じた治療方針
子宮内膜症の治療法は、ステージ(病変の広がり)だけでなく、痛みの強さなどの「症状」や「妊娠の希望があるか」によって総合的に決定されます。治療法は大きく分けて「薬物療法」と「手術療法」の2つがあります。
妊娠を希望する場合の治療選択
妊娠を希望されている場合は、排卵を止めない治療や、妊娠を妨げている原因(癒着など)を取り除く治療が優先されます。
妊娠を希望しない(痛みの緩和を優先する)場合の治療選択
- 低用量ピル(LEP):排卵を抑え、子宮内膜の増殖を防ぐことで、月経痛や慢性骨盤痛を和らげます。長期的な管理に適しています。
- 黄体ホルモン製剤(ジエノゲストなど):子宮内膜症病変に直接作用して増殖を抑えます。副作用が比較的少なく、第一選択薬として広く用いられます。
- GnRHアゴニスト/アンタゴニスト:一時的に閉経に近い状態を作り出し、病変を縮小させます。骨密度の低下などの副作用があるため、原則として6ヶ月以内の使用に限られます。
- 手術療法:薬物療法で効果が不十分な場合や、チョコレート嚢胞が大きくがん化のリスクがある場合などに検討されます。
子宮内膜症のステージに関するよくある質問
子宮内膜症のステージが上がると痛みも強くなりますか?
いいえ、ステージの高さと痛みの強さは必ずしも一致しません。ステージは手術で確認した病変の広がりや癒着の程度を示すものであり、ステージⅠ(軽微)でも強い痛みを感じる方がいれば、ステージⅣ(重症)でも自覚症状がほとんどない方もいます
手術をしていなくてもステージを調べる方法はありますか?
手術を行わない場合、正確なステージを確定することはできません。超音波検査やMRI検査などの画像検査でおおよその病変の広がりを推測することは可能ですが、確定的なステージ分類(r-ASRM分類)は腹腔鏡手術などでお腹の中を直接観察して判定されます。
ステージが低い(ステージⅠ・Ⅱ)と言われたら不妊の心配はありませんか?
ステージが低くても不妊のリスクが全くないわけではありません。ステージと不妊症のなりやすさの直接的な関連性については、明確な科学的根拠が確立されていません。不妊の要因は病変の場所や癒着の状態など多角的に評価する必要があります。
まとめ
子宮内膜症のステージとは、手術で評価される病変の広がりを示す分類であり、症状の重さと必ずしも一致するわけではありません。ステージが低くても激しい痛みに悩む方もいれば、逆に進行していても自覚症状がほとんどない方もいます。
治療方針は、ステージだけでなく、症状や病変の部位、妊娠希望の有無などを総合的に考慮して決められます。つらい月経痛や性交痛、不妊など気になる症状がある場合は、婦人科で相談することが大切です。