「最近、疲れが抜けない」「夜中に足がつることが増えた」と感じている場合、低カリウム血症が関与しているかもしれません。
低カリウム血症は体内のカリウム濃度が低下した状態で、放置すると不整脈などの重篤な合併症を引き起こすことがある病気です。
この記事では、低カリウム血症の症状や原因、受診の目安、診断方法、治療について解説します。自身の体調変化を適切に判断するための参考にしてください。
低カリウム血症とは
低カリウム血症とは、血液中のカリウムの濃度が3.5mEq/Lより低くなった状態です。(※1)軽度のうちは自覚できる変化がほとんどないものの、健康診断などで偶然指摘されることも少なくありません。
カリウムは、心臓や筋肉、神経がスムーズに働くための電気信号の伝達を支える重要なミネラルです。カリウム濃度が低下することで、電気信号の伝達に支障をきたし、さまざまな症状が現れます。
ここでは、低カリウム血症の初期症状と放置によるリスクを解説します。
体が出す初期症状
低カリウム血症の初期症状として多いのは、倦怠感や筋力低下、筋肉のけいれん、多尿です。血中カリウム濃度が低下すると、筋肉や神経の働きが不安定になり、日常生活のなかでさまざまな異変が現れます。
十分な睡眠を取っても疲労感が続き、体が重く感じることがあります。ペットボトルの蓋が開けにくい、階段の昇降がつらいなどの変化は、筋力低下のサインです。
夜間や運動後にふくらはぎがつりやすくなる場合もあり、筋肉がピクつく、硬くこわばるなどの症状がみられることもあります。手足の感覚が鈍くなる、ピリピリとしたしびれを自覚するケースもあるでしょう。
年齢にかかわらず、症状が持続する場合は医療機関の受診を検討してください。
放置によるリスクと重症化の症状
低カリウム血症を放置すると、不整脈や呼吸不全など命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。
カリウムは、心筋や骨格筋の電気的活動を維持するために不可欠な電解質です。血中カリウム濃度が低下し続けると、全身の筋肉や臓器の機能に深刻な影響が及びます。
放置した場合に現れる主な症状は、以下のとおりです。
| 症状 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 不整脈 |
・脈が飛んだり、不規則になったり速くなったりすることで、動悸やめまい、息切れを感じる ・重症化すると、失神や心停止につながる危険な不整脈(心室頻拍など)を誘発することもある |
| 呼吸困難 |
呼吸に必要な筋肉(呼吸筋)の力が弱まり、息苦しさを感じることがある |
| 四肢の麻痺 |
・筋力低下がさらに進み、手足が動かしにくくなる ・最初は足の脱力感だけだが、次第に立てなくなり、歩行が困難になる方もいる |
| 腸閉塞(イレウス) |
腸の動きの悪化により、便秘が悪化したり吐き気を催したりする |
| 意識障害 |
カリウム濃度が著しく低下すると、意識がもうろうとすることもある |
このほか、多尿の症状もあります。これらの症状に至らないためにも、低カリウム血症の初期症状がみられたときは、早めに医療機関を受診してください。
低カリウム血症の原因
低カリウム血症の原因は、食事だけではありません。薬剤の影響や基礎疾患が関与する場合も多く、適切な治療と再発予防には原因の特定が必要です。
血中カリウムが低下する背景を以下の項目に沿って解説します。
- 食事・生活習慣によるカリウム不足
- 薬の副作用(一部の抗菌薬:ペニシリン系、アミノグリコシド系など)
- 病気の可能性
食事・生活習慣によるカリウム不足
食事や生活習慣の影響によって、血中カリウム濃度が低下することがあります。
野菜や果物を含むバランスの取れた食事をしていれば、カリウム不足は起こりにくいでしょう。しかし、偏った食生活が重なると発症リスクが高まります。自己流の無理なダイエットや摂食障害などの極端な食事制限も、低カリウム血症につながるため避けてください。
飲酒も、低カリウム血症の要因です。習慣的に飲酒したり、一度に大量に飲んだりすることは控えましょう。
慢性的な下痢や嘔吐、大量の発汗を伴う活動も体液の喪失を招き、カリウム不足につながります。カリウム不足になりかねない生活習慣の方は、食生活や飲酒量などから改善してみましょう。
薬の副作用
薬剤の副作用によって低カリウム血症が生じることがあります。処方薬だけでなく、市販薬や漢方薬も原因となる場合もあります。
薬剤による低カリウム血症は、尿中への排泄増加や腸管からの喪失、ホルモン作用の変化などが原因です。主に以下のような薬剤が、低カリウム血症を招くおそれがあります。
| 原因となりうる薬剤 | 具体的な用途など |
|---|---|
| 利尿薬 |
高血圧、心不全、むくみの治療で処方されることが多い |
| 甘草を含む漢方薬 |
胃腸の薬や風邪薬など、さまざまな漢方薬に含まれている |
| ステロイド薬 |
喘息やリウマチなど、炎症を抑えるために使われる |
| 下剤 |
便秘の治療で使われるが、長期間の使用は注意が必要 |
| 一部の抗菌薬(抗生物質) |
感染症の治療で使われる薬の一部が原因となることがある(ペニシリン系、アミノグリコシド系など) |
倦怠感や足のつり、動悸などの症状が現れたときは、自己判断で中止せず、処方医または薬剤師に相談してください。
病気の可能性
低カリウム血症は、背景に以下のような基礎疾患が存在する可能性があります。
- ・原発性アルドステロン症
-
原発性アルドステロン症は、アルドステロンというホルモンが副腎から過剰に分泌される疾患です。腎臓からのカリウム排泄が増加し、高血圧とともに低カリウム血症が起こります。(※2)
- ・甲状腺機能亢進症
-
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰分泌される疾患です。甲状腺ホルモンが過剰になると、血液中のカリウムが細胞内へ移動しやすくなり、一時的に血中濃度が低下します。
- ・ギテルマン症候群
-
腎疾患のなかには、尿細管機能の異常によってカリウムが過剰に排泄される病態があります。ギテルマン症候群のような遺伝性疾患が代表的な腎疾患です。(※3)
- ・クッシング症候群
-
クッシング症候群などの内分泌疾患も原因となります。クッシング症候群は、副腎からコルチゾールというホルモンを過剰分泌させ、腎臓から尿中にカリウムを大量に排出させる疾患です。
低カリウム血症の背景には多様な疾患が存在します。
原因を特定しなければ、根本的な治療はできません。倦怠感や筋力低下が持続する場合は自己判断せず、医療機関で検査を受けることが重要です。
低カリウム血症の受診の目安と診断の流れ
低カリウム血症は、早期に医療機関を受診することで重症化を防げる可能性があります。医療機関での診断の流れとして、以下の内容を解説します。
- 症状セルフチェックリスト
- 受診の目安と診療科の選び方
- 主な検査方法
症状セルフチェックリスト
低カリウム血症は、初期には自覚症状が軽度で気づきにくい場合があります。倦怠感や筋肉の違和感など、日常的な不調として見過ごされることも少なくありません。
最近の体調を振り返り、以下の項目に該当するものがないか確認してください。
当てはまった項目は個です
※上記はあくまで目安であり、診断に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関の受診をご検討ください。
複数の項目に該当する場合は、血中カリウム濃度が低下している可能性があります。
受診の目安と診療科の選び方
低カリウム血症が疑われる場合は、症状の程度に応じて受診のタイミングを判断します。倦怠感や筋力低下が続き、日常生活に支障が出たり、動悸や脈の乱れを感じたりする場合は、早めの受診を検討してください。
手足が動かないほどの強い脱力、安静時にも続く呼吸困難、意識がもうろうとする状態、胸の痛みや持続する強い動悸は緊急性が高い症状です。重篤な状態に進行するおそれがあるため、ためらわずに救急要請や救急外来の受診を検討してください。
受診先に迷う場合は、まず内科を選択しましょう。内科での診察や検査の結果にもとづき、動悸や不整脈が主症状であれば循環器内科が紹介されます。腎機能の異常が疑われる方には腎臓内科、ホルモン異常が疑われる場合は、内分泌内科へ紹介されることがあります。
症状が軽度であっても慢性的に続いているケースでは、早めに医療機関へ相談してください。
症状が軽度であっても慢性的に続いているケースでは、早めに医療機関へ相談してください。
主な検査方法
医療機関では、症状や服用薬、生活習慣を確認したうえで、原因と重症度を評価するために以下のような複数の検査を行います。
| 検査 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 問診 |
症状の経過、食事内容、服用中の薬(市販薬・漢方薬・サプリメントを含む)、既往歴などを確認する |
| 血液検査 |
・血清カリウム値を測定し、基準値未満か確認する ・腎機能、ナトリウムやマグネシウムなどの電解質、必要に応じて副腎・甲状腺のホルモン値を測定し、原因を評価する ・ただし、血液検査はその時点の濃度を示すため、経時的に確認する |
| 尿検査 |
尿中カリウム排泄量を測定し、腎臓からの過剰排泄か、消化管からの喪失や摂取不足かを推定する |
| 心電図検査 |
・低カリウム血症による心電図変化や不整脈の有無を確認する ・動悸や利尿薬使用がある場合は特に重要である |
検査結果を総合的に判断し、原因に応じた治療方針を決定します。
低カリウム血症の治療法
低カリウム血症の治療の基本は、カリウム補給です。食事や内服薬、注射などの手段で不足したカリウムを補います。
ただし、薬剤が原因であれば、医師の判断で中止や減量、別の薬剤への変更を行います。基礎疾患が背景にある場合は、原疾患の治療が優先です。
食事によるカリウムの補給
症状や血清カリウム値の低下が軽い場合は、食事内容の見直しから開始します。カリウムは多くの食品に含まれており、バランスの取れた食事の継続が治療と再発予防につながります。
カリウムを多く含む食品は以下のとおりです。
| 分類 | カリウムを多く含む食品の例 |
|---|---|
| 野菜類 |
ほうれん草、トマト、かぼちゃ、アボカド、枝豆 |
| 果物類 |
バナナ、メロン、キウイフルーツ、干しぶどう |
| いも類 |
さつまいも、じゃがいも、里芋 |
| 豆類・海藻類 |
納豆、大豆、ひじき、昆布 |
カリウムは水に溶けやすいため、調理方法によって摂取量が変わります。生で食べられる食品は、加熱せずに摂取すると効率的です。
スープや味噌汁のように煮汁ごと摂取すれば、溶け出したカリウムも無駄なく補えます。加熱する場合は、ゆでるよりも電子レンジ調理のほうがカリウムの損失を抑えられます。
ただし、腎機能が低下している場合は注意が必要です。カリウム摂取量が増えると、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。腎疾患で食事指導を受けている方は、自己判断で摂取量を増やさず、主治医または管理栄養士に相談してください。
また、健康な方でもサプリメント等による極端な過剰摂取は避けてください。
内服薬や注射
食事療法のみで改善が難しかったり、中等症以上で明らかな症状があったりする場合は、薬剤によるカリウム補充を行います。
症状が比較的安定している方には、塩化カリウム製剤などの内服薬を使用します。内服薬は、徐々に血清カリウム値を補正し、安全に正常域へ戻すことが目的です。
血清カリウム値が著しく低い、不整脈などの重篤な症状があるなどの場合は、点滴による静脈内投与を行います。ただし、静脈投与は不整脈を誘発する危険があるため、心電図モニタリング下で投与速度と投与量を調整します。
治療で血液検査の数値が正常化しても、経過観察が重要です。血清カリウム値は血液中の濃度を示す指標であり、カリウム量の完全な回復を直ちに反映するものではありません。治療後も、細胞内カリウムの回復には時間を要することがあります。
自己判断で薬剤を中止すると、再発する可能性があります。血清値だけでなく全身のカリウムバランスを安定させることが治療の目標であり、医師の指示に従った継続が重要です。
まとめ
倦怠感や足のつりなどの症状の背景には、低カリウム血症が存在する場合があります。食事の偏りだけでなく、薬剤の影響や基礎疾患への関与が原因の可能性もあります。
低カリウム血症を放置すると、不整脈など重篤な合併症を引き起こしかねません。症状が続く場合は自己判断せず、医療機関を受診してください。
受診先に迷ったときは、まず内科で相談しましょう。早期に原因を特定し適切な治療を行うことが、重症化の予防につながります。
参考文献
- Castro D, Sharma S. Hypokalemia. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan–. Available from: Hypokalemia | StatPearls | NCBI Bookshelf.
- 難病情報センター.「原発性アルドステロン症」
- 小児慢性特定疾患情報センター.「ギッテルマン(Gitelman)症候群」
