プール熱(咽頭結膜熱)とは、アデノウイルスの感染によって発熱・のどの痛み・結膜炎を引き起こす感染症です。子どもの夏風邪の代表として知られていますが、大人もかかります。本記事では、プール熱の症状・感染経路・治療法・予防・登園や出社の目安までを、眼科専門医の視点を交えてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- プール熱(咽頭結膜熱)とはどんな病気か、原因ウイルスと流行時期
- 主な症状の全体像と、大人と子どもの違い
- 感染経路・潜伏期間と、家庭・職場での予防のポイント
- 治療と自宅ケアのしかた、眼科を受診すべきサイン
- 登園・登校・出社はいつから可能になるのか
目次
1. プール熱(咽頭結膜熱)とは?
プール熱(正式名称:咽頭結膜熱)とは、アデノウイルスというウイルスに感染することで、発熱・咽頭炎(のどの炎症)・結膜炎(目の炎症)の3つを主な症状として起こす感染症です。「咽頭」はのど、「結膜」は白目とまぶたの裏側を覆う膜のことで、まさにこの2か所の炎症と発熱が同時に出るのが特徴です。
なぜ「プール熱」と呼ばれるのか
「プール熱」という名前は、かつて塩素消毒が不十分なプールを介して集団感染が広がった事例が多かったことに由来します。現在はプールの衛生管理が進み、実際の感染経路はプールに限りませんが、名前のイメージから「プールに入らなければ大丈夫」と誤解されやすい点には注意が必要です。
原因ウイルスと流行時期
原因はアデノウイルス(特に3型が代表的、4型・7型などでも発症)です。流行のピークは夏季(6〜8月頃)ですが、近年は秋〜冬にも流行が見られることがありま す。咽頭結膜熱は、手足口病・ヘルパンギーナとあわせて「子どもの三大夏風邪」のひとつに数えられています。
2. プール熱の主な症状

プール熱の症状は、発熱・のどの痛み・結膜炎の3つが同時に揃うのが最大の特徴です。
3つの主な症状
| 症状 | 内容 |
|---|---|
| 発熱 | 38〜40℃前後の高熱が3〜5日続くことが多い |
| 咽頭炎(のど) | のどの強い痛み・赤み・腫れ。扁桃腺が腫れることもある |
| 結膜炎(目) | 白目の充血、目やに、涙、まぶしさ、目の痛み |
このほか、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、首のリンパ節の腫れ、まれに下痢などを伴うこともあります。
眼症状は片眼から始まることが多い
プール熱の結膜炎は、最初は片方の目から症状が出始め、その後もう一方の目にも広がることが多いとされています(国立感染症研究所の記載に基づく)。
大人と子どもの違い
プール熱は子どもに多い病気ですが、大人もかかります。症状の出方には下記のような違いがあります。
| 症状 | 子ども | 大人 |
|---|---|---|
| 発熱 | 高熱が出やすく、長引く傾向 | 比較的軽めのことが多い |
| 全身倦怠感 | 食欲低下が目立つ | 倦怠感・頭痛がつらく感じる |
| 重症度 | 子どもの方が重症化しやすい | 比較的軽症で済むことが多い |
3. 感染経路と潜伏期間
プール熱の感染力は強く、家庭・保育園・学校で次々と広がることがよくあります。
複数の感染経路
- 飛沫感染:感染者の咳・くしゃみ・会話で飛ぶ唾液のしぶきを吸い込んで感染
- 接触感染:感染者の目やに・鼻水・便などに触れた手で、自分の目・鼻・口を触って感染
- 経口感染:ウイルスに汚染されたタオル、おもちゃ、食器などを介して感染
潜伏期間と感染力が残る期間
- 潜伏期間:5〜7日
- 感染力が残る期間:症状が無くなった後も、便からは数週間ウイルスが排出されます。このため、回復後も、その間は、排便後に手をよく洗うことで家族への感染を防ぐ必要があります。また、このため、結膜炎が治ってもすぐにプールの許可がでないことがあります。
熱が下がった後も、しばらく感染力は残っています。登園・出社の判断で「解熱後すぐ」とせず、一定期間の経過を見るのは、このためです。
4. プール熱の検査・診断
プール熱の診断は、発熱・咽頭炎・結膜炎の3つの症状がそろっているかどうかを中心に、医師が臨床的に判断します。
迅速検査キットの位置づけ
アデノウイルスに対する迅速検査キットもあり、検体を採取して5〜15分ほどで結果が出ます。ただし、検査の感度は採取部位によって大きく異なります。
他のウイルス性結膜炎との見分け方
プール熱の結膜炎は、他のウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎(はやり目)、急性出血性結膜炎)、細菌性結膜炎、アレルギー性結膜炎と紛らわしいこともあります。
そこで、のどの痛みや発熱といった全身症状を伴うかどうかが、大きな手がかりになります。流行性角結膜炎や急性出血性結膜炎は、結膜炎が主体のウイルス感染症で、発熱やのどの痛みが出ることもありますが、軽度です。
5. プール熱の治療法と自宅でのケア
アデノウイルスに直接効く抗ウイルス薬は存在しないため、対症療法で症状悪化を防ぎながら、自分の免疫力でウイルスを排出するのを待ちます。
医療機関での主な対症療法
発熱やのどの症状の治療には、小児科、耳鼻咽喉科または内科を受診します。
解熱鎮痛薬で高熱や強いのどの痛みに対処し、水分・電解質をしっかり補給して脱水を防ぎます。
眼症状に対する点眼治療
目の症状の治療には、眼科の受診を行います。
眼科ではウイルスによる結膜の損傷により二次的な細菌感染が起きて重症化するのを予防する目的で抗菌薬(抗生物質)の点眼が処方されることが多いです。同時に、結膜の炎症をやわらげる目的で抗炎症点眼(低濃度のステロイド点眼や非ステロイド性の点眼)を併用することが多いです。
自宅でのケア
起床時に、大量の目やにで目が開けづらい場合は、コットンなどを水またはぬるま湯で濡らして、優しくぬぐいます。
プール熱は、最終的にご自身の免疫力によってウイルスが排出され、回復に向かうことが一般的です。 このため、日ごろから十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動などにより自分の免疫力を落とさないことが大切です。
6. プール熱の予防(もらわない)と感染対策(うつさない)

プール熱には予防接種(ワクチン)がありません。そのため日常の対策が予防の柱になりますが、対策には「自分や家族がもらわないため」と、「家族や周囲にうつさないため」の2つの場面があり、ポイントが少しずつ異なります。
自分や家族が「もらわない」ための予防
流行期や、周囲に感染者がいないか分からない平常時のための日常的な習慣です。
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 手洗い | 外出から帰ったら流水と石けんで15〜30秒 |
| うがい | 外出から帰ったら |
| 目をこすらない | 手についたウイルスが目に入る経路を断つ |
家族や同僚にプール熱が出たら:「うつさない」ための感染対策
家庭内・職場で発症者が出たときは、ウイルスを広げない対策が重要です。回復後もしばらくの期間(のどから1〜2週間、便から3〜5週間)続けることが大切です。
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 手洗いの徹底 | 発症者・看病する家族とも、こまめに。アルコールは補助的に |
| マスク着用 | 感染者はのどに大量のウイルスがいますので必須です |
| タオル・寝具・食器の専用化 | 発症者専用のものを用意し、共用を避ける |
| 物の消毒 | 発症者が触れたドアノブ・おもちゃ・便座などは次亜塩素酸ナトリウムで消毒。アルコールは効きにくい。 |
| 入浴は本人を最後に | 浴槽・洗い場でのウイルス拡散を抑える |
7. 登園・登校・出社の目安
子どもと大人で違いがあります。
子どもの登園・登校の目安
プール熱は学校保健安全法で第二種の感染症に指定されており、子どもには出席停止の規定があります。出席停止期間は、「主要症状(発熱・のどの痛み・結膜炎)が消退した後2日を経過するまで」とされています。3つの症状が落ち着いた日からさらに2日間休んで、その後に登園・登校が可能になるイメージです。最終判断は医師が行うため、必ず受診のうえ確認してください。
大人の出社判断
職場には出勤停止を定めた法律はありません。出勤可否は、企業の「安全配慮義務(労働契約法)」に基づき、職場内での感染拡大を防ぐ観点から個別に判断されることになります。まずは職場に相談することが重要です。
受診を急ぐべきサイン
「プール熱で目が真っ赤になったら救急ですか?」と聞かれることがありますが、プール熱の結膜炎でそこまで緊急性が高くなることは、ほとんどありません。ただし、同じアデノウイルスでも流行性角結膜炎では角膜炎や偽膜形成といった視力に影響のある所見が出ることがあり、自分では区別できないので早めの眼科受診は望ましいと言えます。
プール熱では、むしろ以下のような全身の症状がでたら、早めに小児科や内科・耳鼻咽喉科を受診することが重要です。
- 高熱が5日以上続く
- ぐったりして水分が取れない
- 呼吸が苦しそう
- けいれんを起こした
8. プール熱に関するよくある質問
9. まとめ
プール熱(咽頭結膜熱)は、アデノウイルスによる感染症で、発熱・のどの痛み・結膜炎の3つが同時に出るのが特徴です。特効薬はなく、対症療法と自宅でのケアで自分の免疫力で治す病気です。「プールに入らなければ大丈夫」「一度かかれば二度はかからない」といった誤解も多いですが、家庭や職場での飛沫・接触感染が主な経路で、誰でも繰り返しかかる可能性があります。ウイルス性結膜炎にはほかにも種類があります。十分な睡眠・バランスの良い食事・過労を避けることで、本人の免疫力を保つことが回復への近道です。気になる症状があれば、自己判断せず医療機関にご相談ください。
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「咽頭結膜熱」
- 厚生労働省「咽頭結膜熱について」
- 日本眼科学会「ウイルス性結膜炎」
- 日本小児科学会 登園・登校していい?
- 文部科学省「学校において予防すべき感染症の解説」(学校保健安全法関連)
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な症状や治療については、必ず医師にご相談ください。
最終医学的確認日:2026年6月
