新しい環境での生活が始まり、期待に胸を膨らませていたなかで「気分が晴れない」「朝起きるのがつらい」と感じることはありませんか。その心身の不調は、五月病のサインかもしれません。
五月病は特別なことではなく、新しい環境に適応しようと真面目に努力した結果です。決して心が弱いわけでも、怠けているわけでもありません。
ただし、なりやすい人には共通した特徴があり、ご自身がハイリスクなタイプかを知ることが、予防の第一歩となります。 この記事では、五月病になりやすい人の3つの特徴とセルフチェックリスト、ハイリスクな方が今からできる予防策を詳しく解説します。ご自身の心を守るヒントを見つけてみてください。
この記事を読んでわかること
- 五月病になりやすい人に共通する3つの特徴(真面目で責任感が強い/新環境に適応しきれていない/ストレスを抱え込みやすい)
- 心・体・行動の3カテゴリーで構成された15項目のセルフチェックリストと、チェック数別の状態の目安
- 自律神経のバランスを整え、五月病を防ぐための5つの予防策(生活リズム・食事・運動・相談・受診)
- セロトニンの材料となるトリプトファンを含む食品と、効率的な摂取方法
- 心療内科・精神科など専門の医療機関を受診すべきタイミングの目安(症状が2週間以上続く場合など)
五月病になりやすい人に共通する背景
五月病になりやすい人には、新生活で大きな環境変化を経験し、それに適応しようと無意識に強いエネルギーを使っているという共通点があります。 4月の入学や就職、異動などの環境の変化は、期待が大きい反面、多くのエネルギーを必要とします。新しい環境へ早く馴染もうと意識するあまり、知らず知らずのうちに心身が緊張状態に陥っていることは少なくありません。
張り詰めた緊張は、ゴールデンウィークなどの長期休暇で一度途切れます。休み明けに再び活動モードへ切り替えようとしても、心身がついていけずに不調を感じてしまいます。これが、五月病になりやすい方に共通して見られるパターンです。
新しい環境への適応という大きなストレスは、心身のバランスを保つ自律神経の働きを乱します。その結果として、以下のようなサインが現れます。
- なんとなく気分が落ち込む
- 朝、起きるのがつらくだるさが続く
- 夜、なかなか寝つけない
こうしたサインが出やすい方には、性格や状況面で共通する特徴があります。次の章で、五月病になりやすい人の3つの特徴を詳しく見ていきましょう。
五月病になりやすい人の特徴
五月病は、新しい環境へ真面目に対応しようと努力する人ほど陥りやすい状態です。「怠けている」「気合が足りない」と自分を責める必要はありません。
真面目さや責任感の強さゆえに、知らず知らずのうちに心のエネルギーを使い果たしている可能性があります。どのような方が心のバランスを崩しやすいのか、以下の特徴を見ていきましょう。
①真面目で責任感が強い人
②新しい環境に適応しきれていない人
③ストレスを一人で抱え込みやすい人
①真面目で責任感が強い人
「任された仕事は完璧にこなしたい」「期待に早く応えたい」と考える方は、常に100%の力で取り組もうとする傾向があります。しかし、完璧主義が無意識のうちに自分を追い詰めてしまうことも少なくありません。
特に以下のような思考の癖がある場合は、注意が必要です。
- 少しのミスも許せず、ひどく落ち込んでしまう
- 白黒つけないと気が済まないと考えてしまう
- 周りからの評価を過剰に気にしてしまう
こうした思考は心に高い負荷をかけ、エネルギーを消耗させます。「疲れた」と感じるのは甘えではありません。心身が発している「休んでほしい」という大切なサインです。
②新しい環境に適応しきれていない人
4月からの新しい生活は、想像以上にエネルギーを消耗します。以下のような環境の変化一つひとつに適応しようと、脳がフル回転の状態になるためです。
- 新しい職場での人間関係の構築
- これまでと全く違う仕事内容
- 慣れない通勤ルートや生活リズム
周りの人がスムーズに馴染んでいるように見え、「自分だけが取り残されている」と焦りや孤独を感じることもあるかもしれません。
しかし、新しい環境に慣れるスピードは人それぞれです。ほかの人と比べる必要は全くありません。今は新しい生活への助走期間だと捉え、ご自身のペースを大切にしてください。
③ストレスを一人で抱え込みやすい人
責任感が強い人ほど、自分の大変さを表に出さず、自力で解決しようと無理を重ねがちです。
一人で悩み続けると不安が膨らみやすく、客観的な視点を失う原因になります。しかし、誰かに今の気持ちを話すだけで、心の緊張をほぐす効果が期待できます。言葉にすることで、自分の考えが整理されることも少なくありません。
周囲に助けを求めるのは弱いことではありません。自分自身の心を守るための大切なスキルです。
五月病のセルフチェックリスト【15項目】
新しい環境での疲れは、気づかないうちに心身のサインとして現れます。以下の15項目のうち、最近2週間以内に当てはまるものにチェックを入れてみてください。 チェックの数で、ご自身の状態の目安を確認できます。
心のサイン【5項目】
環境の変化に適応しようと努力するなかで、脳はエネルギーを過剰に消費します。エネルギーが不足すると感情のコントロールが難しくなり、気分が不安定な状態に陥ります。
体のサイン【5項目】
ストレスは、心身のオン・オフを切り替える自律神経のバランスを乱します。スイッチがうまく切り替わらないと、身体面にも不調が現れます。
行動のサイン【5項目】
心のエネルギーが枯渇すると、これまで当たり前にできていたことや楽しめていたことへの関心が薄れてしまいます。これは「怠け」ではなく、心身が「ガス欠」を起こしているサインです。
セルフチェックの判定の目安
| チェック数 | 状態の目安 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 0〜3個 | 軽度 | 今のうちに予防策を意識しましょう |
| 4〜7個 | 中等度 | セルフケアを始めるタイミングです |
| 8個以上 | 注意レベル | 2週間以上続く場合は医療機関への相談を検討してください |
チェックが多くついた方も、少なかった方も、まずは生活習慣を整えることが回復・予防の第一歩です。次の章では、五月病になりやすい方が今から始められる5つの予防策を紹介します。
五月病になりやすい人が今から始めたい5つの予防策
五月病になりやすい人は、不調が本格化する前の予防が特に重要です。新生活で心身が疲弊するのは、一生懸命に努力している証拠。頑張りすぎる前に、自身をいたわる習慣を生活に組み込んでおくことが、五月病を防ぐ最大のポイントです。 自律神経のバランスを整え、エネルギーを充電するための予防策は以下の5点です。
①生活リズムを整える
②バランスの良い食事を意識する
③適度な運動やリフレッシュを取り入れる
④悩みは一人で抱えず相談する
⑤症状が2週間以上続く場合は専門の医療機関を受診する
①生活リズムを整える
心身の調子を整える土台は、毎日の生活リズムにあります。特に睡眠と覚醒のサイクルは、自律神経の働きに直結します。
生活リズムの整え方は以下のとおりです。
- 朝は決まった時間に起き、太陽の光を浴びて体内時計をリセットする
- 休日の起床時間も、平日との差を1〜2時間以内にとどめる(※1)
- 寝る1〜2時間前からはスマホの使用を控え、リラックスできる環境を作る(※2)
規則正しい生活を意識することで、心の安定に関わる神経伝達物質(セロトニンなど)の働きをサポートできると考えられています(※3)。
②バランスの良い食事を意識する
私たちの気分や思考は、脳内の神経伝達物質によって大きく左右されます。神経伝達物質の材料となるのは、日々の食事から摂取する栄養素です。
忙しいときは食事を抜いたり、簡単なもので済ませたりしがちですが、心の健康を保つためには食事内容への配慮が欠かせません。厚生労働省 e-ヘルスネットによると、セロトニンは「ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをする」神経伝達物質とされています(※3)。セロトニンは必須アミノ酸の「トリプトファン」を原料として体内で合成されるため、食事からの摂取が欠かせません。 トリプトファンは、豆腐や納豆などの大豆製品、牛乳やチーズなどの乳製品、バナナ、ナッツ類などに多く含まれています。ビタミンB6や炭水化物と一緒に摂取することが、トリプトファンの代謝を助けるとされています。
朝食を抜かずに、白米やパンなどの主食にこれらの食品を組み合わせて摂取しましょう。
③適度な運動やリフレッシュを取り入れる
考えが煮詰まってしまうときこそ、意識的に身体を動かすことが大切です。運動にはネガティブな思考のループを断ち切り、気分を前向きにする効果が期待できます。
特におすすめなのは、ウォーキングや軽いジョギングなどのリズム運動です。階段の上り下りなど一定のリズムを繰り返す運動は、セロトニンの分泌を促すのに適しています。1回20分〜30分程度、少し汗ばむくらいのペースで取り組むことが推奨されます。
運動が苦手な場合は、自身が心地良いと感じる時間を意識的に作ることが重要です。音楽に没頭したり、湯船にゆっくり浸かったりするなど、仕事や学校を忘れられる休息を取り入れ、心に余白を作りましょう。
④悩みは一人で抱えず相談する
弱音を吐けない、周囲に迷惑をかけたくないと考え、一人で不安を抱え込んでしまうのはとてもつらい状態です。しかし、自分の気持ちを言葉にして誰かに話すだけでも、頭の中が整理されて心が軽くなることがあります。これは「カタルシス効果」と呼ばれる心理的な作用です。
信頼できる家族や友人、あるいは上司や同僚に、今の気持ちを打ち明けてみてください。完璧を目指さず、慣れるまで時間がかかるのは当たり前だと考え、自分へのハードルを少し下げてみることも大切です。
助けを求めることは弱いことではありません。むしろ、自身の心を守るための勇気ある行動です。
⑤症状が2週間以上続く場合は専門の医療機関を受診する
セルフケアを試しても改善がみられない場合は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることが大切です。日常生活に支障が出ている場合は、早めの受診を検討しましょう。
受診を検討すべき主な目安は以下のとおりです。
- 気分の落ち込みや意欲の低下が2週間以上続いている
- 朝起き上がれず、仕事や学校に行けない日が増えた
- 食事が喉を通らない、あるいは眠れない日が続いている
風邪をひいたときに内科を受診するように、心の不調を感じたときに心療内科や精神科などの専門の医療機関へ相談するのは自然なことです。 受診をためらう必要はありません。
医療機関への相談は、つらい症状を長引かせないことや、適応障害やうつ病への進行を避けるための重要な選択肢の一つです。(※4)自身の状態に合った解決策を見つけるためにも、まずは気軽に相談してください。
※五月病と適応障害・うつ病の違いや、すでに不調が出ている場合の詳しい対処法については、関連記事「五月病とは?GW明けに起こりやすい症状と対策・予防法を解説」をご参照ください。
まとめ
新しい環境に適応しようと努力するなかで心身に不調が現れるのは、真面目に前へ進もうとした証拠です。決して「甘え」や「気合不足」ではありません。自分自身を責めないことが大切です。
まずは心身が発している小さなサインに気づくことが、回復への第一歩となります。この記事で紹介した対策をすべて完璧にこなす必要はありません。太陽の光を浴びる、誰かに話を聞いてもらうなど、小さな一歩から始めてみてください。
もし2週間以上つらい状態が続く場合や、日常生活に支障が出ているときは、一人で頑張りすぎず専門の医療機関へ相談しましょう。医療機関への相談は特別なことではなく、自身の心身を守るための重要な選択肢です。
参考文献
※1 Lorenzo Tonetti, Alice Andreose, Valeria Bacaro, Martina Grimaldi, Vincenzo Natale, Elisabetta Crocetti. Different Effects of Social Jetlag and Weekend Catch-Up Sleep on Well-Being of Adolescents According to the Actual Sleep Duration. International Journal of Environmental Research and Public Health, 2022, 20, 1, p.574.
※2 Bindu Krishnan, Rama Krishna Sanjeev, R G Latti. Quality of Sleep Among Bedtime Smartphone Users. International Journal of Preventive Medicine, 2020, 11, 114.
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット「セロトニン」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/keywords/serotonin
※4 厚生労働省 e-ヘルスネット「適応障害」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-041.html
※5 厚生労働省 こころの耳「5月『五月病』とのつきあい方」https://kokoro.mhlw.go.jp/column/sea05/
