(最終医学的確認日:2026年6月 )
麻疹(はしか)と風疹(三日ばしか)は、どちらも発疹や発熱が出るウイルス感染症ですが、原因となるウイルスは全く異なります。
感染力や重症化のリスクにも、明確な差があります。麻疹はインフルエンザの10倍近くうつりやすいとされており、感染力が特に強い感染症です。風疹は妊娠初期に感染すると、胎児に深刻な影響を及ぼしかねません。
この記事では、麻疹と風疹の症状や感染経路、潜伏期間の違いを詳しく解説します。それぞれの特徴を正しく理解して、ご自身と大切な人を守りましょう。
麻疹と風疹の主な違い
麻疹と風疹は、どちらも発疹と熱が出るウイルス感染症ですが、原因となるウイルスが異なる別の病気です。
麻疹と風疹について、以下の5つに分けて解説します。
①感染経路の違い
②感染力の違い
③潜伏期間の違い
④症状の違い
⑤重症化リスクの違い
①感染経路の違い
感染経路の大きな違いは、麻疹が「空気感染」するのに対し、風疹は主に「飛沫感染」と「接触感染」でうつる点です。
麻疹のみに見られる空気感染では、麻疹ウイルスが感染者の咳やくしゃみで飛び散ったあとも蒸発して空気中を長時間漂います。そのため、たとえ離れた場所にいてもウイルスを吸い込んで感染しかねません。
麻疹と風疹の双方に共通する飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみなどで飛び散るしぶきを近くにいる人が吸い込むことで感染します。接触感染はウイルスが付着したドアノブや手すりなどを触った手で、自分の口や鼻、目に触れることで感染します。
空気感染の有無により、麻疹は風疹よりもはるかに大規模な流行を引き起こしやすくなります。実際に、避難所のような人が密集する環境では、空気感染によって爆発的に感染が広がる危険性も指摘されています。(※1)
②感染力の違い
麻疹と風疹の感染力の差は歴然としており、現在知られている感染症のなかでも麻疹の感染力の強さは際立っています。
1人の感染者が何人にうつすかを示す指標では、インフルエンザが1〜2人であるのに対し、風疹は6〜7人、麻疹は12〜18人です。これは、インフルエンザの10倍近くうつりやすいことを意味します。
免疫を持っていない人がウイルスにさらされると、感染する可能性が高いとされています。そのため、集団内で1人でも患者が発生すると、免疫のない人が多い環境では急速に感染が拡大しがちです。
世界的に麻疹が再流行している背景には、「集団免疫」の低下があります。ワクチン接種率が下がることで社会全体を守る免疫力が弱まることが、要因の一つとして挙げられています。(※1)
③潜伏期間の違い
潜伏期間とは、ウイルスが体内に侵入してから、発熱や発疹などの症状が現れるまでの準備期間のことです。
麻疹と風疹の潜伏期間と、人にうつす可能性のある期間の目安を以下の表にまとめました。
| 項目 | 麻疹 | 風疹 |
|---|---|---|
| 潜伏期間の目安 | 約10〜12日間 | 約14〜21日間 |
| 人にうつす期間の目安 | 発熱の1日前〜解熱後3日を経過するまで | 発疹出現の前後1週間 |
どちらの病気も、症状が出る前から周りの人にウイルスをうつしてしまう可能性があります。知らないうちに感染を広げてしまうリスクがあるため、流行時期には特に注意が必要です。
④症状の違い
麻疹は高熱とつらい全身症状が特徴であるのに対し、風疹は比較的症状が軽く、「三日ばしか」とも呼ばれます。
両者の症状の違いは以下のとおりです。
| 症状 | 麻疹 | 風疹 |
|---|---|---|
| 発熱 | 38℃程度の熱が数日続いた後、一旦下がり、再び39℃以上の高熱が出る(二峰性発熱) | 38℃程度の発熱と発疹がほぼ同時に現れ、熱は3日ほどで下がることが多い |
| 発疹 | 赤く少し盛り上がった発疹が合体し、まだら模様に広がる | ピンク色の小さな発疹が全身に広がるが、数日で消えることが多い |
| 特徴的な症状 | 口の中にできる白い斑点(コプリック斑)、強い咳・鼻水・目の充血 | 耳の後ろや首のリンパ節の腫れ、目の充血・軽い咳 |
麻疹の初期症状は風邪と似ており、コプリック斑や二峰性発熱が現れるまでは他の病気と見分けがつきにくいケースがあります。 高熱や特徴的な発疹が出た場合は、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。
⑤重症化リスクの違い
麻疹と風疹では、重症化のリスクや注意すべき対象が大きく異なります。
麻疹は命に関わる合併症を引き起こしやすく、感染した人の約40%に何らかの合併症が起こるとの報告もあります。(※1)主な合併症は肺炎や中耳炎ですが、特に約1,000人に1人の割合で発症する脳炎は、命を落としたり重い後遺症が残ったりする危険な病態です。一度麻疹に感染すると数年にわたり免疫力が低下し、ほかの感染症にかかりやすくなることも知られています。
一方、大人が感染すると子どもに比べて高熱や関節痛が長く続き、症状が重くなりやすいのが風疹の特徴です。しかし、風疹で特に注意すべきは「先天性風疹症候群(CRS)」です。免疫のない女性が妊娠初期に感染すると胎児もウイルスに感染し、難聴・白内障などの障がいがあらわれる可能性があります。
これらはワクチン接種により予防効果が期待できますが、患者の多くが未接種であったり、接種回数が不十分であったりするのが現状です。 (※2)
麻疹と風疹の予防法

麻疹と風疹は感染力が強く、急速に広がる感染症です。ワクチン接種をはじめとした以下の予防策を実践して、感染リスクを下げましょう。
①ワクチン接種で予防する
②手洗い・手指消毒を徹底する
③咳エチケットを心がける
④流行時は人混みを避ける
⑤体調不良時は早めに受診する
①ワクチン接種で予防する
麻疹と風疹の感染を防ぐ、一般的な方法はワクチン接種です。
日本では、麻疹と風疹の両方を予防できるMR(麻疹風疹混合)ワクチンを、1歳と小学校入学前の合計2回接種する制度がとられています。2回の接種を完了すると、95%以上の人が十分な免疫を獲得できます。(※3)
大人になって接種歴がわからない方や、免疫が不十分な方は追加接種をおすすめします。妊娠を考えている女性だけでなく、パートナーや家族がワクチンを接種することも重要です。胎児を先天性風疹症候群から守るために、家族全員での接種を検討しましょう。
②手洗い・手指消毒を徹底する
ワクチンと並行して、日々の生活でできる基本的な防御策が手洗いです。
ウイルスが付着した手で無意識に目・鼻・口を触ってしまう「接触感染」は、風疹の主な感染ルートの一つです。石けんを使った丁寧な手洗いや、アルコール消毒を習慣にしましょう。
特に以下の場面では、こまめな手洗い・消毒を心がけてください。
- 外出先から帰宅した際には、必ず石けんで手を洗うことが重要です。
- トイレを利用したあとは、手洗いを徹底して接触感染を防ぎます。
- 食事の前に手洗いや消毒を行うことで、ウイルスが口から入るのを防ぎます。
- 咳やくしゃみを手で押さえたあとは、すぐに手を洗い清潔に保ちましょう。
正しい手洗いは、ウイルスを物理的に洗い流すシンプルかつ有効な方法です。
③咳エチケットを心がける
咳やくしゃみの飛沫を周りに飛び散らせない「咳エチケット」は、麻疹と風疹の感染拡大を防ぐために欠かせません。
麻疹や風疹は症状が出る前からウイルスを排出している可能性があります。自覚症状がなくても、以下の咳エチケットを実践しましょう。
- 咳やくしゃみが出るときは、マスクを正しく着用する
- マスクがなければ、ティッシュやハンカチで口と鼻を覆う
- とっさのときは、服の袖や肘の内側で口と鼻をガードする
これらの行動は、ご自身だけでなく周りの人を守るための大切なマナーです。
④流行時は人混みを避ける
麻疹や風疹が流行している時期は、人が密集する場所をできるだけ避けることも有効な対策です。
特に麻疹は「空気感染」するため、同じ空間にいるだけで感染する可能性があります。免疫が十分でない方(ワクチン未接種・1回のみ接種など)は、流行が報告されている地域への不要不急の外出は避けるべきです。
やむを得ず人混みに行く際は、マスクを着用し、滞在時間をできるだけ短くしましょう。
⑤体調不良時は早めに受診する
発熱や発疹など、麻疹や風疹を疑う症状が出た場合は、自己判断せずに速やかに医療機関へ相談してください。
受診前には事前に電話で連絡し、院内での感染拡大を防ぐことが大切です。
電話では、以下の内容を伝えましょう。
- 発熱や発疹があること
- 麻疹や風疹の疑いがあること
- (可能であれば)感染者との接触歴
医療機関の指示に従い、公共交通機関の利用は避けて受診しましょう。
麻疹と風疹についてよくある質問
Q.麻疹(はしか)と風疹(三日ばしか)の最大の違いは何ですか?
A.原因となるウイルスが異なり、感染力や重症化時のリスク、発疹が消えるまでの期間に決定的な差があります。麻疹は麻疹ウイルスが原因で、39度以上の高熱を伴う重い合併症を引き起こし、回復までに約7〜10日を要します。一方、風疹は風疹ウイルスが原因で、比較的軽症で済むことが多く、発疹も3〜5日(あるいは約3日)程度で消失するのが特徴です。 (出典:厚生労働省「麻しん風しん混合(MR)ワクチン」、厚生労働省「麻しんに関する特定感染症予防指針」、国立感染症研究所「風しんとは」)
Q.麻疹と風疹では、どちらの方が周囲への感染力が強いですか?
A.空気感染する麻疹の方が圧倒的に強く、同じ空間にいるだけで手洗いやマスクのみでは完全に予防できません。麻疹の基本再生産数($R_0$)は12〜18であり、インフルエンザの約10倍、風疹の基本再生産数5〜7(あるいは6〜7)と比較しても非常に強力です。風疹は主に咳やくしゃみによる飛沫や接触によって感染しますが、麻疹は空気中に長時間漂う微小な飛沫核を吸い込むこと(空気感染)でも感染が広がります。 (出典:日本感染症学会「麻しん(はしか)に関する注意喚起」、厚生労働省「第22回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料」、国立感染症研究所「風しんとは」、厚生労働省「麻しん(はしか)について」)
Q.妊娠中に麻疹や風疹に感染した場合、お腹の赤ちゃんにどのような影響がありますか?
A.風疹は胎児に先天性の障害を引き起こし、麻疹は高い確率で流産や早産を引き起こすという違いがあります。風疹に対する免疫が不十分な女性が妊娠20週頃までに風疹に感染すると、特に妊娠12週までの初期であれば85%〜90%という極めて高い確率で、難聴や白内障、先天性心疾患などを伴う「先天性風疹症候群(CRS)」の障害を持った子が生まれるリスクがあります。一方、麻疹は胎児の先天異常を起こすリスクは低いものの、妊婦が感染すると肺炎などの重症化リスクが高まり、約30%〜40%という高い確率で流産や早産を誘発するため厳重な注意が必要です。 (出典:厚生労働省「麻しん風しん混合(MR)ワクチン」、国立感染症研究所「先天性風疹症候群に関するQ&A」、日本産婦人科医会「麻疹流行とその対策」)
Q.麻疹と風疹を最も効果的に予防できる方法と接種スケジュールを教えてください。
A.最も有効な予防法は、1歳児と小学校就学前の2回、MR(麻しん風しん混合)ワクチンを接種することです。MRワクチンを1回接種すると約95%の人が免疫を獲得し、2回接種を完了すれば獲得率は97%〜99%に達して周囲への感染拡大も防げます。なお、このワクチンは生ワクチンであるため妊娠中の女性は受けることができず、妊娠可能な女性が任意で受ける場合は、接種後2か月程度の確実な避妊が必要です。 (出典:厚生労働省「麻しん風しん混合(MR)ワクチン」、厚生労働省「麻しん(はしか)に関するQ&A」)
まとめ

麻疹と風疹は、どちらも発疹を伴う感染症ですが、原因ウイルスが異なる全く別の病気です。感染力や重症化リスクの点でも、明確な違いがあります。
麻疹は感染力が強く、肺炎や脳炎などの合併症を引き起こす可能性があります。風疹は妊娠中の女性が感染すると、胎児に影響が及ぶリスクがあるため注意が必要です。いずれも、ワクチンの2回接種が有効な予防法とされています。
ご自身の接種歴がわからない方は、まず母子健康手帳を確認しましょう。記録がなければ、抗体検査で免疫の状態を調べられます。免疫が不十分な場合は追加接種を検討することが、大切な備えとなります。
