子どもの視力低下で最も多い原因は、近視の発症と進行です。近視とは、成長期に眼軸(眼球の前後の長さ)が伸びすぎてピントが合わなくなり、遠くが見えにくくなる状態です。この記事では、子どもの視力低下の現状と主な原因、眼科を受診する目安、家庭と学校でできる対策、近視の進行を抑える治療とその費用までを、小児の近視診療に携わる日本眼科学会認定眼科専門医が解説します。
この記事でわかること
- 裸眼視力1.0未満の子どもがどのくらいいるのか(令和7年度の統計)
- 家庭で気づけるサインと、眼科を受診する目安
- 近視が起こるしくみと、遺伝・環境それぞれの関わり
- 家庭と学校でできる具体的な対策
- 近視の進行を抑える治療の選択肢と、費用・保険適用の考え方
子どもの視力低下とは?定義と現在わかっている状況
「子どもの視力低下」とは、医学的には裸眼の状態での視力が基準(1.0など)に達しておらず、日常生活や学習において不自由が生じている状態を指します。単に「見えにくい」という症状だけでなく、それがなぜ起きているのか(近視なのか、一時的な目の疲れなのか、あるいは他の疾患が隠れているのか)を見極めることが非常に重要です。この視力低下は「病気の一歩手前、あるいは成長過程での体のサイン」として捉え、眼科で正確な状態を把握することが、その後の対策の第一歩となります。
文部科学省の令和7年度学校保健統計によると、裸眼視力1.0未満の子どもの割合は、小学校で36.07%、中学校で59.35%、高等学校で71.51%でした。
視力低下の原因で多い近視
近視による視力低下では、遠くのものがぼやけて見えにくくなります。これは眼球の構造変化により、ピントが網膜よりも手前で合ってしまうために起こる現象です。
子どもの視力低下の原因の多くは近視です。しかし、他にも、遠視、乱視、弱視、まれにその他の眼疾患などさまざまな原因があります。
近視は、成長期に目が伸びすぎて、目に入る光のピントから網膜が後ろ方向へ離れていく現象です。このため、ピントが合わなくなり、遠くがぼやけます。裸眼の状態では視力は低いですが、眼鏡などで近視を矯正すると視力は良くなります。
裸眼視力1.0未満の子どもはどのくらいいるか
毎年、幼稚園から高校生までの裸眼視力が調査されています。学年が上がるにつれて増加していきます。
| 学校種 | 令和7年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| 幼稚園 | 23.90% | 26.53% |
| 小学校 | 36.07% | 36.84% |
| 中学校 | 59.35% | 60.61% |
| 高等学校 | 71.51% | 71.06% |
出典:文部科学省「令和7年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)」(2026年2月13日公表)
子ども本人は見えにくさに気づきにくい
子どもの視力低下はゆるやかに進むため、見えにくさを自覚しにくい傾向があります。とくに片方の目だけ視力が低下している場合は日常生活で不自由を感じにくく、学校健診で初めて指摘されることも少なくありません。このため学校健診は、子ども自身が気づけない『見えにくさ』を早期に発見し、専門医へ繋ぐための、私たち眼科医にとっても極めて重要なセーフティネットです。
視力低下のサインと、眼科を受診する目安
学校健診で指摘を受けたら受診が必要ですが、家庭でも気づけるサインはあります。
家庭で気づける主なサイン
- テレビや本、タブレットに顔を近づける
- 目を細めて遠くを見る
- 黒板の文字を書き写すのに時間がかかる、写し間違いが増える
- 片目を隠すと強くいやがる(左右で見え方に差がある可能性があります)
【保護者のための受診判断ステップ】
1. チェック:上記サインが1つ以上当てはまるか、学校健診でB〜D判定を受けた
2. 簡易確認:片目を隠して時計やカレンダーを見せ、見え方の左右差や歪みの有無を確認する
3. 状態観察:視力低下のほかに「目のかゆみ・痛み・充血」など他の症状がないか確認する
上記に該当する場合は、自己判断で放置せず、早めに医療機関(眼科)を受診して精密検査を受けてください。
学校健診でB〜D判定と言われたら
学校健診の視力検査は、いわゆる370方式と呼ばれる4段階(A〜D)で判定されます。
| 判定 | 裸眼視力 | 見え方の目安 |
|---|---|---|
| A | 1.0以上 | いちばん後ろの席でも黒板の文字が見える |
| B | 0.9〜0.7 | 後方の席では見えにくいことがある |
| C | 0.6〜0.3 | 中ほどの席でも見えにくい |
| D | 0.2以下 | いちばん前の席でも見えにくい |
B以下は受診を勧める対象です。
ただし、学校健診でB判定となり眼科を受診されても、眼科の視力検査で1.0以上が出ることは珍しくありません。学校健診はラフな視標だけを使うスクリーニングであることや、検査の環境や本人の状態が影響して、低く出ることがあり得ます。
ただし、これは受診が無駄だということではありません。眼科では屈折の度数や左右差、乱視の有無まで確認でき、それに基づいて今後近視発症を予防したり、近視進行を抑制したりするためのアドバイスを受けることができます。
なぜ早めの眼科受診が望ましいか?
見えにくい状態では、学習や運動に影響が出ている可能性があるため、早めに適切な治療を行うことが必要です。以下のような治療を早めに始めることができます。
- 近業が長いと目の中のピントを合わせる筋肉が緊張したままになり、遠くがぼやけることがあります。調節緊張や仮性近視と呼ばれています。点眼治療で改善が期待できます。
- 近視が強くなってくると調節力ではカバーできなくなります。このため、眼鏡やコンタクトレンズによる近視矯正を行います。
- 後述するように、子どもの近視進行を抑える治療法が充実してきています。早めに開始したほうが、最終的な近視の強さをより低減できることが期待できます。
子どもの視力低下はなぜ起こる?主な原因とは
子どもの視力低下の原因として多い近視は、遺伝的な要因と生活環境の要因が重なって起こると考えられています。
近視のしくみと近視進行抑制
眼球は成長とともに大きくなり、眼軸(角膜から網膜までの長さ)も伸びます。伸び方が速いと眼底の網膜が、ピントの位置を追い越します。この結果、ピントが網膜より手前で合い、遠くがぼやけます。一度伸びた眼軸は元に戻らないと考えられており、対応は「眼軸が伸びるペースを緩やかにする」という考え方が中心になります。この眼軸の伸びる速さに関係するのが、遺伝と生活環境と考えられているのです。
遺伝の関わり
両親のいずれか、あるいは両方が近視である場合、子どもも近視になる割合が高いと報告されています。ご両親の近視の有無は、進行しやすさを考える情報の一つとして大切です。
環境の関わり:近くを見る作業と屋外活動
近くを見る作業(近業)が長い、日中に屋外で過ごす時間が短いという生活は、近視の発症を早め、近視の進行を速めると報告されています。
日中に屋外で過ごす時間が十分であると(目安:週14時間、1日当たり2時間)発症を抑える方向にはたらくと考えられています。

強度近視で将来的に高まるとされるリスク
強度近視になると、緑内障、網膜剥離、近視性黄斑症など失明リスクのある目の病気になる可能性が高くなると報告されています。
こうした目の病気を減らすには、子どものときに近視を強くしないことの重要性が世界的に認知され、子どもの近視を強くしないための取り組みや研究開発が盛んになっています。
近視以外が原因の場合も
子どもの視力低下の原因は、弱視、斜視、強い乱視、まれに水晶体や網膜・視神経の疾患など近視以外にもありますので、近視と決めつけずに眼科で原因を確かめることが重要です。
学校・教室の環境は子どもの視力にどう影響する?
子どもは平日の多くを教室で過ごします。見え方の環境は家庭だけの問題ではなく、座席の位置、教室の照明、黒板やディスプレイの見え方も学習のしやすさに関わります。
座席の位置:前の席にしてもらったほうがよいですか?
眼科の診察でよく寄せられる相談の一つです。前の座席でないと黒板が見えにくい場合は、視力矯正(眼鏡等)が必要になっているサインと考えられます。近視で黒板が見えにくいのであれば、必要な度数の眼鏡を作り、教室でかけることが先決です。
また、眼鏡をかけているのに見えにくいという場合は、眼鏡の度数が合っていない、教室でかけていないなど確認すべき点があります。座席を前にして様子をみるのではなく、原因を確かめ解決を図る必要があります。
教室の照明と黒板の見えやすさ
視力は明るさの影響を受けます。読み書きをする場所の明るさは、日本眼科医会が照度計で200ルクス以上を目安として示しています。参考までに、学校環境衛生基準(文部科学省)では教室の照度の下限値は300ルクス、教室および黒板の照度は500ルクス以上が望ましいとされています。
明るさが足りずに見えにくいと自然と教科書やタブレットに顔が近づき、近業の距離が短くなると近視進行に悪影響を与えます。
1人1台端末での学習環境
1人1台端末が広がり、近くを見る作業のあり方は以前と変わりました。文部科学省は、目と画面を30cm以上離す、30分に1回は20秒以上画面から目を離して遠くを見る、就寝前に強い光を浴びないといった留意点を挙げています。
眼科で何を伝えるか
眼科受診の際は、学校から渡された健診の用紙をそのままお持ちください。あわせて次の情報があると診療がスムーズです。
- これまでの視力の経過(前年度の判定がわかれば)
- 眼鏡やコンタクトレンズの使用歴、前回の処方内容
- ご家族に近視・弱視・斜視の方がいるか
- 1日の近業時間と屋外時間の目安、画面と目の距離
家庭でできる視力低下・近視進行への対策
家庭でできることの中心は、日が出ている時間帯に屋外で過ごす時間を増やすことと、近くを見る作業を適正化することです。
屋外で過ごす時間を増やす
屋外で過ごす時間を週14時間、1日にすると2時間程度とると近視の発症や進行抑制に効果が高いことがわかっています。必要な明るさの目安は1,000〜3,000ルクス以上で、直射日光の下でなくても木陰や建物の影で達成できます。運動である必要はなく、外にいること自体に意味があると考えられています。
ただし屋外で過ごす際は熱中症や紫外線への配慮も必要です。強い日ざしの下に長時間いるのではなく、木陰などを選ぶようにしてください。(紫外線と目の関係は〈紫外線が目に与える影響と対策〉で解説しています。)
近くを見る作業は「距離」と「時間」を意識する
読み書きやタブレット等の画面視聴は目から30cm以上離すことが必要です。スマホやゲームなど小さい画面は夢中になると目を近づけてしまいますので、できるだけテレビなど大きな画面で視聴することをお勧めします。
また、連続して近業作業をせず、30分に1回は休憩を取りましょう。あわせて意識していただきたいのが、1日に近くを見ている合計時間です。宿題、読書、動画視聴、ゲームはそれぞれ短くても、合計すると長時間になります。
現代は、ネットで無制限に娯楽が得られるため、家にこもって動画やゲームに時間を費やしがちです。その分、屋外で過ごす時間が減ります。減らした近業の時間を屋外で過ごす時間に置き換える意識が必要と考えます。
姿勢・睡眠・食事
姿勢が悪いと本や画面に目が近づきがちです。背筋を伸ばした良い姿勢で作業することが大切です。就寝前の端末使用を控えるなど、生活リズムを整えることも大切です。なお、特定の食品やサプリメントで近視の進行が抑えられるという十分な根拠は現時点でありません。
上記の数値(屋外2時間・1,000〜3,000ルクス・30cm・30分・200ルクス)の出典:日本眼科医会「気をつけよう! 子どもの近視」
近視の進行を抑える治療にはどんな選択肢がある?
現時点で国内で行われている近視進行抑制の主な方法は、低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ)、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズ(マイサイトワンデー)、近視管理用眼鏡の4つです。低濃度アトロピン点眼と他の方法は組み合わせることで効果を上げることができると考えられています。
いずれも近視進行のペースを緩やかにすることが示されています。どの治療法にも向き不向きがあります。大切なのは『今のライフスタイル』と『ご本人の意欲』を考慮し、最適な手段を医師と共に選ぶことです。
緩やかになっても近視が進みますので、眼鏡やコンタクトレンズの度数更新が必要になることはあります。
概略を表にまとめます。詳細を知りたい方は、関連記事を参照ください。
4つの方法の比較
| 方法 | しくみ | 対象年齢の目安 | 通院の目安 | 主なリスク・注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ) | 就寝前に1日1回点眼する | 5〜18歳 | 6か月ごと | まぶしさ、近くの見えにくさ、目のかゆみ・充血など。中止により進行が速まる報告がある。 |
| オルソケラトロジー | 就寝中に専用のハードレンズを装用し、角膜の形を一時的に変える | 学童期以降。保護者の管理が前提 | 1〜3か月ごと | 角膜のキズ、角膜感染症。重い感染症では視力に影響が残ることがある。毎日の洗浄・保管が必須。 |
| 多焦点ソフトコンタクトレンズ(マイサイトワンデー) | レンズ周辺部の度数を変えた設計 | 装脱・ケアが自分でできる年齢から | 1〜3か月ごと | 角膜のキズ、感染症、アレルギー。装用時間とレンズケアが必要 |
| 近視管理用眼鏡 | レンズ周辺に微細な構造を配した設計 | 学童期 | 3〜6か月ごと | 見え方に慣れるまで時間がかかる場合がある |

国内での承認・販売の状況
低濃度アトロピン点眼のリジュセアミニは、2024年12月に、多焦点ソフトコンタクトレンズのマイサイトワンデーは2025年8月に、いずれも近視進行抑制を目的として国内で承認されています。複数のオルソケラトロジー用レンズも医療機器として承認されています。
近視管理用眼鏡は位置づけが異なります。視力を補正する眼鏡レンズとして届け出られたもので、近視進行抑制の効果そのものは国内では承認されていません。日本近視学会が2025年に「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」を作成し、眼科医が処方し眼鏡作製技能士が作製するという枠組みが整えられ、2026年6月から国内での販売が始まっています。
近視進行抑制治療の費用と保険適用の実態
近視の進行を抑える治療は、原則として自費診療です。ただし、リジュセアミニについては、2026年6月から選定療養の対象となり、診察料・検査料は保険対象となり、薬剤費は自費となっています。
リジュセアミニの費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
→【眼科専門医監修】リジュセアミニ点眼が保険適用へ|診察・検査費の自己負担はどう変わる?
保険診療/選定療養/自費診療
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 保険診療 | 視力低下の原因を調べる診察、視力検査、屈折検査、眼底検査眼鏡処方に必要な検査弱視・斜視・その他の眼疾患の治療 |
| 選定療養(保険と自費の併用) | リジュセアミニ点眼(2026年6月〜)診察料・検査料は保険適用、薬剤費は自費 |
| 自費診療 | オルソケラトロジー、マイサイトワンデー、近視管理用眼鏡これらに伴う検査・レンズ代・ケア用品 |
なお、眼鏡やコンタクトレンズそのものの代金は保険の対象外です。
ただし、9歳未満のお子さんの弱視・斜視・先天白内障術後に用いる治療用眼鏡やコンタクトレンズは、加入する健康保険に申請すると療養費の支給を受けられる制度があります。
費用の目安
| 方法 | 開始時の費用の目安 | 継続にかかる費用の目安 |
|---|---|---|
| リジュセアミニ | 薬剤費のみ4,000〜5,000円程度※ | 月4,000〜5,000円程度※ |
| オルソケラトロジー | 100,000〜200,000円程度(両眼・初期検査込み) | 検査とケア用品で年20,000〜50,000円程度。レンズは数年ごと交換 |
| マイサイトワンデー | 検査・トライアルで5,000〜15,000円程度 | 月5,000〜10,000円程度+定期検査費 |
| 近視管理用眼鏡 | 1本あたり30,000〜80,000円程度 | 度数変更や成長に応じて作り替えが必要 |
金額は医療機関によって幅があります。上記はあくまで目安ですので、実際の費用は受診先で必ずご確認ください。
※自治体によります。
費用を考えるときのポイント
2026年6月からリジュセアミニが選定療養の対象となり、診察料・検査料に保険が適用されるようになりました。この結果、お住まいの自治体の子ども医療費助成制度を使える場合があります(適用の可否は自治体により異なります)。薬剤費は自費のままですが、開始時の負担は以前より下がっており、始めやすい治療になりました。
なお、近視の進行が抑制できれば、眼鏡のレンズを変えるペースが遅くなり、眼鏡にかかる費用が下がる可能性があることも考慮に入れると良いでしょう。
よくある質問(FAQ)
まとめ
- 子どもの視力低下の多くは近視によるものです。令和7年度の統計では裸眼視力1.0未満の割合は小学校で36.07%でした。
- 近視を発症させない、あるいは強くしないために家庭でできることは、日中に屋外で過ごす時間を1日平均2時間程度確保し、近くを見る作業を30cm以上離して30分ごとに区切ることです。
- 近視の進行を抑える治療は複数あります。費用は原則自費ですが、リジュセアミニ点眼は2026年6月から診察料・検査料に保険が適用されるようになりました。
参考文献
- 文部科学省「令和7年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)」(2026年2月13日公表)
- 日本眼科医会「気をつけよう! 子どもの近視」
- 日本眼科学会・日本眼科医会・日本近視学会・日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会・日本視能訓練士協会「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」(2021年4月14日)
- 文部科学省「学校環境衛生基準」
子供の視力低下に関する関連メディアの記事はこちら
- 近視管理眼鏡について→近視管理用眼鏡とは?子供の近視進行を抑える効果・対象年齢・費用を解説
- マイサイトワンデーについて→近視の進行にブレーキをかけるコンタクトレンズが国内承認
- オルソケラトロジーについて→オルソケラトロジー
