双極性障害の方を支えるなかで、「良かれと思ってしたことが、なぜか裏目に出てしまう」ことはありませんか。激しく揺れ動く気分の波を前に、接し方に戸惑うことも少なくありません。しかし、状態に合わない対応は、本人を混乱させ、支える側の心身をすり減らす原因にもなります。
この記事では、双極性障害の躁状態とうつ状態、それぞれの接し方と、家族・友人・職場など立場別の対応、そして絶対に避けたいNG行動を解説します。本人との穏やかな関係を築くための参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 躁状態・うつ状態それぞれに適した接し方と、やってはいけないNG行動
- 家族・友人・職場の同僚、立場別に異なる関わり方のポイント
- 自殺サインの見分け方など、支える側が特に注意すべき3つの行動
- 一人で抱え込む前に頼れる4つの相談先(精神保健福祉センター・家族会など)
目次
躁状態・うつ状態別|双極性障害の接し方
双極性障害は、気分の波が激しく入れ替わる病気です。気分が極端に高まる躁状態と、深く沈み込むうつ状態では、本人の言動や思考が大きく変わります。
双極性障害ではその時々の状態に合わせて接し方を柔軟に変えていくことが大切です。「躁状態のとき」「うつ状態のとき」それぞれの局面で心がけたいポイントを解説します。
双極性障害についての詳しい記事はコチラ⇒【医師監修】双極性障害とは?タイプごとの主な症状と発症原因、治療法を解説
躁状態のときの接し方とNG行動
双極性障害の躁状態のときは、本人に病気の自覚がないことがほとんどです。「自分は絶好調だ」と感じて活動的になりますが、周囲から見ると危なっかしい言動が目立ちます。
躁状態の時期は、本人の安全を守り、社会的信用を失わないようにサポートすることが重要です。以下の4つのポイントを意識してください。
- 否定も肯定もせず中立を保つ
- 重要な決断は先送りにする
- あらかじめ「ルール」を決めておく
- 受診を促すときは「体」を心配する
万が一、本人や周囲に危険が及ぶような状況であれば、ためらわずに医師に相談し、入院も視野に入れた対応が必要です。
うつ状態のときの接し方とNG行動
双極性障害のうつ状態では心と体のエネルギーが枯渇してしまいます。躁状態のときの自分を思い出して、激しい後悔の念に苛まれることも少なくありません。
うつ状態では無理に気分を引き上げようとせず、本人が安心してエネルギーを再充電できる「安全基地」になることが求められます。
双極性障害のうつ状態の方と接するときに意識したいポイントは以下のとおりです。
- 「頑張れ」と言わず、休養を肯定する
- アドバイスを控え、ただ寄り添う
- 回復の波に一喜一憂しない
- 重要な決断をさせない
周囲がどっしりと構えて見守ることで、本人の焦りを和らげることができます。
家族・友人・職場|立場別の双極性障害への接し方
双極性障害の方との関わり方は、あなたの立場によって大きく異なります。本人を支えると同時に、あなた自身が潰れないように注意しましょう。
以下の関係性別に、双極性障害の方との接し方を解説します。
①家族・パートナーとしての接し方
②友人としての接し方
③職場の同僚としての接し方
①家族・パートナーとしての接し方
家族やパートナーは、双極性障害の方にとって心強い味方です。しかし、近くで支えるからこそ、激しい気分の波に翻弄されやすい立場でもあります。
感情的に巻き込まれすぎず、自分を守る術を身につけることが、長期的なサポートにつながります。家族やパートナーとして双極性障害の方と接するときに意識したいポイントは、以下の4つです。
- 生活リズムを整える
- 治療の進歩を信じる
- 薬の不安は医師と共有する
- 意識的にガス抜きをする
一人で抱え込まず、適切な距離感を保ちながら支えていくことが大切です。
②友人としての接し方
友人としての立場では「双極性障害をなんとかしてあげたい」という気持ちが、かえってお互いを苦しめることがあります。
あなたの役割は問題を解決することではなく、ただ一人、変わらない理解者としてそばにいることです。友人として双極性障害の方と接するときは、以下のポイントを意識しましょう。
- 聴くことに徹する
- 「味方だよ」と伝える
- 自分を守るために距離を置く
自分自身の心を守ることをためらわないでください。あなたが健康でいられる適切な距離感を保ちましょう。
③職場の同僚としての接し方
職場はあくまで仕事をする場です。双極性障害の方と同僚として関わる際はプライベートと一線を画し、業務を円滑に進めるためのサポートに徹しましょう。
双極性障害の方と同僚として接するときに意識したいポイントは、以下の3つです。
- 感情的にならず、事実を伝える
- 一人で抱え込まず、組織で対応する
- 必要な配慮について事前に話し合っておく
業務量の調整や勤務時間の変更など、共通のルールがあれば、いざというときもスムーズに対応できます。
双極性障害の方と接するときのNG行動・注意点
双極性障害の方を支える毎日は、ときに先の見えないトンネルを歩いているように感じるかもしれません。良かれと思った言葉が本人を傷つけたり、献身的なサポートが自分の心をすり減らしたりすることもあります。
本人と穏やかな関係を築き、長い目でサポートを続けるためには、支える側が「自分を守る」視点を持つことが欠かせません。双極性障害の方と接するときに注意したいポイントは、以下の3つです。
①自殺のサインを見逃さない
②感情的に巻き込まれすぎない
③一人で抱え込まない
①自殺のサインを見逃さない
双極性障害のうつ状態では絶望感が強く、自ら命を絶ってしまうリスクと隣り合わせの状態にあります。自殺のサインを見逃さないことは本人を守るために、特に注意すべき点です。
「死にたい」「消えてしまいたい」などの直接的な言葉だけでなく、行動の変化にも注意が必要です。急な身辺整理や別れの挨拶などは、危険が迫っているサインかもしれません。いつもと違うと感じたら、ためらわずに医師や専門機関へ連絡してください。
②感情的に巻き込まれすぎない
「双極性障害をなんとか良くしてあげたい」という強い思いが、自分自身の心を追い詰めてしまうことがあります。本人の言動に心を揺さぶられ続けると、支える側が先に燃え尽きてしまいかねません。
双極性障害の躁状態のときの攻撃的な言動は、病気の症状によるものです。本人の人格そのものではないと理解し、感情の渦に巻き込まれないようにしましょう。つらいと感じたら物理的に距離を置くことも、お互いを守るための大切な選択です。
③一人で抱え込まない
「双極性障害は家族だけで解決しなければならない」という責任感が、あなたを孤立させてしまう原因になります。双極性障害は一つの家庭だけで抱え込むには、あまりに大きく複雑な課題です。
専門家や仲間の力を借りることは責任放棄ではありません。まずは現在の症状について主治医によく相談し、適切な治療方針を一緒に立てていくことが大切です。外部の支援を求めることは、本人とあなたを守るための賢明な判断といえます。
一人で抱え込む前に|双極性障害の相談先まとめ
双極性障害の方を支える日々は、本人だけでなく家族や周りの方にとっても不安との闘いになることがあります。心身が疲弊してしまう前に、ぜひ外部の力を頼ってください。
双極性障害の方への接し方で悩んだときの相談先は、以下の4つです。
①通院先の医療機関
②精神保健福祉センター
③保健所・保健センター
④家族会・支援団体
①通院先の医療機関
双極性障害の方への接し方で悩んだときに最初に頼るべきは、本人が通院している医療機関です。主治医は本人の状態を医学的見地から理解している専門家であり、具体的な助言を得るには最も適しています。
通院先の医療機関では、以下のような内容を相談することが可能です。
- 現在の症状で特に気になること(睡眠、食欲、言動の変化など)
- 躁状態・うつ状態、それぞれの時期で心がけるべき接し方
- 薬の管理で困っていること
医師と密に連携をとることが、本人にとっても支える側にとっても大きな安心感につながります。
②精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、心の健康に関する公的な専門相談機関です。(※1)双極性障害の方との接し方についてどこに相談すれば良いか分からないときの窓口となります。
精神保健福祉センターには医師や精神保健福祉士などの専門家が在籍しており、無料で相談が可能です。病気への理解を深めたいときや、利用できる福祉サービスを知りたいときにも応えてくれます。
③保健所・保健センター
保健所や保健センターは、市区町村が設置する地域に密着した相談窓口で、(※2)お住まいの地域の健康を支える役割を担っております。
「専門機関に連絡するのはハードルが高い」と感じる場合でも、保健師などが親身に話を聞いてくれます。 保健所や保健センターなどの身近な窓口は、専門的な医療へつなぐための重要な役割を果たしています。 保健所や保健センターでの相談をきっかけに、事態が好転することも少なくありません。
④家族会・支援団体
同じ病気を持つ家族が集まる家族会や支援団体は、あなたにとってかけがえのない支えとなります。家族会や支援団体は専門家とは異なる「同じ目線」を持つ仲間と悩みを分かち合える場所です。
家族会や支援団体では「悩んでいるのは自分だけではない」と実感でき、精神的な孤立から抜け出すきっかけになります。経験者ならではの双極性障害の方と接するときの工夫など、生きた情報を交換できる点もメリットです。一人で抱え込まず、同じ経験を持つ仲間とつながることも検討してみてください。
まとめ
双極性障害の方への接し方は、躁状態・うつ状態によって、また家族・友人・職場という立場によって、求められる対応が大きく異なります。
この記事のポイントを振り返ると、以下のとおりです。
・躁状態のときは安全を守ることを最優先に、否定も肯定もせず中立を保つ
・うつ状態のときは「安全基地」になることを意識し、「頑張れ」は禁句
・支える側が感情的に巻き込まれず、適切な距離感を保つことが長続きの鍵
・一人で抱え込まず、主治医・精神保健福祉センター・家族会を積極的に活用する
悩んだときは一人で解決しようとせず、本記事で紹介した相談先を気軽に頼ってください。正しい知識を持ち、周囲のサポートをうまく活用することで、本人と一緒に穏やかに過ごせる環境づくりに繋がります。
参考文献
- 厚生労働省「精神保健福祉センター」
- 全国保健所長会「保健所の活用の仕方」
