突然ズキズキと痛む耳の奥に、不安を感じていませんか。耳を診察しても異常が見つからず、喉や顎の病気による「関連痛」が痛みの正体だったというケースもあります。
この記事では、耳の奥が痛い原因を、中耳炎などの耳の病気から、扁桃炎やストレスによる関連痛まで解説します。放置すると危険な症状や、受診までの応急処置もあわせて紹介します。
ご自身の症状と照らし合わせれば、耳の奥が痛い原因を推測する手がかりが得られます。受診すべきかどうかの判断がつき、不安の解消と適切な対処への第一歩を踏み出せるはずです。
この記事でわかること
- 耳の奥が痛いときに考えられる5つの原因
- 耳以外の病気が耳の痛みとして感じられる「関連痛」の仕組み
- 子どもと高齢者に多い耳の痛みの原因
- すぐに受診すべき5つの危険な症状と受診先の目安
- 受診までにできる4つの応急処置
耳の奥が痛いときに考えられる主な原因
耳の奥が痛い原因は、耳の中にあるとは限りません。喉や顎の病気やストレスが、関連痛として耳の痛みにつながることもあります。考えられる主な原因は以下の5つです。
①急性中耳炎・外耳炎など耳の病気
②扁桃炎・顎関節症など耳以外の病気
③ストレスや疲労による痛み
④子どもに多い耳の痛みの原因
⑤高齢者に多い耳の痛みの原因
①急性中耳炎・外耳炎など耳の病気
耳の奥が痛いときに多いのは、急性中耳炎や外耳炎などの耳自体の炎症や感染症です。代表的な耳の病気を以下の表にまとめました。(※6)
| 病気 | 起こる仕組み | 痛みの特徴 |
|---|---|---|
| 急性中耳炎 | 鼻や喉の細菌が耳管を通って中耳で炎症を起こす | ズキズキと脈打つ強い痛み |
| 外耳炎 | 耳かきなどでついた外耳道の傷から細菌が感染する | 耳たぶを引っ張ると強まる痛み |
| 航空性中耳炎 | 飛行機などの気圧の変化で中耳の圧力が変わる | 離着陸時に生じる詰まりと痛み |
| 耳性帯状疱疹 | 体内に潜んでいたウイルスが耳の神経で再び活動する | 焼けつくような激しい痛み |
急性中耳炎では、鼓膜の奥に膿がたまり、内側から圧力がかかります。発熱や耳が詰まった感じ(耳閉感)を伴うことも多いです。外耳炎は、耳かきやイヤホンの使いすぎが引き金になります。耳の奥の痛みが続くときは、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
②扁桃炎・顎関節症など耳以外の病気
耳を診察しても異常がないのに耳の奥が痛い場合、原因は耳以外の場所にあるかもしれません。痛みの発生源を脳が勘違いし、離れた耳が痛むように感じる現象を「関連痛」と呼びます。(※7)耳の痛みにつながる耳以外の病気は以下のとおりです。
| 病気 | 耳の痛みが起こる仕組み | 痛みの特徴 |
|---|---|---|
| 扁桃炎・咽頭炎 | 喉の炎症が耳とつながる神経を刺激する | 飲み込むときに耳の奥へ響く |
| 顎関節症 | 顎関節や周囲の筋肉に由来する痛みを、耳の痛みとして感じることがある | 口を大きく開けたときに強まる |
| 親知らず・虫歯 | 歯や歯ぐきの痛みが、関連痛として耳に響くことがある | 歯の痛みとともにうずく |
扁桃炎を繰り返す成人では、扁桃摘出術によって喉の症状の再発を減らせると報告されています。(※1)扁桃摘出術のあとに一時的に耳が痛むこともありますが、手術前後の処置で和らげられると報告されています。(※2)国内でも日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が、扁桃炎をこじらせて扁桃のまわりに膿がたまる「扁桃周囲膿瘍」では耳も痛く感じることがあり、再発を繰り返す場合は扁桃を手術で取る必要があると解説しています。(※4)耳の痛みとあわせて喉や顎の不調があるときは、耳鼻咽喉科や歯科を受診しましょう。
③ストレスや疲労による痛み
過度なストレスや慢性的な疲労が、間接的に耳の奥の痛みを招くことがあります。
たとえば、ストレスによって無意識の食いしばりや就寝中の歯ぎしりが起こると、顎の筋肉が過度に緊張し、その痛みが耳へと広がって感じられることがあります。
また、疲労や睡眠不足で免疫力が低下すると、普段なら抑え込める細菌やウイルスに感染しやすくなり、急性中耳炎や扁桃炎を発症するリスクも高まります。
ただし「単なるストレスのせいだろう」と自己判断するのは危険です。耳の奥の痛みの背景に、治療が必要な病気が隠れている可能性もあるため、まずは一度、医療機関を受診して原因を確かめましょう。
食いしばりや歯ぎしりの原因が気になる方は、関連記事「歯ぎしりの原因」もあわせてご覧ください。
④子どもに多い耳の痛みの原因
子どもの耳の痛みで多い原因は、風邪に続いて起こる「急性中耳炎」です。
というのも、子どもの耳は大人と比べて鼻と耳をつなぐ管(耳管)が短く太いうえ、傾きが水平に近い構造をしているため、鼻や喉のウイルス・細菌が中耳に届きやすく、中耳炎を発症しやすい傾向があります。(※8)
まだ言葉で痛みを伝えられない子どもでは、以下のようなサインが見られます。
- 理由なく急に機嫌が悪くなり、泣き止まない
- 発熱している
- しきりに耳を触ったり気にしたりする
- ミルクや食事を嫌がる
なお、中耳炎以外にも扁桃炎や、おもちゃの部品などの異物が耳に入っていて痛みを訴えているケースもあります。子どもの様子がいつもと違うと感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
⑤高齢者に多い耳の痛みの原因
高齢者の耳の痛みは、耳自体の病気だけでなく、加齢や免疫低下に伴う別の病気が原因となっていることも少なくありません。
特に注意したい代表的な病気は以下の2つです。
- 喉や口の中の腫瘍(咽頭がんなど):耳自体には問題がなくても、初期症状として耳の痛みだけがあらわれることがあります。
- 帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群):免疫低下によってウイルスが耳の神経を侵し、激しい痛みに加えて顔の麻痺や難聴を引き起こします。(※9)
「痛みが長引く」「食べ物が飲み込みにくい」「声がかすれる」といった症状を伴う場合は重い病気が隠れている可能性もあるため、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。
帯状疱疹が疑われるときの受診先については、関連記事「帯状疱疹は何科?」もあわせてご覧ください。
耳の奥が痛いときに病院を受診すべき危険な症状
耳の奥の痛みに特定の症状が加わる場合、速やかな治療が必要なサインかもしれません。放置すると重い後遺症につながりかねないため、以下の5つが1つでも当てはまる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
①高熱が続いている
②耳の後ろが腫れている
③顔の麻痺や歪みがある
④激しいめまいや頭痛がある
⑤耳だれが出ている
なお、受診先に迷う場合は「基本は耳鼻咽喉科」を受診し、口の開閉に伴う痛みや歯痛がある場合は「歯科・口腔外科」、激しい頭痛を伴う場合は「脳神経外科・救急外来」、顔のまひを伴う場合は「耳鼻咽喉科・神経内科」を検討するのが適切な判断基準となります。
①高熱が続いている
耳の痛みに加えて38℃以上の高熱が続く場合、耳やその周辺で強い感染症が起きている可能性が考えられます。中耳炎や扁桃炎の悪化が代表的です。
注意したいのは、熱の高さそのものよりも全身の状態です。ドイツのガイドラインでも、発熱した子どもの評価では、体温の数値より全身状態や警告徴候の把握が重視されています。(※3)
以下のような状態が見られる場合は、早急に耳鼻咽喉科や小児科、内科を受診しましょう。
- 38℃以上の高熱が続いている
- 解熱剤を飲んでも一時的にしか熱が下がらない
- ぐったりして元気がなく、水分補給もままならない
- 耳の痛みが時間とともに強くなる
高熱と耳の奥の痛みが重なるときは、様子を見ずに早めに医療機関を受診しましょう。
②耳の後ろが腫れている
耳の後ろの腫れは外から見てわかるサインです。気づいた時点で早めに受診しましょう。
「耳の奥」ではなく、耳の後ろ側の痛みやしこり・赤みが気になる方は、関連記事「耳の後ろが痛いのはなぜ?」もあわせてご覧ください。
③顔の麻痺や歪みがある
耳の痛みに加えて顔の片側が動きにくい場合、水ぼうそうと同じウイルスが耳の奥の顔面神経で再活性化して起こる「ラムゼイ・ハント症候群」が疑われます。 顔面神経麻痺の一種であり、後遺症を残さないためにはできるだけ早い段階での治療開始が求められます。(※10)
顔の異変に気づいたら、まずは鏡を見て以下のような症状(サイン)がないか確認してみましょう。
- 片方の目が完全に閉じられない
- 口笛が吹けない、または片方の口角が下がっている
- 口を横に広げると左右非対称になる
- おでこにシワを寄せられない
なお、こうした顔の麻痺は脳梗塞などの重篤な病気でもあらわれることがあります。耳の痛みと同時に顔の動きにくさを感じた場合は、決して様子を見ずに、すぐ耳鼻咽喉科や神経内科を受診してください。
耳の痛みや顔のまひを起こすことがある帯状疱疹について詳しく知りたい方は、関連記事「帯状疱疹とは?」もあわせてご覧ください。
④激しいめまいや頭痛がある
立っていられないほどのめまいや、経験したことのない激しい頭痛を伴う場合は注意が必要です。
耳の深部にある「内耳」は、聞こえを司る蝸牛だけでなく、体のバランスを保つ前庭や三半規管が集まる場所です。そのため、中耳炎などの炎症が内耳にまで及ぶと、耳の痛みとともに激しい回転性のめまいや難聴、強い吐き気が生じます。
また、以下のような症状が見られる場合は、内耳炎だけでなく髄膜炎や脳卒中といった命に関わる重篤な病気の可能性も考えられます。
- 立っていられないほどの、ぐるぐる回る回転性のめまい
- 強い吐き気や嘔吐を伴う
- 突然の激しい頭痛
- 手足のしびれや、ろれつが回らない
これらの症状は、一刻を争う危険なサインです。決して様子を見たり我慢したりせず、ためらわずに救急車を呼ぶか、夜間・休日でも対応できる救急外来をすぐに受診してください。(※10)
⑤耳だれが出ている
耳の奥からの分泌物(耳だれ)は、外耳道の炎症や、中耳炎によって鼓膜に穴が開くことで生じます。
液体にはサラサラとした透明なものから、膿の混じった黄色く臭うもの、さらには血が混ざったものまで様々ですが、色や見た目だけで原因や重症度を自己判断することはできません。
なお、気になるからといって耳の奥まで綿棒や耳かきを入れるのは厳禁です。炎症を悪化させたり、傷を広げたりする恐れがあります。入り口に出てきた液体を清潔なガーゼやティッシュでやさしく拭き取るにとどめ、なるべく早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
耳の奥が痛いときの応急処置
夜間や休日などで今すぐ医療機関を受診できない場合、つらい症状を一時的に和らげる応急処置として、以下の4つの方法が有効です。
①鎮痛薬を服用する
②耳の周囲を冷やす
③痛みが楽になる姿勢をとる
④耳抜きをする(飛行機などの気圧変化が原因の場合)
①鎮痛薬を服用する
痛みが強くて我慢できないときは、市販の解熱鎮痛薬を活用するのが効果的です。 アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの成分を含む薬が、耳の痛みや不快感を和らげる効果もあります。(※8)
市販薬を使う際は、以下の点に注意しましょう。
- パッケージに記載された用法・用量を守って服用する
- 持病の治療中、妊娠中・授乳中、他に薬を飲んでいる場合は医師や薬剤師へ相談する
- 子どもの場合は、大人用ではなく年齢や体重に合った小児用製品を選ぶ(イブプロフェンを含む市販薬は15歳未満の子どもには使えません)(※5)
なお、薬で痛みが引いても、それは一時的に症状を抑えているに過ぎません。薬の効果が切れると再び痛む場合は根本的な原因が治っていないサインですので、そのまま放置せず早めに医療機関を受診しましょう。
②耳の周囲を冷やす
炎症によって耳の奥がズキズキ痛む場合は、耳の周りを冷やすと症状が和らぐことがあります。冷やす際は、以下のポイントを意識してみましょう。
- 濡らしたタオルや、タオルで包んだ保冷剤を使う
- 痛む方の耳の後ろや、頬のあたりに優しく当てる
- 1回10〜15分を目安にする
- 冷やして痛みが強まると感じたら中止する
※保冷剤や氷を直接肌に当てると凍傷の原因になるため、必ずタオルなどを巻いて使用してください。また、耳の中に水を注いだり冷たいものを詰めたりすると症状を悪化させる恐れがあります。なお、温めると血流が増えて痛みが強まることもあるため、入浴は控えてぬるめのシャワー程度にとどめるのが安心です。
③痛みが楽になる姿勢をとる
耳の奥が痛いときは、無理に動かず、ご自身が楽だと感じる姿勢で安静にしましょう。
特に急性中耳炎などの場合、完全に横になると痛みが強まると感じることがあります。横になって痛みが強く感じられるときは、以下の姿勢を試してみてください。
- クッションや枕で背中を支え、上半身を少し起こして座る
- 横になる場合は、痛む方の耳を上にする
④耳抜きをする(飛行機などの気圧変化が原因の場合)
飛行機の離着陸時などに「航空性中耳炎」で耳が痛む場合は、以下のような「耳抜き」を試すと症状が和らぐことがあります。
- あくびをする
- 唾や飲み物をゆっくり飲み込む
- アメをなめる
※ただし、これらはあくまで一時的な対処法です。痛みが引かない場合は早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
まとめ
耳の奥が痛む原因は、中耳炎などの耳自体の病気に限らず、喉や顎の不調による「関連痛」の可能性も十分に考えられます。
市販薬や冷却といった応急処置は、あくまで一時的に症状を和らげるためのものです。特に高熱や激しいめまい、顔の麻痺といった危険なサインがある場合は、無理をせず至急医療機関を受診してください。
痛みが長引いている場合や何度も繰り返す場合は、「そのうち治るだろう」と放置せずに耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。痛みの原因を正しく突き止めることこそが、つらい症状から回復するための確実な第一歩となります。




