最終医学的確認日:2026年8月
ご家族が「実際にはない人や虫が見える」と訴えたり、日によって受け答えがはっきりしたり、ぼーっとしたりと調子の波が激しい様子を見て、対応に悩んでいませんか。この症状は、「レビー小体型認知症」のサインかもしれません。 レビー小体型認知症は、認知症全体の約4.3%を占めるといわれています。(※1)
この記事では、レビー小体型認知症の基本情報から、ご家族がすぐに実践できる対応策までを詳しく解説します。病気の特性を正しく理解することで、ご本人の言動の背景がわかり、今後の適切な対応や早期相談への一歩を踏み出せるでしょう。
この記事でわかること
- レビー小体型認知症の主な原因と発症メカニズム
- 日常生活で気づきやすい5つの代表的な初期症状
- 病院で行われる主な診断方法(画像検査・神経心理検査)
- 症状を和らげるための薬物療法・非薬物療法
- アルツハイマー型認知症との違い(比較表)
- ご本人の不安を取り除く接し方のポイント
レビー小体型認知症とは?
レビー小体型認知症(DLB:Dementia with Lewy Bodies)は、脳の神経細胞に「レビー小体」という異常なたんぱく質がたまることで発症する病気です。レビー小体が神経細胞を傷つけ、少しずつ神経細胞の数を減らしていくことで、脳全体の機能が低下し、さまざまな症状が現れると考えられています。(※2)
認知症全体の約4.3%を占めるといわれるタイプで、特に65歳以上の男性に発症しやすい傾向が報告されています。(※1)
また、 パーキンソン病に伴う認知症(PDD:Parkinson’s disease with dementia)も同じレビー小体が原因とされています。DLBとPDD間の鑑別が必要な研究などでは、認知症の発症がパーキンソン病に似た運動症状(パーキンソニズム)の発症後1年以内の場合をDLBとする”1年ルール”を用いることが推奨されています。(※7)
ご自身やご家族に、物忘れに加えて「幻が見える」「歩き方がぎこちなくなった」などの変化がみられる場合は、早めに脳神経内科や老年精神科、もの忘れ外来、または地域の認知症疾患医療センターなどの 専門の医療機関へご相談ください。
アルツハイマー型や血管性など、ほかの認知症の種類やご家族ができるセルフチェックについては、関連記事「認知症とは?」もあわせてご覧ください。
レビー小体型認知症の原因とは?発症のメカニズム
レビー小体型認知症は、神経細胞の中にレビー小体を形成していくことで発症します。
レビー小体型認知症の原因となる「αシヌクレイン」は、本来、脳の神経細胞同士の情報伝達をスムーズにする役割を担うたんぱく質です。何らかのきっかけでこのたんぱく質が異常な形に変化すると、お互いにくっついて塊になり、レビー小体を形成することがあります。
レビー小体が神経細胞の中にたまると、細胞本来の働きが妨げられ、最終的には神経細胞が死んでしまいます。これにより脳の機能が少しずつ失われるというのが、現在考えられている発症のメカニズムです。
ただし、根本的なメカニズムは完全には解明されていません。世界中で、少しずつメカニズムを明らかにする研究が行われています。
最近の研究では、神経細胞のDNA損傷と、αシヌクレインの蓄積が互いに影響し合っている可能性が示されています。実際、レビー小体型認知症の脳では、DNAの損傷を示すサインが増えており、病気のかなり早い段階から起きていることがわかってきました。(※3)
遺伝や加齢などの要因に加えて、生活習慣との関連性も報告されており、近年では喫煙習慣とレビー小体型認知症の発症リスクについての調査も進められています。 (※4)
レビー小体型認知症にはどんな症状がある?代表的な5つの特徴
レビー小体型認知症では、物忘れなどの認知機能のトラブルだけでなく、体や心にも多彩な症状が現れるのが大きな特徴です。代表的な症状は以下の5つです。
①認知機能の変動(中核的特徴)
②幻視(中核的特徴)
③パーキンソン症状(中核的特徴)
④レム睡眠行動異常症(中核的特徴)
⑤自律神経症状(支持的特徴)
①認知機能の変動
レビー小体型認知症の代表的な症状の一つが、日や時間帯によって認知機能が大きく変動することです。比較的はっきりと会話できるときと、ぼーっとしたり、質問への反応が鈍くなったりするときが入れ替わります。
認知機能の変動は、数分〜数時間という短い時間で起こることもあれば、半日以上にわたって続くこともあります。ご家族からみると「さっきまで普通だったのに、怠けているのでは」と誤解されがちですが、本人の意思とは無関係に起こる症状です。
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症と異なり、発症の初期段階では物忘れが比較的目立たないケースも少なくありません。調子の良い時間帯と悪い時間帯があることを理解し、ご本人の状態に合わせて接することが大切です。
②幻視
実際には存在しないものが、本人には現実のようにはっきりと見える幻視も、レビー小体型認知症でよくみられる症状です。幻視の具体例は、以下のとおりです。
- 部屋の隅に知らない人が座っている
- 床にたくさんの虫や小動物が這っている
- カーテンの模様が人の顔に見える
幻視の内容は具体的でリアリティがあるため、ご本人にとっては現実の出来事として体験されています。周囲が頭ごなしに否定すると、ご本人は混乱し、誰にも理解してもらえないと孤独感を深めてしまうため、接し方に注意が必要です。
まずは「何が見えるの」と尋ねて話を聞き、「怖いね」「不安だね」と気持ちに寄り添うような対応をしましょう。
③パーキンソン症状
体の動きをスムーズにする脳のシステムが、レビー小体の影響でうまく働かなくなることで、パーキンソン病によく似た運動症状が現れます。主な症状は、以下のとおりです。
- 動作緩慢:着替えや食事など、日常動作の一つひとつに通常以上の時間がかかります。
- 筋強剛(固縮) :手足の筋肉が硬く なり、関節を動かす際に抵抗を感じて動きがぎこちなくなります。
- 安静時振戦 :特に力を入れず静止している状態のときに、手足が小刻みに震えます。
- 小刻み歩行・すくみ足 :歩幅が極端に狭くなったり、最初の一歩が前に出にくくなったりします。
- 姿勢反射障害:体のバランスを保つ反射が鈍くなり、立ち上がりや方向転換の際に転倒しやすくなります。
- 嚥下障害:筋肉の硬直や反射の遅れにより、食べ物や水分をうまく飲み込めなくなる
パーキンソン症状は、日常生活のさまざまな場面でつまずきや転倒、誤嚥などの原因となるため、注意が必要です。
④レム睡眠行動異常症
レム睡眠行動異常症は、睡眠中に見ている夢の内容に反応し、大声で叫んだり、手足を激しく動かしたりする症状です。浅い眠り(レム睡眠)の間に起こるといわれています。
レム睡眠行動異常症は、レビー小体型認知症と診断される何年も前から現れることが多く、病気を疑う重要なサインの一つと考えられています。
夢の内容は、誰かに追いかけられたり、襲われたりする怖いものであることが多いようです。ご本人は、目覚めたときに夢の内容を覚えているのもレム睡眠行動異常症の特徴です。
レム睡眠行動異常症では、ベッドから落ちたり壁にぶつかったりしてご自身が怪我をするだけでなく、隣で寝ているご家族を叩いてしまうこともあります。寝室の環境を整え、ベッドの周りにクッションを置くなど、安全を確保する工夫が大切です。
⑤自律神経症状
レビー小体型認知症になると、体の機能を調整する自律神経がうまく働かなくなることで、さまざまな体の不調が現れます。一見すると認知症とは結びつきにくいため、見過ごされやすい点に注意が必要です。
主な自律神経症状は、以下のとおりです。
- 起立性低血圧:立ち上がった瞬間に血圧が下がり、めまいや立ちくらみが起きる
- 便秘:頑固な便秘になりやすい
- 排尿障害:トイレが近くなる(頻尿)、急に強い尿意を感じる(尿意切迫)、尿が漏れるなど
ほかにも、幻視以外の「幻覚・妄想」や、気分の落ち込みが続く「抑うつ」などの精神症状も認めることがあります。
認知症全般の初期症状のチェックリストや、発症が疑われる場合の対処法については、関連記事「認知症の初期症状」もあわせてご覧ください。
レビー小体型認知症はどのように診断される?
レビー小体型認知症の診断は、問診や診察、複数の検査結果を総合的に評価して行うことが基本です。ご本人やご家族から症状の詳しい経過を伺い、神経学的な診察を行ったうえで、画像検査や神経心理検査などを実施します。
ここでは、レビー小体型認知症の診断方法として「①画像検査」と「②神経心理検査」を解説します。
①画像検査
画像検査は、脳の形や機能の状態を評価し、診断の精度を高めるために不可欠な検査です。症状に応じて、以下のような検査を使い分けます。
| 検査の種類 | 検査でわかること・特徴的な所見 |
|---|---|
| MRI・CT検査 | 脳全体の萎縮度合いを確認し、脳血管障害や脳腫瘍など他の疾患を鑑別します。アルツハイマー型に比べ海馬の萎縮が目立たない傾向があります。 |
| 脳血流SPECT(スペクト)検査 | 脳の血流状態を画像化します。レビー小体型認知症では後頭葉(視覚野)の血流低下が特徴的で、初期鑑別の重要な指標となります。 |
| ダットスキャン(DAT-SPECT検査) | 線条体におけるドパミントランスポーターの脱落を評価します。臨床診断基準において感度約78%・特異度約90%と報告されています。(※7) |
| MIBG心筋シンチグラフィ | 心臓の交感神経機能を評価します。心筋への集積低下を認める場合、アルツハイマー型認知症との鑑別において感度約69%・特異度約87%と報告されています。(※7) |
画像検査は、レビー小体型認知症以外の認知症を鑑別するためにも重要とされています。
②神経心理検査
神経心理検査は、「今日の日付や今いる場所を尋ねる質問」や「図形を模写する作業」などを通して、記憶力や注意力、判断力などの 認知機能の状態を客観的な数値で評価する検査です。神経心理検査を行うことで、日常生活での困りごとが、具体的にどの脳機能の低下によって生じているのかを詳しく把握できます。
神経心理検査で行われる認知機能検査は、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)やMMSE(ミニメンタルステート検査)などが基本です。(※5)HDS-Rは、記憶・見当識・計算・言語などを評価し、認知症の進行度合いを検査する方法です。MMSEは、記憶・見当識・計算・言語・視覚構成が検査項目で、失語や失認などの高次脳機能障害まで含めて認知機能を評価できる特徴があります。認知機能検査では、一般認知機能検査に加えて、注意機能や視空間認知機能を詳しく評価する検査も組み合わせて行われます。
また、時計描画テスト(CDT:円を描いて文字盤と指定された時間を書き込む検査で、視空間認知や実行機能の低下をみる)も、レビー小体型認知症で目立ちやすい視空間認知の障害を評価するうえで診断の参考になります。
レビー小体型認知症の治療法には何がある?
レビー小体型認知症を治すための根本治療は、まだ確立されていません。しかし、現れている症状の緩和を目的とした対症療法は存在します。
レビー小体型認知症の主な治療法は、「①薬物療法」と「②非薬物療法」の2つです。
①薬物療法
薬物療法は、ご本人やご家族を悩ませる認知機能の低下や幻視、パーキンソン症状などを和らげる目的で行われます。
症状に応じて、以下のような薬が慎重に検討されます。
| 対象となる症状 | 主な薬剤の例 |
|---|---|
| 認知機能の低下、幻視 | 認知症治療薬 |
| パーキンソン症状 | パーキンソン病治療薬 ※幻視などを悪化させる可能性もあるため、ごく少量から調整される |
| レム睡眠行動異常症 | 睡眠を整える薬 |
ただし、レビー小体型認知症の治療では、薬剤過敏性への注意が必要です。
薬剤過敏性とは、特定の薬、特に幻覚や妄想を抑える一部の抗精神病薬に対して、敏感に反応してしまう体質です。通常の量でも薬が効きすぎてしまい、かえってパーキンソン症状が悪化したり、意識がもうろうとしたりする危険があります。
そのため、薬の選択や量の調整は、専門の医師がごく少量から慎重に行います。ご自身の判断で薬の量を変更したり、ほかの医療機関で安易に薬を追加してもらったりすることは、体調の悪化を招く可能性があるため避けてください。
②非薬物療法
非薬物療法は、薬物療法と並行して行われることが多く、ご本人が安全でその人らしい生活を続けることを目指した方法です。薬だけに頼るのではなく、リハビリテーションや生活環境の工夫を組み合わせることで、心身の状態を穏やかに保ちます。
具体的な取り組みは、以下のとおりです。
| 方法 | 詳細な内容 |
|---|---|
| リハビリテーション | 理学療法士など専門家の指導のもと、筋力やバランス能力を保つ運動(ストレッチ、歩行訓練など)を行い、転倒防止を目指す |
| 安全な環境づくり | 手すりの設置や段差の解消、レム睡眠行動異常症によるケガを防ぐために、ベッド周りにクッションを置くなどの工夫をする |
| ご本人への接し方の工夫 | 本人が訴える言葉に耳を傾け、「それは怖いね」と気持ちに寄り添い、安心できるような声かけを心がける |
非薬物療法では、ご本人を支えるご家族が一人で抱え込まないことも大切です。認知症施策関連ガイドラインでも、診断を受けた直後からご本人とご家族を一体的に支援していく体制の重要性を強調しています。(※6)
ご家族がレビー小体型認知症と診断されたら、まずはかかりつけ医や、地域にある認知症疾患医療センターなどの専門機関に相談しましょう。診断は終わりではなく、地域全体で支えていくための支援のスタート地点です。
レビー小体型認知症に関してよくある質問
アルツハイマー型認知症との違いは何ですか?
認知症の代表的な種類である「アルツハイマー型認知症」と「レビー小体型認知症」は、初期症状や進行の仕方に明確な違いがあります。最大の違いは以下の通りです。
- アルツハイマー型:物忘れ(記憶障害)から始まることが多い
- レビー小体型:幻視や運動障害(パーキンソン症状)から始まることが多い
具体的な違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | レビー小体型認知症 | アルツハイマー型認知症 |
|---|---|---|
| 主な初期症状 | 幻視、パーキンソン症状、睡眠時の異常行動 | 物忘れ(記憶障害)、時間や場所の見当識障害 |
| 認知機能の変化 | 日や時間帯によって調子の波が激しい(変動) | ゆるやかに、しかし持続的に低下する |
| 歩行・運動機能 | 転びやすい、歩幅が狭いなどの運動障害が出やすい | 初期は運動機能に問題がなく、歩き回れることが多い |
| 原因物質 | レビー小体(異常なαシヌクレイン) | アミロイドβ、タウタンパク質 |
ただし、これらの症状だけでご自身やご家族が判断するのは困難です。レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の症状が合併することもあるため、気になる変化があれば専門の医療機関へご相談ください。
レビー小体型認知症の人と接する際の注意点はありますか?
レビー小体型認知症の方と接するうえで大切なのは、ご本人が体験している世界を理解しようと努め、安心感を与えることです。日によって状態が大きく変動することを念頭に置き、幻視や思い込みを頭ごなしに否定しないよう心がけてください。
治療方針などを決める重要な場面では、ご本人の意思を尊重し、選択を支援する(意思決定支援)ことも大切です。認知症であっても、ご本人が納得して選択できるよう、急かさずに話を聞き、選択肢をわかりやすく伝えるなどの支援を行いましょう。
また、パーキンソン症状による転倒や、レム睡眠行動異常症による就寝中のケガを防ぐため、安全な環境を整えることも欠かせません。室内の段差をなくして手すりを設置したり、ベッド周りにクッションを置いたりするなどの工夫をしましょう。
ご本人の状態に合わせて、柔軟に対応していくことが、穏やかな生活を支える鍵となります。
まとめ
レビー小体型認知症は、物忘れだけでなく幻視やパーキンソン症状など多彩な症状が波のように現れるのが特徴です。
根本的な治療法はまだ確立されていませんが、薬物療法やリハビリテーションを組み合わせることで症状を和らげることが期待できます。ただし、薬に対して過敏に反応する場合があるため、専門の医師による慎重な処方が欠かせません。
ご本人やご家族に気になる変化が見られたら、一人で抱え込まず、かかりつけ医や認知症疾患医療センターなどの専門機関にご相談ください。早期からの支援が、ご本人とご家族の穏やかな暮らしを支える第一歩になります。
同じレビー小体が原因となり、動作がゆっくりになる・手足が震えるなどの運動症状が現れる病気に関連する記事はこちら⇒パーキンソン病とは?




