最終医学的確認日:2026年7月
近年の麻疹の再流行に伴い、お子さんのワクチン接種を控えている方や、ご自身の抗体に不安を感じていませんか。麻疹は特効薬がなく、先進国であっても重い合併症を引き起こすリスクがあり、極めて注意が必要な感染症です。
この記事では、麻疹を予防するMRワクチンに関して、期待される効果と安全性を解説します。定期接種の対象年齢やスケジュール、費用に加え、接種歴が不明な大人が任意で受ける際の判断基準も説明します。
読み終える頃には、MRワクチンに関する疑問が解消され、ご自身やご家族にとって接種が必要かを判断できるようになるはずです。正しい知識をもとに、感染症から身を守るための具体的な一歩を踏み出しましょう。
この記事でわかること
MRワクチンの効果・対象者・接種スケジュール・費用まとめ
MRワクチンは麻疹と風疹を1回の接種で同時に予防する混合ワクチンで、1歳と小学校入学前の計2回が公費の定期接種、接種歴が不明な大人は抗体検査で免疫を確かめたうえで自費の任意接種を検討します。
MRワクチンとは 麻疹と風疹を1回で同時に予防する混合ワクチン。麻疹は空気感染で免疫がない人の約90%が発症し、風疹は妊娠初期の感染で先天性風疹症候群を引き起こす可能性があります。
期待される効果と安全性 1回の接種で約95%の人が免疫を獲得します。副反応は接種部位の赤み・腫れ・痛みや発熱が中心で、ごくまれにアナフィラキシーなどの重い症状が起こることがあります。
定期接種のスケジュール 第1期は1歳の1年間、第2期は小学校入学前の1年間(5歳以上7歳未満)の計2回。公費負担で無料で受けられます。
任意接種が推奨される人 接種歴が不明または1回のみの方、妊娠を希望する女性とそのパートナー、医療・介護・教育・保育の従事者、海外渡航を予定している方。
接種までの流れと費用 接種歴の確認→抗体検査→ワクチン接種の3ステップ。任意接種と抗体検査は自費(保険適用外)で、自治体が費用を助成している場合があります。
MRワクチンとは?
MRワクチンは、麻疹と風疹という2つの感染症を、1回の接種で同時に予防できる混合ワクチンです。近年の再流行により、医療機関でも大人の任意接種や抗体検査に関する問い合わせが急増しています。
麻疹は空気感染する強い感染力を持ち、免疫がない人が感染すると約90%発症するといわれています。(※2)高熱や発疹だけでなく、肺炎や脳炎などの合併症を引き起こすこともあり、先進国であっても重い合併症を引き起こすリスクがあり、極めて注意が必要な感染症です。(※1)
風疹は、大人がかかると症状が重くなりやすい病気です。特に妊娠初期の女性が感染すると、胎児に心臓の病気、難聴、白内障などの障害が起こる「先天性風疹症候群」を発症する可能性があります。(※3)
ここでは、麻疹や風疹の予防に向けて接種が推奨される、MRワクチンの期待される効果と安全性を解説します。
期待される効果
MRワクチンを1回接種すると約95%の人が麻疹・風疹の免疫を獲得し、発症や重症化を防ぎます。万が一ウイルスに感染した場合でも、症状が出ない、あるいは軽い症状で済むため、重い合併症のリスクを大幅に減らすことができます。
MRワクチンを接種することは、ご自身の感染・重症化予防への配慮となるだけでなく、社会全体での感染拡大を抑え、ワクチンを接種できない周囲の方々を守るサポートにもつながると考えられています。
安全性
MRワクチンは、世界中で長年広く使われていますが、ほかの医薬品と同様、接種後に副反応が起こる可能性はゼロではありません。発熱や全身の発疹、接種部位の紅斑・腫脹などがみられることがあります。ただし、ほとんどの副反応は数日で自然に回復します。
一方、ごくまれに(0.1%未満)、アナフィラキシーや脳炎・脳症、血小板減少性紫斑病などの重い副反応が報告されています。(※4)接種後に高熱が続いたり、痙攣を起こしたり、普段と違う症状が出たりした場合は、接種した医療機関へすみやかにご相談ください。
MRワクチンが同時に予防する2つの感染症の違いに関連する記事はこちら⇒【医師監修】麻疹と風疹の違いとは?主な症状の特徴やワクチン接種の重要性を解説
MRワクチンの対象者とスケジュール
MRワクチンの接種には、国が定めた期間内に無料で受けられる「定期接種」と、それ以外の人が自費で受ける「任意接種」の2種類があります。お子さんはもちろん、過去の接種歴がはっきりしない大人の方や、妊娠を希望する女性なども接種可能な対象です。
ここでは、定期接種と任意接種に分けて、MRワクチンの対象者とスケジュールを解説します。
定期接種|対象年齢と標準スケジュール
MRワクチンの定期接種は、法律で定められた期間内に無料で受けられる予防接種で、合計2回の接種が基本です。対象年齢で確実に接種を受けることが、麻疹・風疹からお子さんを守るための第一歩となります。
標準的な接種スケジュールは以下のとおりです。
- 第1期:1歳の1年間(1歳の誕生日の前日から2歳の誕生日の前日まで)
- 第2期:小学校入学前の1年間(5歳以上7歳未満)
1回の接種だけでは免疫が十分につかないことがあるため、2回接種することが重要です。定期接種により、約95%以上の人が麻疹・風疹に対する十分な免疫を獲得できると考えられています。
任意接種|接種が推奨される人
定期接種の対象ではない方でも、感染リスクや周りへの影響を考慮し、任意(自費)でのワクチン接種が強く推奨される場合があります。
特に、以下に当てはまる方は接種をご検討ください。
- 定期接種(2回)の機会を逃してしまった方
- 母子手帳などがなく接種歴が不明な方、または1回しか受けていない方
- 妊娠を希望する女性と、そのパートナーや同居のご家族
- 医療、介護、教育、保育の現場で働く方
- 海外への渡航・滞在を予定している方
人の移動や密集は、感染症が拡大する大きな要因です。実際に、海外では人道危機下にある地域でワクチン接種が進まず、麻疹の症例が増加したという報告もあります。(※5)
ご自身が感染源にならないため、免疫を持たない赤ちゃんや妊婦さんを守るためにも、任意接種は重要な選択肢となります。
妊娠中の麻疹感染のリスクと、妊娠前にできる備えに関連する記事はこちら⇒【医師監修】妊婦が麻疹(はしか)にかかるとどうなる?対応策と予防法を解説
MRワクチン接種の流れ
MRワクチンの接種は、主に以下の3つのステップで進みます。
- 接種歴の確認
- 抗体検査
- ワクチン接種
ご自身の状況に応じて、どのステップから始めるべきかを確認し、麻疹・風疹からご自身と大切な人を守るための準備を進めましょう。
接種歴の確認
ご自身の免疫状態を知るための第一歩は、過去の接種歴を確認することです。まずは母子健康手帳や予防接種済証で、MRワクチン(または麻疹・風疹単独ワクチン)を過去に2回接種しているかをご確認ください。
もしお手元に記録が見当たらない場合は、以下の方法で確認できる可能性があります。
| 確認方法 | 理由 |
|---|---|
| ご家族への確認 | ご両親などが記録を保管しているかもしれないため |
| 接種した医療機関への問い合わせ | カルテの保存期間内であれば、記録が残っている場合がある |
| お住まいの自治体への相談 | 定期接種の記録が自治体で管理されていることがある |
接種歴がわからない場合でも、次のステップでご自身の免疫状態を確認できるのでご安心ください。
抗体検査
抗体検査は、採血によって体内に麻疹・風疹への免疫(抗体)が備わっているかを確認する方法です。過去の接種歴や感染歴がはっきりしない方にとって、ご自身の免疫状態を正確に知るための手段となります。
特に、ワクチン接種の記録が見つからなかったり、1回しか接種していないことが確実だったりする方は、抗体検査が推奨されます。妊娠を希望する女性やそのパートナーも、麻疹・風疹の抗体を持っているか検査したほうが良いでしょう。
検査の結果、免疫が不十分と判断された場合は、次項で説明するMRワクチンの接種を検討してください。
ワクチン接種
MRワクチン接種は、医師が患者さんの当日の体調をしっかりと確認したうえで行います。安全に接種を受けていただくため、当日の流れと注意点をあらかじめご確認ください。
接種当日の一般的な流れは、以下のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 受付・問診票記入 | ・体温測定や本人確認を行う ・現在の体調や過去の病気について問診票に記入する |
| 2. 医師の診察 | 問診票をもとに医師が体調を確認し、接種できるかを判断する |
| 3. ワクチン接種 | 上腕などに皮下注射する |
| 4. 経過観察 | アナフィラキシーなどの急な副反応に備え、15〜30分ほど院内で待機する |
接種を終えた当日は、激しい運動を控え、お風呂で接種した部位を強くこすらないようにしましょう。ご自身の体調をよく観察し、何か気になる症状があれば、接種した医療機関にご相談ください。
MRワクチンに関するよくある質問
ここでは、MRワクチンに関して、よくある以下の3つの質問に回答します。
接種を受けられない方は?
MRワクチンは、毒性を弱めたウイルスを体内に入れる「生ワクチン」です。そのため、体の免疫機能に影響を与える可能性のある、以下のような方は接種を受けられません。
- 明らかな発熱(通常は37.5℃以上)がある
- 重い急性の病気にかかっている
- ワクチンの成分によって、アナフィラキシーを起こしたことがある
- あきらかに免疫機能に異常のある疾患がある、または免疫抑制をきたす治療を受けている
- 妊娠している、または妊娠の可能性がある(胎児への影響を避けるため)
- その他、医師が総合的に判断し、接種が不適当とされた場合
ご自身が当てはまるかどうかわからない場合は、自己判断せず、接種前の問診で医師に相談してください。
接種に注意が必要な方は?
接種が禁止されているわけではありませんが、接種の可否をより慎重に判断する必要がある方もいます。
心臓・腎臓・肝臓や血液の病気で治療を受けていたり、痙攣を起こしたことがあったりする人は、かかりつけ医や接種担当医に相談してください。過去の予防接種で、2日以内に発熱・全身性の発疹などの症状が出た方も注意が必要です。病気やその治療で免疫機能が低下している、またはその疑いがある人も、事前に医師と相談しましょう。
特に、免疫機能が低下している方は、ウイルスへの抵抗力が弱いため、麻疹に感染すると重い合併症を発症するリスクが高くなります。(※6)接種のメリットとリスクを医師と十分に話し合うことが重要です。
ワクチン接種と抗体検査の費用は?
MRワクチンや抗体検査にかかる費用は、定期接種か任意接種かによって決まります。それぞれの対象者や費用を、以下の表にまとめました。
| 種類 | 対象 | 費用 |
|---|---|---|
| 定期接種 | 第1期・第2期の対象年齢のお子さん | 公費負担(無料) |
| 任意接種 | 定期接種の対象外の方 | 自己負担(自費) |
| 抗体検査 | ・接種歴が不明な方 ・免疫の有無を確認したい方 | 自己負担(自費) |
費用の目安としては、任意接種が8,000〜11,000円程度、抗体検査が3,000〜7,000円程度です。ただし、任意接種や抗体検査の費用は、医療機関ごとに設定されているため一律ではありません。
・治療内容:麻疹風疹混合(MR)ワクチンの皮下注射、および採血による抗体価の検査
・目安となる期間/回数:任意接種は通常1〜2回(免疫獲得まで数週間)、抗体検査は1回 ・主なリスク・副作用:接種部位の赤み・腫れ・痛み、発熱など。ごくまれにアナフィラキシー等の重い副反応が起こる可能性があります。抗体検査では採血部位の内出血や一時的な痛みが生じることがあります。
自治体によっては、妊娠を希望する女性やそのパートナーなどを対象に、費用の一部を助成する制度を設けていることがあります。接種や検査をお考えの際は、お住まいの市区町村のホームページや保健所、かかりつけの医療機関へ事前に確認してみてください。
まとめ
MRワクチンは、感染力の強い麻疹と風疹からご自身と大切な人を守るための重要な混合ワクチンです。お子さんは定期接種として2回、大人の方は接種歴に応じて任意で接種することで、発症や重症化を防ぐ効果が期待できます。
ワクチン接種は自分を守るだけでなく、免疫を持たない赤ちゃんや妊婦さんなどの周りの人々への感染を防ぐ社会的な役割も担います。接種歴が不明な場合は、抗体検査で免疫の有無を確認することも一つの方法です。
ご自身の接種歴が不明な場合は、まず母子手帳で過去の記録を確認し、記載がない場合は医療機関で抗体検査またはワクチン接種について医師と相談してください。
麻疹の感染経路とワクチン以外の予防対策に関連する記事はこちら⇒【医師監修】麻疹の潜伏期間はどれくらい?主な感染経路と予防のための対策を解説