最終医学的確認日:2026年10月
歯ぎしりとストレスには関連が報告されていますが、ストレスが歯ぎしりを直接引き起こすとまでは証明されていません。(※1・※3)ストレスは、睡眠中の眠りを浅くしたり、日中のあごの力みを招いたりすることで、歯ぎしりや食いしばりが起きやすい状態をつくると考えられています。(※2)この記事では、忙しい時期に朝のあごの疲れが気になる大人の方に向けて、歯科の立場から、ストレスとの関係と見分け方、あごと歯を守る方法、相談の目安を解説します。
この記事でわかること
- ストレスと歯ぎしりの関係について、研究でわかっている範囲
- ストレスが睡眠中の歯ぎしりと日中の食いしばりに関わる仕組み
- ストレスが関係しているかを見分ける手がかり
- 心の不調や薬と歯ぎしりの関係
- 緊張が続く時期にあごと歯を守る方法と、歯科で相談できること
ストレスで歯ぎしりは起こる?研究でわかっている範囲
歯ぎしりとストレスには関連が報告されていますが、ストレスが歯ぎしりを直接引き起こすとまでは証明されていません。(※1・※3)
歯ぎしりや食いしばりについての国際的な専門家の合意では、健康な人の歯ぎしりは「病気」ではなく、あごの筋肉の「行動(活動)」として捉えられています。(※1)歯ぎしりがあることを、心の弱さや体の異常のサインと結びつける必要はありません。
研究でわかっている範囲を整理すると、次のようになります。
| 区分 | ストレスとの関係 |
|---|---|
| わかっていること | 睡眠中の歯ぎしりの8割以上は、眠りが一時的に浅くなる短い目覚めに伴って起きている(※3) ストレスや不安傾向との関連が報告されている(※1・※3) |
| 考えられていること | ストレスや疲労で眠りが浅くなると、睡眠中の歯ぎしりが起きやすくなる(※2) 強いストレスを受けているときは、噛む筋肉の活動が増え、強く噛みしめやすくなる(※2) |
| わかっていないこと | ストレスが歯ぎしりを直接引き起こすのかどうか。関連を示す調査の多くは本人の申告にもとづいており、ストレスを感じている人ほど歯ぎしりを自覚しやすい可能性も指摘されている(※1) |
つまり、ストレスと歯ぎしりに「関係がありそう」なことまでは確かめられていますが、「ストレスがあれば歯ぎしりが起きる」「ストレスがなくなれば止まる」とまでは言えないのが現状です。
歯ぎしりには、飲酒や喫煙、カフェイン、服用している薬、睡眠中の呼吸の問題など、ストレス以外の要因も重なります。(※3)ストレス以外の要因については、関連記事「歯ぎしりの原因とは?睡眠中と日中で違う要因を解説」もあわせてご覧ください。
ストレスが歯ぎしり・食いしばりに関わる仕組み
ストレスは歯ぎしりの「スイッチ」というより、歯ぎしりや食いしばりが起きやすい状態をつくる「下地」のようなものと考えられています。関わり方は、睡眠中と日中で異なります。
| 場面 | 起こり方 | ストレスとの関わり |
|---|---|---|
| 睡眠中の歯ぎしり | 眠りが一時的に浅くなる短い目覚めに伴って、あごの筋肉が動く(※3) | 疲労やストレスで眠りが浅くなり、歯ぎしりが起きやすい状態をつくると考えられている(※2) |
| 日中の食いしばり | 起きている間に、上下の歯を接触させたり、噛みしめたりする(※2) | ストレスが強い状況では噛む筋肉の活動が増し、強く噛みしめやすい(※2) |
睡眠中は、眠りの深さが一晩のうちに何度も変わります。眠りが一時的に浅くなる短い目覚めは本人が気づかないうちに起きており、このとき脳や自律神経の働きが一時的に高まります。睡眠中の歯ぎしりの多くは、この短い目覚めに伴って起きると報告されています。(※3)そのため、睡眠中の歯ぎしりは、そのときの気分で起こるものではなく、自分の意思で止めることもできません。
一方、日中の食いしばりは、起きている間の癖として現れます。弱い力でも上下の歯が触れた状態が長く続くと、あごや筋肉に負担がかかり続けることが示されています。(※2)日中の食いしばりは、気づけばその場で歯を離すことができる点が、睡眠中の歯ぎしりとの大きな違いです。ストレスへの対処を考えるときも、睡眠中と日中を分けて考えると、自分にできることが見えやすくなります。
ストレスが関係しているかを見分ける手がかり
歯ぎしりのサインは、ストレスが関わっていてもいなくても同じように現れます。ストレスとの関係を考える手がかりになるのは、症状の有無よりも「いつ症状が強くなるか」です。次の3つの点を、ここ数か月の自分に当てはめて振り返ってみてください。
| 観察する点 | ストレスとの関係を考えるサイン |
|---|---|
| 朝の症状 | 朝のあごのだるさやこめかみの重さが、繁忙期や締め切り前など緊張が続く時期に強くなり、落ち着くと軽くなる |
| 日中の様子 | 会議や気をつかう電話のあと、上下の歯が触れていたり、あごに力が入ったままになっていたりする |
| 家族の指摘 | 家族に指摘される歯ぎしりが、忙しい時期に増える |
これらに当てはまる場合は、ストレスが歯ぎしりや食いしばりの下地になっている可能性があります。家族やパートナーによる歯ぎしりの指摘は、睡眠中の歯ぎしりを判断するうえで信頼できる手がかりになることが報告されています。(※3)
振り返るときは、数日の様子ではなく、忙しい時期と落ち着いた時期を比べることがポイントです。スマートフォンのメモなどに朝のあごの疲れを簡単に記録しておくと、波があるかどうかを確かめやすくなります。
反対に、こうした波がなく、症状がいつも同じように続いている場合は、ストレス以外の要因が大きいこともあります。ほかにどのような要因があるかは、関連記事「歯ぎしりの原因とは?睡眠中と日中で違う要因を解説」で紹介しています。どちらの場合も、歯のすり減りやあごの痛みがあれば歯科で相談してください。
心の不調・薬と歯ぎしりの関係(歯科から伝えたいこと)
歯ぎしりと心の状態や薬との関連は報告されていますが、どちらが原因なのかはわかっていません。歯科では、原因が何であっても、歯とあごを守る対応ができます。
歯ぎしりには、ストレスや不安傾向との関連が報告されています。(※1・※3)ただし、心の状態が先なのか、歯ぎしりが先なのかはわかっていません。関連を示す調査の多くは本人の申告にもとづいており、つらさを感じているときほど歯ぎしりを自覚しやすい可能性も指摘されています。(※1)
また、神経に作用する薬の一部では、歯ぎしりとの関連が報告されています。(※3)薬を飲み始めてから、または量が変わってから、朝のあごの疲れや家族からの歯ぎしりの指摘が気になるようになった場合は、自己判断で薬をやめたり減らしたりせず、処方した医師に伝えてください。症状に気づいた時期と、薬を始めた時期や量が変わった時期をあわせて伝えると、医師が判断する助けになります。
心の不調の治療中であっても、歯科での相談をためらう必要はありません。歯科では、歯のすり減りや、あごの筋肉・関節の状態を確認し、マウスピースで歯にかかる力を分散させるなど、歯を守る方法を相談できます。(※2)受診の際に、治療中であることや服用中の薬を伝えていただくと、状態を判断しやすくなります。
緊張が続く時期に、あごと歯を守るためにできること
ストレスへの対処は、歯ぎしりを止めることを約束するものではありませんが、あごや歯にかかる負担を減らす助けになります。歯科の立場から、日中・夜・歯を守る方法の3つに分けて紹介します。
日中:気づいたら上下の歯を離す
何もしていないときの上下の歯は、本来わずかに離れています。弱い力でも上下の歯が触れ続けると、あごや筋肉に負担がかかり続けるため、まずはその癖に気づくことが大切です。(※2)気づいたら、その場で歯を離し、肩やあごの力を抜いてみてください。会議や電話など緊張する場面のあとに意識するだけでも、あごを休ませる時間が増えます。
夜:寝る前の飲酒を見直す
お酒を飲み過ぎると眠りが浅くなり、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりが助長されると考えられています。(※2)忙しい時期ほど寝酒に頼りがちですが、量やタイミングを見直してみてください。睡眠の質を高める工夫は、関連記事「歯ぎしりの対策|マウスピースからセルフケアまで治し方を解説」で詳しく解説しています。
歯を守る:歯科でマウスピースを相談する
睡眠中の歯ぎしりは意識して止められないため、歯を守る方法として、マウスピースで歯やあごにかかる力を分散させる方法があります。(※2)マウスピースは力を分散させることを目的としたもので、歯ぎしりそのものを止めることを約束するものではありません。歯のすり減りやあごの疲れが続く場合は、歯科で相談してください。マウスピースの種類やそのほかの対策については、関連記事「歯ぎしりの対策|マウスピースからセルフケアまで治し方を解説」をご覧ください。
歯科で相談できることと、ほかの相談先
歯ぎしりや食いしばりで歯やあごに症状があるときは、歯科が相談先です。原因がストレスであっても、歯科では歯のすり減りや、あごの筋肉・関節の状態を確認し、歯を守る方法を相談できます。
歯科での評価では、家族やパートナーからの歯ぎしりの指摘、起床時のあごの疲れや痛み、歯のすり減り、舌や頬の内側の跡などが手がかりになります。(※3)診察の際は、忙しい時期に症状が強くなるか、家族に歯ぎしりを指摘されたことがあるかを伝えると、状態を判断しやすくなります。
症状によっては、歯科以外の相談先もあわせて検討してください。
| こんなとき | 相談先 |
|---|---|
| 歯のすり減り、しみる、詰め物が取れやすい、朝あごがだるい、口を大きく開けにくい | 歯科 |
| 大きないびきや日中の強い眠気がある | 医科(睡眠中の呼吸の確認) |
| 薬を飲み始めてから、または量が変わってから気になる | 処方した医師(自己判断でやめない) |
| 気分の落ち込みや眠れない状態が続く | かかりつけ医 |
大きないびきや日中の強い眠気は、睡眠中の呼吸の問題が関わっていることもあります。(※1・※3)どの場合も、歯やあごに症状があれば、歯科で歯を守る相談ができます。
歯ぎしりとストレスに関するよくある質問
食いしばりはメンタルが原因ですか?
緊張や不安が関わることはありますが、メンタルだけが原因とは言い切れません。(※1・※3)日中の食いしばりは、緊張しているときだけでなく、パソコン作業などに集中しているときに上下の歯を接触させる癖としても起こります。心の強さや性格の問題ではないため、自分を責める必要はありません。
ストレスがなくなれば歯ぎしりは止まりますか?
止まるとは限りません。ストレスが歯ぎしりを直接引き起こすとまでは証明されておらず、飲酒や睡眠中の呼吸の問題など、ほかの要因も重なっているためです。(※1・※3)歯やあごに症状がある場合は、ストレスへの対処と並行して歯科で相談してください。
うつ病と歯ぎしりは関係がありますか?
うつ病そのものとの関係について、この記事で確かなことはお伝えできませんが、歯ぎしりには不安やストレスとの関連が報告されています。(※1・※3)また、神経に作用する薬の一部で、歯ぎしりとの関連が報告されています。(※3)治療中の薬が気になる場合は、自己判断でやめずに処方した医師に伝えてください。歯やあごに症状があれば、治療中であっても歯科で歯を守る相談ができます。
家族に歯ぎしりを指摘されて申し訳ない気持ちです。どう受け止めればよいですか?
睡眠中の歯ぎしりは、自分の意思で止められるものではないため、申し訳なく思う必要はありません。家族やパートナーの指摘は、歯科で睡眠中の歯ぎしりを判断するときの大切な手がかりになります。(※3)いつ頃から気になったか、忙しい時期に多いかを聞いておくと、相談のときに役立ちます。
まとめ
歯ぎしりとストレスには関連が報告されていますが、ストレスだけが原因とは言い切れません。ストレスは、睡眠中の眠りを浅くしたり、日中のあごの力みを招いたりする「下地」として関わると考えられています。
忙しい時期に朝のあごの疲れが強くなるなど思い当たることがあれば、まずは日中に上下の歯を離すことから始めてみてください。歯のすり減りやあごの痛みがある場合は、心の不調や服薬の有無にかかわらず、歯科で相談しましょう。心の不調や服用中の薬との関連も報告されていますが、薬が気になるときは自己判断でやめず、処方した医師に伝えてください。
歯ぎしり・食いしばりが歯茎にかける負担に関連する記事はこちら⇒【歯科医師監修】歯茎が痛いのはストレス?5つの原因と今すぐできる対策を歯科医が解説




