「子どもの夏風邪」というイメージが強い手足口病ですが、子どもだけでなく大人も感染する可能性があります。大人でも高熱や激しいのどの痛みなど、症状が強く現れる場合があるため注意が必要です。
この記事では、大人の手足口病の症状の特徴や、自宅でできる具体的なセルフケア方法を解説します。受診の目安や、職場復帰のタイミングも紹介するので、ご自身の状況と照らし合わせながら参考にしてください。
この記事でわかること
- 大人の手足口病で出やすい症状(発疹・のどの痛み・発熱)と、回復後に起こることがある爪の変化
- 飛沫・接触・糞口の3つの感染経路と、回復後も続けたい感染対策
- 食事・水分補給、市販薬、発疹のケア、休養の4つの自宅でのケア
- すぐに受診すべき危険なサインと、受診先の目安
- 職場復帰のタイミングと、家庭内での消毒・感染対策
大人でも手足口病になる?
手足口病は、大人も感染する可能性がある病気です。お子さんの看病をきっかけに、家庭内で感染が広がるケースは少なくありません。
大人が感染した場合も、発疹や痛みなどの症状が強く現れることがあります。ここでは、大人の手足口病に関して、以下の内容を解説します。
- 症状の特徴
- 主な感染経路
- 感染後の注意点
症状の特徴
大人の手足口病では、痛みや発熱などの症状が強く現れる場合があります。ただし、症状の程度には個人差があり、原因となるウイルスの種類によっても異なります。主な症状を以下の表にまとめました。
| 症状 | 詳細な内容 |
|---|---|
| 発疹・水ぶくれ | ・手のひら、足の裏に赤い発疹や水ぶくれ(水疱)が現れる ・大人ではお尻やひじ、ひざなど、手足口以外の広範囲に発疹が出ることがある |
| 突き刺すような、のどの痛み | 口の中に多数の口内炎や水疱ができ、飲食や会話が困難になるほどの激しい痛みを伴うことがある |
| 高熱 | 38℃以上の高熱が出ることがあるが、すべての人に発熱が見られるわけではない(※3) |
| インフルエンザに似た症状 | 強い倦怠感や頭痛、関節痛など、インフルエンザのような全身症状を伴うこともある |
| 爪甲脱落症 | コクサッキーウイルスA6型に感染した場合は、回復後に手足の爪が剥がれてくることがある(※1) |
手足口病の症状がおさまってから1〜2か月ほど経過した頃に爪甲脱落症が起こることがありますが、自然と新しい爪が生えてくることが一般的ですので、過度の心配は不要です。
口の中に水ぶくれができる病気には、ヘルパンギーナもあります。見分け方については、関連記事「ヘルパンギーナと手足口病の違いは?」もあわせてご覧ください。
主な感染経路
手足口病の主な感染ルートは、「飛沫感染」「接触感染」「糞口感染」の3つです。
飛沫感染は、感染した人の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことで感染する経路です。ウイルスを含んだ飛沫(しぶき)は、1〜2m程度飛ぶと考えられています。(※2)
ウイルスが付着したドアノブやおもちゃなどに触れた手で、目や鼻、口を無意識に触ることで感染するのが接触感染です。発疹の水ぶくれの中にもウイルスが含まれているため、水ぶくれを掻き壊さないようにしましょう。
症状が回復したあとも、便の中にはウイルスが排出され続けます。トイレ後やおむつ交換後の手洗いが不十分だと、手に付着したウイルスが口から体内に入り感染します。この感染経路が糞口感染です。
感染後の注意点
症状が治まっても、しばらくは体外にウイルスを排出し続けるため、周囲への感染拡大を防ぐ対策が重要です。
感染対策の基本は、石けんと流水によるこまめな手洗いです。特にトイレの後や食事の前は、石けんで丁寧に手を洗い、ウイルスを物理的に洗い流しましょう。また、家庭内での感染リスクを減らすため、タオルや食器の共用を避けることも大切です。
なお、原因となるウイルスには複数の種類が存在するため、回復後も油断せず、日頃から基本的な感染対策を継続しましょう。(※3)
手足口病の原因ウイルスや症状の経過、治療について詳しく知りたい方は、関連記事「手足口病とは?」もあわせてご覧ください。
手足口病になったときの自宅でのケア
手足口病のウイルスに直接作用する特効薬はないため、「対症療法」が治療の基本です。食事の工夫や薬の利用、十分な休養を通して、ご自身の免疫力による回復をサポートします。
手足口病になったときの自宅でのケア方法は、以下の4つです。
①食事の工夫と水分補給
②市販薬の服用
③皮膚・発疹ケア
④休養
①食事の工夫と水分補給
手足口病に伴う口内の激しい痛みからくる脱水を防ぐため、食事と水分補給の工夫が重要です。
大人の手足口病では、口の中にできた多数の水疱や口内炎の痛みが強く、飲食が困難になるケースが少なくありません。脱水は体力を消耗させ、回復を遅らせる原因となるため、意識して水分を摂りましょう。
食事と水分補給のポイントは、以下の表を参考にしてください。
| 食事・水分補給 | 工夫するポイント |
|---|---|
| 食事のポイント | ・おすすめの食事:のどごしが良く、あまり噛まずに済む食べ物(ゼリー、プリン、ヨーグルト、冷製スープ、おかゆなど) ・避けるべき食事:熱いもの、香辛料が効いた辛いもの、柑橘類やお酢などの酸味が強いもの、硬いせんべいなど |
| 水分補給 | ・水やお茶、スポーツドリンク、経口補水液などを、一度にたくさんではなく、少量ずつこまめに飲むのがおすすめ ・ストローを使うと、口内の痛い部分を避けて飲めることがある |
水分が思うように摂れず、尿の量が明らかに減ったり、ぐったりしたりするような場合は脱水のサインかもしれません。すみやかに医療機関を受診してください。
②市販薬の服用
高熱や頭痛、のどの耐えがたい痛みには、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどを主成分とする市販の解熱鎮痛薬を使用できます。ただし、手足口病はウイルス感染症のため、細菌を殺すための抗生物質(抗菌薬)は効果がありません。市販薬による治療は、あくまで対症療法と理解しておきましょう。
口の中の痛みが強い場合は、口内炎の薬が使用できることもあります。
持病がある方、妊娠中の方、ほかに服用中の薬がある方は、自己判断で市販薬を使わず、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。どの薬が自分に合うかわからない場合も、薬局で相談することをおすすめします。
③皮膚・発疹ケア
手足にできた発疹や水疱は、二次感染を防ぐためにも清潔を保ち、できるだけ刺激を与えないことが基本です。
発疹は強い痛みを伴うことが多く、気になってしまいがちです。しかし、無理に潰すと細菌が入り込んで化膿したり、跡が残ったりする原因になります。
手足口病の発疹は、以下のような方法でケアしましょう。
- 清潔に保つ:石けんを十分に泡立て、なでるように優しく洗ったあと、流水でしっかりすすぎ、タオルでポンポンと軽く押さえるように水分を吸い取る
- 刺激を避ける:痛みやかゆみがあっても、掻いたり頻繁に触ったりしないよう意識する
- 冷やす:痛みが強い場合は、清潔なタオルで包んだ保冷剤などで短時間冷やす
発疹の痛みが強い、赤く腫れて熱を持っている、膿が出てきたなどのサインが見られたら、細菌感染を起こしている可能性があるため、皮膚科などを受診しましょう。
④休養
手足口病のウイルスに対する免疫システムをサポートするために、十分な睡眠と休息を取ることも大切です。
発熱や全身の倦怠感、激しいのどの痛みなど、手足口病の症状は体力を消耗させます。症状が軽いと感じても、体内ではウイルスへの対処が続いているので、無理は禁物です。
夜はしっかりと眠り、体の回復力を高めましょう。痛みが強くて眠れないときは、解熱鎮痛薬を服用するのも一つの方法です。
熱がある間はもちろん、熱が下がってからも数日間は無理をせず、家で静かに過ごすことが回復への近道です。体力が落ちているときに無理をすると、回復が長引くだけでなく、ほかの病気にもかかりやすくなります。
焦らずしっかりと静養し、体力が十分に戻るまでは無理のないペースで過ごしましょう。
手足口病の受診目安
手足口病は基本的に自然に回復へ向かう病気ですが、大人でも症状が強く現れる場合があり、まれに重篤な合併症を引き起こすことがあります。
以下の症状が見られたら、髄膜炎や脳炎などの重い合併症、重度の脱水症状のサインである可能性があるため注意が必要です。(※4)
| 症状 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 持続する高熱 | 38℃以上の高熱が2日以上続く(※4) |
| 重度の脱水症状 | 水分をほとんど摂れず、排尿が半日以上ない、口の中が乾いてぐったりしている(※6) |
| 消化器症状 | 繰り返し吐いてしまう |
| 神経系の異常 | ・経験したことのないような強い頭痛がある ・視線が合わない、呼びかけへの反応が鈍いなど、意識がはっきりしない ・ささいな音や刺激に対して身体がビクッと大きく跳ねる(驚愕様動作)、手足が震える(※7) |
| 呼吸の異常 | 呼吸が速く、息苦しそうにしている |
意識がはっきりしない、呼吸が苦しそう、繰り返し吐くなどの症状がある場合は、ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を要請してください。それ以外の症状で受診先に迷う場合は、内科や皮膚科にご相談ください。
手足口病から回復後の職場復帰目安
手足口病には、法律で定められた出勤停止期間はありません。そのため、職場にいつ復帰するかは、ご自身の体調を見ながら判断するのが基本です。
職場復帰を考えるタイミングは、解熱剤なしで平熱を維持できており、普段通りの食事が取れたり、業務に支障がないくらい体力が戻ったりしている状態が目安です。
ただし、職場に復帰したあとも、しばらくは周囲への配慮が求められます。手足口病は症状が回復したあとも、体外にウイルスを排出し続けるという特徴があり、周囲へ感染を拡大させる可能性があるからです。
会社によっては独自の就業規則で感染症に関するルールを設けている場合もあります。復帰のタイミングは、一度上司や人事部に確認しておきましょう。
大人の手足口病に関するよくある質問
大人の手足口病に関して、よくある以下の4つの疑問について解説します。
①手足口病の潜伏期間はどのくらいですか?
②家庭内ではどのような消毒・隔離方法が良いですか?
③妊婦や乳幼児がいる場合の特別な注意点はありますか?
④一度かかったら再感染しませんか?
手足口病の潜伏期間はどのくらいですか?
手足口病のウイルスに感染後、症状が現れるまでの潜伏期間は3〜5日が目安です。(※5)
潜伏期間は、ウイルスが体内で増殖している期間です。発疹や発熱などの自覚症状はありませんが、のどや便からはすでにウイルスが排出され始めている可能性があります。
気づかないうちに周囲への感染源となる場合があるため、ご家族など身近な方が手足口病にかかった際は、ご自身の体調変化に注意を払いましょう。数日間は手洗いをいつも以上に徹底することが、感染拡大を防ぐ鍵となります。
家庭内ではどのような消毒・隔離方法が良いですか?
手足口病ウイルスは、一般的なアルコール消毒が効きにくいという特徴があります。そのため、家庭内での感染対策は物理的にウイルスを洗い流すことと、ウイルスを不活化させる消毒が基本となります。
特に、回復後も2〜4週間は便の中にウイルスが排出され続けることがあるため、トイレ後の対策が重要です。(※5)
具体的な対策を以下の表にまとめました。
| 対策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 手洗い | トイレ後、食事前、おむつ交換後には、石けんと流水で30秒以上かけて丁寧に洗う |
| 環境消毒 | ・ドアノブ、手すり、おもちゃなど、手がよく触れる場所は、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤を薄めたもの)で消毒する ・食器類は熱湯消毒するか、次亜塩素酸ナトリウムで消毒する |
| 日常生活 | ・タオル、食器、コップなどの共用は避ける ・感染者の便や嘔吐物を処理する際は、使い捨ての手袋とマスクを着用し、適切に密閉して廃棄する |
感染対策を徹底し、家庭内でウイルスが広がらないようにしましょう。
妊婦や乳幼児がいる場合の特別な注意点はありますか?
ご家庭に免疫力が未熟な乳幼児や、体調の変化に敏感な妊婦さんがいる場合は、より一層慎重な対応が求められます。
妊娠中に手足口病に感染しても、お腹の赤ちゃんへ大きな影響が及ぶことはまれです。過度に心配する必要はありませんが、念のため感染者との接触は避け、手洗いを徹底してください。出産予定日が近い時期の感染は、赤ちゃんへ感染が及ぶ可能性もあります。
お子さんへのキスや食べ物の口移し、食器の共有も感染リスクとなるため控えましょう。少しでも体調に不安を感じた場合は、かかりつけの産婦人科医にご相談ください。
乳幼児は、まれに髄膜炎や脳炎などの重い合併症を引き起こすことがあります。普段と様子が違うと感じたら、夜間や休日でもためらわずに医療機関を受診しましょう。
一度かかったら再感染しませんか?
手足口病は、原因となるウイルスに複数の種類(型)が存在するため、何度もかかる可能性があります。代表的な種類には「コクサッキーウイルスA群」や「エンテロウイルス71型」などがあります。
ヒトは一度感染すると、原因となった特定のウイルスに対する免疫の獲得が可能です。しかし、別の型のウイルスに対しては免疫が働かないため、異なる型のウイルスに感染すれば、再び手足口病を発症する可能性があります。
「去年かかったから今年は大丈夫」とは限りません。流行シーズンには、過去の感染歴にかかわらず、石けんと流水による手洗いなどの基本的な感染対策を継続することが大切です。
まとめ
子どもの病気と思われがちな手足口病ですが、大人も感染します。大人でも高熱や激しいのどの痛みなど、症状が強く現れる場合があります。
手足口病に特効薬はなく、治療は対症療法が中心になります。口内の痛みによる脱水を防ぐための水分補給や、十分な休養が回復の鍵です。原因ウイルスは複数あるため、一度かかっても再感染する可能性があります。
ほとんどは自然に回復へと向かいますが、高熱が続く、水分が摂れないなど、つらい症状があれば無理をせず医療機関を受診してください。
回復後も便からウイルスが排出され続ける感染症に関連する記事はこちら⇒感染性胃腸炎(ノロウイルス)とは?




