お子さんの口の中に発疹を見つけて、ヘルパンギーナと手足口病のどちらだろうと悩んでいませんか。どちらも患者の約9割を5歳以下の子どもが占め、症状も似ているため、見分けに迷いやすい病気です。(※1)(※2)
この記事では、2つの病気の違いと家庭での見分け方、対処法、受診や登園の目安をまとめて解説します。
この記事でわかること
- ヘルパンギーナと手足口病の違い(発疹が出る場所・熱の高さ・原因ウイルス)
- 家庭で口の中を見て見分けるときのポイントと注意点
- 口が痛くて食べられないときの水分補給・食事の工夫と、解熱鎮痛剤の使い方
- すぐに受診すべき危険なサイン
- 登園・登校の目安と、回復後も手洗いを続けたほうがよい理由
ヘルパンギーナと手足口病の違いは?症状・原因ウイルス・感染経路を比較
ヘルパンギーナと手足口病のいちばんの違いは、発疹が出る場所と熱の高さです。どちらも夏に流行しやすい子どものウイルス感染症で、原因となるウイルスの型には違いがある一方、感染経路や流行時期には共通点もあります。
お子さんの状態を正しく理解するために、以下の4つの特徴を比較しながら見ていきましょう。
①発疹の場所と熱の高さを比べる
②原因となるウイルスの型を比較する
③3つの感染経路と便からの排出期間を知る
④流行する時期とかかりやすい年齢を確認する
①発疹の場所と熱の高さを比べる
発疹が出る場所と熱の高さが、ヘルパンギーナと手足口病を見分けるためのヒントになります。
ヘルパンギーナに伴う発疹は、手足に現れず、軟口蓋から口蓋弓、いわゆる「喉の奥」に限定されます。(※1)(※7)一方、手足口病は、口の中だけでなく、手のひらや足の裏、足の甲などにも水疱性の発疹を伴うことが特徴です。(※3)
熱については、ヘルパンギーナは突然38℃以上の高熱が出やすく、手足口病は発熱しないか、発熱しても比較的軽いケースが多いのが典型的です。(※3)(※7)
それぞれの典型的な症状の違いを以下にまとめました。
| 症状 | ヘルパンギーナ | 手足口病 |
|---|---|---|
| 発疹の場所 | ・喉の奥に限定(上あごの奥や、のどちんこの周り) ・手足には出ない | ・手、足、口が中心(手のひら、足の裏、舌、唇の裏など) ・おしりや膝に広がることもある |
| 口の中 | 喉の奥(口蓋弓)に、赤い点々や小さな水ぶくれが集中してできる | 舌や頬の内側など、口の中でも比較的見やすい前方の広い範囲にできる |
| 発熱 | 突然の高熱(38〜40℃)が出ることが多い | 発熱しない、または比較的軽いことが多い |
②原因となるウイルスの型を比較する
どちらの病気も「エンテロウイルス」というウイルスの仲間によって引き起こされますが、原因となりやすいウイルスの種類(型)に違いがあります。
手足口病は、コクサッキーウイルスA6(CVA6)、A16、エンテロウイルス71(EV-A71)などが主な原因です。特に近年は、コクサッキーウイルスA6が世界的な流行を引き起こすことが増えています。(※4)
一方、ヘルパンギーナも同じくコクサッキーウイルスA群が中心で、主に2・3・4・5・6・10型などが原因となります。A6型のように、どちらの病気の原因にもなる型もあります。(※7)
エンテロウイルスは多くの型が存在し、急速に進化しながら流行する型が変化していくことが特徴です。(※5)そのため、一度かかって免疫ができても、次は別の型のウイルスに感染して、再び同じ病気を発症してしまう可能性があります。
③3つの感染経路と便からの排出期間を知る
ヘルパンギーナと手足口病は、どちらも以下の3つの経路で感染が広がります。
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込む
- 接触感染:ウイルスが付いたおもちゃやドアノブなどを触った手で口や鼻に触れる
- 糞口感染:便の中に排出されたウイルスが、何らかの形で口から入る
特に注意したいのが「糞口感染」です。症状が良くなったあとでも、便の中には2〜4週間にわたってウイルスが排出され続けることがあります。(※6)(※7)家庭内や保育施設などでは、おむつ交換後やトイレ後の手洗いを徹底することが大切です。
④流行する時期とかかりやすい年齢を確認する
ヘルパンギーナと手足口病は、流行する時期と、かかりやすい年齢にも特徴が見られます。
どちらの病気も「夏かぜ」の代表格です。日本では春〜夏にかけて流行が始まり、7月にピークを迎える傾向にあります。(※1)(※3)
ヘルパンギーナと手足口病は、どちらも患者の中心は5歳以下の子どもです。ただし、大人も感染することがあるため、お子さんが感染したときは看病するご家族も注意が必要です。大人が感染したときの症状や仕事の休み方は、よくある質問「④大人が感染した場合、仕事を休む必要がありますか?」で解説しています。
大人が手足口病にかかったときの症状や自宅でのケアは、関連記事「大人も手足口病にかかる?」もあわせてご覧ください。
ヘルパンギーナと手足口病をご家庭で見分けるときの注意点
ご家庭で確認する際は、ペンライトなどでお子さんの口の中を照らし、喉の奥の方まで観察してみると分かりやすいかもしれません。ヘルパンギーナの発疹は上あごの奥やのどちんこの周りに、手足口病の発疹は舌や頬の内側など口の前の方に出やすいことが、見分けの手がかりになります。
ただし、①の表の特徴はあくまで典型的な例です。手足口病でも発疹が口の中だけにとどまったり、ヘルパンギーナのように高熱が出たりと、非典型的な経過をたどるケースも少なくありません。
また、口の中のできものはアフタ性口内炎など、ほかの病気の可能性も考えられます。(※6)ご家庭だけで判断するのは難しいため、症状が典型的でなかったり、心配な点があったりする場合は、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。
手足口病の症状や治療についてさらに詳しく知りたい方は、関連記事「手足口病とは?」もあわせてご覧ください。
ヘルパンギーナ・手足口病のご家庭での対処法
ヘルパンギーナと手足口病の治療は、症状を観察しながら自然に回復するのを待つ「対症療法」が基本です。これらの病気の原因となるウイルスに直接効く特効薬はないため、ご家庭でのケアが回復への鍵となります。
ヘルパンギーナ・手足口病のご家庭での対処法として、以下の3つを紹介します。
①治療の基本は「水分をしっかり」
②つらそうなら解熱鎮痛剤も
③症状が回復したあとも「手洗い」は続けよう
①治療の基本は「水分をしっかり」
ヘルパンギーナや手足口病で口の痛みが強いときは、食事よりも水分補給を優先しましょう。
ヘルパンギーナや手足口病では、喉や口の中にできた水疱・潰瘍の激しい痛みで、飲食が難しくなります。水分が摂れない状態が続くと脱水症を引き起こす恐れがあるため、こまめな水分補給が重要です。
口の中の潰瘍を刺激せず、飲み込みやすいものを選ぶのがポイントです。以下の表を参考に、食事・水分補給をしてください。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| おすすめの食べ物・飲み物 | ・のどごしが良いもの(ゼリー、プリン、アイスクリームなど) ・冷ましてあるもの(スープ、おかゆ、うどんなど) ・柔らかいもの(豆腐、茶わん蒸しなど) ・刺激の少ない飲み物(麦茶、イオン飲料、経口補水液など) |
| 避けたほうが良いもの | ・熱いもの(熱いスープやお茶など) ・酸味が強いもの(オレンジジュース、柑橘系の果物など) ・塩味や香辛料が強いもの(おせんべい、スナック菓子など) ・硬くて噛む必要があるもの |
一時的に食事の量が減っても、水分さえしっかり摂れていれば、過度に心配する必要はありません。スプーンやストローを使ったり、一口ずつ時間をかけて与えたりと、お子さんが受け入れやすい方法を試してみてください。
②つらそうなら解熱鎮痛剤も
高熱や口の痛みがつらいときは、解熱鎮痛剤を上手に使うことで、お子さんの負担を軽減できる可能性があります。
解熱鎮痛剤の目的は、単に熱を下げることだけではありません。水分や食事を摂りやすくしたり、睡眠による体力回復のサポートをしたりする重要な役割があります。
お子さんに薬を使う際は、アセトアミノフェンなどの子どもにも使える成分の薬を選び、購入時に薬剤師へ相談しましょう。自己判断で大人用の薬を分け与えることは危険なため、年齢や体重に合った量を服用してください。
ただし、熱が高くても機嫌が良く、水分も摂れているなら、急いで使う必要はありません。「痛みで水分を嫌がる」「ぐったりして眠れない」など、お子さんが明らかにつらそうなときに使用を検討します。
発熱や痛みは、体がウイルスに反応しているサインでもあります。薬を使うべきか迷ったときは、自己判断せず、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。
③症状が回復したあとも「手洗い」は続けよう
家庭内での二次感染を防ぐには、こまめな手洗いと排泄物の適切な処理が重要です。
ヘルパンギーナや手足口病の原因ウイルスは、症状が回復したあとも、数週間にわたって便の中に排出され続けることがあります。そのため、おむつ交換後やトイレ後の衛生管理が、家族を守るうえで欠かせません。
ご家庭でできる具体的な感染対策は、以下のとおりです。
- 基本は「流水と石けん」による手洗い
- タオルの共有を避ける
- おもちゃなどの消毒
- おむつの適切な処理
ヘルパンギーナ・手足口病の原因であるエンテロウイルスは、アルコール消毒が効きにくいことが知られています。消毒には、市販の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を薄めた液を使いましょう。
使用済みのおむつは、すぐにビニール袋などに入れて口をしっかり縛って捨ててください。処理したあとは、石けんで手を洗うことが大切です。
ヘルパンギーナと手足口病の受診と登園・登校の目安
ヘルパンギーナや手足口病は、ほとんどの場合、ご自身の免疫力で自然に回復へ向かう病気です。しかし、まれに重症化し、無菌性髄膜炎や脳炎、心筋炎などの深刻な合併症を引き起こす可能性もゼロではありません。
ここでは、「すぐに病院へ行くべき危険なサイン」と「登園・登校許可の基準」を解説します。
「飲めない・ぐったり」は受診のサイン
次のような症状は、体が発している危険なサインかもしれません。
| 症状 | 詳細 |
|---|---|
| 水分が摂れず、脱水の兆候がある | ・半日以上おしっこが出ていない ・唇がカサカサに乾いている ・泣いても涙が出ない、目が落ちくぼんでいる ・ぐったりしていて、皮膚のハリがない |
| 意識や神経系の異常が疑われる | ・呼びかけへの反応が鈍い、視線が合わない ・けいれん(ひきつけ)を起こした ・意味不明な言動がある ・繰り返し嘔吐する、激しい頭痛を訴える |
| その他の重症化を示すサイン | ・高熱が2日以上続いている ・呼吸が速い、息苦しそうにしている ・顔色が悪く、ずっと眠ってばかりいる |
少しでも「いつもと違う」「様子がおかしい」と感じたら、夜間や休日であっても、すぐに医療機関を受診してください。
登園・登校許可の基準
集団生活への復帰は、お子さんの体力が十分に回復し、普段通りの生活が送れる状態になったことが一つの目安です。
ヘルパンギーナや手足口病には、学校保健安全法に基づく出席停止期間は設けられていません。登園・登校を再開できるかどうかは、以下の3つのポイントをもとに判断します。
- 発熱が治まり、普段通りに過ごせるか
- 口の痛みが和らぎ、普段通りに食事が摂れるか
- 機嫌が良く、元気に遊べるくらい体力が回復しているか
これらの条件を満たしていれば、基本的には集団生活に戻っても問題ないと考えられます。
ただし、保育園や学校によっては独自のルールを設けていたり、医師が記入する「登園許可証」の提出を求められたりする場合があります。トラブルを避けるためにも、症状が回復したらまず施設に連絡し、必要な手続きを確認しましょう。
ヘルパンギーナ・手足口病に関するよくある質問
ヘルパンギーナや手足口病について、多くの方が抱く以下の4つの疑問を解説します。
①一度かかれば再感染しませんか?
②お風呂やプールはいつから入っても良いですか?
③予防法はありますか?
④大人が感染した場合、仕事を休む必要がありますか?
一度かかれば再感染しませんか?
ヘルパンギーナや手足口病は、何度もかかる可能性があります。病気の原因であるエンテロウイルス属には、コクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71(EV-A71)など、多くの型が存在するためです。
ヒトは一度ウイルスに感染すると、特定の型に対する免疫は獲得できますが、別の型のウイルスが体内に入れば、再び同じような症状を引き起こしてしまいます。そのため、流行シーズンである夏場には毎年注意が必要です。
お風呂やプールはいつから入っても良いですか?
お風呂は体調が良ければ問題ありませんが、プールはより慎重な判断が求められます。
高熱がなく、ぐったりしていなければ入浴しても構いません。汗を流して体を清潔に保つことは、あせもなどの二次的な皮膚トラブルを防ぐうえで大切です。
ただし、体力を消耗させないよう長湯は避け、水疱をゴシゴシこすらないようにしましょう。ウイルスはタオルを介しても感染するため、家族内でのタオルの共有は避けてください。
プールは、症状が回復してから再開するのが原則です。具体的には、「熱がなく、口の痛みもおさまり、普段通り元気に食事ができる」状態が目安となります。
ただし、不特定多数の人が利用する場所であるため、保育園や学校、スイミングスクールなどが独自の利用基準を設けている場合がほとんどです。トラブルを避けるためにも、再開前には施設に確認し、指示に従いましょう。
予防法はありますか?
ヘルパンギーナと手足口病に有効なワクチンや特別な予防薬は、2026年9月現在では日本国内にありません。予防の基本は、流水と石けんによる手洗いで、ウイルスを口に入れないことです。
原因となるエンテロウイルスはアルコール消毒が効きにくいため、手指は石けんで洗い流し、ドアノブやおもちゃの消毒には薄めた塩素系漂白剤を使いましょう。手洗いは、おむつ交換後やトイレ後、食事前に特に意識してください。
また、症状が良くなったあとも、便の中には2〜4週間ほどウイルスが出続けることがあります。(※6)(※7)お子さんが元気になってからも、しばらくは家族全員で手洗いを続けることが、家庭内での感染を防ぐポイントです。具体的な対策は「③症状が回復したあとも『手洗い』は続けよう」で紹介しています。
大人が感染した場合、仕事を休む必要がありますか?
ヘルパンギーナや手足口病は、法律で出勤停止(就業制限)が定められている病気ではありません。そのため、仕事を休むかどうかは、ご自身の体調と職種の2つの軸で判断します。
大人が感染した場合、一般的には子どもより症状が軽い傾向がありますが、手足口病では皮膚症状が強く現れることもあります。(※8)仕事を続けるのがつらいときは、無理をせず休養してください。
食品を扱う仕事や医療・介護従事者、保育士など、周りの人へ感染を広げるリスクが高い職種の方は、特に慎重な判断が必要です。症状が回復するまでは休むのが望ましく、職場に戻ったあとも便の中にウイルスが出ることがあるため、トイレ後の手洗いを徹底しましょう。
最終的には、勤務先の就業規則を確認し、上司や産業医に相談したうえで対応を決めましょう。
まとめ|迷ったら「場所」と「元気さ」をチェック
ヘルパンギーナと手足口病を見分けるポイントは、発疹や水疱が「喉の奥」に限定されるか、「手・足・口」に広がるかという点です。
どちらも夏に流行するウイルス感染症で特効薬はなく、治療は対症療法が基本となります。特に口の痛みが強いため、脱水を防ぐ水分補給と、家庭内での感染拡大を防ぐ手洗いが回復への鍵です。
ほとんどの場合は自然に回復へ向かいますが、まれに重症化する可能性も考えられます。水分が摂れずぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍いなど、お子さんの様子が「いつもと違う」と感じたら、自己判断せずに早めに医療機関へ相談してください。
夏に子どもの間で流行し、発熱とのどの痛みが出るウイルス感染症に関連する記事はこちら⇒プール熱(咽頭結膜熱)とは?




