最終医学的確認日:2026年9月
溶連菌感染症による強いのどの痛みや発熱(咽頭炎)は、治療しなくても数日で症状が軽くなることもあります。しかし、症状が治まっても菌が体内に残っている場合があり、 感染後に急性リウマチ熱などの合併症を起こすリスクもあるため、発熱や強いのどの痛みなどがある時点で医療機関を受診し、検査と治療を受けることが大切です。
この記事では、溶連菌感染症を放置した場合に起こりうるリスクや対処法について、以下のポイントをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 溶連菌を放置する2大リスク(周囲への感染・合併症)
- 子どもと大人それぞれに注意すべき重大な合併症
- 溶連菌感染症を疑うべき初期サインと受診の目安
- 正しい治療法とよくある疑問への回答
発熱や強いのどの痛みがある方は、本記事の受診の目安を参考に、早めに医療機関へ相談してください。
子どもの溶連菌を放置するとどうなる?
子どもの溶連菌感染症を治療せずにいると、周囲へ感染を広げたり、まれに感染後の合併症を起こしたりする可能性があります。症状だけで原因を判断するのは難しいため、発熱や強いのどの痛み、発疹などがある場合は医療機関に相談しましょう。
溶連菌に気づかず放置した場合の主な経過の目安は以下のとおりです。
| 経過時期 | 症状の変化・体内の状態 | 放置によるリスク・合併症 |
|---|---|---|
| 初期(発症〜3日目ごろ ) | 突然の発熱、強いのどの痛み、発疹 | 周囲への感染拡大(※この段階での受診・抗菌薬治療を推奨) |
| 数日〜1週間後 | 熱やのどの痛みが自然に和らぐことがある(菌が体内に残っている場合がある) | 治療していなければ、周囲へうつす可能性が続く |
| 感染から1〜4週間後ごろ | のどの症状が治まったあとに、むくみ・血尿・関節の痛みなどが現れることがある | 急性糸球体腎炎(感染から約10日後)、急性リウマチ熱(感染から数週間後)などの合併症 |
また、頻度はまれですが、菌が血液などに入り込み、敗血症や劇症型溶血性レンサ球菌感染症などの重い病気を起こすこともあります。
ここでは、子どもの溶連菌を放置するリスクを詳しく解説します。
①周囲への感染拡大
溶連菌感染症を治療しないと、症状が治まったあとでも感染力が残り、無自覚のうちに周囲へうつしてしまう可能性があります。
溶連菌の主な感染経路は、「飛沫感染」と「接触感染」です。飛沫感染は、咳やくしゃみで飛び散る唾液を吸い込むことで起こります。一方、接触感染は、菌が付いた手で口や鼻に触れることで体内に侵入する経路です。
特に、保育園や学校などの集団生活の場では、あっという間に感染が広がることも珍しくありません。ご家庭内でも、感染したお子さんが使ったタオルやコップを共有することで、ご家族にうつる危険があります。
適切な抗菌薬を開始すると感染力は大きく低下します。一般に、適切な抗菌薬を飲み始めて24時間以内に、周囲への感染力はなくなるとされています。(※1)登園・登校や出勤を再開する時期は、熱が下がっているかどうかも含めて医師に確認しましょう。なお、症状が良くなっても、抗菌薬は決められた期間飲み続けてください。
②合併症の発症
溶連菌感染症の放置で注意すべきなのが、感染から数週間経って現れる合併症です。代表的な合併症には、心臓や関節に炎症が起きる「急性リウマチ熱」や、腎臓に障害が起きる「急性糸球体腎炎」などがあります。(※2)
これらの合併症は、溶連菌が直接作用するわけではありません。菌に対して免疫システムが過剰に反応し、誤って自分の体の組織(心臓や腎臓など)を攻撃することで発症すると考えられています。
そのため、のどの痛みや熱などの初期症状が治まった頃に、突然、以下のような症状が現れるのが特徴です。
- 体のむくみ
- コーラのような色の尿(血尿)
- 関節の激しい痛み
合併症が起こる頻度は高くありませんが、一度発症すると体に大きな負担がかかります。症状が良くなっても自己判断で薬をやめず、処方された抗菌薬を医師の指示通り最後まで飲み切ってください。(※3)
大人も起こりうる|溶連菌に伴う合併症
溶連菌感染症は、子どもだけの病気ではありません。大人も感染し、ときには重い合併症を引き起こすことがあります。
大人も起こりうる主な合併症は7つで、発症時期や主な症状の比較は以下のとおりです。
| 合併症名 | 主な発症時期・原因 | 主な初期症状 |
|---|---|---|
| ①急性リウマチ熱 | 感染から数週間後 | 移動性の関節痛、動悸、発熱 |
| ②急性糸球体腎炎 | 感染から約10日後 | 血尿(コーラ色尿)、むくみ、高血圧 |
| ③劇症型溶血性レンサ球菌感染症 | 突然(数時間〜数十時間) | 手足の激痛・腫れ、ショック状態 |
| ④蜂窩織炎 | 傷口からの感染 | 皮膚の赤み・腫れ・熱感・強い痛み |
| ⑤敗血症 | 局所感染の悪化 | 38℃以上の高熱または低体温、意識障害 |
| ⑥肺炎 | のどから肺への感染 | 38℃以上の高熱、激しい咳、黄色い痰 |
| ⑦髄膜炎 | 菌の脳脊髄への到達 | 激しい頭痛、首の硬直(項部硬直)、高熱 |
それぞれ詳しく説明していきます。
①急性リウマチ熱
急性リウマチ熱は、溶連菌に感染したあと、体の免疫システムが異常を起こして心臓や関節、神経などを攻撃してしまう病気です。
のどの痛みが治まってから数週間後に、さまざまな症状が現れます。主な症状は、以下のとおりです。
- 関節の症状:複数の関節が移動しながら赤く腫れて痛む
- 心臓の症状:動悸、息切れ、胸の痛み(心臓の炎症による)
- 神経の症状:手足が自分の意思とは無関係に動く
- 全身の症状:発熱
多くの研究で、溶連菌感染症を治療せずに放置すると、急性リウマチ熱の発症リスクが高まることが報告されています。一方、適切な期間の抗菌薬治療で原因となる溶連菌を除菌すると、その後の免疫の異常反応が起こりにくくなり、急性リウマチ熱の発症を大きく減らせることが示されています。(※4)
特に怖いのは、心臓の弁に炎症が起こり「リウマチ性心疾患」という後遺症が残ることです。実際に、本人も気づかないうちにリウマチ性心疾患が進行し、別の検査で偶然、心臓の弁に異常が見つかるケースも報告されています。(※5)
症状が良くなっても、最後まで治療を続けることが重要です。
②急性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎は、溶連菌感染に対する免疫の異常反応が、腎臓を攻撃することで発症する病気です。
腎臓には、血液をろ過して尿を作る「糸球体」というフィルターが無数にあります。このフィルターに炎症が起こり、うまく機能しなくなるのが急性糸球体腎炎です。
のどの痛みなどが治って10日ほど経ってから、血尿や尿量の減少、顔・手足のむくみ、高血圧、全身の倦怠感などが現れます。(※6)
多くは安静にすることで自然に回復しますが、まれに腎臓の機能が低下したままになることもあります。のどの痛みが治ったあと、「尿の色がおかしい」「顔がむくむ」などの変化を感じたら、急性糸球体腎炎の可能性を考え、すぐに医師に相談してください。
③劇症型溶血性レンサ球菌感染症
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は、溶連菌が普段は存在しない血液や筋肉などの組織に侵入し、急激かつ破壊的に症状が進行する病気です。
進行が速く、発症してから数十時間で多臓器不全やショック状態に陥ることもあります。(※7)手足の傷口から菌が侵入するケースがあるほか、侵入経路が特定できない場合も少なくありません。
国立健康危機管理研究機構の調査(※8)によると、STSS(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)の報告数は近年増加しており、2023年には年間900件を超えて当時の過去最多となり2024年はそれをさらに大きく上回りました。(※9)以下のような症状が突然現れた場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。
- 手足の急激で耐えがたい痛みや、パンパンに腫れあがる
- 突然の高熱や悪寒
- 血圧が急激に下がり、意識がもうろうとする
初期症状を見逃さず、迅速に医療機関を受診することが命を救う鍵となります。
④蜂窩織炎
蜂窩織炎は、皮膚の深い部分から皮下脂肪にかけて、溶連菌などの細菌に感染して炎症を起こす病気です。
虫刺されや小さな切り傷など、わずかな皮膚の傷から菌は侵入します。溶連菌はのどだけでなく、皮膚にも感染症を引き起こす代表的な細菌の一つです。(※10)
蜂窩織炎になると、皮膚が赤くパンパンに腫れたり、腫れた部分に熱感と強い痛みが現れたりします。発熱、悪寒、倦怠感などの全身症状も主な症状の一つです。
特に足やすねに発症しやすいですが、体のどこにでも起こりえます。赤みや腫れが急速に周りへ広がったり、痛みが強くなったりした場合は、早めに医療機関で治療を開始することが必要です。
蜂窩織炎の原因や症状、治療法については、関連記事「蜂窩織炎とは?」もあわせてご覧ください。
⑤敗血症
敗血症は、溶連菌などの細菌感染をきっかけに、体の免疫反応が暴走して自分の臓器を攻撃してしまう状態です。肺炎や蜂窩織炎などの局所的な感染症が悪化し、敗血症に至ることもあります。
以下のような症状は、体が発する敗血症のサインです。
- 体温の異常:震えを伴う高熱、または逆に36℃以下の低体温
- 呼吸の異常:呼吸が速く、息苦しい
- 循環の異常:脈が速い、血圧が下がる
- 意識の異常:呼びかけへの反応が鈍い、意識がもうろうとする
これらのサインが一つでもみられたら、ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに救急外来を受診してください。
⑥肺炎
肺炎は、溶連菌がのどから気管を通って肺にまで到達し、炎症を引き起こす病気です。溶連菌の感染に続いて発症するケースや、ほかの細菌と同時に感染するケースもみられます。
普通の風邪と異なり、肺炎は38℃以上の高熱が続いたり、激しい咳や黄色・緑色の痰などの症状が現れたりすることが特徴です。息をすると胸が痛く、息苦しかったり、ぐったりするほどの倦怠感や食欲不振があったりすることもあります。
特に、高齢の方、心臓や肺の持病をお持ちの方、糖尿病の方など、免疫力が低下している方は重症化しやすいため注意が必要です。咳や熱が長引くときは「ただの風邪」と自己判断せず、医療機関を受診してください。
⑦髄膜炎
髄膜炎は、溶連菌が血液の流れに乗って、脳と脊髄を保護している「髄膜」に到達し、炎症を引き起こす病気です。頻度は高くありませんが、命に関わったり、重い後遺症が残ったりする可能性があります。
以下のような特徴的な症状が現れたら、髄膜炎を強く疑うことが必要です。
- 吐き気を伴う、これまで経験したことのないような激しい頭痛
- 突然の高熱
【※要注意】夜間・休日でもすぐに救急受診すべき危険サイン
以下の症状が一つでも見られる場合は、合併症(髄膜炎など)の恐れがあるため、直ちに救急医療機関を受診してください。
<共通の危険サイン>
- 項部硬直(首の後ろが硬くなり、あごが胸につかない)
- 光線過敏(普段は平気な光を異常にまぶしく感じる)
- 意識障害・けいれん(意識がもうろうとする、呼びかけに応じない)
<乳幼児特有の危険サイン>
- 極度の機嫌の悪さ
- 哺乳不良(ぐったりしてミルクや母乳を飲まない)
- 異常な泣き方(普段と違う甲高い泣き声)
溶連菌感染症の受診の目安
溶連菌感染症は、38℃以上の高熱や強いのどの痛み、発疹が見られる場合が医療機関受診の明確な目安です。 受診の目安として、「初期サインチェックリスト」と「受診を検討すべきケース」を解説します。
初期サインチェックリスト
溶連菌感染症では、一般的な風邪とは異なる特徴的なサインが現れることがあります。ご自身やお子さんに当てはまる症状がないか、以下の項目をチェックしてみましょう。
- 38℃以上の突然の発熱
- 強いのどの痛み(つばを飲み込むのが困難な程度)
- 咳や鼻水症状の欠如(一般的な風邪との大きな違い)
- いちご舌の出現(舌の赤みと表面の目立つぶつぶつ)
- 小さく赤い発疹(体や手足に現れ、かゆみを伴う)
- 首のリンパ節の腫れ・痛み(あごの下周辺)
- 扁桃の腫れと白い付着物(のどの奥が赤く腫れ、白苔がみられる)
溶連菌感染症では、発熱や強いのどの痛み、扁桃の腫れや白い付着物などがみられます。発疹を伴う猩紅熱では、舌が赤くなって表面の乳頭が目立つ「いちご舌」が現れることもあります。
ただし、いちご舌がみられないケースも多く、症状やのどの見た目だけで溶連菌感染症を確定することはできません。また、チェックリストの症状がすべて現れるとは限りません。あくまで目安と考え、気になるサインがあれば医療機関に相談してください。
受診を検討すべきケース
疑いのある初期サインがあったり、のどの痛みが強くて水分・食事が摂りにくかったりする場合は、早めに医療機関を受診してください。市販の解熱鎮痛薬を飲んでも熱が下がらず、「いちご舌」や体への発疹が出ているときも受診を検討する必要があります。
家族や学校、職場など、身近に溶連菌の感染者がいる場合も注意が必要です。
一度症状が治まったように感じても、あとから合併症のサインが現れることもあります。血尿や顔・足のむくみ、関節の痛みなどがあれば、ためらわずに、ご自身の体の状態を医師に相談することが大切です。
溶連菌の治療法
溶連菌感染症の治療は、抗菌薬(抗生物質)を決められた期間きちんと飲み切ることが基本です。抗菌薬による治療には、以下の2つの目的があります。
- つらい症状を和らげ、周りの人への感染防止を目指す
- 重い合併症(急性リウマチ熱など)の予防を図る
抗微生物薬適正使用の手引きでは、溶連菌が原因と診断された咽頭炎には、抗菌薬(ペニシリン系のアモキシシリンなど)を10日間飲み続けることを推奨しています。(※11)抗菌薬を飲み始めると、通常1〜2日で熱が下がり、のどの激しい痛みも楽になる傾向があります。
しかし、症状がなくなったからといって、薬を途中でやめてしまうのは危険です。症状が消えても、体の中には溶連菌が残っている可能性があります。
抗菌薬治療には、症状を早く和らげ、周囲への感染を減らし、急性リウマチ熱を予防する目的があります。一方、急性糸球体腎炎を確実に予防できるかは明らかになっていません。そのため、のどの症状が治ったあとも、血尿やむくみなどが現れた場合は受診が必要です。
また、高熱やのどの痛みがつらい間は、解熱鎮痛薬を併用して症状を和らげることもあります。治療中は、脱水を防ぐためにこまめに水分を摂り、体をゆっくり休めることも回復への近道です。
溶連菌の治療のゴールは、目先の症状をなくすことだけではありません。「合併症を防ぎ、菌を体から追い出すこと」が本当のゴールです。そのため、医師の指示に従った治療が何よりも大切です。
溶連菌感染症の症状や潜伏期間、治療の全体像を知りたい方は、関連記事「溶連菌とは?」もあわせてご覧ください。
溶連菌の放置に関するよくある質問
溶連菌感染症の放置に関して、以下の3つの質問に回答します。
放置すると必ず合併症になりますか?
溶連菌に感染したからといって、必ずしも重い合併症が起こるわけではありません。しかし、治療せずに放置することで、合併症のリスクが高まるため注意が必要です。
特に注意が必要なのが、感染して数週間経ってから起こる急性リウマチ熱や急性糸球体腎炎です。これらは、体の免疫システムが暴走し、誤って自分の心臓や腎臓などの臓器を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。
また、まれではあるものの、菌が血液や筋肉に侵入して重症化する劇症型溶血性レンサ球菌感染症に至るケースも報告されています。(※7)
のどの症状が治ったあとに、血尿、尿量の減少、顔や足のむくみ、関節の腫れや痛み、息切れなどが現れた場合は、医療機関を受診してください。
溶連菌は自然治癒することがありますか?
私たちの体に備わっている免疫の力で、のどの痛みや熱などの症状が自然に和らぐことはあります。そのため、自然に治ったと感じるかもしれません。
しかし、症状が治まったからといって、体の中から溶連菌が完全にいなくなったとは限りません。むしろ、症状が消えたあとも菌が体内に潜み続け、周囲の人に感染を広げたり、後から合併症を引き起こしたりする可能性があります。(※12)
自然治癒を期待して様子を見るのは、見えないリスクを抱え込むことになりかねません。医療機関できちんと診断を受け、適切な治療を開始することが大切です。
一度発症すれば再感染しませんか?
残念ながら、溶連菌には一度かかっても生涯にわたって何度も再感染する可能性があります。溶連菌には200種類以上の型が存在するためです。
一度感染すると、特定の型の溶連菌に対しては免疫ができます。しかし、過去にかかったことのない別の型の溶連菌には、再び感染する可能性があります。
過去に溶連菌と診断された経験があっても、再び以下のような症状が現れた場合は、再感染を疑うことが必要です。
- 突然の発熱
- 強いのどの痛み
- 首の前側にあるリンパ節の腫れや痛み
- 扁桃の赤みや腫れ、白い付着物
- 体に広がる細かな赤い発疹
「前にもかかったから大丈夫」と油断せず、きちんと医療機関を受診し、医師の診断を仰ぎましょう。
まとめ
溶連菌感染症を治療せずに放置すると、症状が治まったあとでも重い合併症を引き起こしたり、周囲へ感染を広げたりするリスクがあります。
のどの痛みや熱が自然に引いたように感じても、体内に菌が潜んでいるかもしれません。合併症を防ぎ、周りの人への感染を食い止めるためにも、処方された抗菌薬を医師の指示通り最後まで飲み切ることが大切です。
つらいのどの痛みや突然の発熱、いちご舌などのサインに気づいた際は、自己判断で様子を見ずに、お近くの医療機関へご相談ください。
高熱とのどの痛みで始まり、見た目だけでは溶連菌と区別しにくい子どもの感染症に関連する記事はこちら⇒プール熱(咽頭結膜熱)とは?
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