最終医学的確認日:2026年10月
麻疹(はしか)は非常に強い感染力を持ち、大人が感染すると重症化リスクもある感染症です。「もしかして…」と不安を感じている方に向けて、症状や受診の目安、予防方法を分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 麻疹の初期症状から回復までの経過(3つのステージ)
- 主な感染経路(空気・飛沫・接触感染)
- 受診時の注意点と正しい対処法
- ワクチンを中心とした予防方法
麻疹(はしか)とは感染力の強い急性ウイルス感染症
麻疹は、一般に「はしか」と呼ばれる急性ウイルス感染症です。原因は麻しんウイルスです。主な感染経路は空気感染で、同じ空間にいるだけで感染が広がるほど、感染力は強いとされ、さらに麻疹ウイルスに対しての免疫を持たない人は発症する可能性が高いと言われています。
また、麻疹は「子どもの頃にかかる病気」と思われがちですが、大人が感染すると子ども以上に重症化しやすく、肺炎や肝機能障害などの合併症で入院が必要になるリスクが高まります。国立感染症研究所などの報告によると、麻疹患者の約3割に何らかの合併症が見られ、肺炎や脳炎を合併した場合には、命に関わることもあります。(※3)
大人でも決して油断はできません。ご自身の接種歴を確認し、正しい知識を持つことが、自分と周囲の健康を守る第一歩となります。
麻疹(はしか)の主な症状
麻疹の症状は、約10〜12日間の潜伏期間を経て現れます。麻疹の経過は以下の3つのステージに分かれます。
①カタル期
②発疹期
③回復期
①カタル期(発熱・咳・鼻水・結膜充血)
カタル期は麻疹感染の初期段階で、38℃前後の発熱が2〜4日間続きます。症状は風邪やインフルエンザとよく似ています。カタル期で麻疹と気づくのは難しいのが実情です。
カタル期に現れる主な症状は以下のとおりです。
| 症状 | 内容 |
|---|---|
| 発熱 | 38℃前後の熱が続く |
| 上気道炎症状 | 乾いた咳、鼻水、くしゃみ |
| 結膜炎症状 | 目の充血、目やに、涙目 |
| 羞明 | 光をまぶしく感じる |
カタル期の終わりには、麻疹を強く疑うサインとして「コプリック斑」が現れることがあります。コプリック斑とは、頬の内側にできる直径1mm程度の白い斑点です。発疹が出る1〜2日前に現れ、数日で消えます。コプリック斑を見つけたら速やかに医療機関へ電話で相談しましょう。
②発疹期(高熱と全身に広がる発疹)
発疹期に入ると、麻疹の症状は急激に強まります。一度下がりかけた熱が再び39℃以上に上がり、同時に赤い発疹が現れるのが特徴です。
発疹は以下の順で広がります。
- 顔、首、耳の後ろから出始める
- 1〜2日で体や腕へと広がる
- 最終的に手足の先まで達する
発疹は最初、小さな赤い点として現れます。やがて隣り合う発疹がくっつき合い、地図のようなまだら模様になります。咳や鼻水はカタル期より強まり、全身のだるさもピークに達します。
発疹期は体力の消耗が激しい時期です。安静を保ち、体調の変化を注意深く観察しましょう。
③回復期(発疹が薄くなり症状が改善する)
発疹が出てから3〜4日ほど経つと、高熱が下がりはじめます。咳などのつらい症状も少しずつ和らぎ、回復期に入ります。
発疹は現れたときと同じく、顔から順に消えていきます。発疹が消えたあとには、茶色いシミのような色素沈着が残ることがあります。色素沈着は時間とともに自然に薄くなります。皮膚が薄くむけることもあります。
注意したいのは、症状が軽くなっても治ったとはいえない点です。麻疹は体力を大きく消耗させるため、免疫力の回復には時間がかかります。体力が戻るまでは十分な休養を取りましょう。
発疹の出方などから風疹と見分けるポイントは、関連記事「麻疹と風疹の違い」もあわせてご覧ください。
麻疹(はしか)の感染経路
麻疹は複数の経路で人から人へ広がります。主な麻疹の感染経路は以下の3つです。
①空気感染
②飛沫感染
③接触感染
①空気感染
空気感染は、麻疹の広がりの中心となる経路です。空気中に漂うウイルスを吸い込むことで感染します。
感染者が咳やくしゃみをすると、ウイルスを含む微細な粒子(飛沫核)が空気中に放出されます。飛沫核は軽いため、すぐには地面に落ちず、空気中を2時間ほど漂い続けます。
そのため、感染者と直接接触しなくても麻疹に感染することがあります。同じ部屋やエレベーター、乗り物に居合わせるだけでも注意が必要です。マスクだけでウイルスの吸い込みを防ぐのは難しく、空気を入れ替える換気が重要になります。
②飛沫感染
飛沫感染は、咳やくしゃみで飛び散るしぶき(飛沫)を吸い込むことで起こります。
飛沫は水分を含んで重いため、長時間は空気中を漂いません。1〜2メートルほどで地面に落下します。
そのため、感染者の近くでマスクなしに会話をした場合などに、麻疹感染リスクが高まります。マスクの着用や咳エチケットは、飛沫の飛散や吸い込みを防ぐうえで有効な対策です。
③接触感染
接触感染は、ウイルスが付着した物を触った手で、目や鼻、口の粘膜に触れることで起こります。
例えば、麻疹の感染者が咳を手で押さえたあと、ドアノブやつり革を触るとウイルスが付着します。別の人がその場所に触れると、手にウイルスが移ります。その手で無意識に目や鼻を触ることで、ウイルスが体内へ侵入します。
接触感染を防ぐには、こまめな手洗いやアルコールによる手指消毒が役立ちます。3つの経路を意識し、日頃から対策を重ねましょう。
感染してから症状が出るまでの期間や、その間の過ごし方は、関連記事「麻疹の潜伏期間」もあわせてご覧ください。
麻疹(はしか)の受診の目安
麻疹が疑われる症状が出たときは、自己判断で様子を見ず、医療機関へ電話で相談しましょう。受診を検討する目安は以下の3つです。
①風邪症状に続く高熱や二峰性発熱
②顔や体全体への赤い発疹
③患者との接触歴や流行地域への渡航歴
①風邪症状に続く高熱や二峰性発熱
風邪と症状が似ていますが、麻疹では以下のような違いが見られることがあります。
- 下がりかけた熱が再び39℃以上に上がる(二峰性発熱)
- 咳や鼻水、目の充血が通常の風邪より強い
- 強い倦怠感でぐったりする
麻疹は、まれに脳炎などの重い合併症を招きます。「風邪にしては様子がおかしい」と感じたら、無理をせず医療機関へ電話で相談しましょう。
【注意】すぐに受診すべき緊急症状
呼吸が苦しい、意識がぼんやりする、けいれん、水分が取れない、尿が著しく少ない、ぐったりして反応が悪い場合は、緊急性があるため、医療機関へ電話したうえで速やかに診療を受けてください。
②顔や体全体への赤い発疹
下がりかけた熱が再び39℃以上に上がり、同時に顔や首から赤い発疹が出た場合は、麻疹の可能性が高いと考えられます。
発疹は顔から始まり、体や腕を経て手足の先へと広がります。はじめは小さな赤い点ですが、やがてくっつき合い(癒合)、地図のようなまだら模様になります。
速やかに医療機関へ電話で連絡し、指示を受けましょう。
③患者との接触歴や流行地域への渡航歴
麻疹(はしか)の患者と接触した可能性がある方や、流行地域(海外や国内の発生地域)への渡航歴がある方は、発疹が出ていない初期(風邪症状)の段階であっても注意が必要です。
麻疹の初期症状(カタル期)は一般的な風邪と見分けがつきにくいですが、「接触歴や渡航歴」がある場合は初期の段階でも麻疹を疑う重要な根拠となります。発疹やコプリック斑が出現するのを待たず、風邪症状が出た時点で速やかに医療機関へ電話相談してください。
【行動時の重要ポイント】
- 必ず事前に電話連絡をする
受診前に医療機関や保健所へ電話し、「麻疹の可能性(接触歴・渡航歴)がある」ことを伝えて指示を受けてください。直接来院すると院内感染を広げるリスクがあります。 - 公共交通機関の利用を避ける
麻疹の感染力は非常に強力です。移動時に電車やバスを使わず、自家用車などを利用するか、医療機関の指示に従って移動してください。
麻疹(はしか)にかかったときの対処法
麻疹のウイルスを直接抑える特効薬はありません。治療の基本は、症状を和らげながら回復を待つ対症療法です。かかったときの対処法は以下の4つです。
①受診前に医療機関へ電話で連絡する
②こまめに水分と栄養を補給する
③十分な休養を取る
④他の人との接触を避ける
①受診前に医療機関へ電話で連絡する
麻疹が疑われる症状があるときは、そのまま病院へ向かうのは避けましょう。まずはかかりつけ医や内科、小児科へ電話で連絡し、その後の動きについて指示を仰ぎましょう。
麻疹は空気感染するため、待合室にいるだけで周囲へ感染を広げる恐れがあります。事前に連絡すれば、医療機関側も別室への案内や時間の調整などの準備ができます。
電話では以下の点を伝えましょう。
- 発熱、咳、発疹などの具体的な症状
- 症状が始まった時期
- 麻疹を疑うきっかけ
- 自分のワクチン接種歴
伝えられた来院時間や入り口、待機場所の指示は守りましょう。受診の際は公共交通機関の利用も控えましょう。
②こまめに水分と栄養を補給する
高熱が出ると、気づかないうちに大量の汗をかき、体から水分が失われます。脱水を防ぎ、回復に必要な体力を保つため、水分と栄養をこまめに補給しましょう。
水分と食事のポイントは以下のとおりです。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 水分 | イオン飲料や経口補水液でミネラルも補う |
| 食事 | おかゆやスープなど消化しやすいものを選ぶ |
| 食べ方 | 一度に多く摂らず、少しずつ回数を分ける |
のどの渇きを感じなくても、意識して水分を摂りましょう。食べられるものを食べられるときに口にすることが、回復を後押しします。
③十分な休養を取る
麻疹の回復では、休養が大きな役割を果たします。ウイルスに対抗するのは自分自身の免疫の働きです。免疫が十分に働けるよう、体をしっかり休ませましょう。
仕事や学校は休み、家事も家族に任せて、できる限り横になって過ごしましょう。麻疹には、光をまぶしく感じる羞明もあります。部屋の照明を少し落とすと過ごしやすくなります。
④他の人との接触を避ける
自分の体を守ることと同じく、周囲へ感染を広げない配慮も求められます。
麻疹ウイルスは、症状が出はじめる数日前から解熱後数日が経過するまで排出され続けます。風邪だと思っている段階で、すでに周囲へうつしている可能性があります。学校保健安全法でも、解熱後3日を経過するまでは出席停止と定められています。この期間の外出は控えましょう。
家庭内での麻疹の感染拡大を防ぐ対策は以下のとおりです。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 療養場所 | できるだけ個室で過ごし、家族との接触を減らす |
| 看病 | 麻疹の免疫がある家族が担当する |
| 物品の共有 | タオルや食器、歯ブラシは分ける |
| 換気 | 定期的に窓を開けて空気を入れ替える |
自分の回復に専念しながら、感染拡大を防ぐ視点も持ちましょう。
マスクや手洗い、換気は補助的な対策ですが、これらだけで麻疹の空気感染を防ぐことはできません。患者は可能な限り個室で療養し、免疫が不十分な家族、乳児、妊婦、免疫不全者とは同じ空間で過ごさないようにします。家族全員の接種歴を確認し、免疫が不十分な可能性がある人は、速やかに医療機関または保健所へ相談してください。
麻疹(はしか)の予防方法
麻疹予防の基本は「ワクチン接種」です。空気感染するため、手洗いやマスクなどの物理的な対策のみで防ぎきることはできません。
有効な予防法・対策は以下の3つです。
①ワクチン(MRワクチン)を接種する(最優先)
②感染者との接触を避ける
③手洗い・咳エチケット(補助的対策)
①ワクチン(MRワクチン)を接種する
麻疹の予防では、MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)を生涯で2回接種することが基本です。
厚生労働省の「麻しん(はしか)に関するQ&A」によると、1回のワクチン接種で約95%の人が免疫を獲得しますが、残りの約5%には十分な免疫がつきません。2回目の接種を行うことで、より強い免疫になるとともに、1回目で十分な免疫がつかなかった人の多くにも免疫をつけることができるとされています。(※1)
日本では、以下の時期に無料で受けられる定期接種が定められています。
| 区分 | 対象時期 |
|---|---|
| 第1期 | 1歳から2歳になるまでの間 |
| 第2期 | 小学校入学前の1年間 |
麻疹ワクチンは2回接種することで、長期間にわたり予防効果が期待できます。
定期接種の機会を逃した方や接種歴がわからない方は、まず母子健康手帳で「麻しん」または「MR」の接種記録が2回あるか確認しましょう。手帳がない場合や記録が不明な場合は、医療機関で抗体検査(血液検査)を受け、免疫の有無を確認した上で任意接種を検討するのが確実です。
定期接種の対象者や接種スケジュールは、関連記事「MRワクチンとは」もあわせてご覧ください。
②感染者との接触を避ける
麻疹の免疫がない場合は、感染が疑われる人との接触を避けることが重要です。
麻疹は感染力が非常に強く、免疫がない人がウイルスに触れると高い確率で発症します。流行地域への不要不急の訪問は控え、学校、職場、満員電車など人が密集する場所では注意しましょう。
【補足】もし感染者と接触してしまった場合(暴露後予防)
免疫がない状態で麻疹患者と接触してしまった場合でも、72時間以内にワクチンを緊急接種することで発症を抑えられる可能性があります。また、乳児や妊婦、重度の免疫不全者などでは、接触後6日以内の免疫グロブリン投与が検討されます。
検査や発疹の出現を待たず、直ちに医療機関または保健所へ電話でご相談ください。
妊娠中に麻疹にかかったときの影響と対応は、関連記事「妊婦が麻疹にかかるとどうなる?」もあわせてご覧ください。
③手洗い・咳エチケットを心がける(補助的対策)
手洗いや咳エチケットは、麻疹予防では「補助的な対策」と位置づけられます。
麻疹は接触感染や飛沫感染の経路もあるため、こまめな手洗いや咳エチケットは一定のリスク軽減に役立ちます。
ただし、麻疹の主な感染経路である空気感染を手洗いやマスクだけで防ぐことは困難です。あくまでワクチン接種による免疫獲得を前提としたうえで、日頃の健康習慣として並行して行いましょう。
まとめ
麻疹は高熱や発疹を特徴とし、強い感染力を持つ感染症です。予防の中心となるのはワクチン接種です。
肺炎や脳炎などの重い合併症を招くことがあり、特効薬もありません。感染そのものを防ぐ対策が重要になります。感染が疑われる場合は自己判断で行動せず、まず医療機関へ電話で連絡し、指示を仰ぎましょう。
自分と大切な人を守るため、母子健康手帳などで接種歴を確認しましょう。免疫が不十分と考えられる場合は、ワクチン接種をおすすめします。




